インドネシア語の類別詞(kata penggolong)は日本語の助数詞と似ていて、数詞と名詞の間に挟む小さな単語です。
dua orang guru「2人の先生」、tiga ekor kucing「3匹の猫」、lima buah apel「リンゴ5個」のように、カテゴリーに応じて使い分けます。
日本語話者には理屈が馴染むはずなのに、使い慣れないと省略しがちで「生っぽいインドネシア語」から卒業できません。
本記事では筆者がバリ島 Ubud の語学学校 Cinta Bahasa 2008年創業で教わった整理術を、会話と書き言葉の両面から紹介します。
orang 人の類別詞
orang は「人」を数える類別詞で、先生・友人・観光客など人間すべてに使います。
Saya punya tiga orang adik. 「弟妹が3人います」、Ada lima orang tamu di ruang tunggu. 「待合室に5人の客がいる」が典型例です。
日常会話では省略して tiga adik と言うこともありますが、フォーマルな場面では必ず入れた方が品があります。
職業や役割にも orang
tiga orang dokter「3人の医師」、empat orang polisi「4人の警官」のように、肩書きや職業の前にも orang を置きます。
例外として guru「先生」や mahasiswa「大学生」も orang で数え、学部別の統計でも satu orang mahasiswa asing のように使います。
ekor 動物の類別詞
ekor は「尻尾」の意味ですが、動物の類別詞として機能します、哺乳類・鳥類・魚類すべてに使えます。
seekor harimau Sumatra「スマトラ虎1頭」、dua ekor burung cendrawasih「極楽鳥2羽」、tiga ekor ikan tuna「マグロ3匹」が典型例です。
昆虫や小動物にも ekor を使うため、lima ekor semut「アリ5匹」のような表現も違和感ありません。
seekor と se- の結合形
「1頭、1匹」は satu ekor ではなく seekor が基本で、se- は satu の短縮形です。
同様に人の1人は seorang、物の1個は sebuah、薄い物の1枚は selembar と結合します。
昔話の冒頭 Pada zaman dahulu, ada seorang raja… 「昔々、一人の王様がいました」のような定型表現で必ず登場します。
buah 無生物の類別詞
buah 「果実、もの」は物・建物・抽象概念などに最も広く使える類別詞です。
sebuah rumah「家1軒」、dua buah jembatan「橋2本」、tiga buah ide「アイデア3個」のように具体物から抽象物まで守備範囲が広いです。
buku「本」は buah でも良いですが、文語では sebuah buku、口語では satu buku でも通じます。
buah の省略傾向
日常会話では buah を省略する人が増えており、sebuah apel ではなく satu apel と言う若者が多いです。
ただし論文・新聞・公式文書では必ず入れるのがマナーで、sebuah penelitian「ひとつの研究」のような硬い表現では buah が省けません。
その他の類別詞
類別詞は20種以上ありますが、日常で使うのは orang・ekor・buah・lembar・batang・helai・butir・kaleng くらいに集約されます。
selembar kertas「紙1枚」、sebatang rokok「タバコ1本」、sehelai rambut「髪の毛1本」、sebutir telur「卵1個」、sekaleng bir「ビール1缶」が代表です。
花を数えるときは setangkai「一輪」、車は sebuah mobil または seunit mobil、書類は sehelai surat を使います。
potong 切り身系
sepotong kue「ケーキ1切れ」、dua potong ayam「鶏肉2切れ」のように、切り分けた食べ物に使います。
warung の注文で Nasi goreng satu, ayam goreng dua potong ya. 「ナシゴレン1つ、鶏唐揚げ2切れ」と言えば通じます。
pasang ペア系
sepasang sepatu「靴一足」、sepasang pengantin「新郎新婦」のように、ペアになるものは pasang です。
類別詞を使いこなす練習
効率的な練習は「冷蔵庫の中身を類別詞付きで説明する」ルーティンです。
筆者は毎朝、Ada tiga butir telur, dua buah apel, selembar keju, dan sekaleng cola di kulpas saya. のように唱えてから朝食を作っていました。
Tata Bahasa Baku Bahasa Indonesia Balai Pustaka 2003年 の類別詞の章には40以上の表が載っていて、中級以降はここを辞書代わりに参照できます。
教科書 Indonesian Reference Grammar James Sneddon 1996年 Allen & Unwin も類別詞の分類が秀逸で、英語話者向けですが日本人学習者にも有用です。
よくある誤用と筆者の失敗談
最初の失敗は「5人の観光客」を lima buah turis と言ってしまったことです、buah は無生物にしか使えないので通じるけれど違和感が残ります。
正しくは lima orang turis、店員さんに「turis は生き物だから orang」と直されて以来、命ある対象には orang か ekor と覚えました。
次の失敗は jembatan「橋」を ekor で数えてしまったケース、橋は無生物なので buah です、教師に大爆笑されました。
まとめと次のステップ
類別詞は「品詞」ではなく「文化的マナー」として体に染み込ませるのがコツです。
最初は orang・ekor・buah の3つだけ完璧に使えるようにし、余裕が出たら lembar・butir・batang を追加してください。
次回の記事では所有表現 -nya と kepunyaan を扱いますので、合わせて学ぶと語順感覚が一気に立体的になります。
市場とワルンで鍛える類別詞
類別詞が身につく一番の場所は市場とワルン(庶民食堂)です。
Pasar Beringharjo 1758年開設 Yogyakarta や Pasar Badung Denpasar で買い物をすると、店主が Berapa potong? Berapa ikat? と必ず類別詞付きで聞いてくれます。
ikat は「束」の類別詞で、seikat bayam「ほうれん草1束」、dua ikat kangkung「空心菜2束」が定番です。
ワルンでは Saya mau sate ayam sepuluh tusuk. 「鶏サテ10本」と tusuk(串)を使い、Sate ayam 10 biji と言うとネイティブに少し笑われます。
数詞と類別詞の語順
基本語順は「数詞+類別詞+名詞」で、dua orang guru が標準です。
ただし名詞を先に出して強調する場合は Guru itu ada dua orang. 「その先生は2人いる」という倒置語順も使えます。
不定冠詞的に「ある〜」と言いたい時は seorang/seekor/sebuah で固定、satu orang/satu ekor はやや堅い印象になります。
マレー語との差異
マレー語(Bahasa Melayu)でも類別詞は基本的に同じですが、batang の使用範囲がマレー語の方が広く、川や道路にも sebatang sungai や sebatang jalan と使います。
インドネシア語では sebuah sungai が一般的で、sebatang sungai は文語か詩的表現に限られます。
マレーシア Kuala Lumpur の書店 Kinokuniya Suria KLCC 1992年開店 で Tatabahasa Dewan 2008年改訂第3版 Dewan Bahasa dan Pustaka を手に入れると、マレー語側の類別詞の全貌が掴めます。
Anki とフラッシュカード練習
筆者は Anki 2006年 Damien Elmes のデッキを自作し、片面に名詞、裏面に類別詞+数詞例文を書きました。
例えば表: kucing、裏: tiga ekor kucing liar di halaman(庭に野良猫3匹)という形式で200枚作り、2週間で自然に口から出るようになりました。
Memrise 2010年 Ed Cooke の Indonesian 1-7 コースにも類別詞の例文が含まれており、通勤時間に繰り返すと定着が早いです。
筆者の到達点
類別詞の使い分けが完璧になったと感じたのは学習開始から半年後、現地の友人との何気ない会話で自然に seekor と sebuah を切り替えていた瞬間でした。
最初は頭の中で「動物→ekor」と翻訳していましたが、繰り返しの音読で言葉とジェスチャーが連結し、反射的に出るようになります。


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