中国B2B取引は「关系(guān xì)×合同×盖章(gài zhāng・社印)」の3点セットで成立します。
合同・报价・发票メールの段階別書き方を外すと商業紛争になります。
本稿は询价から发票・付款までの中国B2B取引フロー全体を中国語メールとして体系化します。
中国ベンダー取引する営業・購買・経理・法務、跨境貿易担当、日中合弁運営が対象です。
中国B2B取引のフロー
中国B2B取引は日本より段数が多いです。
各段で求められるメール種別を押さえます。
询价 → 招标 → 报价 → 采购订单 → 合同 → 发票 → 付款
中国B2B取引は询价(xún jià)→ 招标(zhāo biāo)→ 报价(bào jià)→ 采购订单(PO)→ 合同 → 发票(fā piào)→ 付款(fù kuǎn)の7段階です。
各段階で書面化と记录留证(記録証拠化)が求められます。
段階を飛ばすと後日の紛争で不利になります。
各ステップのメール種別
询价はRFI(供应商信息询问)・RFQ(报价请求)・RFP(招标书)の3種類に分類されます。
合同送付は電子契約(法大大・e签宝)が標準化しています。
发票送付は增值税专用发票・普通发票・电子发票の3種類の使い分けが必要です。
承認プロセス
中国企業の承認プロセスは采购部・财务部・法务部の三重承認が基本です。
国企はさらに审计部・纪检部が追加され、承認プロセスが6ヶ月以上かかる場合もあります。
民企は総経理直通で1-2日で承認されるケースもあります。
询价(Request for Information)メール
询价は情報収集段階で、複数ベンダーに並行依頼します。
曖昧な質問だと不要な時間がかかります。
开放型質問と選択肢型質問
开放型質問(オープン質問)は「请简介贵司的X产品」のような広い質問です。
選択肢型質問は「A型号 vs B型号,哪个更适合我们的需求?」のように絞った質問です。
情報収集初期は开放型、後半は選択肢型が効率的です。
複数ベンダー同時依頼の明示
「我们正在向多家供应商询价」と事前明示するのが中国式礼儀です。
秘密裏に複数依頼するのは不誠実と映ります。
最終選定でなかったベンダーへの配慮も忘れないことが重要です。
回答期限と評価基準
「请于X日前回复」と期限明示します。
評価基準も「价格・质量・交期・售后」の4軸で事前開示すると、ベンダー側の提案品質が上がります。
評価基準を隠すと、全社がフル提案する無駄な工数が発生します。
招标书(RFP)メール
招标书(RFP・Request for Proposal)は正式な提案依頼です。
ベンダー側にも一定の工数負担がかかるため、本気度を示す必要があります。
要件summaryの添付
招标书には要件summary(业务需求书)を必ず添付します。
背景・目的・现状・期望结果・制約条件を1つのPDFにまとめます。
要件が曖昧なRFPは不成立に終わるケースが多いです。
提案フォーマット指定
提案フォーマットを指定すると比較検討が容易になります。
「请按照以下目录提交提案:1. 公司介绍 2. 技术方案 3. 商务报价」のように構造化します。
フォーマット統一されると候補社間の比較が正確にできます。
Q&A期間の設計
Q&A期間を事前設計します。
「提案提交前X天内,我们会召开一次统一答疑会」と全ベンダー共通の場を設けます。
公平性担保と情報格差防止が目的です。
询价单(Quote Request)
询价单(RFQ)は価格確定のための最終段階です。
仕様確定後に送る文書で、価格提示の根拠になります。
数量・納期・規格の明示
询价单は数量(shù liàng)・交期(jiāo qī・納期)・规格(guī gé・仕様)を明示します。
数量区分(1-100個 / 101-1000個 / 1001個以上)で価格差を出すよう依頼すると、発注量調整の柔軟性が得られます。
規格変更時の価格変動も事前確認しておきます。
オプション提示依頼
オプション提示依頼も重要です。
「基本配置」と「高级配置」の2パターン以上で提示を依頼します。
予算配分の柔軟性が生まれます。
有效期限の確認
报价(見積)の有効期限は通常30日です。
「本报价有效期至X月X日」と明示されます。
期限内の決裁が必要で、遅れると再见积もりが必要になります。
采购订单(PO)発行メール
采购订单(PO・Purchase Order)は正式発注書です。
発行後の変更は追加費用につながります。
订单号の整合
订单号(dìng dān hào・発注番号)は社内システムと整合させます。
社内ERP・采购系统と自動連携する番号体系を作るのが理想です。
ベンダー側の发票発行時にも订单号参照が必要になります。
收货地/开票信息の分離
收货地(shōu huò dì・受取先住所)と开票信息(kāi piào xìn xī・請求先情報)は別で管理します。
中国の大企業は多拠点で、受取倉庫と請求財務部門が別になることが多いです。
POに両方明記しないと配送・请求のどちらかでミスが発生します。
付款条件(Net 30/60)
付款条件は Net 30(30日以内支払)・Net 60 が中国B2B標準です。
国企は Net 60-90 が一般的、BAT は Net 30 が多いです。
外資系は本社基準で Net 30-45 が標準です。
合同送付メール
合同(hé tong・契約書)送付は法的効力発生の重要段階です。
送付方法・期限・審査依頼を適切に書きます。
红线稿(Redline)対応依頼
红线稿(hóng xiàn gǎo・赤字修正版)は合同レビューの標準手法です。
Wordの変更履歴機能で修正箇所を明示し、双方で合意形成します。
「请以红线稿形式返回,以便我们跟踪修改」と依頼します。
审核期限の設定
「请在X工作日内审核并反馈」と期限明示します。
5工作日が標準、簡単な合同なら3工作日、复杂合同なら10工作日が目安です。
法务レビューが入る場合は追加期間が必要です。
法务审核を待つ時の応答
相手側法务審査中の場合「我方法务正在审核中,预计X日前回复」が定型です。
催促しすぎると関係が悪化します。
2週間以上待たされる場合のみ、丁寧に進捗確認します。
保密协议(NDA)関連メール
保密协议(bǎo mì xié yì・NDA)は商談初期に締結します。
互相保密 vs 单方保密で内容が大きく変わります。
互相保密 vs 单方保密の判別
互相保密(huā xiāng bǎo mì・Mutual NDA)は双方が相手の秘密を守る契約です。
单方保密(dān fāng bǎo mì・One-way NDA)は片方のみ秘密を守る契約です。
対等な商談なら互相保密、情報開示側が強い場合は单方保密が使われます。
管辖法律(準拠法)の主張
管辖法律(guǎn xiá fǎ lǜ・準拠法)は紛争時の判定基準になります。
中国法・日本法・香港法・シンガポール法のいずれかが選択肢です。
跨境契約では中立地(シンガポール法)を選ぶケースも増えています。
NDA締結後のKick-off流れ
NDA締結後にKick-offミーティングで本格商談に入ります。
「NDA已签署完成,下周可以安排详细的技术讨论」と次段階を提案します。
NDA締結自体が商談本気度の証明になります。
合同修改(Amendment)メール
合同締結後の修改(xiū gǎi・修正)はAmendment(补充协议)で行います。
正式手続きを踏まないと無効になります。
修改范围の明確化
修改范围を明確化します。
「对原合同第X条进行修改,其他条款保持不变」と特定条項のみの変更であることを示します。
全面改訂の場合は新合同として締結し直します。
影響条文の列挙
修改する条文が他条文に影響する場合を列挙します。
例えば納期変更は支払期限・保修期間にも連動するため、併せて変更必要です。
修改漏れが後日の紛争の種になります。
签字スケジュール
Amendment の签字スケジュールを合意します。
双方の法务審査・签字権限者の日程を調整します。
電子契約なら即日完結できますが、传统方式(紙+印鑑)は1週間程度必要です。
发票(Invoice)送付メール
发票送付は売上確定の重要段階です。
中国特有の发票制度を理解しておく必要があります。
发票号・订单号の対応表
发票号・订单号の対応表を送付します。
「发票号:XXX / 订单号:YYY / 金额:ZZZ元」のような対応表を本文またはExcel添付します。
財務部門が照合しやすい形式にすると支払いが早まります。
付款方式
付款方式は银行转账(bank transfer)・支付宝(Alipay)・微信支付(WeChat Pay)が主流です。
B2B大口は银行转账が標準、小口は支付宝・微信支付も使えます。
跨境送金は SWIFT・中国系银行(招商银行・工商银行)経由が標準です。
增值税(VAT)の処理と红头发票
中国の增值税(zēng zhí shuì・VAT)は通常13%(標準税率)です。
增值税专用发票(VAT Special Invoice)は仕入税額控除が可能、普通发票(VAT General Invoice)は不可です。
红头发票(hóng tóu fā piào)は正式会社発行の発票で、法人税申告の根拠書類になります。
入金確認・催款メール
入金遅延時の催款(cuī kuǎn・督促)は温度調整が重要です。
段階的エスカレーションで関係を壊さずに回収します。
入金遅延時の最初の提醒
第1提醒は「温和提醒」です。
「关于上月发票付款,是否已安排?」と確認形式で送ります。
相手が意図せず遅延している可能性もあるため、非難的にならないのが鉄則です。
3段階の催款エスカレーション
第1段階は温和提醒、第2段階は合同参照(契約条項を明示)、第3段階は法律预告です。
各段階で1-2週間の間隔を置き、相手の反応を見てエスカレーションします。
第3段階前に必ず電話・WeChat Work でも連絡し、書面一辺倒にならないようにします。
法律程序予告の書き方
最終段階の法律预告メールは律师文書に近い形式で書きます。
「若X日内未收到付款,我方将委托律师采取法律措施」と明示します。
実際に律师委託する覚悟で送るべきで、脅しだけで実行しないと信頼が崩壊します。
支払遅延の謝罪メール(受取側)
自社が支払遅延する側の場合の謝罪メールです。
早期開示と具体的な解決策提示が関係維持のカギです。
遅延理由開示範囲
遅延理由の開示範囲は内部判断です。
「由于内部审批流程延误」「财务系统升级期间」程度の抽象化が一般的です。
详細説明は相手が求める場合に限り、先回りして開示しません。
新付款日のコミット
新しい付款日を明示的にコミットします。
「预计于X日前完成支付」と日付明示が必須です。
曖昧な「近日」「尽快」は信頼を損ないます。
再発防止策の提示
再発防止策を簡潔に添えます。
「今后我方将在月初就启动付款流程」のように具体的に書きます。
再発した場合の信頼崩壊は致命的です。
合同续约・终止メール
合同续约(xù yuē・更新)・终止(zhōng zhǐ・解除)は関係管理の重要局面です。
通知期限を厳守することが求められます。
自动续约通知
自动续约(Auto-renewal)条項がある合同は、更新前の事前通知が必要です。
「本合同将于X月X日自动续约一年」と60日前通知が標準です。
续约意思なし側が期限までに明示しないと自動更新される契約形態です。
解約通知期限の管理
解約通知期限(通常30-90日)の管理は契約DB化が必須です。
期限を1日でも過ぎると1年間継続契約が強制される場合があります。
カレンダー・CRM・契約管理システムで自動リマインド設定します。
数据返还・销毁の要請
合同终止時は数据返还(データ返却)・销毁(データ破棄)要請が必要です。
「合同终止后,请将我方的所有数据X日内返还并销毁副本」と明示します。
PIPL(个人信息保护法)下では、保管期間超過データの处分が法的義務です。
中国合同書のAI翻訳禁忌
合同書はAI翻訳だけで完結させてはいけません。
法律専門家のレビューが必須です。
法律的意味が変わる語
「应当(yīng dāng・するべき)」と「可以(kě yǐ・できる)」は法律的意味が全く違います。
「应当」は義務、「可以」は選択権です。
AI翻訳が「必要がある」「することができる」と日本語訳しても、中国語原文の厳密な法的意味を反映しない場合があります。
固有名詞の自動翻訳回避
会社名・人名・地名は自動翻訳しないよう注意します。
AI翻訳が「中国銀行」→「中国之银行」のような誤訳をする場合があります。
固有名詞は手動で原文のまま保持します。
律师审查が必要な場面
高額契約・長期契約・跨境契約・知財関連契約は律师审查(法律家審査)が必須です。
中国大手法律事務所(金杜・盈科・中伦・君合)は英語対応可能です。
契約金額の0.3-1%程度が法务費用の相場です。
盖章(社印)文化への配慮
中国契約の「无章不生效(むしょうふしょうこう・印がなければ効力なし)」原則は最重要です。
印の種類と役割を理解しないと契約が無効になります。
中国契約の「无章不生效」原則
中国では签名(サイン)だけでは契約が有効にならないケースが多いです。
公司印鑑(盖章)が必須で、签名+盖章の両方で法的効力が生じます。
日本式「記名捺印」と違い、代表者個人印ではなく法人印の扱いです。
电子印章(e-Seal)の普及
电子印章(diàn zǐ yìn zhāng・電子印鑑)は2004年电子签名法施行以降広く普及しました。
法大大・e签宝・契约中国版などが主要プラットフォームです。
物理印鑑と同等の法的効力を持ちます。
日本の記名捺印との違い
日本の個人印鑑と中国の公司印鑑は法的位置づけが違います。
中国の公章(gōng zhāng・公印)は法人の意思表示です。
合同章(hé tóng zhāng・契約印)・财务章(cái wù zhāng・財務印)・法人章(fǎ rén zhāng・法人印)と用途別の印があります。
跨境契约で追加検討事項
日中・中台間の跨境契約には国内契約と違う論点があります。
货币・税・規制で追加の合意形成が必要です。
货币選択と汇率変動
货币(huò bì・通貨)は人民币(CNY)・美元(USD)・日元(JPY)の3択が主流です。
汇率变动リスクをどちらが負担するか契約明記が必要です。
長期契約では汇率調整条項(price adjustment clause)を入れるのが標準です。
关税・増值税の帰属
跨境取引は关税(guān shuì・関税)・增值税の処理が複雑になります。
FOB・CIF・DDP などの Incoterms で責任範囲を明示します。
双方の税务専門家を巻き込んだ事前設計が必須です。
知財保護条項
跨境契約では知財保護条項(IP Protection)が特に重要です。
中国知财局への登記、专利申请の共有合意、商业秘密保护の範囲設定が必要です。
2024年改正商業秘密法で保護範囲が拡大されており、最新情報の確認が必要です。
中国B2B取引は「询价→合同→盖章→发票→付款」の各段を丁寧に進める必要があります。
电子契約・电子印章の普及で効率化している一方、法的手続きは従来通り厳格です。
詳細は rfp-quote・invoice・nda-contract-review の小トピック記事で深掘りします。


