タイ語の入門書を終えたあと、「次に何を買えばいいのかわからない」という相談を筆者はよく受けます。
中上級の壁は「教材が急に少なくなる」ことで、ドイツ語や中国語のように選択肢が豊富なわけではありません。
この記事では、筆者が実際に書棚に揃えてきた中上級タイ語教材を、目的別に具体的な書籍名・出版社・著者とともに紹介します。
総合読本:まず核となる一冊を決める
中級タイ語総合読本(白水社・三上直光 著)
白水社の「中級タイ語総合読本」は、25のテーマごとに長文読解・会話・練習問題を繰り返す構成で、中級到達の定番書として長年支持されています。
各課にはタイ文化に関するコラムもあり、語彙と背景知識が同時に身に付きます。
表現を広げる 中級へのタイ語(三修社・スニサー ウィッタヤーパンヤーノン 著)
三修社のこの本はネイティブ著者ならではの自然な例文が強みで、初級から中級への橋渡しに特化しています。
発音記号主体の入門書から、タイ文字中心の学習へ無理なく移行できるように設計されています。
タイ語の基礎(白水社・三上直光 著)
同じ白水社の「タイ語の基礎」は、中級に上がる前にもう一度基礎を総復習したい方向けのテキストです。
タイ文字のルール説明は最小限に留められており、短い読み物と会話練習が豊富に収録されています。
文法書:辞書代わりに使える一冊を揃える
ニューエクスプレスプラス タイ語(白水社・水野潔 著)
ニューエクスプレスプラスは入門書ですが、巻末の文法まとめが中級以降も参照用として役立ちます。
迷ったら戻る「ホームベース」として書棚に置いておくと便利です。
詳しくわかるタイ語 (めこん・冨田竹二郎 編)
めこんの「詳しくわかるタイ語」は、中級者が「この表現はどういう文法なのか」と迷ったときに辞書感覚で引ける文法リファレンスです。
類別詞、助数詞、助動詞などの用法別索引が充実しており、中級から上級まで長く使えます。
タイ語 文法 ハンドブック(大学書林)
大学書林のタイ語ハンドブックシリーズは学術寄りですが、複文構造や古語の解説まで網羅されており、本格的に読解を極めたい方には必携です。
辞書:紙・電子・オンラインの三段構え
冨田竹二郎編「タイ日大辞典」(めこん)
「タイ日大辞典」はめこんから出版されているタイ日辞典の決定版で、約7万語を収録しています。
語義の説明が詳しく、古典・仏教用語まで広くカバーしているので、小説や宗教書を読む際に欠かせません。
松山納編「日タイ辞典」(大学書林)
日本語からタイ語を引くときは大学書林の「日タイ辞典」が定番です。
作文や翻訳をする中上級者にとって、タイ日辞典とセットで揃えたい一冊です。
オンライン辞書:Longdo Dict、Thai2English
Longdo Dict(longdo.com)はタイ国内で最も使われているオンライン辞書で、タイ語⇔英語・日本語・中国語を横断できます。
Thai2English(thai2english.com)はタイ文を貼り付けると自動で単語分割と発音記号表示をしてくれるので、長文読解の友として最強です。
テーマ別・専門語彙の教材
ビジネスタイ語:実用タイ語会話ビジネス編(白水社)
駐在員やタイ企業とのやり取りが増えた方向けに、白水社の「ビジネスタイ語会話」シリーズがあります。
実際の商談・会議・電話対応のフレーズが豊富に収録されています。
仏教・文化語彙:タイ仏教用語集(佛教大学)
タイの仏教関連語彙はパーリ語・サンスクリット起源の専門用語が多く、一般の辞書では追い切れません。
佛教大学が編纂しているタイ仏教用語集は、寺院訪問や宗教書読解の際に頼れるリソースです。
観光・接客:接客タイ語基本会話(JTBパブリッシング)
JTBパブリッシングが出している接客用フレーズ集は、タイ人観光客を迎える立場の方向けに、日本の飲食店・ホテル・ショップで使えるタイ語を網羅しています。
試験対策:検定合格を目指す方向け
実用タイ語検定試験 過去問題と解答(日本タイ語検定協会)
日本タイ語検定協会が毎年刊行している過去問集は、タイ検(旧ポーホック)対策の必携書です。
5級から1級まで各レベルの問題と解答が掲載されており、自分の実力を客観的に測れます。
タイ語能力試験 CU-TFL 対策
チュラーロンコーン大学のCU-TFL(Chulalongkorn University Thai as a Foreign Language)試験対策は公式教材が中心で、sti.chula.ac.thで過去問のサンプルと受験要項が公開されています。
教材の入手先
白水社・三修社・大学書林・めこんの書籍はAmazon.co.jpと楽天ブックスで新品が購入できます。
絶版本は神保町の穂高書店(hotaka.shop-pro.jp)が頼りになります。
タイ現地の教材はバンコクのSE-ED Book Center(se-ed.com)、B2S、Asia Books、Kinokuniya Bangkok店で入手可能です。
教材の選び方:筆者の結論
中上級の教材選びで大切なのは「1冊をきちんと終える」ことです。
筆者の経験では、3冊を同時並行するより、「中級タイ語総合読本」を2周する方が圧倒的に効果があります。
自分のレベルよりほんの少しだけ難しい一冊を選び、それをボロボロになるまで使い倒すのがタイ語中上級攻略の鉄則です。
学習ペース別のおすすめ組み合わせ
週5時間確保できる方
平日1時間×5日で週5時間を取れる方には、「中級タイ語総合読本(白水社・三上直光)」をメイン教材に据え、週末に「詳しくわかるタイ語(めこん・冨田竹二郎 編)」で文法を確認する組み合わせがおすすめです。
半年で総合読本を2周すれば、中級の土台が完成します。
週2時間しか取れない方
社会人で学習時間が限られる方には、「表現を広げる 中級へのタイ語(三修社・スニサー)」1冊に集中するのが現実的です。
通勤中のスマホ学習には、Longdo Dictアプリとその記事中で紹介したThai2Englishを組み合わせ、ニュース記事を3本だけ読む習慣を付けましょう。
週末集中派
週末に8時間まとめて取れる方は、土曜日に「ニューエクスプレスプラス タイ語(白水社・水野潔)」の復習と「中級タイ語総合読本」の新出課、日曜日に実用タイ語検定試験の過去問1回分という組み合わせで、3ヶ月ごとに明確な成果が見えてきます。
オンライン教材の併用
ThaiPod101(thaipod101.com)やLearn Thai with Mod(learnthaiwithmod.com)といったオンライン教材は、紙の教材とは補完関係にあります。
紙の本で文法と読解を体系的に学び、オンラインで発音とリスニングを鍛えるのが最も効率的です。
italki(italki.com)やPreply(preply.com)で見つけたネイティブ講師に、週1回「中級タイ語総合読本」の疑問点を質問するサイクルを組めば、独学の限界を大きく超えられます。
よくある失敗と対策
中上級の教材選びで最も多い失敗が「買いすぎ」です。
Amazonで口コミを読むと、どれも魅力的に見えて3冊4冊と一気に購入してしまいがちですが、結果としてどれも最後まで終わりません。
筆者のルールは「今の1冊を終えるまで、次の1冊は買わない」です。
1冊を完遂する経験を積むことで、「自分に本当に必要な次の教材」が見えてきます。
もうひとつの失敗は「辞書を引きすぎる」ことです。
中級教材では知らない単語が1ページに10個以上出てくることもありますが、すべてを引いていると読むのが苦痛になります。
繰り返し出てくる単語だけをLongdo Dictで調べ、1回しか出てこない単語は思い切って飛ばすと、読むスピードが劇的に上がります。
現地書店で探す楽しみ
バンコクに行く機会があれば、ぜひチットロム駅直結のCentral WorldにあるKinokuniya Bangkok店、サイアムパラゴンのAsia Books、そしてSE-ED Book Centerを巡ってみてください。
Kinokuniya Bangkokには日本で絶版になった古いタイ語学習書が置かれていることもあり、掘り出し物に出会える可能性があります。
SE-ED Book Centerはタイ語ネイティブ向けの国語教科書・副読本が充実しているので、中上級者なら「タイの中学生の国語教科書」を読み物として楽しめます。
特にMatthayom(中学)1年〜6年生向けの「ภาษาไทย」シリーズは、文学史と古典文法の入門にも使えます。
電子書籍とKindleの活用
近年はタイの主要出版社もKindleで電子書籍を販売しています。
Amazon Kindle StoreでLongdo Dict辞書アプリと併用すれば、タップするだけで辞書が引ける快適な環境が手に入ります。
Ookbee(ookbee.com)はタイ最大手の電子書籍ストアで、タイ語ネイティブ向けの小説・雑誌・参考書を幅広く扱っています。
タイ語学習者コミュニティ
教材選びに迷ったときは、同じ目標を持つ学習者と情報交換するのが近道です。
日本語のコミュニティとしては、Facebookの「日タイ交流会」「タイ語勉強会」などのグループが活発で、おすすめ教材のレビューや質問スレッドが毎日更新されています。
英語圏ではRedditの「r/learnthai」が最大規模で、新刊本のレビューが継続的に投稿されています。
筆者もこうしたコミュニティから「詳しくわかるタイ語」や「タイ日大辞典」の存在を知りました。


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