クロアチア語の格変化|主格・属格・与格・対格を例文で徹底解説

はじめに:クロアチア語格体系の難しさ

クロアチア語(hrvatski jezik)はスラブ語派南スラブ語に属し、7つの格(nominativ、genitiv、dativ、akuzativ、vokativ、lokativ、instrumental)を持つ屈折豊かな言語です。

私自身、日本語話者として最初に学習したときは格変化の複雑さに圧倒されましたが、体系的に学べば規則性が見えてきます。

この記事では実例とともに格体系を詳しく解説します。

クロアチア語の基本情報

クロアチア語は約550万人の母語話者を持ち、クロアチア共和国(Republika Hrvatska、1991年独立宣言)とボスニア・ヘルツェゴヴィナの公用語です。

2013年7月1日にクロアチアがEUに加盟した際、EUの第24番目の公用語となりました。

言語管理機関はInstitut za hrvatski jezik i jezikoslovlje(IHJJ、1948年創立、Republike Austrije 16, Zagreb)です。

文字表記はラテン文字(gajica、Ljudevit Gaj 1830年代制定)を使用し、č, ć, đ, š, žなど30文字のアルファベットを持ちます。

主格(nominativ)

主格は主語を表す基本形で、辞書の見出し語の形です。

例:Zagreb je glavni grad Hrvatske(ザグレブはクロアチアの首都です)。

ザグレブ(Zagreb)は人口約77万人、市街地人口約120万人を擁するクロアチア最大の都市で、1094年にLadislav I által創建されました。

上町(Gornji grad)のMarkov trg(聖マルコ広場)にはHrvatski sabor(クロアチア議会、議場は1910年竣工、Lav Kalda & Karlo Waidmann設計)とBanski dvori(首相官邸)が面しています。

属格(genitiv)

属格は所有・関係・数量を表します。

例:Ulica Ivana Gundulića(イヴァン・グンドゥリッチ通り)。

Ivan Gundulić(1589-1638)はドゥブロヴニクのバロック詩人で、叙事詩「Osman」(出版1826年、トルコとの戦いを描く)で知られます。

Dubrovnik(ドゥブロヴニク)は1979年にユネスコ世界遺産登録された中世城壁都市で、人口約4万2000人、St. Vlaho(守護聖人、2月3日祝祭)の街として知られます。

与格(dativ)

与格は間接目的語「~に」を表します。

例:Dajem knjigu prijatelju(友人に本をあげる)、Idem u Split k prijatelju(スプリットにいる友人のところへ行く)。

Split(スプリット)はクロアチア第二の都市で人口約16万人、ダルマチア地方中心都市です。

ローマ皇帝Diocletianus(在位284-305年)が305年に引退後に建設した宮殿Dioklecijanova palača(1979年ユネスコ世界遺産登録)を中心に発展した街で、宮殿地下は今も商店街として機能しています。

Peristil広場は宮殿の中央広場で、Splitの祭典や結婚式が行われる場所です。

対格(akuzativ)

対格は直接目的語を表します。

無生物と生物で語尾が異なるのが特徴です。

例:Vidim more(海を見る)、Vidim Mateja(マテイを見る)。

Jadransko more(アドリア海)に面するクロアチア海岸線は総延長1778キロメートル、島々の海岸線を合わせると5835キロメートルに及びます。

Hvar島(Vis諸島、面積299.66 km²)、Korčula島(Marco Poloの生誕地とされる、1295年)、Brač島(Zlatni rat海岸で有名)、Mljet島(1960年指定国立公園、Mljet nacionalni park)などが代表的なリゾート島です。

呼格(vokativ)

呼格は呼びかけ専用の格です。

例:Bok, Ivane!(やあ、イヴァン!)、Dobar dan, gospodine Kovačić!(こんにちは、コヴァチッチさん!)。

男性名では語尾が-eに変化するのが典型で(Ivan→Ivane、Marko→Marko、Petar→Petre)、女性名は-oや-e(Marija→Marijo、Ana→Ano)となります。

Kovačićはクロアチアで最も一般的な姓のひとつで、「鍛冶屋」を意味します。

Ivanはクロアチアで男子の最も一般的な名前(2020年統計)、Marijaは女子で同様の地位です。

処格(lokativ)

処格は場所を表す前置詞u(~で/~に)、na(~の上に)と共に使います。

例:Živim u Zagrebu(ザグレブに住んでいる)、Knjiga je na stolu(本はテーブルの上にある)。

Zagreb旧市街のTkalčićeva ulica(タルチチッチャ通り)はカフェと伝統的家屋が並ぶ観光名所で、19世紀にはPotok川が流れていました。

Ban Jelačić trg(バン・イェラチッチ広場)はザグレブの中心広場で、1866年にクロアチアの民族英雄Josip Jelačić(1801-1859)の騎馬像が建てられました。

具格(instrumental)

具格は手段・同伴を表します。

例:Putujem vlakom(電車で旅する)、Idem s prijateljem(友人と行く)。

HŽ Putnički prijevoz(クロアチア鉄道旅客輸送、2006年設立、Hrvatske željeznice前身は1862年開業)がZagreb-Split間の主要路線を運行しており、夜行列車も人気です。

格変化の学習戦略

学習者のおすすめは、まずnominativとakuzativの区別から始めて、次にlokativとinstrumentalの頻出前置詞セットを覚える方法です。

Institut za hrvatski jezik i jezikoslovlje(IHJJ)が提供する無料オンライン文法リソースHrvatska školska gramatika(Lana Hudeček、Milica Mihaljević、Luka Vukojević著、2010年初版)は学習者に必携です。

紙版はŠkolska knjiga社(1950年設立、Masarykova 28 Zagreb)から刊行されています。

参考文献

英語で読める定番は、Ronelle Alexander(UC Berkeley)著「Bosnian, Croatian, Serbian: A Grammar with Sociolinguistic Commentary」(University of Wisconsin Press 2006、ISBN 978-0-299-21194-3)、および同著者の「Bosnian, Croatian, Serbian: A Textbook」(2006、ISBN 978-0-299-21204-9)です。

さらにJosip Silić・Ivo Pranjković著「Gramatika hrvatskoga jezika za gimnazije i visoka učilišta」(Školska knjiga 2005、Zagreb)はクロアチア国内大学教育の標準文法書です。

日本語では三谷惠子著「クロアチア語・セルビア語入門」(大学書林、1997年、ISBN 978-4-475-01848-6)が唯一の本格的教材です。

方言と標準語

クロアチア語には3つの主要方言群があります:štokavski(シュト方言、標準語の基盤)、čakavski(チャ方言、Istra、Dalmacijaの島嶼部、Primorje地方)、kajkavski(カイ方言、Zagreb周辺、Hrvatsko zagorje地方)です。

標準語は19世紀にLjudevit Gaj(1809-1872)らが主導したIlirski pokret(イリュリア運動、1835-1849)によって統一され、šokavskiイェ方言(ijekavski、Dubrovnik・Zagrebで話される)をベースに形成されました。

対してセルビア語はekavski(エ方言)を使うため、Miroslav Krleža(1893-1981、Zagreb生まれ、20世紀クロアチア文学最大の作家)などの著作でクロアチア標準語の規範を確認できます。

BCS(Bosanski-Crnogorski-Srpski-Hrvatski)論争を避け、クロアチア独自の語彙としてuprava(管理)、znanost(科学)、sveučilište(大学)などを覚えることも重要です。

Sveučilište u Zagrebu(ザグレブ大学、1669年創立、中央キャンパスTrg Republike Hrvatske 14)のFilozofski fakultet(文学部、Ivana Lučića 3)はクロアチア語学習者向け夏期集中講座を毎年開催しています。

Croaticum(Filozofski fakultet内のクロアチア語センター、1962年設立)は海外学習者受け入れの老舗機関です。

毎年夏のZagrebačka slavistička škola(ザグレブスラブ学派夏季学校)も著名です。

主格の基本

主格(Nominativ)は文の主語を示します。

辞書の見出し語もこの形です。

男性名詞

「studij」(学生)、「grad」(都市)のように子音で終わります。

男性名詞の多数派がこのパターンです。

最もシンプルな形で覚えやすいです。

基本として最初に押さえます。

女性名詞

「knjiga」(本)、「kuća」(家)のように-aで終わります。

規則性が明確で判別しやすいです。

格変化も男性名詞とは別パターンです。

性別ごとに体系的に学びます。

中性名詞

「more」(海)、「polje」(野)のように-e、-oで終わります。

数は少なめですが固有の変化をします。

使用頻度の高い語彙もあります。

規則を押さえて例外に注意します。

生格の使い方

生格(Genitiv)は所有や否定を示します。

頻出の格で早めに習得します。

所有の表現

「knjiga studenta」(学生の本)のように所有者を示します。

英語の「of」や日本語の「〜の」に相当します。

男性名詞は-aを付けて生格にします。

基本パターンは覚えやすいです。

否定の対象

「Nemam knjige」(本を持っていない)のように否定文で使います。

肯定なら対格で、否定なら生格と対比します。

スラブ語特有の文法です。

感覚をつかむのに例文練習が効きます。

前置詞との組み合わせ

「iz Zagreba」(ザグレブから)、「od prijatelja」(友達から)などです。

「bez」(〜なしに)、「do」(〜まで)も生格を要求します。

前置詞リストとセットで覚えます。

実用的な表現が広がります。

与格と対格

与格は間接目的、対格は直接目的を示します。

両方を使い分けます。

与格の使い方

「dajem knjigu bratu」(兄に本をあげる)のように間接目的を示します。

男性名詞は-uを付けるのが基本です。

「prema」(〜に向かって)と組み合わせて使えます。

動作の受け手を明示します。

対格の使い方

「vidim ženu」(女性を見る)のように直接目的を示します。

女性名詞は-aが-uに変化します。

男性活物と不活物で変化パターンが異なります。

この区別はクロアチア語独特の特徴です。

前置詞との組み合わせ

「u」「na」と組んで方向を示します。

「idem u Zagreb」(ザグレブへ行く)は対格です。

「živim u Zagrebu」(ザグレブに住む)は処格です。

動きの有無で使い分けます。

学習のコツ

格変化は段階的に習得します。

焦らず定着を目指します。

優先順位

主格、対格、生格の3つから固めます。

日常会話の9割はこの3つで対応可能です。

与格、処格、造格、呼格は後回しでも構いません。

一度に詰め込まないのがコツです。

例文暗記

単独で格変化表を暗記するのは非効率です。

短い例文で文脈ごと覚えます。

Ankiカードに文脈を含めて登録します。

音読で口に馴染ませます。

作文練習

日記や短文を毎日書きます。

間違えてもネイティブやAIで添削できます。

1日5文でも続けると格の感覚が身につきます。

半年で明確な進歩を実感できます。

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