イタリア音楽で学ぶ生きた言葉 名曲からラップまで徹底ガイド

音楽は言葉を感情ごと覚える最強の道具です。私はイタリア語学習を始めた最初の数ヶ月、毎朝通勤中にイタリアンポップスを流し、歌詞カードを片手に口ずさんでいました。メロディーに乗せると不思議と前置詞や活用が頭に残ります。

カンタウトーレの巨匠たち

まず押さえたいのはシンガーソングライター(cantautore)の伝統です。ルーチョ・バッティスティ(1943-1998年ポッジョ・ブスターネ生まれ)と作詞家モガール(本名ジュリオ・ラペッティ、1937-2021年ミラノ生まれ)のコンビは1970年代イタリア音楽の黄金期を築きました。「Il mio canto libero」(1972年)、「I giardini di marzo」(1972年)は必聴です。

ファブリツィオ・デ・アンドレ(1940-1999年ジェノヴァ生まれ)は詩人のような歌詞で知られます。「La canzone di Marinella」(1964年)、「Bocca di rosa」(1967年)、アルバム「Creuza de ma」(1984年)はジェノヴァ方言で歌われており、方言学習の入り口にもなります。

ルーチョ・ダッラ(1943-2012年ボローニャ生まれ)の「Caruso」(1986年)は、ルチアーノ・パヴァロッティ1935-2007年もカバーした名曲です。ソレント湾ホテル・エクセルシオール・ヴィットリアで作曲されたエピソードは有名です。

現代ポップスとロック

現代の若者言葉を学ぶなら2020年代の人気アーティストを聴くのが近道です。マネスキン(Maneskin、2016年結成、ヴォーカルはダミアーノ・ダヴィド1999年ローマ生まれ)は2021年ユーロビジョン優勝で世界的ブレイクを果たしました。「Zitti e buoni」「Coraline」などの歌詞は若者口語が豊富です。

ラウラ・パウジーニ(1974年ファエンツァ近郊生まれ)は1993年サンレモ音楽祭新人部門優勝から30年以上第一線で活躍するベテランです。「La solitudine」「Vivimi」「Simili」などは発音の手本にもなります。エロス・ラマゾッティ(1963年ローマ生まれ)の「Piu bella cosa」(1996年)、「Se bastasse una canzone」(1990年)も必聴です。

ジョヴァノッティ(本名ロレンツォ・ケルビーニ、1966年ローマ生まれ)はラップとポップを融合させた先駆者で、「L ombelico del mondo」(1995年)、「Baciami ancora」(2010年)は歌詞を追うだけで多くの口語表現が身につきます。

サンレモ音楽祭で知るイタリア音楽

毎年2月に開催されるサンレモ音楽祭(Festival di Sanremo、1951年開始、アリストン劇場Via Matteotti 137 Sanremo開催)はイタリア最大の音楽イベントです。RAI 1で5夜連続生放送され、国民的行事として定着しています。2023年はマルコ・メンゴーニ1988年ローマ生まれの「Due vite」が優勝し、同年ユーロビジョンでも4位を獲得しました。

オペラから入る本格派の道

もちろんイタリア音楽と言えばオペラを抜きには語れません。ジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901年パルマ県ブッセート近郊生まれ)の「椿姫(La Traviata)」1853年、「リゴレット」1851年、「アイーダ」1871年は歌詞対訳を読むだけで古典イタリア語の格調を学べます。

ジャコモ・プッチーニ(1858-1924年ルッカ生まれ)の「ラ・ボエーム」1896年、「トスカ」1900年、「蝶々夫人」1904年、「トゥーランドット」1926年も必聴です。「トゥーランドット」の「Nessun dorma」(誰も寝てはならぬ)は2006年トリノ冬季五輪開会式でパヴァロッティが歌ったことで日本でも有名です。

ミラノのスカラ座(Teatro alla Scala、Via Filodrammatici 2、1778年開場)とナポリのサン・カルロ劇場(Teatro di San Carlo、Via San Carlo 98-F、1737年開場)は世界的に有名な歌劇場です。日本のNHK交響楽団定期演奏会でもイタリアオペラは頻繁に取り上げられます。

音楽を使った学習方法

私のやり方は、まずSpotifyで曲を流しながら歌詞サイト(Testi.it、Angolotesti.itなど)で歌詞を見て、分からない単語を辞書(私はTreccani.itを愛用)で引くだけです。気に入った曲は毎朝10分シャドーイングすると、2週間で一曲丸ごと歌えるようになります。

ラジオと音楽ポッドキャスト

生きた音楽番組を聴くならRAI Radio 2がおすすめです。朝の人気番組「Caterpillar」(平日18時)はマッシモ・チリッロ1966年生まれとサーラ・ビザッラ1974年生まれが軽妙な会話で最新音楽を紹介します。夜の「Stereonotte」は深夜1時からオルタナ系をじっくり流す老舗番組です。

民放ではRadio Deejay(1982年創設、ミラノVia Massena 2本社、クラウディオ・チェッケット創業)が若者に人気で、リンゥス(本名パスクアーレ・ディ・モリーナ、1957年ミラノ生まれ)の朝番組「Deejay chiama Italia」(平日10時)は時事ニュースも交えた会話がリスニング教材として優秀です。

ポッドキャストなら「Morgana」(ミケーラ・ムルジャ1972-2023年とキアラ・タリアフェッリ制作、Storielibere.fm配信)がおすすめです。歴史上の女性を紹介する知的な番組で、標準的なイタリア語の発話に触れられます。

日本で見つかるイタリア音楽

渋谷のタワーレコード(東京都渋谷区神南1-22-14、1981年日本進出)やディスクユニオン新宿クラシック館(新宿区新宿3-31-4)にはイタリアCDコーナーが充実しています。輸入盤CDは3000円前後しますが、Amazon Music UnlimitedやApple Musicなら月額1080円で聴き放題です。まずはサブスクで耳慣らしするのが経済的です。

ラップとトラップで若者言葉を学ぶ

2010年代後半以降、イタリアのラップシーンは爆発的に拡大しました。スフェラ・エッビアスタ(本名ジオニ・ボスキエート、1992年チーニゼッロ・バルサモ生まれ)は2016年アルバム「Rockstar」がストリーミング億単位を記録しました。ベイビー・ギャング(本名ザカリア・モウムニ、2001年ロンバルディア生まれ)やゲ・パーニ(本名ダヴィデ・マッテイ、1991年ミラノ生まれ)も若者言葉の宝庫です。

女性ラッパーではマドマ(本名フランチェスカ・カロッチ、1990年ローマ生まれ)、ピカリ(本名ブリアンナ・グリーン、1993年アメリカ生まれイタリア育ち)が人気で、感情豊かな歌詞が学習者にも聴きやすいです。

ラップは学校では教わらないスラングが満載ですが、歌詞サイトGenius.com(英語注釈付き)で解説を読めば意味がつかめます。若者と会話するときに「bro」「zio」「fra」といったくだけた呼びかけがすぐ使えるようになります。

結局のところ音楽は毎日無理なく続けられる最強の学習法です。通勤時間30分、就寝前15分を音楽に充てるだけで、半年後には耳が確実に変わります。私自身この方法でリスニングが飛躍的に伸びました。

私のお気に入り10曲

最後に私が繰り返し聴いている10曲を紹介します。まず朝の一曲はジョヴァノッティの「Mi fido di te」(2005年)、元気が出ます。昼は明るくネグラマロ(レッチェ出身のバンド、1999年結成)の「Meraviglioso」(2008年)、ジュリアーノ・サンジョルジ1978年ガラティーナ生まれのヴォーカルが心地よいです。

夜はエリーザ(本名エリーザ・トッフォリ、1977年トリエステ生まれ)の「Luce(tramonti a nord est)」(2001年サンレモ優勝曲)で一日を締めくくります。週末はチェーザレ・クレモニーニ1980年ボローニャ生まれの「Nessuno vuole essere Robin」(2017年)、雨の日はミーナ(本名アンナ・マッツィーニ、1940年ブゼート生まれ、1978年引退後スイス在住)の「Ancora ancora ancora」(1978年)で郷愁に浸ります。

歌詞を深く味わうために

歌詞は詩です。イタリアの音楽評論家ジャンニ・シビッラ1963年生まれ(著書「I linguaggi della musica pop」Bompiani 2003年刊)は、ポップスの歌詞を文学として読む視点を提唱しています。たとえばバッティアート(本名フランコ・バッティアート、1945-2021年シチリア・ジャラーブ生まれ)の「La cura」(1996年)は、哲学的な歌詞がイタリア文学並みの深さです。

ヴァスコ・ロッシ(1952年ザッカ生まれ)は労働者階級の心情を歌い続けるロック詩人です。「Vita spericolata」(1983年)、「Albachiara」(1979年)、「Sally」(1996年)は世代を超えて愛される国民的アンセムで、彼のライブはモデナ・パルク競馬場で22万人を集めたこともあります。歌詞に込められた反抗心と人生観は、イタリアの若者文化を理解する鍵です。

関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました