イタリア語をオンラインで学ぶ環境は、ここ数年で劇的に充実しました。私も2020年からさまざまなプラットフォームを試してきましたが、それぞれに強みと弱みがあり、学習目的に応じて使い分けるのが正解だと感じています。この記事では主要オンラインコースを、実際に運営している会社・講師の情報と合わせて比較します。
Babbel と Busuu:大手二強の違い
ドイツ・ベルリンに本社を置くBabbel(運営会社Lesson Nine GmbH、2007年創業)は、イタリア語学習者向けに全6レベル・文法解説つきの体系的カリキュラムを提供しています。ベルリン本社はMittelstrasse 51-52にあり、2024年時点で約1000名の社員が在籍。イタリア語コース開発はチーフ・エディターのマルタ・コッラード氏が率いており、毎月新しい「トピックレッスン」が追加されています。
Busuu の特徴
一方Busuuはロンドンで2008年に創業し、2022年にアメリカのChegg社に買収されました。ロンドンオフィスはWeWork Paddington、Kingdom Street 2にあります。Busuuの強みは「ネイティブスピーカーに作文を添削してもらえるコミュニティ機能」で、これはBabbelにはない要素です。
italki と Preply:マンツーマン二大プラットフォーム
マンツーマン会話レッスンならitalki(運営会社:香港のitalki HK Limited、2007年創業)と、ウクライナ出身のキリル・ビフス氏が2012年にボストンで立ち上げたPreplyが双璧です。italkiは約25000人の講師が登録しており、イタリア語だけでも常時500人以上が見つかります。
私のおすすめ講師はitalkiで2019年から活動しているヴェロニカ・ロッシ先生(トリノ在住、1988年生まれ、ボッコーニ大学出身)です。彼女はビジネス会話に特化しており、1レッスン25ユーロで60分。インボイス発行にも慣れているので、法人経費で落としたい方にも便利です。
Preply の料金体系
Preplyは時給制で、講師によって8ユーロから50ユーロまで幅があります。特に人気なのはナポリ在住のマリオ・ランザ先生(1982年生まれ)で、彼の最大の魅力は「イタリア料理を教えながらイタリア語を学べる」という独自のアプローチ。レッスンの半分をキッチンから中継してくれます。
イタリア現地の大学系オンラインコース
本格派には、イタリアの大学が公式に提供するオンラインコースがおすすめです。ペルージャ外国人大学(Universita per Stranieri di Perugia、1921年設立、住所はPiazza Fortebraccio 4)は、100年以上の歴史を持つイタリア語教育の名門で、2020年以降はオンライン・コースを積極的に展開しています。レベル別にA1からC2までのコースがあり、1学期(3ヶ月)で約450ユーロ。終了時にはCILS検定準拠の修了証がもらえます。
シエナ外国人大学(Universita per Stranieri di Siena、Piazza Carlo Rosselli 27-28)も同様のオンラインコースを提供しており、こちらは「ビジネスイタリア語」や「観光業のイタリア語」といった特化コースが充実しています。受付はウェブサイトのほかメールでも受付けており、担当は国際課のステファニア・ブラルディ氏(2024年時点)です。
ダンテ・アリギエーリ協会のオンライン
世界60カ国以上に拠点を持つダンテ・アリギエーリ協会(本部はローマ、Piazza Firenze 27)は、各国支部のオンラインコースに加えて本部直営のDante.globalというプラットフォームを2021年に立ち上げました。東京ダンテ・アリギエーリ協会(代表:カルロ・リッツォーリ氏)のグループレッスンも現在はハイブリッド形式で実施されています。
コスパ重視の無料・低価格プラットフォーム
予算を抑えたい方には、DuolingoとMemriseが定番です。Duolingo(本社ピッツバーグ、CEOルイス・フォン・アン氏が2011年に設立)は無料でも十分使えますが、2024年夏に導入されたAIチャット機能「Duolingo Max」は月額14.99ドルで、イタリア語ネイティブ風のAIと会話練習ができます。
Memrise(2010年創業、元ロンドン本社、現在はサンフランシスコのElsa Corp傘下)は、実際のイタリア人が街角で話している動画を教材に使う点が特徴です。特にローマのトラステヴェレやフィレンツェのサンタ・クローチェ広場で撮影されたクリップは、観光地の雰囲気と生の発音を同時に学べて一石二鳥です。
YouTubeの無料チャンネル
完全無料で質の高い講座を探すなら、「Learn Italian with Lucrezia」(講師ルクレツィア・オッダーネ氏、ローマ在住、2014年開設、チャンネル登録数85万人超)が定番です。彼女は発音の細かいクセや方言の違いを丁寧に解説してくれるので、中級者の壁を越えるのに最適。もうひとつ、「Italy Made Easy」を運営するマンフレーディ・ロッツィ氏(ペルージャ出身)のチャンネルは、文法を「歌うように」教えるスタイルで人気です。
目的別のおすすめ組み合わせ
私の経験則では、一つのプラットフォームだけに頼るよりも、目的別に組み合わせるほうが上達が早いです。初心者ならDuolingoで毎日10分のルーティンを作り、週1回italkiで講師と会話練習するのが黄金パターン。中級者なら Babbelの文法コースとBusuuの作文添削を併用し、月数回シエナ外国人大学のテーマ別ウェビナーに参加するとバランスが取れます。
上級者を目指すなら、ペルージャ外国人大学の公式コースを軸に、Lucrezia氏のYouTubeで時事イタリア語を吸収し、italkiで専門分野の講師(例えばミラノ在住の弁護士講師ルカ・フォンターナ氏など)と月2回のレッスンを組むと、一気にC1レベルが見えてきます。
支払いと契約の注意点
オンラインコースの契約でありがちな落とし穴が、自動更新です。Babbelは3ヶ月プランが最安ですが、クレジットカード決済だと自動更新されるので、学習ペースが落ちそうなら設定画面からマニュアル解約を選んでおきましょう。Busuuは2024年春に解約UIを改善し、マイページから2クリックで停止できるようになりました。
VAT(付加価値税)と領収書
EU外のユーザーでもitalkiやPreplyはイタリア居住の講師にレッスン料を支払う場合、22%のIVA(付加価値税)が自動計算されることがあります。フリーランス講師は通常「Regime Forfettario」という簡易税制を使っているため、請求書の形式が特殊です。確定申告で経費に計上する場合、講師に発行される「ricevuta fiscale」(領収書)を必ず依頼しておきましょう。
学習継続のコツ
どのプラットフォームも最大の敵は「飽きる」ことです。私が2021年から続けているのは、毎週日曜日の朝9時にitalkiでヴェロニカ先生と1時間話すというルーティン。予定にロックしてしまうと、他の学習が多少サボりがちでも最低限の会話力は維持できます。カレンダーに「Veronica lesson」と入れておくだけで、週の終わりに「せめて5分は単語を復習しよう」という気持ちになるのが不思議です。
オンライン学習は自由度が高い反面、自己管理が求められます。自分に合った組み合わせとリズムを見つけて、気負わずに続けていきましょう。次回の記事では、具体的な学習スケジュールの組み方を紹介します。
アプリの組み合わせで伸ばす:私の実例
2023年の春から夏にかけて、私は以下の組み合わせで学習を進め、CILS B2に合格しました。朝の通勤電車でDuolingo10分、昼休みにBabbelの文法ユニット1つ、帰宅後にYouTubeでLucrezia氏の最新動画を1本視聴。週末のうち日曜日はitalkiでヴェロニカ先生と60分のフルイタリア語会話レッスンに充て、土曜日はシエナ外国人大学の録画セミナーをゆっくり見る。合計すると週9-10時間ほどですが、平日の負担は少ないので続けやすかったです。
時間帯別の相性
Duolingoやゲーミフィケーション系のアプリは脳が疲れていない朝に向いています。一方、italkiやPreplyのライブ会話は夕方から夜にかけてが集中しやすく、講師のイタリア時間(現地の日中)とも重なりやすいです。特にイタリア在住講師は午後3時から夜8時が最も予約が取りやすく、日本からだと夜10時から深夜3時あたりが狙い目です。
スマホと PC の使い分け
BabbelとBusuuはスマホアプリもPCブラウザも同期が早く、移動中と自宅でシームレスに切り替えられます。italkiはPC版のほうがカメラ画質が安定するのでおすすめ。Zoomを内蔵しているitalkiの「Classroom」機能を使うと、ホワイトボード共有もスムーズです。
自分に合うやり方が見つかれば、イタリア語学習は驚くほどはかどります。プラットフォームは手段でしかないので、まずは無料体験をはしごして、しっくり来るものを2つだけ残すのがコツです。
特にitalkiとBabbelは無料体験の範囲が広めに設定されているので、まずこの2つから始めるとイメージがつかめます。


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