私がクロアチアのZagreb(ザグレブ、Ban Jelačić広場で2015年に初めて降り立った時)で最初に戸惑ったのは、教科書で習った「Dobar dan」よりも若い人が「Bok!」を連呼していたことでした。この記事では、Dalmacija地方のSplit(ディオクレティアヌス宮殿、305年完成)やDubrovnik(UNESCO世界遺産1979年登録)、そしてSlavonija地方のOsijek(オシエク、Drava川沿い)で私が実際に耳にした挨拶と日常表現を、時間帯・場面別に整理します。
基本の挨拶
時間帯ごとの挨拶
フォーマルな場面では、Dobro jutro(おはよう、11時頃まで)、Dobar dan(こんにちは、昼)、Dobra večer(こんばんは、18時以降)、Laku noć(おやすみ)が基本です。私がZagrebのEsplanade Zagreb Hotel(1925年Mihajlo Dušan Cetinić設計、Orient Expressの乗客向けに開業)のフロントで聞いたのは、常にこの丁寧形でした。ホテル名物のZagrebačka pita(りんごと胡桃のパイ)を注文する時も、まずはDobar danから始めます。
カジュアルな挨拶「Bok」
一方、Zagrebの若者、特にTkalčićeva ulica(19世紀末に暗渠化されたMedveščak川沿いのカフェ通り)やCvjetni trg周辺で学生たちが使うのは「Bok!」です。これはドイツ語のHalloに相当する砕けた表現で、会った時も別れる時も使えます。Sveučilište u Zagrebu(1669年創立、ヨーロッパでも古い大学の一つ)のFilozofski fakultet(Ivana Lučića 3番地)に通う学生同士の会話では、ほぼBokのみで事足ります。Dalmacija地方ではBog(神の意味、古いスラヴ語由来)と発音されることもあります。
自己紹介と初対面
初対面では「Drago mi je」(お会いできて嬉しい)と「Kako se zovete?」(お名前は?)がセットです。相手がくだけた関係なら「Kako se zoveš?」になります。私はZagrebのBogovićeva ulicaにあるKnjižara Ljevak(Ljevak出版社直営、1992年創業Zdenko Ljevak)で店員に名前を尋ねられた時、「Zovem se…」(私の名前は…)と返しました。
お礼と謝罪
Hvalaとその派生
「ありがとう」はHvalaで、強調したい時はHvala lijepa(直訳:美しい感謝)またはHvala puno(たくさんありがとう)を使います。Split(クロアチア第二の都市、人口約16万人)のKrašの老舗チョコレート店(Kraš社は1911年創業、Zagreb Ravnice地区本社)で名物のBajadera(1960年代から販売)を試食させてもらった時、私はHvala lijepaと言ってしまい、店員に「若い子はHvala puno、それで大丈夫だよ」と笑われました。返事はMolim(どういたしまして)またはNema na čemu(直訳:何もない=気にしないで)です。
謝罪の表現
軽い謝罪や通りすがりの「すみません」はOprostite(フォーマル)、Oprosti(インフォーマル)。より強く謝る時はIspričavam se、本当に申し訳ないという場合はŽao mi je(直訳:私に悲しい)を使います。Dubrovnik旧市街のStradun(Placa)で観光客の流れに逆らって歩く時、私はひたすらOprostite、oprostiteと繰り返していました。7月〜8月のDubrovnik Ljetne Igre(1950年開始の夏の演劇音楽祭)期間中は特に混雑します。
買い物と注文
カフェでの定番表現
クロアチアのカフェ文化は強烈で、ZagrebのCvjetni trg周辺やRijeka(リエカ、2020年欧州文化首都)のKorzo通りには朝から夜まで人が溢れます。注文は「Jednu kavu, molim(コーヒー一つお願いします)」が基本。ミルク入りなら「bijela kava」、エスプレッソなら「espresso」、マキアートは「macchiato」。チェーン店のCogito Coffee(Zagreb Varšavska 11番地、2011年Matija Hrkać創業)のような専門店でも、この表現で十分通じました。支払い時は「Račun, molim(お会計お願いします)」です。
市場とスーパーで
Zagreb最大の青空市場Dolac(1930年開業、Ban Jelačić広場北側)では、農家のおばあさんに「Koliko košta?(いくら?)」と聞くのが基本。例えばPaški sir(Pag島産の有名な羊乳チーズ、EU原産地呼称保護指定)を1kg買う時は「Kilogram Paškog sira, molim」。スーパーのKonzum(1957年創業、Agrokor/Fortenovaグループ、店舗数約700)やLidl Hrvatska(2006年Velika Gorica本社で初出店)では、レジで「Vrećicu, molim?(袋をください)」も頻出です。
別れの挨拶と締めくくり
Doviđenjaとその仲間
別れはDoviđenja(さようなら、再び会うまで)、親しい間柄ならBok、Bok bokと軽く繰り返します。夜の別れはLaku noć、旅立つ人には「Sretan put(良い旅を)」。私はDubrovnikの港Gružから2018年にKorčula島(Marco Polo 1254年生誕の伝説の島)行きのJadrolinija(1947年創業の国営フェリー会社、本社Rijeka)に乗る時、宿のオーナーにSretan putと言われて胸が熱くなりました。
食事の場面で
食事の開始前は「Dobar tek!(召し上がれ)」、相手から言われたら「Hvala, također(ありがとう、あなたも)」と返します。乾杯はŽivjeli!(直訳:生きるように)で、Dalmatian地方の白ワインPošip(Korčula産)やPlavac mali(赤、Dingač地区は1961年クロアチア初の保護原産地指定)を傾ける時の定番です。Plešivica地区(Zagrebの南西約30km、Tomac wineryなど)の老舗ワイナリー訪問では、このŽivjeliが数十回飛び交いました。
相槌と感情表現
日常の相槌
Da(はい)とNe(いいえ)は基本ですが、実際の会話では「Naravno(もちろん)」「Jasno(なるほど)」「Stvarno?(本当?)」「Ma daj!(まさか!)」が頻出します。特にMa dajはZagreb弁の代表格で、Tomislav Bralićのような地元コメディアンがよく使う表現です。驚いた時の「Pa nema šanse!(ありえない!)」も、Net.hr(2000年創刊のクロアチア最大級ニュースポータル、Styria Mediaグループ)のSNS投稿のコメント欄で頻繁に見かけます。
気持ちを伝える
嬉しい時は「Baš sam sretan/sretna(すごく幸せ)」、疲れた時は「Umoran sam(男性)/Umorna sam(女性)」と形容詞の性別変化に注意します。クロアチア語は主語の性別で形が変わる言語なので、私もSplit訪問時に現地の友人Katarinaに「Umoran sam」と男性形で言ってしまい、「Umorna」と訂正されて笑われました。空腹時はGladan/Gladna sam、喉が渇いた時はŽedan/Žedna sam、この形容詞の切り替えが自然にできると一気に現地感が出ます。
電話とメッセージの定番
電話を取る時はHalo?またはMolim?で応答します。相手を待たせる時は「Trenutak, molim(ちょっとお待ちください)」、切る時は「Čujemo se(また連絡しよう)」。SNSやVibermessaging(クロアチアではViberが圧倒的に普及、Rakuten Viber本社Luxembourg 2010年Talmon Marco創業)のチャットでは「Bok」「Pusa(キス=愛情表現の締め)」が口癖のように使われます。Nova TV(2000年開局、2004年CME傘下、Remetinečka 139番地)やHRT(Hrvatska radiotelevizija、1926年開局、Prisavlje 3番地)のアナウンサーも、番組終わりに「Čujemo se sutra(また明日)」と締める場面をよく目にします。こうした日常の挨拶と相槌を押さえるだけで、Zagrebの街角、Splitのカフェ、Dubrovnikの城壁散歩まで、クロアチアでの会話が驚くほど滑らかになります。
なお地域差も重要で、Istrien半島のRovinj(ロヴィニ、イタリア語名Rovigno)やPula(円形闘技場Arena Pula 1世紀、収容2万3千人、現在はPula Film Festival 1954年開始の会場)ではイタリア語の影響で「Ciao(チャオ)」が日常に混ざります。Slavonija地方のOsijek(1786年自由王都、Tvrđa要塞都市)では年配世代がドイツ語由来の「Servus」を使う場面もあり、こうした方言感覚も現地で体験すると記憶に残ります。


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