タイ文字を一通り覚えたあと、「次に何を読めばいいのかわからない」と立ち止まってしまう方はとても多いです。
筆者もそうでした。
この記事では、筆者が実際に使ってきた教材と、タイ人の先生から勧められた定番書を中心に、初級から上級まで段階ごとに具体的なタイトルを挙げてご紹介します。
初級:まずは「読む練習用の薄い一冊」から
最初の一冊は、欲張らずに薄くて音声付きのものを選ぶのが鉄則です。
ニューエクスプレスプラス タイ語(白水社・水野潔 著)
白水社の定番シリーズで、20課構成の会話と短い読み物が収録されています。
タイ文字・発音記号・日本語訳が同じページに並んでいるため、文字が読めない段階でも挫折しにくいのが特徴です。
CD音声も付属しているので、読解と同時にリスニング耳も鍛えられます。
タイ語のしくみ《新版》(白水社・峰岸真琴 著)
こちらは「文法書」というより読み物として楽しめる入門書です。
タイ語特有の類別詞や時制表現のロジックを、例文とともに丁寧に解説してくれます。
ニューエクスプレスと並行して使うと理解が一気に深まります。
CD付き 文法からマスター!はじめてのタイ語(ナツメ社・スニサー ウィッタヤーパンヤーノン 著)
ネイティブ著者による基礎文法書で、例文に必ず日本語訳と発音記号が添えられています。
短文読解の足場作りには最適な一冊です。
無料で読める:LIDAのタイ語絵本(lidastories.net)
LIDA Storiesは世界各国語の絵本を無料で公開しているサイトで、タイ語ページ「lidastories.net/nihon/stories/th/」には子ども向けのやさしい物語が並んでいます。
短い文と挿絵で構成されており、「初めての生のタイ文」として最適です。
初中級:短編と子ども向け教材で「量」をこなす
基礎文法がひと通り終わったら、少し長めの文章を「たくさん」読むフェーズに入ります。
タイ語の基礎(白水社・三上直光 著)
タイ文字のルールを終えた人向けに、短い読み物と会話が豊富に収録されています。
文法説明は簡潔で、練習問題が多めなのが良いところです。
マニー・マナ(มานี มานะ)シリーズ
「มานี มานะ」はタイの小学校で長年使われてきた国語教科書で、タイ人なら誰もが知っている定番教材です。
ネット上にスキャン版や読み上げ動画が多数公開されており、児童向けの短い物語形式なのでタイ語学習者にも取り組みやすいです。
タイ人の先生に「マニー・マナを読みたい」と言えば、たいてい喜んで付き合ってくれます。
Dek-D(dek-d.com)の子ども向けコラム
Dek-Dはタイの10代〜20代向けポータルサイトで、短編小説や学校生活のエッセイが日々投稿されています。
語彙が若者寄りなので、教科書的なタイ語から一歩踏み出すのに向いています。
中級:新聞・雑誌・中級用総合読本で骨太に
ここからはいよいよ実用タイ語の世界です。
中級タイ語総合読本(白水社・三上直光 著)
25のテーマ別長文を読みながら、読解・表現・会話を同時に鍛える構成です。
各課末に練習問題があり、一課を丁寧にやると1〜2時間かかります。
中級の「次の一冊」としては間違いのない定番です。
表現を広げる 中級へのタイ語(三修社・スニサー ウィッタヤーパンヤーノン 著)
タイトル通り、初級から中級への橋渡しに特化した一冊です。
発音記号中心の学習から、タイ文字主体の読解へと自然に移行できるように設計されています。
タイ三大紙:Thairath、Matichon、Khaosod
タイ最大手の日刊紙ไทยรัฐ(thairath.co.th)、มติชน(matichon.co.th)、ข่าวสด(khaosod.co.th)は、いずれもウェブ版を無料で公開しています。
最初は見出しだけを追う習慣をつけ、気になる記事のリード文だけを読むようにすると続けやすいです。
政治記事より芸能・ライフスタイル欄の方が語彙が日常的で取り組みやすいです。
上級:文学作品と専門ジャンルに踏み込む
辞書を引かずに新聞が読めるようになったら、小説や専門書に挑戦する時期です。
คำพิพากษา(カムピパークサー/判決)ชาติ กอบจิตติ 著
チャート・コープチッティによる、タイ現代文学を代表する長編小説です。
1982年のSEA Write Award(東南アジア文学賞)を受賞した作品で、文体が比較的平易なので中級後半から挑戦できます。
สี่แผ่นดิน(シー・パェンディン/四代の王朝)ม.ร.ว.คึกฤทธิ์ ปราโมช 著
クックリット・プラーモート元首相による国民的歴史小説で、ラーマ5世から8世までのバンコク宮廷を女性の視点で描いた大作です。
やや古風な語彙が多く歯ごたえはありますが、タイ文化と歴史を深く知りたい方には最高のテキストです。
เพชรพระอุมา(ペット・プラ・ウマー)พนมเทียน 著
パノム・ティエンによる全48巻の大河冒険小説で、タイ版「インディ・ジョーンズ」とも呼ばれます。
分量はとんでもないですが、1巻ずつ古本でも手に入るので、上級の長期プロジェクトとして人気があります。
辞書とリーディング支援ツール
読解には良い辞書と支援ツールが欠かせません。
Longdo Dict(longdo.com)
Longdo Dictはタイ国内で最もよく使われるオンライン辞書で、タイ語⇔英語・日本語・中国語を横断検索できます。
ブラウザ拡張機能を入れるとウェブページ上のタイ語にマウスを当てるだけで意味が表示されるので、ニュース読解時に重宝します。
Thai2English(thai2english.com)
Thai2Englishはタイ文を貼り付けると、単語ごとに発音記号と英訳を分解表示してくれるサイトです。
「どこで単語が切れるかわからない」という初中級者の悩みを一発で解決してくれます。
thai-language.com
thai-language.comは英語話者向けのタイ語リソースサイトで、膨大な語彙データベースと例文コーパスを無料で提供しています。
語源や類義語の解説が詳しく、中上級者の辞書として優秀です。
実用タイ語検定試験 過去問題と解答(日本タイ語検定協会)
検定対策だけでなく、レベル別の読解素材集としても非常に有用です。
5級から1級まで、徐々に難度を上げながら「採点される読解」を経験できる貴重な教材です。
おわりに
読解力は「量×継続」で必ず伸びます。
自分のレベルに合った教材を1つ決め、毎日10分でも読み続けることが、遠回りに見えて一番の近道です。
レベル別:1ヶ月の読解学習プラン例
教材を並べるだけではイメージがわきにくいので、筆者がタイ語の先生と一緒に組んでいた1ヶ月プランの例もご紹介します。
初級者の1ヶ月プラン
第1週は「ニューエクスプレスプラス タイ語(白水社)」の第1〜5課を、音声を聞きながら音読します。
第2週は同じ教材の第6〜10課に加えて、LIDA Storiesの絵本を1日1話読みます。
第3週は「タイ語のしくみ(白水社)」で類別詞と語順の章を読み、例文を全てノートに書き写します。
第4週は第1週に読んだ第1〜5課をもう一度音読して、定着度を確認します。
ここまでで「短い文なら辞書無しでもなんとなく意味が掴める」段階に到達できます。
初中級者の1ヶ月プラン
第1週は「タイ語の基礎(白水社・三上直光)」から2課ずつ進め、マニー・マナの第1巻をネットで探して並行して読みます。
第2週はDek-D(dek-d.com)の学校生活コラムを1日1本、辞書を引きながら読みます。
第3週はThairath(thairath.co.th)の芸能欄リード文を毎日3本読み、知らない単語をLongdo Dictで引いて単語帳に追加します。
第4週は第1〜3週に学んだ単語を使った例文を自分で10文作ります。
中級者の1ヶ月プラン
第1週は「中級タイ語総合読本(白水社)」の第1〜3課を、訳を見ずにまず通読します。
第2週は同じ範囲を精読し直し、知らない単語をThai2Englishで分解しながら覚えます。
第3週はMatichon Weekly(matichonweekly.com)の社会面コラムを週3本読みます。
第4週は「คำพิพากษา(判決)」の冒頭10ページに挑戦します。
教材を買える場所
白水社・三修社・ナツメ社の書籍は、Amazon.co.jpや楽天ブックスで新品が入手できます。
都内であれば神保町の穂高書店(hotaka.shop-pro.jp)がタイ語専門の品揃えで知られており、絶版の中級本や辞書まで幅広く扱っています。
タイ現地の書籍はバンコクのSE-EDブックセンター(se-ed.com)やB2S、サイアムパラゴンのKinokuniya Bangkok店で購入できます。
「เพชรพระอุมา」のような大長編は現地の古本街Wat Rajabopit周辺で一冊数十バーツから見つかることもあります。
読解学習で挫折しないコツ
最後に、筆者が長年タイ語を読んできて痛感している3つのコツをお伝えします。
ひとつ目は「今のレベルより1段だけ上の教材を選ぶ」ことです。
いきなり新聞に飛び込むと99%挫折します。
ふたつ目は「同じ教材を3回繰り返す」ことです。
新しい本に手を出すよりも、一度読んだ「中級タイ語総合読本」をもう一周した方が、定着という意味では遥かに効率的です。
みっつ目は「辞書は引きすぎない」ことです。
1段落に知らない単語が1つか2つなら引かずに読み進め、繰り返し出てくる単語だけをLongdo Dictで確認するようにすると、読むスピードが一気に上がります。


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