オランダの西部、いわゆるランドスタット地域には、アムステルダム以外にも見逃せない都市がいくつもあります。特にロッテルダムとデン・ハーグは、性格の違う二大都市で、併せて訪れるとオランダの多様性が体感できます。
この記事では、ロッテルダムとデン・ハーグの魅力を、オランダ語学習者の目線から掘り下げてご案内します。
ロッテルダム 近未来の港町
街のプロフィール
Rotterdam(ロッテルダム)は南ホラント州の都市で、人口約66万人(2024年)のオランダ第二の大都市です。1940年5月のドイツ軍空襲で旧市街がほぼ焼失したため、戦後は大胆な現代建築で再建され、今や建築ファンの聖地になっています。
世界最大級の港湾「ユーロポート」を抱え、貿易と物流の国際拠点として繁栄してきました。多民族都市としても知られ、約170の国籍の住民が暮らす多文化の坩堝です。
建築の見どころ
Markthal(マルクトハル、2014年開業、設計MVRDV事務所)は馬蹄形の巨大アーチの下に食品市場が広がる斬新な施設で、天井には「Horn of Plenty」という11,000平方メートルのデジタルアートが描かれています。建築としてもフードコートとしても、ロッテルダム必見スポットです。
Kubuswoningen(キューブハウス、1984年完成、設計Piet Blom 1934年生まれ1999年没)はブロック積み木のような45度傾いた立方体の集合住宅で、Overblaakにあります。1戸が博物館として公開されていて、内部を見学できます。
Erasmusbrug(エラスムス橋、1996年開通、設計Ben van Berkel/UNStudio)は白い斜張橋で「De Zwaan」(白鳥)の愛称で親しまれています。Nieuwe Maas川をまたぎ、ロッテルダムの象徴として夜間のライトアップが美しいです。
美術館と文化
Museum Boijmans Van Beuningen(ボイマンス美術館、1849年開館)は改装中ですが、隣のDepot Boijmans Van Beuningen(2021年開館、設計MVRDV)は世界初の一般公開型美術品保管庫として人気です。銀色の鏡面外壁が空と街を映し、屋上には白樺の森が広がります。
Kunsthal Rotterdam(1992年開館、設計Rem Koolhaas 1944年ロッテルダム生まれ)は常設展を持たず企画展だけで運営される実験的な美術館で、現代美術愛好家におすすめです。
デン・ハーグ 政治と外交の街
街のプロフィール
Den Haag(デン・ハーグ、正式名はs-Gravenhage)は南ホラント州の都市で、人口約56万人のオランダ第三の都市です。憲法上の首都はアムステルダムですが、政府と議会、王室の主要宮殿、最高裁判所、そして国際司法裁判所などはデン・ハーグにあり、事実上の行政・外交首都として機能しています。
13世紀にホラント伯爵の狩猟地として始まり、歴代伯爵・国王の宮廷都市として発展しました。現在は外交官や国際機関職員が多く住む国際都市です。
歴史的建築
Binnenhof(ビネンホフ、13世紀〜)はオランダ議会が置かれる歴史的建築群で、中心にはRidderzaal(騎士の間、1280年頃)が威厳をもって立ちます。現在は改修工事中(2021年〜2028年予定)で議会は仮設施設で運営中です。
Vredespaleis(平和宮、1913年完成、設計Louis Cordonnier)は国際司法裁判所と常設仲裁裁判所の所在地で、アンドリュー・カーネギー(Andrew Carnegie 1835年生まれ1919年没)の寄付によって建てられました。ビジターセンターと庭園が無料公開されていて、英語とオランダ語のガイドツアーがあります。
美術館
Mauritshuis(マウリッツハイス、1822年美術館化)は17世紀オランダ黄金時代の絵画を集めた小規模ながら世界屈指の美術館です。フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」(1665年頃、Meisje met de parel)とレンブラントの「テュルプ博士の解剖学講義」(1632年、De anatomische les van Dr. Nicolaes Tulp)が二大看板で、これだけのためでもデン・ハーグを訪れる価値があります。
Gemeentemuseum Den Haag(現在はKunstmuseum Den Haagに改名、1935年開館、設計H.P. Berlage 1856年生まれ1934年没)はピエト・モンドリアン(1872年アメルスフォールト生まれ1944年没)の世界最大のコレクションを誇ります。最晩年の「Victory Boogie Woogie」(1944年未完)も展示されています。
Escher in Het Paleis(旧エマ皇太后の宮殿、2002年美術館化、Lange Voorhout 74)はM.C.エッシャー(Maurits Cornelis Escher 1898年レーワルデン生まれ1972年没)の代表作を網羅的に展示していて、だまし絵好きにはたまらない空間です。
海辺のScheveningen
Scheveningen(スヘフェニンゲン)はデン・ハーグ市内からトラムで15分ほどの北海沿岸のビーチリゾートで、19世紀から続く桟橋「Pier Scheveningen」が象徴です。夏は海水浴客でにぎわい、冬の日曜にはビーチ散歩を楽しむ地元家族の姿が絶えません。
近くのGrand Hotel Amrâth Kurhaus(1885年創業、旧クアハウス)は壁画と天井画が圧巻のロビーを持つ豪華ホテルで、宿泊しなくてもロビーを覗いて雰囲気を味わえます。Panorama Mesdag(1881年作、世界最大級のパノラマ画、Hendrik Willem Mesdag 1831年生まれ1915年没)はデン・ハーグ中心部にあり、19世紀末のスヘフェニンゲンの浜辺を360度ぐるりと描いた筒型絵画で、他では見られない文化遺産です。
二都市間の移動
電車で気軽にアクセス
アムステルダム中央駅からロッテルダム中央駅まではIntercity直通で約40分、Intercity directなら25分です。ロッテルダムからデン・ハーグHSまでは約25分、両都市間はさらに近くて20分以内です。
1日で三都市を回ることも十分に可能です。
NS(Nederlandse Spoorwegen、オランダ国鉄、1938年設立)のNSアプリで切符購入と時刻検索ができます。OV-chipkaartでの改札通過が最もスムーズで、観光客向けには1日乗車券「NS Dagkaart」(約55ユーロ)も便利です。
Spoorzonとトリップの組み立て
デン・ハーグからロッテルダムへはSparnwoude経由のトラムRandstadRailもあり、郊外の景色を楽しめます。時間に余裕があれば、途中駅のDelftで降りてフェルメールゆかりの旧市街を散策するのも素敵なプランです。
Delft(デルフト)はDelft青磁(Royal Delft、旧De Koninklijke Porceleyne Fles 1653年創業)で有名な街で、フェルメールが生涯のほとんどを過ごした土地でもあります。Oude Kerk(1246年起源)にはフェルメールの墓があります。
食の楽しみ
ロッテルダムのFenix Food Factory(Katendrecht地区)は旧倉庫を改装した食のセレクトショップで、地元のチーズやクラフトビールやコーヒーが集まります。若いシェフたちが経営する先進的なレストランが多く、美食家に人気です。
デン・ハーグでは老舗のHaagsche Hopjes(コーヒー味のキャンディ、1792年創製、Bourbon家の料理人Hendricus van Haarenが考案)がお土産に喜ばれます。街中のお菓子店Van der Burghなどで購入できます。
オランダ語フレーズ 交通編
「Een enkeltje naar Rotterdam, alstublieft.」(ロッテルダムまで片道お願いします)、「Retour Den Haag, tweede klas.」(デン・ハーグ往復、二等で)、「Hoe laat vertrekt de volgende trein?」(次の電車は何時ですか)が電車移動の基本フレーズです。
「Moet ik overstappen?」(乗り換えは必要ですか)、「Op welk spoor?」(何番線ですか)も頻出です。NS駅員さんは英語堪能ですが、オランダ語で聞くと喜んでくれることが多いです。
一日でロッテルダムとデン・ハーグの両方を楽しむのは慌ただしいので、可能なら1〜2泊してじっくり味わうのがおすすめです。古都の優雅さと現代建築の大胆さ、その対比がオランダの今を感じさせてくれます。
宿泊エリアの選び方
ロッテルダムの中心Centrumエリアは駅近で便利ですが、よりロッテルダムらしさを味わいたいならKatendrechtやHillegersbergの落ち着いた界隈もおすすめです。デン・ハーグでは中心のCentrum、海辺のScheveningen、静かな Bezuidenhoutから好みに合わせて選べます。
Booking.comやAirbnbだけでなく、NH Hotelsなどオランダ系チェーンも選択肢です。ロッテルダムは産業都市の面影を残す運河沿いのブティックホテルが増えていて、デザインホテル好きには穴場です。
季節ごとのロッテルダム・デン・ハーグの楽しみ方
訪れる季節によって、両都市の表情は大きく変わります。
春のキングスデー
4月27日のKoningsdag(キングスデー)はオランダ最大の祝日です。
街全体がオレンジ色に染まり、フリーマーケットが各地で開かれます。
デン・ハーグでは王室ゆかりの地としてパレードも行われます。
ロッテルダムでは運河沿いで音楽イベントが盛り上がります。
夏の海辺と音楽フェス
6〜8月はスヘフェニンゲンのビーチが最も賑わう季節です。
ロッテルダムではノースシージャズフェスティバルが世界中の音楽ファンを集めます。
日の入りが22時ごろと遅いので、長時間の散策にも向いています。
両都市とも屋外カフェが開放され、テラス文化を存分に味わえます。
秋冬のミュージアム巡り
10月以降は美術館をゆっくり回るのに最適な時期になります。
デン・ハーグのマウリッツハイス美術館は冬場こそ静かに鑑賞できます。
ロッテルダムのボイマンス美術館は2026年時点で倉庫型別館が公開中です。
12月はクリスマスマーケットが両市で開催され、ホットワインで温まれます。
ショッピングとお土産選び
同じオランダでも、両都市で買える物の雰囲気は対照的です。
ロッテルダムのデザイン雑貨
ロッテルダムは現代デザインが集まる街として知られています。
Markthal内外のショップでは、オランダ人デザイナーの雑貨が手に入ります。
Wittle de Withstraat周辺には個性的なセレクトショップが並びます。
モダンなインテリア好きには宝の山と言える街並みです。
デン・ハーグの老舗店巡り
デン・ハーグには王室御用達の老舗が点在しています。
Noordeinde通りはアンティークと高級ブランドが並ぶエリアです。
De Passageという19世紀のアーケードも散策に最適です。
伝統工芸のタイルや銀食器を探すならこちらがおすすめです。
オランダらしいお土産の定番
デルフト焼きの陶器は両都市の土産店で手に入ります。
ストロープワッフルやドロップなど食の土産も外せません。
チューリップの球根は成田空港での検疫が必要なので要注意です。
1日・2日・3日のモデルプラン
滞在日数に応じた現実的な回り方を整理します。
1日コース(デン・ハーグ拠点)
午前はマウリッツハイスでフェルメールとレンブラントを鑑賞します。
昼食はビネンホフ周辺のカフェで軽めに済ませます。
午後はスヘフェニンゲンの海辺で散策とティータイムを楽しみます。
夕方に中心部に戻ってDe Passageで買い物をして締めくくります。
2日コース(2都市滞在)
1日目はデン・ハーグで美術館と海岸を満喫します。
2日目は電車で25分のロッテルダムに移動して建築探訪です。
Markthalでランチ、Erasmusbrug(エラスムス橋)周辺で写真撮影がおすすめです。
夜はロッテルダムのルーフトップバーで港の夜景を楽しみます。
3日コース(周辺に足を伸ばす)
3日目はデルフトやキンデルダイクの風車群に日帰りできます。
どちらもロッテルダムから電車やバスで1時間圏内です。
オランダらしい田園風景と歴史的街並みを合わせて楽しめます。
時間があればライデンまで足を伸ばして大学街の雰囲気も味わえます。
旅行を快適にする実用ヒント
知っておくと滞在中のストレスが大きく減るポイントを紹介します。
支払いと両替
オランダはキャッシュレス社会でクレジットカードとデビットカードが主流です。
MaestroやV Payのみ対応の店もあるため、複数の決済手段を持つと安心です。
現金はチップや屋台用に少額だけあれば十分です。
服装と気候対策
北海に近い両都市は夏でも風が強く、体感温度が低めです。
夏でも羽織るものを1枚持参することをおすすめします。
雨が多い気候なので、折りたたみ傘より防水ジャケットが便利です。
マナーと注意点
自転車道を歩行すると危険なので、色の違う路面には注意しましょう。
レストランでは「Bedankt」や「Dank je wel」とひとこと添えると喜ばれます。
写真撮影時は歴史的建築でも商用利用に制限がある場合があります。



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