ポルトガル語翻訳通訳の教材と実務ガイド 文学翻訳から医療通訳まで

ポルトガル語の翻訳・通訳は、ブラジル移民社会・ポルトガル語圏ビジネス・文学翻訳の三つの需要から成り立っています。

このページでは翻訳者を目指す方、通訳を副業にしたい方、自分の学習に翻訳を取り入れたい方の三方向に使える教材と実務ノウハウをまとめます。

筆者も週末翻訳者として4年目になるので、試行錯誤した経路をそのまま紹介します。

翻訳の基礎教材

理論書

Paulo Rónai 1907-1992 ハンガリー出身 の A Tradução Vivida エディトーラ José Olympio 1981年初版 は、ブラジル翻訳論の古典です。

翻訳の具体例が豊富で、文学翻訳を志す人の最初の一冊として今も読まれ続けています。

続いて João Barrento 1940 の O Poço de Babel Relógio d’Água 2002年 を読むと、ポルトガル本国側の翻訳観が掴めます。

実務書

Manual de Tradução Pontes Editores Campinas が2018年に刊行した本は、英葡・葡英の実例中心で非文学向けの定番です。

Dicionário de Falsos Amigos Lidel 2009年初版 は、英語からの誤訳を防ぐ辞典で、契約書翻訳の現場で重宝します。

ポルトガル語辞書の複線化

Priberam 1989年創業 リスボン Rua Alexandre Herculano 21 は翻訳者の必携オンライン辞書です。

Dicionário Houaiss Antônio Houaiss 1915-1999 編 Editora Objetiva 2001年 は紙版で9万円、電子版で4万円ほどしますが、一冊あると翻訳の質が変わります。

Michaelis 1980年初版 Melhoramentos も日常業務では欠かせない辞典です。

通訳の基礎教材

逐次通訳の入門書

Introdução à Interpretação Consecutiva Fundação Editora da UNESP 2015年 は、日本語話者にも読みやすいブラジル側の教科書です。

ノート取りの記号体系を体系的に学べるのは、ポルトガル語関連ではこの一冊だけです。

同時通訳のトレーニング

AIIC 国際会議通訳者協会 1953年 ジュネーブ 発足のガイドラインに沿って、ブースで120時間の訓練を積むのが国際標準です。

日本ではサイマル・アカデミー 1980年設立 東京都港区南青山2-26-5 がポルトガル語の通訳養成クラスを不定期開講しています。

在日ブラジル人支援の現場

医療通訳・行政通訳は浜松市・豊田市・大泉町あたりで需要が高く、実務経験を積むのに向いています。

MIC かながわ 1998年設立 の医療通訳派遣システムは、登録試験にポルトガル語枠があります。

翻訳支援ツールの基礎

CAT ツールの選択

SDL Trados Studio 1984年創業のTrados GmbH シュトゥットガルト発 は業界標準ですが、ライセンスが高額で年間8〜14万円します。

memoQ 2004年 ブダペスト Kilgray 開発 は個人年間契約で770ユーロと安価で、ポルトガル語案件との相性が良いです。

OmegaT 2000年 フランス初版 はオープンソースで無料なので、翻訳の学習段階ではこちらで十分です。

機械翻訳との付き合い方

DeepL 2017年 ケルン創業 はポルトガル語にも対応しており、下訳として使うと作業時間が3〜4割短縮できます。

Google翻訳 2006年 はブラジル ポルトガル語の俗語処理に弱いので、ポストエディットでの修正量が増えます。

筆者は契約書は DeepL、SNSキャプションは Google翻訳と使い分けており、それぞれ得手不得手があります。

用語集管理

ProZ.com 1999年 ニューヨーク 創業の用語集「KudoZ」は翻訳者同士の質問サイトで、ポルトガル語のスレッドが活発です。

IATE 2007年 欧州連合翻訳総局 は EUポルトガル語の公式用語を無料検索できます。

文学翻訳への道

翻訳家の系譜

日本のポルトガル語文学翻訳は 彌永史郎 1936-2017 から始まり、池上岑夫 1936-2013 によってサラマーゴ作品が紹介されました。

近年は 福嶋伸洋 1976 がクラリシ・リスペクトール 星の時 2021年 新潮クレスト・ブックス を訳し、読者層を拡大しました。

武田千香 1961 はマシャード・ジ・アシス ブラース・クーバスの死後の回想 2012年 光文社古典新訳文庫 の名訳で知られます。

翻訳権と出版エージェント

文学翻訳は原則として原著者または遺族・出版社の翻訳権を購入しないと出版できません。

ブラジル側は Villas-Boas & Moss Literary Agency 2006年 リオ・デ・ジャネイロ が国際窓口の中心です。

ポルトガル本国では BookOffice 2014年 リスボン が多くの作家を代理しています。

翻訳助成

Instituto Camões リスボン 1992年 は海外での翻訳出版に対する助成金Programa de Apoio à Tradução を年2回公募しています。

ブラジル国立図書館Fundação Biblioteca Nacional リオ・デ・ジャネイロ 1810年 の Programa de Apoio à Tradução は2011年開始、3年間で10000ドル上限の助成です。

筆者は知人の翻訳者からこの制度で助成を得た話を聞き、企画書の書き方を学びました。

翻訳者としての実務デビュー

最初の案件の取り方

ProZ.com の有料会員110ドル/年で翻訳案件に応募できるようになります。

ブラジル側は TranslatorsCafe.com や Upwork 2015年設立 サンフランシスコ に登録するのが近道です。

筆者の初案件は知人経由のSNSキャプション5本で合計40ドル、相場より安くても実績作りには十分でした。

料金相場

葡日翻訳は1ワード8〜15円、日葡翻訳は1文字6〜12円が2024年時点の相場です。

医療・法務は1ワード20〜30円に跳ね上がり、専門知識のある翻訳者が不足しています。

通訳は半日3〜6万円、逐次同時切替の国際会議は1日8〜12万円が相場です。

インボイスと確定申告

個人事業主として開業届を出し、請求書はMisoca 2011年 名古屋 創業 かfreee 2012年 東京 で発行すると手間が減ります。

海外送金はWise 2011年 ロンドン 創業 が手数料面で最安ルートです。

学習としての翻訳トレーニング

ミニ訳読

1日1段落だけ Público やFolha de S.Paulo から抜き出して日本語訳する習慣が最も効きます。

訳したあとに原文を伏せて、自分の日本語から原文を復元する逆方向訓練も有効です。

対訳本の活用

朝日出版社 1914年創業 千代田区西神田3-3-5 のポルトガル語対訳シリーズは絶版が多いですが、古書で入手可能です。

岩波文庫の世界文学シリーズには マシャード・ジ・アシス・エッサ・デ・ケイロス の対訳版があります。

筆者の週次ルーティン

月曜は契約書英葡対訳の写経、水曜はニュース1本の逐次訳、金曜は短篇500語の文学翻訳という3本立てで4年続けています。

翻訳は筋トレに似ていて、量をこなさないと見えない筋がつきません。

コミュニティと情報源

日本国内の翻訳者団体

日本翻訳者協会 JAT 1985年設立 はポルトガル語分科会の活動が近年再開し、年1回の勉強会を開いています。

日本翻訳連盟 JTF 1981年設立 東京都中央区 は機械翻訳ポストエディット実務ガイドを公開しています。

ブラジル側の専門団体

ABRATES Associação Brasileira de Tradutores e Intérpretes 1974年設立 リオ 会費年180レアル、毎年5月に国際会議を開催しています。

Sintra Sindicato Nacional dos Tradutores 1988年 は料金表ガイドラインを毎年更新しており、最低料金を調べるのに便利です。

情報を追うポッドキャスト

Café com Tradução Amanda Moura 2019年 は週刊で翻訳業界のニュースを拾える貴重なブラジル発ポッドキャストです。

PodTraduzindo Érika Lessa 2020年 は初心者向けの回も充実しているので、入門期に聞き流すと良い学習素材になります。

字幕翻訳という入口

Netflix のHermes テストは2018年に閉鎖されましたが、代わりに Iyuno Media Group 2002年 ソウル 創業 や Deluxe Entertainment 2006年 が下請け募集を出しています。

1分あたり300〜500円の相場で、駆け出しには練習と収入の両立に向いた入口です。

筆者は Iyuno の試験を受けて合格し、最初の1年は週末に2時間だけ字幕翻訳のバイトを続けました。

ローカライズ案件

ゲーム・アプリのブラジルポルトガル語ローカライズは需要が伸びており、Keywords Studios 1998年 ダブリン などが継続募集しています。

用語集の遵守と文字数制限の厳しさがあり、慣れると時給換算で翻訳より効率が良くなります。

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