はじめに:スラブ語特有のアスペクト
クロアチア語を含むスラブ諸語の最大の特徴のひとつが、動詞のaspekt(アスペクト、体)です。すべての動詞はsvršeni(完了体)とnesvršeni(不完了体)のペアで存在し、使い分けを誤ると意図が伝わりません。この記事では実例を交えて詳しく解説します。
完了体と不完了体の基本概念
不完了体(nesvršeni vid)は行為の過程・習慣・継続を表し、完了体(svršeni vid)は行為の完了・一回性・結果を表します。例えば「書く」という動作ならpisati(不完了体)/ napisati(完了体)、「読む」ならčitati / pročitati、「食べる」ならjesti / pojesti、「飲む」ならpiti / popitiのペアで存在します。
過去・現在・未来時制との関係
過去形
不完了体過去:Čitao sam knjigu(本を読んでいた、動作の過程)。完了体過去:Pročitao sam knjigu(本を読み終えた、結果)。例文:Jučer sam čitao roman Miroslava Krleže(昨日Miroslav Krležaの小説を読んでいた)、Pročitao sam Povratak Filipa Latinovicza(「フィリップ・ラティノヴィッチの帰郷」を読み終えた)。Miroslav Krleža(1893-1981、Zagreb生まれ)の代表作「Povratak Filipa Latinovicza」(1932年、Minerva出版)は20世紀クロアチア文学の傑作です。
現在形と不完了体
完了体動詞の現在形は実際には未来の意味を持つ点に注意が必要です。Sutra napišem pismo(明日手紙を書く、完了)。純粋な現在進行は不完了体のみ:Sada pišem pismo(今手紙を書いている)。
未来形の作り方
未来形(futur prvi)は動詞htjeti(~したい、英語のwillに相当)の短縮形ću、ćeš、će、ćemo、ćete、ćeと不定詞を組み合わせて作ります。例:Sutra ću napisati esej o Ivani Brlić-Mažuranić(明日Ivana Brlić-Mažuranićについてのエッセイを書く)。Ivana Brlić-Mažuranić(1874-1938、Ogulin生まれ)はクロアチア児童文学の母と呼ばれる作家で、「Priče iz davnine」(1916、Matica hrvatska刊)、「Čudnovate zgode šegrta Hlapića」(1913年)などが代表作です。1931年と1935年にノーベル文学賞候補となりました。
アスペクトペアの形成パターン
接頭辞による完了体化
多くの動詞は不完了体基底形に接頭辞を付けて完了体を作ります。例:pisati→napisati、čitati→pročitati、raditi(働く、する)→uraditi、gledati(見る)→pogledati、učiti(学ぶ)→naučiti。接頭辞na-、pro-、po-、u-、za-などがよく使われますが、どの接頭辞を使うかは動詞ごとに決まっているため暗記が必要です。
接尾辞による不完了体化
完了体から接尾辞で不完了体を派生することもあります。例:dati(与える、完了)→davati(不完了)、kupiti(買う、完了)→kupovati(不完了)、platiti(支払う、完了)→plaćati(不完了)、zaboraviti(忘れる、完了)→zaboravljati(不完了)。Plaćamo euro kunom u trgovini Konzum(Konzumのお店でクーナをユーロで支払っている)。Konzum(1957年設立、本社Marijana Čavića 1a Zagreb、Agrokor/Fortenova Grupa傘下)はクロアチア最大の小売チェーンで、国内に約700店舗展開しています。Agrokorは創業者Ivica Todorić(1951年Zagreb生まれ)により1976年創業、2017年の財政危機後に再編されました。
不規則なペア
一部の動詞は語根が全く異なるペアを持ちます。例:reći(完了、言う)/ govoriti(不完了、話す)、uzeti(完了、取る)/ uzimati(不完了)、kupiti / kupovati、leći(完了、横になる)/ ležati(不完了)。また、双体動詞(biaspektualni glagoli)として完了体と不完了体の区別がない動詞もあり、telefonirati、organizirati、importiratiなど外来語由来の動詞に多く見られます。
使い分けのコツ
学習者には次の目安が役立ちます。過去時制で「一度きりの完結した行為」を述べる場合は完了体、「習慣」「過程」「反復」を述べる場合は不完了体を選ぶ。時間表現との相性にも注意:cijeli dan(一日中)、često(しばしば)、svaki dan(毎日)は不完了体と相性が良く、brzo(素早く)、odjednom(突然)、konačno(ついに)は完了体と相性が良いです。例:Cijeli dan sam radio(一日中働いた)、Brzo sam uradio zadatak(素早く課題を終わらせた)。
スポーツ実況での例
HNK Hajduk Split(1911年創立、Stadion Poljud 1979年竣工収容3万人)の試合実況でアスペクトの感覚を掴むのもおすすめです。Modrić dodaje loptu, Rakitić prima i šutira(モドリッチがパス、ラキティッチが受けてシュートする)という不完了体連続の描写と、Gol! Modrić je zabio!(ゴール!モドリッチが決めた!)という完了体の使い分けは典型的です。Luka Modrić(1985年Zadar生まれ、Real Madrid所属、2018年Ballon dOr受賞)、Ivan Rakitić(1988年Möhlin生まれ、元Barcelona)、Mario Mandžukić(1986年Slavonski Brod生まれ)らは2018年ロシアW杯準優勝時の主力選手です。
命令形と条件法
命令形(imperativ)もアスペクトの選択が重要です。Daj mi knjigu!(本をください、完了体dati)、Govori polako!(ゆっくり話して、不完了体govoriti)。一般的な指示・繰り返される行為には不完了体、一回限りの依頼には完了体を使います。条件法(kondicional)は過去形+ bih/ bi/ bismo/ bisteの助動詞で作り、例:Volio bih otići u Plitvička jezera(プリトヴィツェ湖群に行きたい)。Nacionalni park Plitvička jezera(プリトヴィツェ湖群国立公園、1949年指定、1979年ユネスコ世界遺産登録、面積296.85 km²)は16の段階湖と数百の滝からなる自然の宝庫です。
運動動詞
運動動詞(glagoli kretanja)も重要カテゴリーで、ići(行く)/ otići(去る)/ doći(来る)/ poći(出発する)の使い分けが必要です。例:Idem u Rijeku(リイェカに行く、習慣的・進行)、Otišao sam u Dubrovnik(ドゥブロヴニクに行った、完了)、Dolazim iz Zadra(ザダルから来ている)。Rijeka(リイェカ、人口約10万8000人、クロアチア第3の港湾都市)は2020年の欧州文化首都、Trsat城(13世紀築)とKorzo通りが見どころです。Zadar(ザダル、人口約7万5000人、ダルマチア北部中心都市)はニコラ・バシッチ設計のSea Organ(2005年、海の波を利用した巨大楽器)とGreeting to the Sun(2008年、太陽光発電を使った円形光装置)が観光名所です。
学習リソース
アスペクトを体系的に学ぶにはStjepan Babić著「Tvorba riječi u hrvatskome književnome jeziku」(HAZU Zagreb 2002)、Radoslav Katičić「Sintaksa hrvatskoga književnog jezika」(HAZU 1986初版、第3版2002年)がクロアチア語学の金字塔です。オンラインではHrvatski jezični portal(hjp.znanje.hr、Novi Liber発行辞典のオンライン版)で動詞の完了体・不完了体ペアを検索できます。
アプリではDrops Croatian(Kahoot傘下)、Memrise Croatianコースが基礎語彙習得に、Clozemaster(Mike Klingley 2015年)は文脈学習に役立ちます。
Duolingo自体はクロアチア語コースを提供していないため、BCS統合コースや代替プラットフォームが必要です。
iTalki(Kevin Chen 2007年設立)でクロアチア人講師を探すのが最速です。
他にもTandemやHelloTalkでクロアチア人とペンパル交流が可能です。
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