オランダ旅行の王道ルートから一歩踏み出して、北部のフリースラント州とフローニンゲン州を訪れてみませんか。独自の言葉と風景と文化を持つこの地方は、観光客がまだ少なく、のんびりした旅ができる穴場です。
この記事では、オランダ北部の魅力と、フリジア語という第二の公用語、そして旅行の実用情報をまとめます。
フリースラント州の概要
独自の言語と文化
Fryslân(フリースラント、人口約66万人)はオランダ北部にある州で、州都はLeeuwarden(レーワルデン、人口約12万人)です。オランダ語に加えてFrysk(フリジア語)が公用語として認められており、道路標識も二言語表記です。
フリジア語はオランダ語と英語の中間に位置する西ゲルマン語の一つで、オランダ語話者でも完全には理解できない別の言語です。Afûkという団体(1928年設立、レーワルデン本部)がフリジア語の保護と教育を担っています。
Leeuwarden 文化首都
Leeuwardenは2018年に欧州文化首都(European Capital of Culture)に選ばれ、多くの文化施設が整備されました。Fries Museum(フリース博物館、1881年創立、現在の建物は2013年開館)はフリジアの歴史、芸術、文化を網羅的に展示しています。
レーワルデンはまたMata Hari(1876年レーワルデン生まれ1917年パリで銃殺)の故郷でもあります。博物館には彼女の生涯を辿る展示があり、スパイとしての伝説と実像に触れられます。近くの旧市街には彼女の生家も残っています。
Oldehove と斜塔
Oldehoveは16世紀初頭に建設が始まったものの、地盤沈下で傾き、完成を断念した未完の教会塔です。ピサの斜塔と比較される約1.8度の傾斜で、レーワルデンの象徴として愛されています。上まで登れて、街とその先のフリースラント平原が見渡せます。
ワッデン海と諸島
Waddenzee
Waddenzee(ワッデン海)はオランダ北部から北海沿岸をデンマーク西岸まで続く干潟海域で、2009年にユネスコ世界自然遺産に登録されました。干潮時には広大な泥の干潟が姿を現し、Wadlopen(泥地歩き)という独特のアクティビティが楽しめます。
ガイドツアーで半日かけて干潟を歩く体験は、他では味わえない忘れがたい時間になります。Wadlopencentrum Pieterburen(フローニンゲン州)が代表的な主催団体です。
Waddeneilanden 五つの島
ワッデン海に点在する有人の島は南西から順に Texel(テセル/北ホラント州)、Vlieland(フリーラント)、Terschelling(テルスヘリング)、Ameland(アメラント)、Schiermonnikoog(スヒアモニコーフ)の五つです。フリースラント州に属するのは Vlieland、Terschelling、Ameland、Schiermonnikoog の四島で、いずれもハルリンゲン(Harlingen)やホルウェルト(Holwerd)といった本土の港から Rederij Doeksen(1908年創業)や Wagenborg Passagiersdiensten のフェリーで渡ります。
Terschelling(面積約88平方キロ)は毎年6月に Oerol Festival(1982年開始)という島全体を舞台にした野外芸術祭が開かれることで知られています。砂浜、松林、古い納屋までもが劇場になり、オランダ中から観客が集まります。
Ameland の Hollum 灯台(1880年)は高さ55メートルの赤い塔で、階段236段を登ると北海とワッデン海を一望できます。Schiermonnikoog は1989年に国立公園に指定された最も静かな島で、自動車の乗り入れが原則禁止されているため自転車で巡るのが定番です。
フローニンゲン州と州都フローニンゲン
Groningen 学生の街
Groningen(フローニンゲン)は人口約23万5千人、州人口の半数以上が集まる北部最大の都市です。学生比率が全人口の約4分の1を占める若い街で、Rijksuniversiteit Groningen(1614年創設、オランダで2番目に古い大学)と Hanzehogeschool Groningen を中心に自転車とカフェの文化が根付いています。
街の象徴 Martinitoren(マルティーニ塔)は15世紀に建てられた高さ約97メートルの鐘楼で、市民からは親しみを込めて d’Olle Grieze(老いた灰色)と呼ばれています。隣接する Martinikerk(マルティーニ教会)はもとは13世紀の建物で、内部には15世紀のフレスコ画が残っています。
Grote Markt(中央広場)から徒歩5分の Groninger Museum(1874年創設/現在の建物は1994年開館)は、イタリア人デザイナー Alessandro Mendini(1931-2019)を中心に Philippe Starck や Coop Himmelb(l)au が参加した奇抜な建築で知られ、De Ploeg(1918年結成の地元表現主義グループ)のコレクションが充実しています。
食文化では Groninger koek(黒糖入りのしっとりしたスパイスケーキ)、Eierbal(茹で卵をラグーと衣で包んだ揚げ物、1960年代フローニンゲン発祥説が有力)が地元定番。街の中心 Vismarkt にある De Drie Gezusters は1877年創業、一軒でヨーロッパ最大級とされるカフェ・バー複合店です。
フローニンゲン郊外と歴史村
州内にはオランダ有数の天然ガス田(1959年発見の Slochteren ガス田)があった一方、近年は地震被害の記憶と再生の風景が共存しています。Bourtange はドイツ国境近くにある星形の要塞村で、1593年に Willem van Oranje の命で築かれ、1960年代に17世紀の姿に復元されました。放射状の堀と土塁が美しく、歴史好きにはたまらないスポットです。
Pieterburen(ピーテルビューレン)には Zeehondencentrum(アザラシ保護センター、1971年設立)があり、ワッデン海で保護されたアザラシのリハビリを間近で見学できます。ここは先述の Wadlopen の出発地としても有名です。
レーワルデンと小さな町めぐり
フリースラント州都 Leeuwarden(レーワルデン、フリジア語 Ljouwert)は人口約12万5千人、2018年には欧州文化首都に選ばれました。Oldehove(1529年着工、未完のまま傾いたまま残る塔、傾斜約1.8度)、Fries Museum(1881年設立/現在の建物 Wilhelminaplein 92 は2013年開館、建築 Hubert-Jan Henket)、Mata Hari(本名 Margaretha Geertruida Zelle、1876年Leeuwarden生-1917年パリ没)の生家跡 Kelders 33 が見どころです。
近郊の Hindeloopen(ヒンデローペン)は17世紀の海運で栄えた町で、独特の花模様を描いた Hindelooper schilderkunst(家具彩色)で知られます。Sneek(スネーク、フリジア語 Snits)は帆船文化の中心地で、毎年8月第1週の Sneekweek(1934年開始)ではスキュトシャ(skûtsje、フリジア伝統帆船)の熱いレースが繰り広げられます。
旅で使えるオランダ語フレーズ
フェリーと自転車
港の窓口では「Eén retour naar Terschelling, alstublieft.(テルスヘリング往復1枚お願いします)」が定番です。出発時刻を確認するなら「Hoe laat vertrekt de volgende boot?(次の船は何時に出ますか)」、自転車を積みたい場合は「Ik wil mijn fiets meenemen. Kost dat extra?(自転車を持ち込みたいのですが追加料金はかかりますか)」と尋ねます。島でレンタサイクルを借りるなら「Ik wil een fiets huren voor een dag.(1日自転車を借りたいです)」と伝えれば通じます。
フローニンゲンのカフェで
カフェでコーヒーを頼むなら「Mag ik een koffie verkeerd, alstublieft?(カフェラテをください)」。Groninger koek を試したいときは「Heeft u ook Groninger koek?(フローニンゲン風のスパイスケーキはありますか)」。地元料理を聞くには「Wat is een lokale specialiteit hier?(このあたりの名物料理は何ですか)」が便利です。会計時は「De rekening, alstublieft.(お会計をお願いします)」で締めくくります。
フリジア語にふれる
フリースラント州ではオランダ語と並んで Frysk(フリジア語)が公用語です。挨拶だけでも覚えておくと地元の方が驚くほど喜んでくれます。Goeiemoarn(おはよう)、Tankewol(ありがとう)、Oant sjen(またね)の三つはぜひ試してみてください。Afûk(1928年創立、Boterhoek 3, Leeuwarden)はフリジア語の教材出版と講座で有名な機関です。
まとめ 北部の静けさを味わう旅へ
アムステルダムやロッテルダムの賑わいもオランダの顔ですが、フリースラントとフローニンゲンが見せてくれる広い空、干潟に沈む夕日、フリジア語のあいさつは、もうひとつのオランダを教えてくれます。列車と自転車とフェリーを乗り継ぎ、ゆっくりと時間を過ごすだけで語学学習のモチベーションもぐっと高まります。次の長期休暇にはぜひ北を目指してみてください。


コメント