インドネシアのビジネスシーンで会議やプレゼンを任されるようになると、単語だけではなく場の空気を読んで使い分ける語彙が必要になります。
筆者はジャカルタの現地法人で日系クライアント向けプレゼンを担当した経験から、会議の開始から質疑応答までの流れに沿って使える表現をまとめます。
会議の開始フレーズ
「Selamat pagi, Bapak dan Ibu(皆様おはようございます)」が最も格式ある第一声です。
午後ならSelamat siang、夕方以降ならSelamat sore、夜ならSelamat malamに切り替えます。
参加者への感謝
「Terima kasih atas kehadiran Bapak dan Ibu sekalian(皆様のご出席に感謝申し上げます)」と続け、出席者への敬意を示します。
kehadiranは出席、sekalianは「皆様」という総称です。
アジェンダの提示
「Hari ini kita akan membahas tiga hal utama(本日は三つの議題について話し合います)」のように、数字で項目を明示すると聞き手が追いやすくなります。
membahasは「議論する」、hal utamaは「主要事項」の意味です。
プレゼンテーションの定型表現
「Izinkan saya memperkenalkan diri(自己紹介させていただきます)」、「Nama saya Tanaka, dari PT Japan Asia(田中と申します、PTジャパンアジアから参りました)」が鉄板の自己紹介です。
目次の案内
「Presentasi ini terdiri dari lima bagian(このプレゼンは5部構成です)」、「Pertama, kedua, ketiga…(第一に、第二に、第三に)」と序数で区切ります。
terdiri dariは「〜から成る」という重要フレーズです。
スライドの導入
「Pada slide ini, Bapak/Ibu bisa melihat…(このスライドをご覧ください)」、「Grafik ini menunjukkan pertumbuhan penjualan tahun 2025(このグラフは2025年の売上成長を示しています)」のように指示表現を使います。
menunjukkanは「示す」、pertumbuhanは「成長」の意味です。
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数字とパーセンテージの読み方
インドネシア語の数字は英語と同じ位取りで、ribuは千、jutaは百万、miliarは10億、triliunは1兆です。
「Penjualan kami meningkat 15 persen tahun lalu(昨年売上が15パーセント増加)」のようにpersenで割合を示します。
年次成長率の説明
「Tahun 2023 kami berhasil mencapai target 100 miliar rupiah(2023年に1000億ルピアの目標を達成しました)」、「Target tahun ini 150 miliar rupiah(今年の目標は1500億ルピア)」のように数字を明確に読み上げます。
グラフの読み取り
「Garis biru menunjukkan realisasi, sedangkan garis merah adalah target(青線が実績、赤線が目標です)」のように色と項目を対応させます。
sedangkanは「一方」の意味の接続詞です。
議論と意見交換
「Bagaimana pendapat Bapak/Ibu mengenai hal ini?(この件についてご意見をお聞かせください)」、「Ada tanggapan?(ご意見ありますか)」と促します。
pendapatは意見、tanggapanは反応・コメントの意味です。
賛成と反対
「Saya setuju dengan pendapat Bapak(ご意見に賛成です)」、「Kami perlu mempertimbangkan aspek keuangan juga(財務面も検討する必要があります)」のように柔らかく反論します。
直接的な「Saya tidak setuju(反対です)」はインドネシアのビジネス文化では避けるのが無難です。
議論の整理
「Mari kita rangkum poin-poin yang sudah dibahas(議論したポイントをまとめましょう)」と促し、「Intinya adalah…(要点は…です)」で要約します。
rangkumは「要約する」、intinyaは「要するに」の意味です。
質疑応答のフレーズ
「Ada pertanyaan?(質問ありますか)」、「Silakan, Bapak(どうぞ)」と質問を募集します。
silakanは「どうぞ」という丁寧な促し言葉です。
質問への回答
「Pertanyaan yang sangat bagus(とても良いご質問です)」、「Terima kasih atas pertanyaannya(ご質問ありがとうございます)」と前置きしてから回答します。
即答できない時は「Izinkan saya memeriksa lebih lanjut dan akan saya kirim via email(確認してメールで回答いたします)」と逃げ道を残します。
会議の締めくくり
「Terima kasih atas waktu dan perhatiannya(お時間とご高配ありがとうございました)」、「Saya akan mengirim notulen rapat melalui email(議事録をメールで送ります)」と結びます。
notulenは議事録、rapatは会議、melaluiは「〜を通じて」の意味です。
学習者の鉄板10フレーズ
Selamat pagi(おはよう)/Izinkan saya(させていただきます)/Pada slide ini(このスライドで)/Poin utama adalah(要点は)/Bagaimana pendapat(ご意見は)/Saya setuju(賛成)/Perlu dipertimbangkan(検討が必要)/Ada pertanyaan(質問ありますか)/Akan saya kirim email(メールします)/Terima kasih(ありがとう)。
この10フレーズを組み合わせれば、社内会議から取引先プレゼンまで自信を持って臨めます。
会議室と設備のインドネシア語
「Proyektornya tidak menyala(プロジェクターが点かない)」、「Kabel HDMI-nya tidak cocok(HDMIケーブルが合わない)」、「Mikrofonnya mati(マイクが切れている)」の3つはビジネス現場の三大トラブルです。
大手企業ならIT部門を呼んで「Tolong panggil tim IT(IT部門を呼んでください)」と頼めば数分で来てくれます。
ホワイトボード活用
「Saya akan menggambar di papan tulis(ホワイトボードに書きます)」、「Spidolnya habis(マーカーのインクが切れた)」のようにpapan tulis(ホワイトボード)、spidol(マーカー)を覚えます。
文化的な配慮 マレーシアとは違う礼儀作法
インドネシアは多民族国家で、イスラム教徒が約87パーセント(2020年国勢調査)を占めます。
金曜昼のJumat礼拝(Sholat Jumat)は12時から13時頃に行われ、この時間帯の会議設定は避けるのがマナーです。
名刺交換の作法
両手で差し出すのが丁寧で、「Ini kartu nama saya(学習者の名刺です)」と言い添えます。
もらった名刺はすぐにしまわず、机の上に置いて会議中も相手の名前と役職を確認しながら話すのが礼儀です。
フォローアップのメール
会議後は必ず「Menindaklanjuti rapat tadi…(先ほどの会議のフォローアップとして)」で始まるメールを送ります。
menindaklanjutiは「フォローアップする」という意味で、ビジネスメール頻出表現です。
議事録はnotulen、タスク一覧はaction itemsをそのまま英語で使うことも多いです。
学習者の失敗談 ジャカルタでの初プレゼン
2017年、筆者はジャカルタのMenara BCA(2008年完成、地上56階の超高層ビル)で日系メーカー様向けに初めてインドネシア語プレゼンを行いました。
準備したスライドは英語併記で、リハーサルも完璧だったつもりでしたが、本番で最初の「Selamat pagi」を噛んでしまい会場がどっと笑いに包まれました。
幸い相手先のDirektur Utamaが「Santai saja, Pak Tanaka(リラックスしてください、田中さん)」と声をかけてくれ、緊張がほぐれて無事に終えられました。
学んだ教訓
それ以来、筆者は会議前にBapak Dewa Mata(PAでも有名な声楽講師、2001年バリ生まれ)式の発声練習を取り入れています。
「A I U E O」を大きく発声するだけで舌と唇がほぐれ、噛みにくくなるのです。
時間管理とブレイクのフレーズ
「Kita istirahat 15 menit, ya(15分休憩を取りましょう)」、「Mari kita lanjutkan(続けましょう)」がタイムマネジメントの鉄板表現です。
istirahatは休憩、lanjutkanは「続ける」の意味です。
会議の開会表現
会議の最初の数分で雰囲気が決まります。
定型句で落ち着いた進行を作ります。
挨拶と出欠確認
「Selamat pagi/siang」(おはよう/こんにちは)で時間帯に応じた挨拶をします。
「Terima kasih sudah hadir」(お集まりありがとう)と続けて感謝を伝えます。
「Sudah lengkap semua?」(全員揃った?)で出欠を確認します。
オンライン会議では音声映像の確認も合わせて行います。
議題の提示
「Hari ini kita akan membahas tiga poin utama」(本日3つの主要論点を議論します)で概要を示します。
「Poin pertama adalah…」(最初の論点は〜)と展開します。
時間配分を冒頭で共有すると進行がスムーズです。
議事録担当も事前に決めておきます。
目標の共有
「Tujuan kita hari ini adalah…」(今日の目標は〜)で方向性を明示します。
決定が必要な議題には「Kita perlu mengambil keputusan」(決定する必要がある)と強調します。
情報共有のみの場合は別途明確にします。
参加者の期待値を揃えます。
プレゼン技術
プレゼンテーションは準備が結果を決めます。
段階的な構成で伝わりやすくします。
冒頭の掴み
「Selamat pagi, saya [名前] dari [社名]」で自己紹介します。
「Hari ini saya akan presentasi tentang…」(今日は〜についてプレゼンします)でテーマを提示します。
最初の30秒で聴衆の関心を引きます。
話すテンポを落ち着かせます。
本論の展開
「Poin pertama」「Poin kedua」「Poin ketiga」と番号付けで整理します。
各論点に数値やデータを添えて説得力を加えます。
スライドは1枚1メッセージが原則です。
視覚情報と音声を一致させます。
結論とまとめ
「Sebagai kesimpulan…」(結論として〜)で締めの信号を送ります。
3〜5文で要点を再掲します。
「Ada pertanyaan?」(質問は?)で質疑応答に移ります。
「Terima kasih atas perhatian」(ご清聴ありがとう)で終えます。
質疑応答の対応
質問対応で知識と誠実さが試されます。
型を知ると慌てません。
質問を受けるとき
「Terima kasih atas pertanyaan」(質問ありがとう)で受け取ります。
即答できない場合は「Biar saya ulangi dulu」(先に繰り返させてください)で時間を稼ぎます。
質問の意図を確認してから答えます。
誠実な対応が信頼を生みます。
分からないときの対応
「Itu pertanyaan yang bagus, saya akan cek dulu」(良い質問です、確認します)が無難です。
知ったかぶりは最悪の選択です。
後日回答する約束をします。
必ずフォローアップメールを送ります。
反対意見への対応
「Saya memahami sudut pandang Anda」(ご見解は理解しました)で受け止めます。
その後で自分の立場を論理的に述べます。
感情的にならずデータで語ります。
議論の場を学びの機会として捉えます。
文化的な配慮
ビジネス場面ではインドネシア文化を尊重します。
信頼関係が長期的な成果につながります。
階層の意識
インドネシアは上下関係を重視する文化です。
年長者や役職上位者の発言を遮りません。
意見を述べる順番も地位に配慮します。
この感覚は日本と似ています。
時間感覚
「Jam karet」(ゴムの時間)という表現があるほど時間に柔軟です。
ジャカルタの渋滞も考慮して余裕を持ちます。
ただし国際企業は時間厳守が基本です。
相手の文脈を読みます。
食事の場
ビジネスランチは関係構築の重要な場です。
ハラル対応のレストランを選ぶと親切です。
アルコールは相手の宗教に配慮します。
断食月(ラマダン)中は昼食会を避けます。
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