この教材を聞き流すだけで英語が話せるようになります!
スペイン語?簡単よ。CD聴いてるだけで話せるようになったもん
いますよねえこういう人。
でも逆にこんな人もよくいませんか?
聞き流すだけで話せるようになるなんて絶対嘘。信じちゃダメ。
留学してもちゃんと自分で勉強しないと上達しないぞ。
一体どっちが正しいんでしょうか?
本稿では
- 聞き流しが効果を発揮する条件
- そもそもなぜ聞き流すだけ神話が生まれ、しかも止まらないのか
について触れ、この論争に決着をつけます。
聞き流しが効果を発揮するには条件がある
条件1:偏見が無い
ここでいう偏見とはいわゆる差別のことではありません。
言語の学び方とそれを忘れない方法とその考え方でも書きましたが、母国語を習得した私たち大人には「言語とはこういうものである」というバイアスが脳みそ中に蔓延っているのです。
- 発音の種類
- 単語の作り方
- 文章の構成の仕方
- 文化背景
などに偏見があるんですね。
だからそのバイアスがかかった状態でただ聞き流しても、脳みそが「言葉」として受容できないので効果が出ません。
じゃあその偏見が無い人ってどんな人かと言えば「赤ちゃん」と「優秀な言語学者」だけです。
赤ちゃんは言うまでもなく真っ白なキャンバス状態ですし、言語学者は世界中の言語がどんな正体をしているか、未学習の言語であっても大体想像がつきます。
言語学者は
- 世界の言語に現れうる発音について知っていますし、
- 単語の形成や文構成ついて多くのパターンに慣れていますし、
- 多くの場合世界中の文化と歴史に精通している
ので、偏見はほとんど無い状態と言えます。
条件2:発音・単語・文法・文化にかなり精通している
「いやいや、学者でもなんでもないけど聞き流しだけで話せるようになった人を知ってるよ!」
そんな方もいるかもしれません。
それは対象言語の発音・単語・文法・文化についてとても詳しく知っていた場合でしょう。
他の多くの語学メディアでも書かれていることですが、十分な量のインプット=基礎の勉強が済んでいる場合には、たくさん聴いたりたくさん読んだりすることでさらに力を伸ばせます。
英語で言うとTOEIC900点以上、いや950点くらい取れてやっと、ただニュースを聞き流すだけとか、留学とかでなんとなく移住するだけでペラペラになれるということです。
聞き流すだけ神話はなぜ生まれ、しかも止まらないのか
言い出しっぺは欧米人
たとえ偏見があったとしても、学者じゃなくても、学校の成績が良くなくても、知っている場合があるんですね。
それは例えば
- 英語を勉強するオランダ人
- イタリア語を勉強するフランス人
だったりします。
つまり「<”勉強対象の言語”に似ている言葉>が母国語の人」、ということです。
これは一番極端な例でしたが、そうでなくても、
- スペイン語を勉強するアメリカ人
- 日本語を勉強する韓国人
あたりも聞き流すだけ勉強で案外上達します。
理由はもちろん、
発音・単語・文法・文化に精通しているから、ですね。
言い換えれば、TOEIC900点に相当するような基礎が最初から出来ている状態だから聞き流すだけでも「脳みそが言葉として受容できる」ので力が伸びるのです。
日本人のみなさんだって、大阪弁、結構真似できますよね?
あれは関東弁の知識によって大阪弁の大部分をカバーできているから「関西のお笑い番組をずっと見ていたら日常でも大阪弁が口をついて出るようになってしまった」なんてことが起こり得るんです。
「いやいやそれじゃ方言じゃないか」と。
「純ジャパでも聞き流すだけで話せるようになる言語なんか無いのかよ」と。
残念なことにほぼ無いです。
強いて言えば韓国語ですが、発音の壁によって韓国人が日本語を学ぶよりはもう少し難しい、くらいに思ってください。
そういうわけで、似たような言語を母国語とし交流も盛んなヨーロッパでは、聞き流すだけでもなんか話せるような気がしてしまう人が大勢います。
彼らの言葉は「印欧語族」といって、何千年も前はひとつの言語で、そこから派生しているので根幹が同じだから今でも似ているし、分かり合える気がしちゃうんですね。
日本でどれだけ「聞き流すだけじゃ英語話せるようにならないよ!」と叫び続けても、海の向こうから「そんなことないYO!Youたちも絶対できるよYO!」と言われてしまう。
これが聞き流すだけ神話が永遠に続くカラクリでした。
ちなみに、ハンガリーやアルバニアは別の語族なので、彼らはきっと苦労しているでしょう。
語族は同じだけどロシアはスラヴ語派だからゲルマン語派の英語はヘッタクソ。
それでも日本よりは交流が盛んで単語も文化も入り混じっていて、ハードルは幾分低い。
フィンランドも違う語族ですがゲルマン語派のスウェーデン語も使われるし、なんといっても教育の質が最高なので英語もお上手。
ヨーロッパの言語事情はそんな感じです。
言語と方言の境目はなにか
さて、日本人は韓国語が多少ラクにできるくらいで、あとは大阪弁で満足しようねみたいな話になってしまいました。
一方で、スペイン人はイタリア語をラクに覚えられる。
ここで浮かぶ疑問が、
「じゃあイタリア語ってスペイン語の方言なんじゃないの?」
あるいは
「じゃあ大阪弁って別の言語なんじゃないの?」
という見方もあるでしょう。
実は、AとBを違う言語とするか方言とするかの明確な線引きはありません。
- 明らかに通じない
- 別の国で別々の正書法が制定されている
あたりが境目になっているのが現状です。
語学習得から少し話が逸れますが、分け方の例を少し見てみましょう。
スペイン語とイタリア語
このふたつはある2人がそれぞれスペイン語とイタリア語を話していても8割程度通じ合える、少なくとも何の話題なのかは理解できる、と言われています。
例えば「私(は、が)」はスペイン語が「yo」でイタリア語が「io」です。そんなレベルで似ていて、確かに通じ合えそうですよね。
実際にそういうのを実演した動画がYoutubeでもいくつか見られます。
しかし、両者は当然それぞれの国で別々の正書法が制定されており、世界一般的にも別の言語という扱いになっています。
人によってはスペイン語はイタリア語の方言ではないかという主張も無くはないです。どちらも元はローマ帝国が地中海沿岸一帯を支配していたときにラテン語が定着して話されるようになった、フランス語やポルトガル語、ルーマニア語などとともにラテン語の子孫だからですね。
大韓民国の韓国語と北朝鮮の朝鮮語
当然この2つはほぼ完ぺきに通じ合えます。分かれたのがつい最近ですしね。
2つの国家(?)によって別々の正書法が制定されていますが、こちらは同一の言語として見られています。韓国側からすれば北朝鮮の言葉は平壌方言といったところ。
アクセントの違い以外だと、北朝鮮のほうが英語由来の単語を避けて固有語や漢字語あるいはロシア語由来の単語を使う傾向にあります。
脱北した人が韓国で暮らすのに困るのはデジタル用語で、車の運転免許をとろうにも試験問題に使われている言葉が分からず茫然としてしまう人もいるそうです。
また、ウズベキスタンに住んでいる朝鮮族の人々が話す言葉はコリョマル(高麗の言葉)と呼ばれておりこれも韓国語の一種ですが、ソウル方言話者との疎通はほぼ不可能です。
コリョマルの認知度が低いのと、韓国人以外から見れば同じような言葉なので同一視されがちですが、これはさすがに別の言語と言ってよいのではないかと私は思います。
日本の関東弁と津軽弁と琉球語
「弁」と呼んでいるくらいですから、津軽弁は日本語の一種、ひとつの言語の中での括りですよね。
しかしどうでしょう。津軽弁が聞き取れる東京人はほとんどいないのではないでしょうか。それでも国際的にはどちらも日本語です。
同じく沖縄の方言も非常に特徴的で東京人には理解できません。実は沖縄弁に関しては「琉球語」という呼び名で個別の言語であるという扱いを受けることもあります。
そういうわけで、先ほどは日本人が聞き流すだけで話せるようになるのは韓国語が少しと大阪弁くらいと言いましたが、津軽弁も琉球語も聞き流すだけできっと話せるようになるよ!!(シーン…)
実は日本みたいに、地域ごとの方言差が激しい国ってたくさんあるのです。
韓国語も済州島(韓国の南端)の方言はソウルの言葉とはだいぶ違うし、イタリア語もミラノ、ローマ、シチリア島、サルデーニャ島では結構差が激しいです。
ドイツ語のハノーファー、ミュンヘン、ウィーン、チューリッヒも然りです。
英語だって、アメリカ人はどこも似たような感じだけどイギリスのリヴァプールやマンチェスター、それからスコットランドの訛りがキツいことで有名ですよね。
こう考えるとただ通じ合えないだけで別の言語にしてしまうのはやはり軽率な気もするし、でもイタリア人はすぐにスペイン語はなせるようになっちゃうしなあと、考えが巡っていくわけです。
決着:スピードラーニングはダメ(知ってた)
要は、イタリア語ースペイン語間と東京弁ー津軽弁間で言えば、違いの大きさ自体は日本語の方言のほうが大きいのに、ひとつの言語とされている。それくらいの距離感、難易度感でもって欧米人は「聞き流すだけで話せるようになる」と豪語しているわけですね。
たしかにイタリア語とスペイン語は世界的な認識でも別の言語なのだから、この点は嘘ではないんです。
じゃあ日本人が聞き流すだけで英語やフランス語を話せるようになれるかと言ったら、それは当てはめられない。
発音も単語の要素・形成も文法も文化背景も全然違うので、聞き流すだけでは脳みそが言葉として受容できないし、その偏見を取り除くには適切な処置をひとつひとつ施していく必要があると。それが勉強なんですよと。
そのために当サイトでは言語習得の最短ルートを示し、かつ各言語ごとに読者のみなさんが楽しんで取り組めそうな参考書・アプリ・Webサービス・Youtube動画を紹介するようにしています。
ぜひ参考にして外国語を操りながら各々の時間を楽めるようになってもらえたら嬉しいです。
【余談】単語帳も文法書も使わずに外国語を覚える方法
なんか結局勉強しましょうねみたいな締めになってしまいましたが、
え?勉強したくない?単語帳なんて嫌?文法の話はもっと嫌?とにかく会話がしたい?
そんな方法あるわけ…(笑)
…あるんだなあそれが。
実は言語学の世界では、アフリカとかインドネシアの小さい島とか、南米アマゾンの奥地とかに住む部族が話している言葉を調査している人たちがいるんですね。
当然、未開の言語なので単語帳も文法書もそもそも存在しないわけです。
そこで言語学者たちが実際に使っている方法をご紹介します。
これを使えばあなたも単語帳も文法書もナシで外国語を話せるようになります。
まず、部族の人たちが知らなさそうな物を持参します。すると聞いてくるんですね…
ソレナニ?
って。
これを村中の人にやって「ソレナニ?」を習得します。
ソレナニを覚えたら、今度は自分も実際に使っていきましょう。
部族の人たちはきっと独特な文化を持っているでしょうから、きっときっと、あなたが見たことが道具とか食べ物をもっています。
そして「ソレナニ?」って自分で聞くんです。そしたら
「くぁwせdrftgyふjダヨ」と教えてくれるでしょう。おめでとうございます!あなたは外国語の単語をひとつ覚えました。
なにも、知らないものだけしか聞いちゃいけないわけじゃありません。
明らかに「いやこれどう見てもスプーンだな」みたいなものを指して「ソレナニ?」って聞けば、現地語のスプーンの言い方を学べるわけですね。
こんなことを繰り返して、言語学者たちは単語帳も文法書も使わずに新たな言語を習得し、むしろ自分で単語帳も文法書も辞書も作ってしまうのです。
実際にあなたが外国語を学ぶときには「ソレナニ?」とか「What do you say ~~ in your language」くらいはネットで覚えて、あとは現地の生活に溶け込んであれこれ聞きまくればOK。
不可能ではないと思います。実際に、もう「人からどう見られてるとか気にしないどころか、わかんない、認知できない」レベルで共感能力が低く外向的な人の中にはこの方法で外国語を習得している人もいるでしょう。
じゃあそれがラクなのかいえば、多くの人にとってラクではないし、「じゃあ単語帳使ったほうが早くない?」「文法書読めたら便利じゃない?」というアイデアが生まれて、結果的にみなさん勉強をしているというわけですね。
だからこそ、重ね重ねですが、当サイトではそのための効率的な手順と少しでも楽しめるようなコンテンツをするようにしています。
しかし、その「単語帳って必要なのだろうか?」「使わずに話せるようになる方法は無いのだろうか?」という視点は大事でもあります。
多くの場合単語帳も文法書も使って勉強してしまったほうが近道なのですが、それでも「話せるようになる」というゴールを強烈に意識しているからこそ出てくる視点だからですね。
目的がないのに勉強したって仕方ないし、勉強が目的になっては効率がガタ落ちします。脳みそは自分に必要な情報をインプットして、要らないものはノイズとして受容しないようにできているからです。
ではあらためて結論として、スピードラーニングをはじめとして聞き流すだけ教材はおすすめしません。
「話せるようになりたい」という気持ちは大きな武器ですが、それでも基礎知識のない脳みそは外国語を要らない刺激=ノイズとして処理してしまって、全くインプットされないという壁を絶対に越えられないからです。
当サイトでは
- 外国語習得の全体的な手順
- 発音の習得方法
- 単語の覚え方
- 文法の勉強方法
- 動詞の活用の覚え方
- 作文の練習方法
- 会話の練習方法
と、各言語ごとにおすすめの参考書・アプリ・Webサービス・Webサイト・Youtube動画を紹介していますので、ぜひ参考にして勉強を進めてみてください。
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