南タイ旅行完全ガイド クラビ・サムイ・ピピ諸島とマレー文化

南タイ(パクターイ)は、クラ地峡から南下してマレーシア国境までの14県からなる地域で、アンダマン海とタイ湾に挟まれた細長い半島地形が特徴です。

プーケット以外にも、クラビ・ピピ諸島・サムイ島・パンガン島・タオ島・ホアヒン・クラブリーなど、世界有数のビーチリゾートが点在しています。

マレー系ムスリム文化とタイ仏教文化が融合した独自の地域性を持ち、南部方言(パーサー・タイ・パクターイ)やジャウィ文字が使われる地域も存在します。

クラビ県

アオナンビーチと周辺

クラビ県(Krabi、人口約3万人)は、プーケットの東約160kmに位置し、石灰岩の断崖と透明度の高い海が織りなす絶景で知られる県です。

アオナンビーチ(Ao Nang Beach)はクラビ観光の拠点で、ホテル・レストラン・ダイビングショップが集積し、ボート乗り場からはライレイビーチやホン諸島など周辺のビーチへアクセスできます。

ライレイビーチとロッククライミング

ライレイビーチ(Railay Beach)は陸路でアクセスできない秘境ビーチで、アオナンからロングテールボートで約15分、石灰岩の断崖に囲まれた4つのビーチ(プラナン、ウエスト・ライレイ、イースト・ライレイ、トンサイ)からなります。

世界的なロッククライミングの聖地としても知られ、プラナンビーチの断崖には約700本以上のルートが設定されており、1980年代から多くのクライマーを惹きつけてきました。

プラナン洞窟(Phra Nang Cave、別名プリンセス洞窟)には、地元漁師が航海の安全を祈って奉納した木製の男根像が多数並ぶ独特の聖地があります。

ホン諸島

ホン諸島国立公園(Than Bok Khorani National Park内、ホン島・ライディン島・パッカビア島)は、「ホン(部屋)」と呼ばれる石灰岩に囲まれたラグーンを擁する秘境群島です。

カヤックツアーで洞窟を抜けて内部のラグーンに入る体験は、クラビで最も人気のあるアクティビティのひとつです。

ピピ諸島

ピピ・ドン島とピピ・レイ島

ピピ諸島(Phi Phi Islands、1983年国立公園指定)は、ピピ・ドン島(大ピピ、有人島)とピピ・レイ島(小ピピ、無人島)を中心とする6つの島々からなります。

ピピ・ドン島のトンサイ湾は主要な船着場で、ホテル・レストラン・ダイビングショップが集積し、陸路交通がないためすべて徒歩か自転車で移動します。

2004年12月26日のスマトラ沖地震津波により、トンサイ湾とローダラム湾の両側から押し寄せた津波で島は壊滅的被害を受けましたが、その後の復興により観光地として蘇りました。

マヤベイ

マヤベイ(Maya Bay、ピピ・レイ島)は2000年公開のレオナルド・ディカプリオ主演映画『ザ・ビーチ』の撮影地として世界的に有名になり、年間200万人以上の観光客が押し寄せたことでサンゴ礁が壊滅的被害を受けました。

2018年6月から2022年1月までタイ政府により閉鎖され、環境回復事業が実施された後、現在は1日の入場者数制限と遊泳禁止を条件に再開されています。

サムイ島とタイ湾の島々

サムイ島

サムイ島(Koh Samui、スラタニー県、面積228平方km)はタイ第3位の面積を持つ島で、タイ湾西岸にあります。

1989年に島内の主要道路(ラオンルートナワタン、総延長51km)が完成し、1998年のサムイ国際空港(運営:バンコクエアウェイズ)開港により本格的な国際リゾート地となりました。

チャウエンビーチ(Chaweng Beach、全長7km)は島最大のビーチで、ホテル・バー・レストランが集積する繁華街、ラマイビーチ(Lamai Beach)は中級リゾートが多く静かなエリアです。

ナトンタウン(島西岸)はフェリー発着港で、行政・銀行・市場が集中する生活エリアとなっています。

ビッグブッダと寺院

ワット・プラヤイ(Big Buddha Temple、サムイ島北東部)は1972年に建立された高さ12mの黄金仏像を擁する寺院で、サムイ島のシンボルとして人気の観光スポットです。

ワット・プラン(Wat Plai Laem、ビッグブッダ近郊)には、1999年建立の18本の腕を持つ観音像があり、中華系タイ人の参拝者に特に篤く信仰されています。

パンガン島のフルムーンパーティー

パンガン島(Koh Phangan、サムイ島北15km、スラタニー県)は、毎月満月の夜に開催されるフルムーンパーティー(Full Moon Party)で世界的に有名な島です。

1985年頃にハードリン岬のビーチで小規模な誕生会として始まった祭りが国際的なクラブイベントに発展し、現在では1回あたり1万人から3万人の若者が集まります。

島の中央部はタンサデット国立公園(1983年指定)で、ラーマ5世が1888年から1909年まで14回訪れた記念碑と、ナムタック・タンサデット滝があります。

タオ島

タオ島(Koh Tao、面積21平方km、タイ湾中部)は世界有数のダイビングライセンス取得地として知られ、年間約15万人が初級ダイビング講習(PADIオープンウォーター)を受講します。

1933年から1947年まで政治犯の流刑地として使用されていた歴史もあり、現在は50以上のダイビングショップが営業するダイバーの聖地となっています。

トラン県とサトゥン県

トラン

トラン県(Trang、人口約6万人)は、アンダマン海に面したのんびりとした雰囲気の南部県で、20以上の美しい島々と豚肉料理の名産地として知られています。

エメラルド洞窟(Tham Morakot、コームック島)は、海上から狭い洞窟を80m泳いで抜けると現れる秘密のラグーンで、世界的にもユニークな自然体験として注目されています。

トランは中華系住民が多く、ムーヤーントラン(トラン風豚の丸焼き)や手作り中華菓子・点心の伝統が今も息づく美食の街です。

サトゥン

サトゥン県(Satun)はマレーシア国境のムスリム多数派県で、人口の約67%がマレー系ムスリムです。

リペ島(Koh Lipe、タルタオ国立公園内)は「タイのモルディブ」と呼ばれる美しい珊瑚礁の島で、近年は欧米人バックパッカーに絶大な人気があります。

ソンクラーとハジャイ

ハジャイ

ハジャイ(Hat Yai、ソンクラー県、人口約16万人)は南部最大の商業都市で、マレーシア・シンガポールからの買い物観光客で賑わう国際都市です。

市中心部のキムヨンマーケット(Kim Yong Market、1950年代創業)は、ドリアン・マンゴスチン・カシューナッツなどの南国フルーツと乾物の宝庫です。

ソンクラー

ソンクラー(Songkhla、人口約7万人)は、ハジャイの北約30kmにある静かな古都で、タイ湾とソンクラー湖に挟まれた独特の地理を持ちます。

サミラビーチ(Samila Beach)の人魚像(1966年設置、彫刻家ジトゥ・プーピョン作)はソンクラーの象徴として親しまれており、シャム湾に面した美しい海岸線が広がります。

ホアヒン

ホアヒン(Hua Hin、プラチュワップキーリーカン県、バンコクから南約200km)は、1920年代にラーマ7世(在位1925-1935年)が離宮クライ・カンウォン(懸念から遠く離れた場所)を建設したことでタイ初の王室リゾート地となりました。

1922年開業のホアヒン駅は、タイ最古の現役鉄道駅舎のひとつで、チーク材の伝統的なタイ様式建築が保存されており撮影スポットとして人気です。

プラヤーナコン洞窟(Phraya Nakhon Cave、カオサムロイヨート国立公園内)には、1890年にラーマ5世が訪れた記念に建立されたクーハーカルハット宮殿があり、天井の穴から射し込む光が幻想的な風景を作り出します。

南部料理の特徴

南タイ料理は、タイ料理の中でも特に辛さと香辛料が強い地域料理として知られ、ウコン(カミン)・胡椒・唐辛子・魚醤(ブドゥ、マレー文化由来の魚醤)を豊富に使います。

カオヤムとマッサマン

カオヤム(Khao Yam、混ぜご飯サラダ)は、青い色に染めたジャスミンライスに、乾燥エビ・パパイヤ・長豆・レモングラス・ライム葉・ブドゥソースを混ぜ合わせた南部の朝食定番料理です。

マッサマンカレー(Massaman Curry)は、ペルシャ・インド・マレーの影響を受けた甘辛いカレーで、2011年にCNN Goのランキングで「世界で最も美味しい料理」の第1位に選出されました。

クアクリンと発酵食品

クアクリン(Kua Kling、ひき肉の辛炒め)は、ナコンシータンマラート発祥の超激辛炒め物で、ターメリックと唐辛子ペーストで味付けされます。

ナムブドゥ(マレー系魚醤)とサトーマメ(におい豆、臭豆)は南部料理独特の香りの源で、慣れない観光客には強烈に感じるかもしれません。

南部方言と文化

パーサー・タイ・パクターイ

南部方言は早口で声調が独特、語尾に「ナー」「ハ」「ワ」などの特徴的な終助詞が付くため、標準タイ語学習者にとって聞き取りが難しい場合があります。

「ワイ」(速い、標準タイ語と同じ発音だが意味が異なる)、「フン」(お金、標準タイ語では「ンゴーン」)など、独自語彙も豊富です。

マレー文化との融合

パタニ・ヤラー・ナラティワート・サトゥンの南部4県ではマレー系ムスリムが人口の多数を占め、標準タイ語・南部タイ語・マレー語(ジャウィ文字表記)の三重言語環境が維持されています。

注意点として、パタニ・ヤラー・ナラティワート3県は独立運動に関連する治安情勢のため、日本外務省は渡航自粛を呼びかけており、訪問は慎重な判断が求められます。

南タイへのアクセス

クラビ国際空港・サムイ国際空港・ハジャイ国際空港・スラタニー空港・トラン空港など各地に空港があり、バンコクから1時間から1時間30分でアクセス可能です。

鉄道ではバンコクのクルンテープ・アピワット中央駅からハジャイまで南部線で約15時間、寝台列車(ブランコワン18号)が観光客にも人気の移動手段となっています。

シンガポール発の豪華寝台列車「イースタン&オリエンタル・エクスプレス」(1993年運行開始)は、バンコクからクアラルンプール経由シンガポールまで南部タイを縦断する3泊4日の旅で、1人約5000米ドル以上の高級ツアーとして知られています。

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