言語をひとつ操れるようにする際には、
- 発音・スペリング
- 語彙(イディオム含む)
- 文法
をマスターする必要があります。
その中で発音・スペリングと文法の学習は勉強し始めたころに集中的に学び終えられるのに対し、単語学習というのは途方のない道のりであると全人類が感じていることでしょう。
例えば英語には25万語の単語があるとされており、一生のうちにすべてを覚えるというのは現実的ではありません。
我々は”選択”をする必要があります。
語数と実感値の目安
ラッキーなことに、世界中の言語オタクたちのおかげでどの程度の語彙力を目指すべきなのかという問いに対して”楽観的な”答えが出されています。
アメリカの多言語話者で言語学者のAlexander Argüellesによれば、
- 250単語は、言語の本質的なコアを構成し、それらなしではどんな文も構築することはできない。
- 750語は、言語を話すすべての人が毎日使用しているものを構成する。
- 2500語は、あなたが言いたいことをすべて表現できるようにするために必要な単語である。
- 5000語は、高等教育を受けていないネイティブスピーカーの語彙である。
- 10,000語は、高等教育を受けたネイティブスピーカーのアクティブな語彙である。
- 20,000語は、著名な作家の小説などの文学作品を読み、理解し、楽しむために受動的に認識しなければならない語彙の範囲である。
これにのっとれば、いわゆる「その辺の外国人とテキトーな会話がしたい」という目標をかなえるならば5000語を目指すのが適切だと言えるでしょう。
5000語までの道とその先の戦略
また、このArgüellesの説明は言語を学ぶ際にどのように単語学習を組み込んでいくべきかという悩みにも思考の軸を与えてくれます。
誰もが覚える750語
例えば、第二段階の750語は文法学習をスタートする前に到達すべきレベルです。
文法学習に用いられる例文をストレスなく教材として利用するには「毎日の使用が想定される」語彙をマスターしておけば、初心者向けの文法書を読み終えるまで辞書を引く必要はほとんどなくなるでしょう。
250語はネイティブレベルで
さらに、その750語を習得するための土台として、第一段階の250語をマスターすることは大いに役立ちます。
語彙はエピソードやコロケーションを用いて覚えることが長期記憶に効果的であることは言うまでもありませんが、最初の250語はそうしたエピソードやコロケーションを創作するのにも必要不可欠な存在と解釈できるからです。
当サイトでは学習言語でできた脳みそ(英語なら英語脳と呼ぶ)を作り上げるために、単語学習においてはグーグル画像検索の利用を推奨しています。
しかしひとつひとつ画像をググるのは急がば回れと思いつつも正直骨が折れるものです。5000回やるのは現実的ではありません。それでも250語であれば、何とかやってみようという気になれる数です。
最初の250語をネイティブと同じく映像で確固たるイメージを脳に定着させ、それでできた文章に新たな単語を組み込むことができれば効果的なボキャビルとなるでしょう。
2500語への心得:単語は選んで覚えるものである
そして750語と文法学習を終えたら、「言いたいことをすべて表現できるようにするため」の学習を始めます。
実は、この段階からは例えば2500語と言ってもその中身は全員同じではありません。
自分に必要な単語を選んで自らの語彙リストに加えていく段階なのです。
”上位2500語レベル”であれば学習が進んだ頃に誰しも覚えることになることが想定されますが、そもそも我々がある言語を5000語や10000語レベルまで飽きずに学習を続けるかどうかも定かではありません。
少しでも学習を楽しく続けられるようにひたすら自分が興味を持てる内容に特化するべきでしょう。動機なくして一切の行動はできないからですね。
学習プロセスの例としては、まず簡単な自己紹介に使う単語に抜け漏れがあると感じればまず克服するとよいでしょう。
その後はあなたがなぜ言語を学ぼうと思ったのか具体的に思い出して、実際に利用シーンで想定される分野の単語や表現を学習していきます。
そこに多少のほかの趣味などに関する単語を加えれば、2500語はあっという間に到達するはずです。これによって「言いたいことをすべて表現できる」状態が完成します。
2500語までは”自分が”話すための語彙でしたが、5000語は話し相手の内容を理解するために必要な語彙です。
言うまでもなくネイティブスピーカーの語彙力は2万~3万語程度ですが、その中で自ら”発信する”と想定されるのが5000語あるいは10000語であることを意味します。
彼らが2万の語彙力持ちながら5000語を話すように、我々は5000の語彙力を持ちながら2500語を話す、そんな状態を目指しましょう。
ボキャビルの施策
5000語を目指すための施策の例としては、以下のものが考えられます。
- 勉強をするようになったきっかけの説明できるようになる
- 自分の趣味のきっかけと魅力の説明できるようになる
- 自分の仕事を説明できるようになる
- 日本や日本人のことを説明できるようになる
- 相槌を網羅する
- ひたすら音楽を聴く
- ひたすらコメディー番組を観る
- ひたすら映画・ドラマを観る
- お気に入りで”””ストーリー・内容を把握している本”””の翻訳版を読む(例えばフランス語を勉強していてハリーポッターの内容を知っていればハリーポッターのフランス語版を読む、ということ)(知らないのに多読しちゃダメ、というか絶対に続かない)
おそらくこのうちのいくつかを実行することであなたの語彙力は5000語に到達し、また”全て”を実行すれば10000語に到達する可能性も高いです。
20000語レベルを目指すには政治・経済や最新の科学技術、人生哲学について”議論できる状態”へと向かうことになります。
つまり日本語でもそうした内容についてあまり話さないという人はこのレベルに到達する必要は無いでしょう。
まとめ
さて、単語学習の指針と道のりを概観してきました。
文中でも少し触れましたが学習の肝はやはりあなた個人の”外国語習得へのニーズ”にかかっています。
ある言語を用いてコミュニケーションをとる必要があるからこそ語学をする必要性が生まれます。
特定の内容についてその伝え方を知る必要があるから、その手段として単語や文法の学習をするのですね。
単語学習というとどうしても学生時代の無味乾燥な単語帳の暗記のイメージがつきまといますが、ボキャビルは本来的に楽しく、嬉しいと感じるはずのものです。
自分にとってどの単語・表現が必要なのか、今一度見直すことがあなたの単語力を迅速に伸ばすきっかけとなります。
基本の1000語程度までは誰もが必要とするので、なんとなく単語帳のマスターが当たり前のように感じてしまいます。
しかしそれ以上のレベルでは自分に必要な単語がわかって初めて「もしかしたらその分野がまとめられた単語帳があるのではないか」というアイデアが浮かび、単語帳の出番がやってくる。これが本来の流れであると心得ましょう。
もちろん、単語学習に移る前には発音とスペリングのマスターが不可欠です。
多少先を見据えていたほうがモチベーションの維持につながるのでそこまで順番を厳守しなくてもいいですが、発音の克服度に心当たりがあって少し単語が定着しづらいと感じるときにはぜひ発音の学習に戻られるとよいでしょう。
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