オランダで起業する オランダ語で学ぶスタートアップの全手順

オランダで起業する オランダ語で学ぶスタートアップの全手順

オランダは世界銀行のEase of Doing Businessランキングで常に上位にランクされ、起業しやすい国として知られています。EU加盟国の中でも法人設立手続きが簡素で、外国人でも比較的容易に会社を設立できます。ここではオランダでの起業に必要なオランダ語の知識と実務手順を詳しく解説します。

会社設立の基本手順

法人形態の選択

オランダで最も一般的な法人形態はBV(besloten vennootschap met beperkte aansprakelijkheid、有限責任会社)です。2012年のFlex-BV法(Wet vereenvoudiging en flexibilisering bv-recht)施行により、最低資本金の要件が撤廃され、1ユーロから設立可能になりました。NV(naamloze vennootschap、株式会社)は上場企業や大企業向けで、最低資本金45000ユーロが必要です。

個人事業主はeenmanszaak(一人会社)、パートナーシップにはVOF(vennootschap onder firma、合名会社)やmaatschap(組合)があります。協同組合はcooperatie(コーペラティー)で、Rabobank(1972年設立)やFrieslandCampina(2008年合併、本社アメルスフォールト)がこの形態を採用しています。notaris(公証人)が設立証書(oprichtingsakte)を作成し、KvK(Kamer van Koophandel)への登録で法人が成立します。

KvK登録と各種届出

KvK(商工会議所)はオランダの企業登記を一元管理する機関で、全国に地方事務所があります。登録にはKvK-nummer(商工会議所番号)が付与され、これが企業の公式識別番号となります。同時にBelastingdienst(税務署)からbtw-nummer(付加価値税番号)とLBnummer(給与税番号)が発行されます。

銀行口座開設はzakelijke bankrekening(ビジネス口座)として、ING Bank、ABN AMRO、Rabobank、またはフィンテック系のBunq(2012年アムステルダム設立、創業者Ali Niknam、1981年生まれ)やKnab(2012年設立、ASR Nederland傘下)で可能です。オンラインバンキングのTriodos Bank(1980年設立、ゼイスト、サステナブルバンキングの先駆者)も起業家に人気です。

スタートアップエコシステム

インキュベーターとアクセラレーター

アムステルダムはヨーロッパ有数のスタートアップハブで、数多くのインキュベーターやアクセラレーターが活動しています。Startupbootcamp(2010年設立、アムステルダム/ロンドン)はフィンテック・ヘルスケア・スマートシティなどの分野で支援プログラムを提供しています。HighTechXL(2015年設立、アインドホーフェン)はハードテック・ディープテック分野に特化しています。

YES!Delft(2005年設立、デルフト工科大学隣接)はテクノロジースタートアップを支援し、これまでに350社以上を輩出しました。UtrechtInc(2009年設立、ユトレヒト大学連携)やACE Venture Lab(アムステルダム大学/VU連携)も大学発スタートアップの育成に貢献しています。co-working space(コワーキングスペース)はオランダ語でもそのまま使われ、WeWork Amsterdam(Weteringschans 165)やSpaces(Regus傘下、アムステルダム発祥)が代表的です。

資金調達の段階と用語

スタートアップの資金調達はfunding rondes(資金調達ラウンド)と呼ばれ、seed-fase(シード段階)、Serie A、Serie B…と進みます。engel investeerder(エンジェル投資家)はビジネスの初期段階で個人資金を投入する投資家で、Leapfunder(2012年アムステルダム設立)はオランダのエンジェル投資プラットフォームとして知られています。

クラウドファンディングはcrowdfundingとしてオランダでも定着しており、Oneplanetcrowd(2012年ユトレヒト設立、サステナブルプロジェクト特化)やVoordekunst(2010年設立、文化芸術特化)が主要プラットフォームです。政府系の資金調達としてはInvesterings- en Ontwikkelingsmaatschappij voor Noord-Nederland(NOM、1974年設立)やBrabantse Ontwikkelings Maatschappij(BOM、1983年設立)などの地域開発公社も重要な役割を果たしています。

事業運営の実務

許認可と業界規制

業種によってはvergunning(許可)やcertificering(認証)が必要です。飲食業ではDrank- en Horecawet(酒類飲食業法)に基づくhorecavergunning(飲食業許可)が必須で、市町村(gemeente)が発行します。建設業ではomgevingsvergunning(環境許可、旧bouwvergunning)が必要です。

食品業界ではNVWA(Nederlandse Voedsel- en Warenautoriteit、オランダ食品消費者製品安全庁、2012年設立、ユトレヒト)がHACCP認証の監査を行います。医療分野ではIGJ(Inspectie Gezondheidszorg en Jeugd、医療青少年監督局)が品質管理を担当しています。

保険と事業継続

事業保険はbedrijfsverzekeringと総称され、aansprakelijkheidsverzekering bedrijven(AVB、事業者賠償責任保険)、bedrijfsschadeverzekering(事業中断保険)、inventarisverzekering(設備保険)が基本三保険です。オランダの主要損害保険会社としてAchmea(1811年設立、ゼイスト)、NN Group(2014年ING Groupから分離、ハーグ)、ASR Nederland(2008年Fortis Verzekeringenから独立、ユトレヒト)があります。

知的財産の保護では、handelsnaam(商号)はKvK登録で保護され、merk(商標)はBOIP(Benelux-Bureau voor de Intellectuele Eigendom、ハーグ)への登録が必要です。octrooi(特許)はRVO.nl経由でEPO(European Patent Office、本部ミュンヘン、支局リスワイク)に申請します。事業計画書はondernemingsplan(アンダーネーミングスプラン)と呼ばれ、KvKが無料のondernemingsplan-toolをオンラインで提供しており、起業準備に活用できます。

オランダのフリーランス文化

ZZP’erとしての働き方

オランダにはzzp’er(zelfstandige zonder personeel、従業員なし自営業者)として働くフリーランスが約120万人おり、労働人口の約13%を占めています。IT、クリエイティブ、コンサルティング、建設、医療など幅広い分野でzzp’erが活躍しています。フリーランス向けプラットフォームとしてはFreelance.nl(アムステルダム)やHeadFirst Group(2000年設立、ハウテン)が主要です。

zzp’erにとって重要な税務概念がondernemersaftrek(事業者控除)で、zelfstandigenaftrek(自営業者控除、2025年時点で年間3750ユーロ)、startersaftrek(起業者控除、最初の3年間追加2123ユーロ)、mkb-winstvrijstelling(中小企業利益免除、利益の13.31%が非課税)が含まれます。modelovereenkomst(モデル契約書)はBelastingdienst(税務署)が承認した業務委託契約のひな形で、schijnzelfstandigheid(偽装フリーランス)を防ぐために利用されます。

国際起業家へのサポート

Netherlands Foreign Investment Agency(NFIA、1978年設立、ハーグ)は外国企業のオランダ進出を支援する政府機関です。Amsterdam InBusiness(アムステルダム経済委員会傘下)、Rotterdam Partners(ロッテルダム)、The Hague Business Agency(ハーグ)などの地域経済開発機関も、無料のvestigingsadvies(進出アドバイス)を提供しています。

日本企業のオランダ進出ではJETRO Amsterdam(日本貿易振興機構アムステルダム事務所、World Trade Center Amsterdam, Strawinskylaan 1)が情報提供と支援を行っています。オランダ日本商工会議所JCC(Japanese Chamber of Commerce and Industry in the Netherlands、1992年設立)もネットワーキングの場として活用できます。

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