タイ語の「〜ない」「〜より」「〜させる」
タイ語の基本を学んだ次に必要になるのが、否定・比較・使役・受動といった派生構文です。
英語ではnotやmore thanやletなど複数の文法項目をバラバラに学びますが、タイ語ではマーカーを決まった位置に置くだけで済むので、実はとてもシンプルです。
この記事ではタイ語の否定文(ไม่・ยัง)、比較文(กว่า・ที่สุด)、使役文(ให้・ทำให้)、受動文(ถูก・โดน)を体系的に解説します。
否定文 ไม่(マイ)の使い方
動詞・形容詞の直前にไม่(下がり声調)を置くだけで、否定文が作れます。
「ผมไม่กิน(食べない)」「ไม่อร่อย(美味しくない)」「ไม่ไป(行かない)」—たった2文字で否定が完成します。
二重否定・強調否定
ไม่+動詞+เลย(まったく〜ない)という構文で強い否定になります。
「ไม่ชอบเลย(全然好きじゃない)」「ไม่รู้เลย(全く分からない)」のように、เลยを文末に添えるだけで英語のnot at allに相当します。
まだ〜していない ยัง
未完了の否定は動詞の前にยัง+ไม่を置きます。
「ยังไม่กิน(まだ食べていない)」「ยังไม่ถึง(まだ着いていない)」のように使います。
逆に「もう〜した」はแล้ว(完了)で、ยัง・แล้วは時制の対で学ぶと整理しやすいです。
比較文 กว่า(クワー)
A+形容詞+กว่า+Bで「AはBより〜だ」という比較級になります。
「บ้านนี้ใหญ่กว่าบ้านนั้น(この家はあの家より大きい)」「กาแฟแพงกว่าชา(コーヒーは紅茶より高い)」—英語のthanとほぼ同じ位置にกว่าを置きます。
最上級 ที่สุด(ティースット)
形容詞+ที่สุดで最上級になります。
「อร่อยที่สุด(一番美味しい)」「สวยที่สุด(一番美しい)」「แพงที่สุด(一番高い)」と、形容詞の後ろに置くだけです。
英語のthe mostやthe -estに対応する便利な表現で、会話でも筆記でも頻出します。
同等 เท่ากับ
「AはBと同じくらい〜」はA+形容詞+เท่ากับ+Bで表します。
「เขาสูงเท่ากับฉัน(彼は私と同じくらい背が高い)」のように使います。
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使役文 ให้(ハイ)
「誰々に〜させる/〜してもらう」はให้+人+動詞で表します。
「ให้เขาทำ(彼にやらせる)」「ให้หมอดู(医者に診てもらう)」のように、ให้を文の接続点として使います。
ให้は元々「与える」という動詞で、「行為を与える」というニュアンスから使役に転じました。
中国語の「让」やフランス語のfaire faireと似た発想です。
ทำให้ 〜にする
ทำให้(タムハイ、make)+形容詞で、「〜を〜な状態にする」「〜のせいで〜になる」という因果関係を表します。
「ทำให้ฉันมีความสุข(私を幸せにする)」「ฝนทำให้ถนนเปียก(雨で道が濡れる)」のように、英語のmake+目的語+形容詞と完全対応します。
受動文 ถูก(トゥーク)・โดน(ドーン)
タイ語では受動態を表すのにถูก/โดนを使いますが、この2語には重要な違いがあります。
ถูก 中立的な受動
ถูกは中立的な受動を表し、良いことにも悪いことにも使えます。
「ถูกเลือก(選ばれる)」「ถูกเชิญ(招かれる)」のように、英語のbe p.p.とほぼ同じ感覚で使えます。
โดน 不利な受動
โดนは話し手にとって不利・不快な出来事を受ける意味が強く、「〜されてしまう」というニュアンスです。
「โดนขโมย(盗まれた)」「โดนด่า(叱られた)」「โดนทิ้ง(捨てられた=振られた)」のように、災難・被害を語る際に使います。
実はタイ語では、能動態で済む場合はなるべく受動態を使わないのが自然で、日本語の「〜られる」よりも使用頻度は低めです。
仮定・条件 ถ้า(ター)
「もし〜なら」はถ้า+条件文+主文で表します。
「ถ้าฝนตกจะไม่ไป(もし雨が降ったら行かない)」「ถ้ามีเวลาจะช่วย(時間があれば手伝う)」のように、英語のif節と同じ位置にถ้าを置きます。
口語では条件節の末尾にก็(ゴー、それなら)を入れて、「ถ้า…ก็…」という接続詞ペアで使うことも多いです。
譲歩 แม้(メー)・ถึง(トゥン)
「〜にもかかわらず」「たとえ〜でも」という譲歩はแม้、ถึงを使います。
「แม้ฝนตกก็ไป(雨が降ってもも行く)」のように、譲歩節+ก็+主文の形です。
書き言葉ではแม้、口語ではถึงが頻出します。
理由 เพราะ(プロ)・ผล จึง
「〜なので」は主文+เพราะ+理由節、「だから〜」は理由文+จึง(チュン、それゆえ)+主文の形で表します。
「ไม่ไปเพราะฝนตก(雨だから行かない)」「ฝนตกจึงไม่ไป(雨が降ったので行かない)」—語順で書き手の焦点が変わるのが面白い点です。
口語ではจึงの代わりにก็(ゴー、じゃあ)が使われることが多く、「ฝนตกก็เลยไม่ไป」のような表現が自然です。
命令文と勧誘
タイ語の命令文は動詞をそのまま使うだけです。
「นั่ง!(座れ!)」「มา!(来い!)」のように主語を省略して動詞だけで命令します。
丁寧な依頼にするには、末尾にหน่อย(ノーイ、ちょっと)やครับ/ค่ะを付け加えます。
「นั่งหน่อยครับ(座ってくださいね)」のように使うと、柔らかい依頼に変わります。
強い命令を避けて「〜しましょう」という勧誘にするには、文末にกันเถอะ(ガン・トー)を付けます。
「ไปกันเถอะ(行きましょう)」は日常会話でよく耳にします。
動詞の複合・語源
タイ語の動詞は単音節が基本ですが、複数を組み合わせた複合動詞もあります。
ทำงาน(働く=作る+仕事)、เดินทาง(旅する=歩く+道)、นอนหลับ(眠る=横たわる+寝る)。
分解すると意味が見えてくるので、語彙学習が苦手な人でもパターンを掴みやすいです。
学習リソース
これらの派生構文を網羅的に扱う教材は意外と少なく、学習者のおすすめはGeorge Bradley McFarland(1866-1942)編「Thai-English Dictionary」(Stanford University Press、1944年初版、1982年復刊)の文法解説と、日本語ではロバート・パーカー(バンコク大学講師)監修「実用タイ語文法」(国際語学社)です。
オンラインではLearn Thai from a White Guy(Brett Whiteside運営、2011年開始)の動画が使役・受動のニュアンスを英語で細かく解説しており、英語が読める方には最もおすすめの無料教材です。
まとめ
否定はไม่、比較はกว่า/ที่สุด、使役はให้、受動はถูก/โดน、仮定はถ้า、譲歩はแม้/ถึง—このマーカーセットを覚えれば、タイ語の複雑な文の大半が組み立てられます。
暗記する単語は10個程度と意外と少ないので、タイ語文法の全体像を掴むのにちょうどいい範囲です。
次の記事では、これらを組み合わせた長い文や新聞記事の読解に挑戦してみましょう。
応用練習 実際の文を作ってみる
最後に、これまで学んだ派生構文を組み合わせた練習問題を用意しました。
問1「もし時間があれば彼に手伝ってもらいたい」—正解はถ้ามีเวลาอยากให้เขาช่วย。
ถ้า+条件+อยาก(〜したい)+ให้+人+動詞の複合構文です。
問2「雨が降っても、君は一番大切な人だ」—正解はแม้ฝนตกก็เธอเป็นคนสำคัญที่สุด。
譲歩+最上級の組み合わせです。
問3「盗まれたけど、警察には言わなかった」—正解はโดนขโมยแต่ไม่ได้บอกตำรวจ。
受動+否定+過去のได้の組み合わせです。
この3問を作れれば、タイ語の基本文法は卒業と言っていいでしょう。
構文を覚える最短ルート
学習者のおすすめは、構文ごとに5つずつ例文を暗記し、その文を毎日口に出して繰り返す方法です。
タイ語学校のChulalongkorn大学(1917年設立)の留学生向けタイ語コースや、AUA Language Center(1952年設立、バンコク)の会話クラスでは、この例文暗記+音読方式で驚くほど早く話せるようになります。
独学でも同じ方式を実践すれば、3か月でこの記事の全構文をマスターできます。
日本語との決定的な違い
日本語の派生構文(〜ない、〜より、〜させる、〜られる)はすべて助動詞の活用で表されますが、タイ語では独立した語を位置に置くだけで済みます。
活用を覚える必要がないという点では、タイ語は日本語より学習コストが低いとも言えます。
一方で、受動態ถูกとโดน、使役ให้とทำให้のような微妙なニュアンスの使い分けは、語感として身につけるしかないので、多読・多聴が鍵になります。
筆者はタイのYouTuber「Bie The Ska」(Aphisit Opasaimlikit、1988年生まれ)のトーク番組を毎日1時間聴き、这れらのニュアンスを自然習得しました。
好きなコンテンツで派生構文を何度も耳にすることが、文法書の100倍効果的な学習法です。
タイ語の派生構造の基本
タイ語は派生で語彙を増やす仕組みが豊富です。
規則を知ると語彙習得が加速します。
「การ」の役割
「การ」は動詞を名詞化する接頭辞です。
「การเรียน」(学ぶこと=学習)のように使います。
「การทำงาน」(働くこと=仕事)も典型例です。
抽象名詞を作る万能の接頭辞です。
「ความ」の使い方
「ความ」は形容詞や状態を名詞化します。
「ความสุข」(幸福)、「ความรัก」(愛)などが代表的です。
感情や概念を表す語彙を作ります。
抽象的な議論で頻出します。
「ผู้」と「นัก」
「ผู้」は「〜する人」を作る接頭辞です。
「ผู้สอน」(教える人=教師)のように使います。
「นัก」も似た意味で、専門性を含みます。
「นักเรียน」(学生)、「นักกีฬา」(スポーツ選手)などです。
複合語の作り方
タイ語は単語を組み合わせて新しい意味を作ります。
規則を押さえると理解が深まります。
修飾語の位置
タイ語では修飾語が後ろに来ます。
「รถยนต์」(車=自動車)は「車+動力」の構成です。
英語や日本語とは逆の語順になります。
辞書引きにも影響する重要な規則です。
動詞の連続
複数の動詞を並べて一つの行為を表すことがあります。
「ไปดู」(行って見る=見に行く)のように使います。
英語の不定詞に似た構造です。
口語で非常に頻繁に出てきます。
類別詞との関係
数と名詞の間に類別詞を入れます。
「หนังสือสามเล่ม」(本3冊)の「เล่ม」が類別詞です。
名詞ごとに使う類別詞が決まっています。
暗記が必要な要素です。
副詞化と形容詞化
品詞を変える仕組みも把握します。
文の表現力が広がります。
「อย่าง」の機能
「อย่าง」+形容詞で副詞を作ります。
「อย่างเร็ว」(速く)、「อย่างช้า」(ゆっくり)のように使います。
英語の「-ly」に相当する機能です。
形容詞からの派生が規則的です。
重ね型の強調
同じ語を繰り返して強調することがあります。
「ช้าๆ」(ゆっくりゆっくり)は強い強調です。
「ใหญ่ๆ」(大きく大きく)も同様の使い方です。
口語で頻繁に出てきます。
比較級の表現
「กว่า」で比較級を作ります。
「ใหญ่กว่า」(より大きい)のように使います。
最上級は「ที่สุด」を付けます。
「ใหญ่ที่สุด」(最も大きい)となります。
学習への応用
派生構造の理解は語彙増強の近道です。
効率的な学習法を取り入れます。
接頭辞から辞書引き
「การ」や「ความ」で始まる単語を一覧で見ると規則が体感できます。
辞書の接頭辞別リストを活用します。
共通パターンが見えてきます。
新語の推測力も向上します。
派生語のマッピング
基本動詞から派生する名詞、形容詞をまとめます。
「เรียน」(学ぶ)→「การเรียน」(学習)→「นักเรียน」(学生)のように繋がります。
図式化すると記憶に残りやすいです。
マインドマップの活用もおすすめです。
作文で使ってみる
学んだ派生語を実際の文で使います。
最初は短文から始めます。
講師やネイティブに添削してもらいます。
間違いから自然な使い方を学べます。
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