スラウェシ—蘭の花のような形をした秘境の島
スラウェシ島は4本の半島が伸びる蘭のような独特の形をした島で、面積17万平方キロはインドネシアで4番目の大きさを誇ります。
トラジャ族の独特な葬送儀礼、ブギス族の航海文化、ミナハサ族の多彩な山岳料理、ブナケンの美しいサンゴ礁と、訪れる人すべてを圧倒する文化的多様性がこの島の魅力です。
この記事では、スラウェシ各地の見どころを、語学学習者の視点も交えてお届けします。
島の構造と玄関口
スラウェシは中心から北半島、東半島、南東半島、南半島の4本が伸びる特殊な形状で、州は6つ(北・中部・南・南東・西・ゴロンタロ)に分かれます。
南の州都Makassar(Sultan Hasanuddin国際空港UPG)、北の州都Manado(Sam Ratulangi空港MDC)が主要ハブで、ジャカルタから直行便で約3時間です。
南スラウェシ—マカッサルとトラジャ
Makassar(マカッサル)
人口150万のマカッサルは旧名ウジュン・パンダン、16世紀からブギス人とマカッサル人が南シナ海貿易を牛耳ってきた海の都です。
Fort Rotterdam(1545年オランダ築、1634年現在の形、英雄Diponegoro 1785-1855が幽閉された場所)、Trans Studio Makassar(2009年開業、屋内テーマパーク)、Losari Beach(夕日スポット)がハイライトです。
マカッサル料理はConto Makassar(黒牛スープ)、Coto Paraikatte(1956年創業、Jl. Lombok)、Pallubasa Serigala(1984年創業、Jl. Serigala)、Sop Konro(骨付き牛リブのスープ、Sop Konro Karebosi 1968年創業)が三大名物として知られ、朝から晩まで混雑しています。
デザートのEs Pisang Ijoはバナナの緑蒸し、Es Pallu Butungはバナナのココナツソース添えで、暑気払いに最適です。
Tana Toraja(タナ・トラジャ)
マカッサルから北へ車で8時間、標高700-2000mの高原にあるタナ・トラジャは、トラジャ族の独特な葬送文化で世界的に知られています。
トンコナン(伝統家屋、船の形を模した反り屋根)、Kete Kesu村(1718年建立の王族墓所、崖に並ぶタウタウ人形)、Lemo村の崖墓(16世紀から)、Londa洞窟墓地、Batutumonga展望台(ライステラス絶景)が巡礼ルートです。
葬儀シーズンは6-9月がピークで、数日かけて行われる大葬儀Rambu Soloでは水牛の生贄、闘牛、舞踊、親族の交流が行われます。
Ma Nene儀礼(数年に一度、亡くなった先祖の遺体を掘り起こして新しい衣服に着替えさせる、ギリシャ正教徒の方々にはイメージしづらい独特の慣行)も含め、トラジャの死生観は文化人類学者が世界中から研究に訪れる理由です。
Rantepaoの町を拠点に、現地ガイド(1日50万ルピア前後)を雇うのが定石です。
インドネシア語で「Apa kabar?(お元気ですか)」から始めて、「Bagaimana upacara ini?(この儀礼はどういうものですか)」と尋ねれば、ガイドも喜んで丁寧に説明してくれます。
Bira(ビラ)とピニシ船造り
マカッサルから南東へ200km、Taniakayah地区のTana Beruではブギス族が伝統的なピニシ船(2017年ユネスコ無形文化遺産登録)を今も手作業で建造しています。
その近くのビーチBiraは白砂と透明度抜群の海で、ダイビングとシュノーケリングの隠れた名地です。
北スラウェシ—マナドとブナケン
Manado(マナド)
北スラウェシの州都マナドは、人口約43万のキリスト教徒(多数派)とミナハサ族の街で、マカッサルとはまったく違う雰囲気です。
Monumen Yesus Memberkati(2007年完成、高さ50m、世界第二の立像のキリスト像)、Tugu Boboca、Megamas地区の海辺が観光名所です。
ミナハサ料理はスパイシーで大胆、Paniki(コウモリ料理)、Rintek Wuuk(RW、犬肉料理、Christian以外は避けて)、Cakalang Fufu(カツオ燻製)、Tinutuan(野菜雑炊)などの独特な料理が並びます。
Bunaken海洋公園
1991年にBunaken国立海洋公園として指定されたBunaken島とその周辺は、世界有数のダイビングスポットです。
水深1500mまで一気に落ち込むドロップオフ、390種のサンゴ、3000種以上の魚、ウミガメ、マンタ、バラクーダに出会える透明度抜群の海は、写真家と研究者のメッカです。
マナドから高速船で45分、島のダイブロッジに泊まり込んで毎日2-3本潜るのが定番スタイルで、乾季の4-11月がベストシーズンです。
TomohonとLake Tondano
マナドから車で45分、標高700mの高原都市Tomohonは花の都として知られ、2010年から毎年Tomohon International Flower Festivalが開催されています。
近郊のLake Tondano、Mahawu火山、Linow湖(色が変わる温泉湖)、Sipiso-Piso滝もドライブコースで楽しめます。
一方、Tomohonには有名な「エクストリーム市場」Tomohon Traditional Marketがあり、コウモリ、ニシキヘビ、犬、イヌコウモリなど珍獣が並ぶ光景は衝撃的です。
中部スラウェシ—パルとロレ・リンドゥ
Palu(パル)
中部スラウェシの州都パルは2018年9月28日にマグニチュード7.5の地震と液状化で大きな被害を受けた街で、現在も復興が進んでいます。
Museum Sulawesi Tengah、Palu Grand Mall、Tanjung Karang Beachが観光スポットです。
Lore Lindu国立公園
パルの東にあるLore Lindu国立公園(1982年設立、2178平方キロ)は、紀元前2500年頃に作られたと推定される謎の巨石像(メガリス)で有名です。
Bada渓谷、Besoa渓谷、Napu渓谷に点在する400以上の石像は、起源や意味が未だに解明されていないミステリーで、考古学ファンの聖地となっています。
固有種のアノア(矮小水牛)、Babirusa(鹿豚)、Maleo(卵を温めない鳥)などスラウェシ固有の動物にも出会える機会があります。
南東スラウェシ—ワカトビ
Wakatobi(ワカトビ)
南東スラウェシ沖のWakatobi諸島(Wangi-Wangi、Kaledupa、Tomia、Binongkoの4島の頭文字)は、2002年に国立海洋公園、2012年にユネスコ生物圏保護区に指定された世界有数のダイビング聖地です。
750種のサンゴ、942種の魚が記録され、Wakatobi Dive Resort(1995年開業)は世界中のダイバーに人気です。
Bajau族(海の遊牧民)の村も点在しており、独特の水上生活と漁撈文化に触れることができます。
スラウェシの言語多様性
スラウェシには100以上の言語が存在すると言われ、ブギス語(400万話者)、マカッサル語(200万話者)、トラジャ語(75万話者)、ミナハサ語(Tombulu、Tondano、Tonsea等、20-30万話者)、Bajau語などが日常的に使われています。
ブギス語は古代からLontaraという独自の文字体系を持ち、19世紀に書かれた世界最長の叙事詩Sureq Galigo(約6000ページ)はインドネシア政府によって国宝に指定され、2011年にユネスコ記憶遺産に登録されています。
マカッサルの市場で「Tabe(失礼します)」、「Sumanga(ありがとう、マカッサル語)」と一言添えるだけで、地元の人の顔がほころびます。
スラウェシ旅行のコツ
スラウェシは広大で、マカッサルとマナドを同時に楽しむには最低でも10日間、できれば2週間は必要です。
トラジャに行くなら6-9月の乾季、ブナケン・ワカトビでダイビングなら4-11月を狙いましょう。
国内線はLion Air、Wings Air、Batik Air、Garudaが毎日飛んでいますが、天候による遅延も多いので余裕ある日程が安心です。
マカッサルとマナドの間は直行便がなく、必ずジャカルタ経由になることも忘れないでください。
スラウェシは手つかずの自然、独特の死生観、独自の言語と文字、そしてダイビング愛好家には天国のような海を備えた、インドネシアで最も文化人類学的に刺激的な島です。
ジャワ島とバリだけのインドネシア観はここで大きく揺さぶられます。
コーヒーとお土産
南スラウェシのToraja Coffee(Kalosi産が有名)は日本のキーコーヒーが1976年から直接契約農園で栽培しており、「トアルコ トラジャ」として日本でも知られています。
Kopi Toraja Sapanは特に標高1500-2000mの高地栽培で、フルーティな酸味とワインのような香味が特徴です。
マカッサルのお土産にはKacang Disco(ピーナツ菓子)、Otak-Otak(魚のすり身焼き)、シルクのLipa Sabbe(サロン)がおすすめで、Pelita Mas(1975年創業)やSomba Opu通りのお土産店で買えます。
日本からの直行便がないスラウェシは、一歩踏み込んだ旅人のための島だと言えます。


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