スウェーデン語の交渉は、フレーズを単体で覚えるだけでは足りません。
大事なのは、ひと言ずつの「往復」がどうつながって着地するかという流れです。
この記事では、価格交渉・条件交渉・社内確認の3場面を、AとBの会話で順番に追います。各往復を話者・スウェーデン語・読み方・日本語訳の4列でならべ、その前後に「いま何が起きているか」「次にどう返すか」を解説します。
登場人物はこう設定します。
- A=買い手(あなた側、スウェーデンのサプライヤーから仕入れる日本企業の担当者)
- B=売り手(スウェーデンのサプライヤーの営業担当)
会話文をなぞるうちに、交渉の「型」が体に入っていきます。スウェーデン語は丁寧でも淡々と進むので、テンポをつかむことが大切です。
場面1:価格交渉のダイアログ
最初の場面は、提示された単価が予算より高かったケースです。
ここでのAのねらいはふたつあります。
- 頭ごなしに値切らず、まず相手の価格の根拠を引き出すこと
- 「値下げ」ではなく「条件次第」の話に持っていくこと
導入:金額に触れる前のひと言
いきなり「高い」と言わず、感謝と前向きな姿勢から入ります。
| 話者 | スウェーデン語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Tack för offerten. Produkten ser bra ut, men jag vill prata om priset. | タック フォール オッフェルテン。プロドゥクテン セール ブラー ウート、メン ヤー ヴィル プラータ オム プリーセット | 見積りありがとうございます。製品は良さそうですが、価格について相談させてください。 |
| B | Visst. Vad hade du tänkt dig? | ヴィスト。ヴァード ハーデ ドゥ テンクト ダイ | もちろんです。どのあたりをお考えですか? |
Bの “Vad hade du tänkt dig?” は「いくらを想定しているか」を尋ねる定番です。ここで自分から金額を言うか、相手に言わせるかが最初の分かれ道になります。
本題:根拠を引き出す
金額を即答する前に、価格の内訳や相場感を確認します。
| 話者 | スウェーデン語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Ärligt talat är det lite högre än vi budgeterat. Kan du förklara hur priset är satt? | エーリグト ターラット エール デ リーテ ホーグレ エン ヴィ ブュッゲテーラット。カン ドゥ フォークラーラ ヒュール プリーセット エール サット | 正直、予算より少し高いです。価格の決まり方を説明してもらえますか? |
| B | Självklart. Styckpriset speglar materialkostnaden och en liten ordervolym. | シェルヴクラート。スティュックプリーセット スペーグラル マテリアールコストナーデン オク エン リーテン オーデルヴォリューム | もちろんです。単価には材料費と少量発注が反映されています。 |
“Ärligt talat”(正直に言うと)は本音を切り出す枕詞で、押しつけがましくならずに踏み込めます。Bが「少量発注だから高い」と言ったので、Aには「量を増やす」というカードが見えました。
展開:条件付きで切り返す
相手の発言を逆手に取り、量と引き換えに値下げを提案します。
| 話者 | スウェーデン語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Jag förstår. Om vi dubblade ordern, skulle du kunna ge ett bättre styckpris? | ヤー フォーシュトール。オム ヴィ ドゥブラーデ オーデルン、スクッレ ドゥ クンナ イェ エット ベットレ スティュックプリース | なるほど。発注量を倍にしたら、単価を下げてもらえますか? |
| B | Det skulle kunna funka. Med dubbla volymen kan jag ta bort runt åtta procent. | デ スクッレ クンナ フンカ。メ ドゥブラ ヴォリューメン カン ヤー ター ボート ルント オッタ プロセント | それなら可能です。倍の量なら、8%ほど引けます。 |
“ta bort … procent”(〜%取り除く=値引く)は、くだけた値引きの言い方です。8%という具体的な数字が出たので、ここからは「もう少し」を狙うか、合意するかの判断になります。
着地:上乗せを狙って確認する
一度の譲歩で満足せず、さらに小さな上乗せを引き出してから固めます。
| 話者 | スウェーデン語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Det är en bra början. Kan du göra tio procent om vi även betalar i förskott? | デ エール エン ブラー ボーリャン。カン ドゥ ヨーラ ティーオ プロセント オム ヴィ エーヴェン ベターラル イ フォーシュコット | 良い出発点ですね。前払いもするなら10%にできますか? |
| B | Då säger vi så. Tio procent för dubbel volym och förskottsbetalning. | ドー セーイェル ヴィ ソー。ティーオ プロセント フォール ドゥッベル ヴォリューム オク フォーシュコッツベターニング | いいでしょう。倍の量と前払いで10%引きです。 |
| A | Toppen. Låt mig bekräfta — tio procent rabatt, dubbel volym, betalt i förväg. | トッペン。ロート マイ ベクレフタ、ティーオ プロセント ラバット、ドゥッベル ヴォリューム、ベタルト イ フォールヴェーグ | では確認です。10%引き、倍量、前払い、ですね。 |
最後にAが内容を口頭で復唱しているのがポイントです。”Låt mig bekräfta”(確認させてください)で要点を読み上げると、後日の「言った言わない」を防げます。
場面2:条件交渉のダイアログ
次は、価格はほぼ決まったあとの「条件」をめぐる場面です。
納期・契約期間・サポート範囲など、金額以外の論点が交渉の中心になります。Aのねらいは、譲れる点と譲れない点を切り分けて「交換」することです。
切り出し:論点を並べる
まず、まだ詰まっていない条件をテーブルに並べます。
| 話者 | スウェーデン語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Priset funkar för oss. Nu vill jag reda ut leverans och avtalsvillkor. | プリーセット フンカル フォール オス。ヌー ヴィル ヤー レーダ ウート レヴェランス オク アヴタールスヴィルコール | 価格は問題ありません。次は納期と契約条件を整理したいです。 |
| B | Låter bra. Vilket är viktigast för dig? | ローテル ブラー。ヴィルケット エール ヴィクティガスト フォール ダイ | いいですね。どれが一番重要ですか? |
“reda ut”(整理して片づける)は、複数の論点をまとめるときに使えます。Bの “Vilket är viktigast?”(どれが一番重要か)には、こちらの優先順位を正直に明かすかどうかの駆け引きがあります。
本題:優先順位を交換する
「これが大事」と伝えると同時に、相手の事情も聞きます。
| 話者 | スウェーデン語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Leveranstiden är avgörande. Vi behöver första leveransen inom tre veckor. | レヴェランスティーデン エール アヴョーランデ。ヴィ ベホーヴェル フシュタ レヴェランセン イノム トレー ヴェッコル | 納期が決定的です。最初の納品を3週間以内にお願いしたいです。 |
| B | Tre veckor är snävt. Vår normala ledtid är fyra. | トレー ヴェッコル エール スネーヴト。ヴォール ノルマーラ レードティード エール フューラ | 3週間は厳しいです。標準の納期は4週間でして。 |
“ledtid”(リードタイム=発注から納品までの期間)は交渉の頻出語です。相手が「標準は4週間」と線を引いたので、Aは見返りを用意して短縮を頼む流れに入ります。
展開:見返りを添えて頼む
無理を通すのではなく、相手が動きやすくなる条件をセットにします。
| 話者 | スウェーデン語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Jag förstår. Om vi skriver på ett ettårsavtal, kan ni då prioritera vår första leverans? | ヤー フォーシュトール。オム ヴィ スクリーヴェル ポー エット エットオーシュアヴタール、カン ニー ドー プリオリテーラ ヴォール フシュタ レヴェランス | 分かります。1年契約を結ぶなら、初回出荷を優先してもらえますか? |
| B | För ett årsåtagande kan jag tidigarelägga första leveransen till tre veckor. | フォール エット オーシュオートーガンデ カン ヤー ティーディガレレッガ フシュタ レヴェランセン ティル トレー ヴェッコル | 年間契約なら、初回だけ3週間に前倒しできます。 |
“prioritera”(優先する)は、納期や対応のお願いに重宝します。Aは「契約期間」という相手が欲しいものを差し出し、欲しい「納期短縮」を得たわけです。
着地:残りの条件を確認する
主要な論点が決まったら、細かい条件も取りこぼさず確認します。
| 話者 | スウェーデン語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Perfekt. Och ingår support och utbyten i ettårsavtalet? | ペルフェクト。オク インゴール スポート オク ウートビューテン イ エットオーシュアヴターレット | 助かります。1年契約にはサポートと交換対応も含まれますか? |
| B | Ja, support ingår. Utbyte vid defekter också. | ヤー、スポート インゴール。ウートビューテ ヴィード デフェクテル オクソー | はい、サポート込みです。不良品の交換も含みます。 |
| A | Då tror jag att vi är överens om villkoren. | ドー トルー ヤー アット ヴィ エール オーヴェレンス オム ヴィルコーレン | では条件で認識が合いましたね。 |
“vi är överens om …”(〜について認識が一致した)は、合意間近を示す言い回しです。サポートや不良品交換のような「あとで揉めやすい点」をその場で言葉にしておくと安心です。
場面3:押し返しと社内確認のダイアログ
3つ目は、相手が強めに押してきて、その場で即決できない場面です。
ここでのAのねらいは、関係を壊さずに「持ち帰る」ことです。交渉では、即答を避けて一度引く動きも立派なカードになります。
押し返しを受け止める
相手が値下げを強く求めてきても、すぐ折れません。
| 話者 | スウェーデン語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| B | Ärligt talat behöver vi minst femton procent, annars går det inte igenom hos oss. | エーリグト ターラット ベホーヴェル ヴィ ミンスト フェムトン プロセント、アンナシュ ゴール デ インテ イェノム ホス オス | 正直、最低15%引きでないと、こちらで通りません。 |
| A | Jag hör vad du säger. Men femton procent är ett stort hopp från där vi är nu. | ヤー ホール ヴァード ドゥ セーイェル。メン フェムトン プロセント エール エット ストート ホップ フローン デール ヴィ エール ヌー | おっしゃることは分かります。ただ15%は今の水準から大きな開きです。 |
“Jag hör vad du säger.”(言いたいことは分かります)は、一度受け止めるやわらかい相づちです。同意ではなく「受け止め」なので、ここから自分の立場を返しても角が立ちません。
理由を尋ねて時間を作る
相手の数字の背景を聞きつつ、即決を避ける布石を打ちます。
| 話者 | スウェーデン語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Kan du hjälpa mig förstå var de femton procenten kommer ifrån? | カン ドゥ イェルパ マイ フォーシュトー ヴァール デ フェムトン プロセンテン コンメル イフローン | その15%の根拠を教えてもらえますか? |
| B | En konkurrent erbjöd oss en liknande produkt för mindre. | エン コンクレント エルビョード オス エン リークナンデ プロドゥクト フォール ミンドレ | 競合がもっと安く同等品を出してきたんです。 |
“var … kommer ifrån”(〜がどこから来ているか=根拠)を尋ねる言い方です。「競合の存在」という相手の事情が分かれば、対抗するか持ち帰るかを判断できます。
持ち帰りカードを切る
その場で答えず、社内に持ち帰る形で時間を確保します。
| 話者 | スウェーデン語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Det är bra att veta. Jag kan inte besluta om femton procent själv — låt mig stämma av med min chef. | デ エール ブラー アット ヴェータ。ヤー カン インテ ベスルータ オム フェムトン プロセント シェルヴ、ロート マイ ステンマ アーヴ メ ミン シェーフ | 参考になります。15%は私だけでは決められないので、上司に確認させてください。 |
| B | Inga problem. När kan du återkomma? | インガ プロブレム。ネール カン ドゥ オーテルコンマ | 大丈夫です。いつ頃お返事いただけますか? |
| A | Senast på torsdag. Jag skickar vårt motbud skriftligt. | セナスト ポー トォシュダーグ。ヤー フィッカル ヴォート モートブード スクリフトリグト | 木曜までに。こちらの対案を書面でお送りします。 |
“stämma av med min chef”(上司と確認する)は、即決を避ける世界共通の交渉カードです。”motbud”(対案・逆提案)は、ただ断るのではなく代わりの数字を返す姿勢を示します。
会話を組み立てる4つの型
3つの場面に共通する流れを抜き出すと、交渉の骨組みが見えてきます。
大きく次の4ステップでできています。
| ステップ | 役割 | 代表フレーズ(スウェーデン語) |
|---|---|---|
| 受け止める | 相手の主張を一度受ける | Jag hör vad du säger. / Jag förstår. |
| 掘り下げる | 根拠や優先順位を聞く | Kan du förklara hur priset är satt? |
| 交換する | 条件付きで譲る・頼む | Om vi …, kan ni då …? |
| 固める | 合意を口頭と書面で確認 | Låt mig bekräfta … / skriftligt |
この「受け止める→掘り下げる→交換する→固める」を覚えておくと、想定外の話題でも流れを立て直せます。スウェーデン語でも、この骨組みは同じように機能します。
交渉学の古典『Getting to Yes』(Roger Fisher・William Ury)でも、立場のぶつけ合いより、互いの利害を探って交換することが推奨されています。また、決裂時の最善の代替案を BATNA(Best Alternative To a Negotiated Agreement)と呼び、これを持っておくと「持ち帰る」「断る」の判断がぶれません。
想定シーン|会話が固まったときの立て直し
たとえば、相手が黙り込んで会話が止まる場面を考えてみましょう。
そんなときは、論点を一度整理し直すと再び動き出します。
| 話者 | スウェーデン語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Låt oss ta ett steg tillbaka och titta på vad vi är överens om hittills. | ロート オス ター エット ステーグ ティルバーカ オク ティッタ ポー ヴァード ヴィ エール オーヴェレンス オム ヒッティルス | 一度引いて、これまで合意した点を見直しましょう。 |
| B | Vi kan lägga den här punkten åt sidan och gå vidare för stunden. | ヴィ カン レッガ デン ヘール プンクテン オート シーダン オク ゴー ヴィダーレ フォール ストゥンデン | この点はいったん保留にして、先へ進みませんか。 |
| A | Vad skulle krävas för att det ska funka för er? | ヴァード スクッレ クレーヴァス フォール アット デ スカ フンカ フォール エール | どうすれば御社にとって成立しますか? |
“lägga … åt sidan”(脇に置く=一時保留にする)は会議でも使う表現です。”Vad skulle krävas …?”(何が必要か)は、相手にボールを返して具体的な条件を引き出す質問になります。
よくある質問
Q. 交渉のダイアログで最初の往復は何を意識しますか?
A. いきなり数字をぶつけず、感謝と前向きな姿勢で入り、相手に「いくらを想定しているか」を尋ねます。”Vad hade du tänkt dig?”(どのあたりをお考えですか)のように、先に相手の手の内を聞くと進めやすくなります。
Q. 相手が強く押してきたとき、すぐ折れない返し方は?
A. “Jag hör vad du säger.”(言いたいことは分かります)と一度受け止めてから、自分の立場を返します。受け止めは同意ではないので、その後に反論を続けても角が立ちません。
Q. その場で決められないときはどう言えばいいですか?
A. “Låt mig stämma av med min chef.”(上司に確認させてください)と社内確認を理由に持ち帰ります。あわせて返答期限を約束すると、ただの先延ばしに見えません。
Q. 会話が止まってしまったらどうしますか?
A. “Låt oss ta ett steg tillbaka …”(一度引いて見直しましょう)と合意済みの点を整理し直します。詰まった論点は “lägga åt sidan”(脇に置く)で一度保留にし、進められる話題から動かします。
まとめ
交渉は単発のフレーズより、往復の流れで身につくものです。
- 受け止める→掘り下げる→交換する→固める、の4ステップで会話を運ぶ。
- 譲歩は “Om…”(もし〜なら)で条件付きにし、相手の欲しいものと交換する。
- 即決できないときは持ち帰り、合意は口頭と書面(skriftligt)の両方で確認する。
あとは、交渉でよく出るスウェーデン語の単語をまとめて押さえておくと、会話の往復がさらにスムーズになります。
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