タイのビジネス現場では、メールで済ませるよりも電話でサクッと話を進める習慣が根強く残っています。
特に価格確認や納期調整、急ぎの確認事項は「โทรไปเลย(電話でかけるのが手っ取り早い)」が暗黙のルールです。
本記事では、電話口で使うタイ語の定型表現を、掛ける側・受ける側の両方の立場から整理します。
電話を掛けるときの最初の一言
自己紹介
「สวัสดีครับ ผมชื่อ〇〇 จากบริษัท△△ครับ(こんにちは、△△社の〇〇と申します)」が基本の型です。
会社名の前に จาก(〜から)を入れるのがタイ流で、日本語の「△△の〇〇です」と同じ感覚です。
担当者呼び出し
「ขอสายคุณสมชายครับ(ソムチャイさんをお願いします)」の ขอสาย は直訳すると「回線をください」で、電話特有の言い回しです。
部署名で呼び出すときは「ขอสายฝ่ายจัดซื้อครับ(購買部をお願いします)」と言います。
用件を告げる
「เรื่องใบเสนอราคาที่ส่งไปเมื่อวานครับ(昨日送付した見積書の件です)」のように、冒頭で用件を一文にまとめると相手が身構えてくれます。
電話を受けるときの応答
第一声
タイの会社員は電話を取ると「สวัสดีค่ะ บริษัท〇〇ค่ะ(〇〇社です)」と社名を名乗ります。
相手が聞き取りやすいよう、社名をやや丁寧に、ゆっくり発音するのが慣習です。
取次ぎ
「กรุณารอสักครู่นะคะ กำลังโอนสายให้ค่ะ(少々お待ちください、お繋ぎします)」が定番です。
โอนสาย は「転送する」という意味の電話専用動詞で、どの業種でも通じます。
不在時の対応
「คุณสมชายไม่อยู่ที่โต๊ะค่ะ ให้ฝากข้อความไหมคะ(ソムチャイは席を外しております、伝言をお預かりしましょうか)」と丁寧に返します。
会議中なら「ตอนนี้อยู่ในที่ประชุมค่ะ จะให้โทรกลับไหมคะ(ただいま会議中です、折り返しお電話しましょうか)」が自然です。
聞き取れなかったときのフレーズ
聞き返し
「ขอโทษครับ ฟังไม่ชัดครับ ช่วยพูดอีกครั้งได้ไหมครับ(すみません、よく聞こえませんでした、もう一度お願いできますか)」が万能です。
スピードを落としてほしい場合は「ช่วยพูดช้า ๆ หน่อยครับ(ゆっくり話してください)」と付け加えます。
スペル確認
固有名詞や数字は「ช่วยสะกดชื่อให้หน่อยครับ(お名前のスペルを教えてください)」と必ず確認します。
タイ語の電話では英数字の聞き間違いが頻繁に起こるため、「เลข 5 หรือเลข 9 ครับ(5ですか9ですか)」と数字ごとに確認するのが安全です。
電話商談の具体的フレーズ
価格交渉
「ราคาที่เสนอมายังไม่ตรงกับงบที่เรามีครับ ขอปรับลดอีกสัก 5 เปอร์เซ็นต์ได้ไหมครับ(ご提示の価格は弊社予算と合致しません、あと5パーセント値引きいただけませんか)」のように、具体的な数字を出すのがコツです。
タイの商習慣では「ลองคุยกับหัวหน้าก่อนนะคะ(上司に相談します)」と即答を避ける文化があり、その場で結論を急がないのが鉄則です。
納期確認
「ของจะถึงเมื่อไหร่ครับ(品物はいつ届きますか)」と単刀直入に聞いて構いません。
「ภายในสิ้นเดือนนี้(今月末までに)」「ต้นเดือนหน้า(来月初旬に)」のように期間で答える習慣があり、正確な日付を欲しいときは「วันที่แน่นอนคือวันที่เท่าไหร่ครับ(正確な日付は何日ですか)」と踏み込みます。
クレーム対応
「สินค้าที่ส่งมามีปัญหาครับ(届いた品物に問題があります)」「ขอคุยเรื่องการเคลมหน่อยครับ(クレームについて話したいです)」が切り出し方です。
相手の初動対応が悪ければ「ขอคุยกับผู้จัดการโดยตรงได้ไหมครับ(直接マネージャーと話せますか)」でエスカレーションします。
電話を切るときの定型
「ขอบคุณมากครับ สวัสดีครับ(ありがとうございました、失礼します)」が最も標準的です。
少し丁寧にしたいときは「ขอบคุณที่สละเวลานะครับ(お時間をいただきありがとうございます)」と付け加えます。
相手が先に切るのを待つのがタイ流のマナーで、特に目上の相手には「กรุณาวางสายก่อนนะครับ(お先にお切りください)」と譲る場面もあります。
電話でよく使う数字表現
電話では書面と違い聞き間違いが多いので、数字は区切って読みます。「หมายเลข 081-234-5678 นะคะ(081-234-5678です)」のように หมายเลข(番号)を前に付けると親切です。
金額は「หนึ่งแสนบาท(10万バーツ)」「สิบล้านบาท(1000万バーツ)」のように万単位で刻みます。タイ語は「10万=100×1000=แสน」「100万=ล้าน」「1000万=สิบล้าน」の独特の桁区切りなので、慣れておかないと瞬時に変換できません。
学習リソース
Benjawan Poomsan Becker「Thai for Intermediate Learners」(Paiboon Publishing 2002)には電話応対の章があり、タイ人講師の音声CDで耳を慣らせます。
AUA Language Center(1952年創立、ラーチャダムリ通り)のビジネスタイ語コースでは、実際の電話応対ロールプレイを週2回行う短期プログラムが人気です。
タイ国政府観光庁(TAT、1960年設立)が発行する無料小冊子「ภาษาไทยสำหรับนักธุรกิจ」にも電話定型文が掲載されており、バンコクのTATオフィスで入手できます。
まとめ
電話商談は顔が見えないぶん、声のトーンと定型表現が勝負です。冒頭の自己紹介、用件の一文要約、丁寧な聞き返し、最後のお礼まで、本記事のフレーズを順番通りに口に出せば、タイ人担当者から「คุณพูดไทยดีมากค่ะ(タイ語がお上手ですね)」と言ってもらえるはずです。
留守番電話とボイスメッセージ
タイでは固定電話の留守電より、携帯電話のSMSやLINEのボイスメッセージが主流です。とはいえ、大手企業の代表番号では自動応答メッセージが流れることがあります。
「ขณะนี้ไม่สามารถรับสายได้ กรุณาฝากข้อความหลังเสียงสัญญาณ(ただいま電話に出られません、発信音の後にメッセージをお残しください)」が標準的な留守電文言です。
留守電にメッセージを残すときは「สวัสดีค่ะ นี่คือคุณ〇〇จากบริษัท△△ค่ะ โทรมาเรื่อง◇◇ กรุณาโทรกลับที่เบอร์ 02-XXX-XXXXค่ะ ขอบคุณค่ะ(〇〇社の△△です、◇◇の件でお電話しました、02-XXX-XXXXまでお電話ください)」と、名前・社名・用件・折り返し番号の4点を漏らさず伝えます。
電話商談のタブーと文化的注意点
タイでは昼休み(12時〜13時)と、金曜午後3時以降の電話は歓迎されません。仏教の祝日や王室関連の式典日は会社全体が休みになることが多く、事前にカレンダーを確認するのが礼儀です。
また、電話口で怒鳴ったり声を荒げたりするのは決定的なタブーで、ใจเย็น(心を冷静に)がタイビジネスの鉄則です。クレーム処理でも淡々と事実を並べる姿勢が、結果的に早い解決につながります。
実例 見積もり確認の電話
以下は、バンコクの日系商社担当者がタイのサプライヤーに見積書の内容を確認する場面の一例です。
営業「สวัสดีครับ ผมทานากะจากบริษัทโตเกียวเทรดดิ้งครับ ขอสายคุณอั๋นจากฝ่ายขายครับ(こんにちは、東京トレーディングの田中です、営業部のアンさんをお願いします)」
受付「รอสักครู่นะคะ กำลังโอนสายให้ค่ะ(少々お待ちください)」
アン「สวัสดีครับ อั๋นพูดครับ(はい、アンです)」
営業「เรื่องใบเสนอราคาที่ส่งมาเมื่อวานครับ ราคาต่อหน่วยของรุ่น TX-500 อยู่ที่ 850 บาทใช่ไหมครับ(昨日お送りいただいた見積書の件ですが、TX-500の単価は850バーツで間違いないでしょうか)」
アン「ใช่ครับ 850 บาทต่อชิ้น โดยสั่งขั้นต่ำ 500 ชิ้นครับ(はい、1個850バーツ、最低発注は500個です)」
営業「ถ้าสั่ง 1,000 ชิ้น ราคาจะลดได้ไหมครับ(1000個注文したら値引き可能でしょうか)」
アン「ได้ครับ ลดเหลือ 820 บาทต่อชิ้นครับ(はい、820バーツに下げられます)」
営業「ขอบคุณครับ ผมจะคุยกับทีมก่อน แล้วส่งใบสั่งซื้อให้ภายในวันศุกร์นี้ครับ(ありがとうございます、チームと相談し金曜までに発注書を送ります)」


コメント