バルト海の宝石|スウェーデン諸島へ
スウェーデンはスカンジナビア半島東岸の国ですが、バルト海には美しい島々が点在します。中でも Gotland(ゴットランド島)と Öland(エーランド島)はスウェーデン人の憧れの夏の楽園で、独特の歴史・自然・食文化が味わえます。
本記事では、この2つの島を中心に、バルト海のスウェーデン諸島の魅力を紹介します。行くなら絶対に夏(6〜8月)、これは譲れない条件です。
ゴットランド島|中世とラベンダーの島
基本データ
スウェーデン最大の島で、面積3,184平方km、人口約6万人。ストックホルムから高速フェリーで約3時間、飛行機で約30分。中心都市はVisby(ヴィスビュー)。夏は観光客で人口が3倍に膨れ上がります。
ヴィスビュー旧市街|世界遺産
1995年にユネスコ世界文化遺産に登録された中世都市。13世紀にハンザ同盟の重要拠点として栄え、当時の城壁(Ringmuren、全長3.4km、44の塔が現存)と石造りの家々がほぼ完全な形で残っています。
旧市街には1200年代に建てられた教会廃墟が10以上点在し、特にSt. Karin教会跡とSt. Nicolai教会跡は夏の野外演劇の会場として使われます。ヨーロッパ屈指の中世都市景観です。
Medeltidsveckan(中世週間)
毎年8月の第1週に開催される中世祭りで、1984年開始。街中の住民が中世衣装で過ごし、騎士の馬上槍試合、吟遊詩人の演奏、中世料理の屋台が並びます。タイムスリップ感覚が味わえる稀有なイベントで、ヨーロッパ中から数万人が集まります。
ストラ・カールスエー
ゴットランド西岸沖の小島で、Stora Karlsö は1880年に自然保護区に指定された、世界で2番目に古い自然保護区です(1番は米イエローストーン)。海鳥の大繁殖地で、シロカモメやウミガラスの営巣が間近に観察できます。
ラウク|石灰岩の巨人
Langhammars(ゴットランド北部)には、rauk と呼ばれる石灰岩の柱状侵食地形が林立します。何万年もの浸食で形成された奇岩群で、ベルイマン監督の「Vargtimmen(狼の時刻、1968)」のロケ地としても有名です。
グローガルナのラベンダー畑
7月にはゴットランド各地でラベンダーが咲き、フランスのプロヴァンスを彷彿とさせる紫の絨毯が広がります。写真撮影スポットとして近年人気急上昇中です。
エーランド島|女王の休日の地
基本データ
スウェーデン第2の島で、面積1,342平方km、人口約2.5万人。本土のKalmarと6km強の Ölandsbron(エーランド大橋、1972年開通、全長6,072m)で繋がっています。車・バス・自転車でアクセス可能。
王室の夏の離宮 Solliden
1906年建築の王室離宮で、毎年7月14日(シルビア女王の誕生日、1943年生まれ)に王族が滞在中の公式写真撮影会が開かれます。庭園は夏季一般公開され、イタリア式・オランダ式の整形庭園が見られます。
ボリホルム城跡
Borgholms slottsruin は17世紀のバロック様式の城の廃墟で、壮大な石造建築が青空に映える絶景スポット。夏には城跡を会場としたロックコンサートも開催されます。
ストラ・アルバレ|世界遺産の草原
Stora Alvaret はエーランド島南部に広がる石灰岩台地で、2000年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。薄い土壌に独特の植生が育ち、ヨーロッパ最大級のアルバー(石灰岩草原)生態系です。
オウチュウやフクロウなど希少な鳥類の観察ポイントとしても知られ、春と秋には渡り鳥の大集結が見られます。
風車の島
エーランドは「風車の島」とも呼ばれ、19世紀には約2,000基の風車があったとされます。現在は約350基が保存されており、特に南部の風車並木は絵葉書の定番風景です。
ストックホルム群島|2万以上の島々
Stockholms skärgård
ストックホルム沖に広がる群島で、大小約3万の島々があります。フェリー会社 Waxholmsbolaget が定期航路を運航し、市内から日帰りで訪れられる島が多数あります。
Vaxholm
「群島の玄関」と呼ばれる島で、ストックホルムから船で約1時間。1549年建造の要塞と19世紀の木造別荘が並ぶ絵本のような街並み。夏はストックホルム市民の避暑地として賑わいます。
Sandhamn
外海に近い島で、セーリング愛好家の聖地。年1回の Gotland Runt(1937年開始)レースの拠点で、スウェーデン版ミステリー「Morden i Sandhamn(サンドハムの殺人事件)」シリーズの舞台としても有名です。
Grinda
自然保護区の小島で、ハイキングと海水浴に最適。キャンプ場とホステルがあり、一泊して星空を眺めるのがおすすめです。
島旅の持ち物と移動
レンタカー vs 自転車
ゴットランドとエーランドは広いのでレンタカーが現実的ですが、自転車好きなら一周サイクリングも可能です。ゴットランドには約500kmの自転車道が整備されています。
夏の必需品
日焼け止め、虫除け、雨具、水着は必須。北欧の夏は気温20度前後ですが紫外線は強く、日焼けに油断していると痛い目に遭います。
島の食文化
ゴットランド名物
Saffranspannkaka(サフランのパンケーキ、リンゴンベリー添え)は島の伝統菓子。中世のサフラン貿易の名残で、島の名物として受け継がれています。Gotlandsdricka という独特の地ビールもあります。
エーランド名物
島産のジャガイモ Ölands Kumminpotatis は香り高く、シンプルに茹でてバターで食べるのが定番。地元レストランで必ず注文してください。
まとめ|島は別のスウェーデン
スウェーデンを深く知りたいなら、本土の都市だけでなく島にも必ず足を延ばしてください。本土とは違う空気、違うリズム、違う歴史があります。
筆者はゴットランドのヴィスビューで一晩だけ過ごした時、時計の進みが本土と違うように感じました。それくらい、島には独自の時間が流れています。
モデルルート|7日間で2島制覇
Day 1-3 ゴットランド
ストックホルムから早朝の Destination Gotland 高速フェリーに乗り、3時間でヴィスビューへ上陸。初日は旧市街散策と城壁の全周歩き、旧市街内のホテル(Clarion Hotel Wisby や Hotell St Clemens)に宿泊。
2日目はレンタカーで島北部へ。Fårö島(Ingmar Bergmanが晩年を過ごした島、渡し船は無料)で rauk を見学し、Bergmancenter(2012年開館)でベルイマン関連の展示を楽しみます。
3日目は南部へ向かい、中世教会を数か所巡ってから夕方のフェリーで Oskarshamn(本土)へ。ここからはレンタカーで南下してエーランド島へ向かいます。
Day 4-5 エーランド
4日目はエーランド大橋を渡り、Borgholms slottsruin、Sollidens slott を見学。宿泊は Halltorps Gästgiveri のような伝統的な宿がおすすめです。
5日目は島南部の Stora Alvaret と Ottenby 鳥類観測所(南端、1946年開設)を訪ねます。渡り鳥の季節なら双眼鏡必携です。
Day 6-7 Kalmar経由でストックホルムへ
6日目は本土に戻り、Kalmar城(12世紀創建)を見学。北ヨーロッパ屈指の保存状態で、1397年のカルマル同盟締結の舞台です。
7日目はKalmarから高速鉄道(X 2000)でストックホルムへ戻ります。約4時間半の快適な列車旅で締めくくれます。
旅のコスト感
夏のハイシーズンは宿泊費が高騰し、ゴットランドの3つ星ホテルで1泊2,000〜3,500SEK、4つ星なら4,000SEK以上が相場。フェリーは往復で車込み約2,000SEK、徒歩なら片道約500SEKから。
食費はレストランで1食200〜500SEK、スーパーで調達すれば1日300SEKで済みます。レンタカーは夏季は1日約1,000〜1,500SEK。合計で7日間の予算は1人15〜25万円が目安です。
島旅の心得
島ではバスの本数が少なく、観光案内所の営業時間も短め。計画は事前にしっかり立てておきましょう。ゴットランド観光局(gotland.com)とエーランド観光局(olandsturism.se)のサイトは英語情報も充実しています。
もうひとつ、島では天候がコロコロ変わります。朝晴れていても午後に雨が降ることは日常茶飯事で、筆者もヴィスビューで1日4回着替えた経験があります。折り畳み傘と薄手のジャケットは常時携帯してください。
最後に、島の時間の流れに合わせることが最大の楽しみ方です。予定を詰め込みすぎず、カフェで1時間ぼんやりする余白を必ず作ってください。それが北欧の島旅の醍醐味です。
バルト海の青、石灰岩の白、ラベンダーの紫、中世の石畳、どれも一度見たら忘れられません。ストックホルムの喧騒から離れて、北欧の島の空気を吸いに行く価値は十分あります。
Välkommen till öarna!
筆者が次に訪れるならエーランド北部のByxelkrok(漁村)で数日静養したいと考えています。長期滞在型の夏休みを計画している方には特におすすめしたいデスティネーションです。行けば必ず、もう一度行きたくなります。
島が呼んでいます。Trevlig resa till öarna!
島でお会いしましょう。


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