インドネシアで就職活動や採用活動に関わると、履歴書の書き方から面接の定型質問まで、独特のルールが存在することに気づきます。
筆者は日系現地法人の採用担当として、JobStreet(1995年マレーシア発、2014年SEEK社傘下)やLinkedIn経由で数百件のCVを読み、50回以上の面接を行った経験から、リアルな表現をまとめます。
インドネシアのCV(履歴書)の特徴
インドネシアのCV(Curriculum Vitae)は英語圏同様にA4で1〜2ページに収め、顔写真、生年月日、住所、学歴、職歴、スキル、参考人を記載します。
日本の履歴書のように決まったテンプレートはなく、応募者ごとにデザインが異なります。
個人情報欄
「Nama Lengkap(氏名)」、「Tempat/Tanggal Lahir(出生地・生年月日)」、「Alamat(住所)」、「Nomor HP(携帯番号)」、「Email」、「Kewarganegaraan(国籍)」が基本項目です。
インドネシアでは顔写真添付が一般的で、スーツ姿のフォーマル写真を使います。
学歴と職歴
「Pendidikan(学歴)」はSMA(高校)から記載し、大学(Universitas)、大学院(Pascasarjana)と時系列で並べます。
「Pengalaman Kerja(職歴)」は直近から遡る逆時系列が標準で、会社名、役職、在籍期間、主な業務を箇条書きします。
求人応募のカバーレター
「Dengan hormat,」から始め、「Saya, Sari Dewi, ingin melamar posisi Marketing Manager yang diiklankan di JobStreet(JobStreetで広告されていたマーケティングマネージャーに応募します)」のように用件を明確にします。
melamarは「応募する」、posisiは「ポジション」、diiklankanは「広告された」の意味です。
志望動機
「Saya tertarik dengan perusahaan Bapak karena…(御社に興味を持ちました、理由は…)」、「Saya ingin berkontribusi di bidang pemasaran(マーケティング分野で貢献したいです)」と続けます。
tertarikは「興味を持つ」、berkontribusiは「貢献する」の意味です。
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面接の基本フレーズ
面接官は「Silakan duduk(おかけください)」、「Ceritakan tentang diri Anda(自己紹介してください)」から始めます。
ceritakanは「話してください」、tentang diri Andaは「あなた自身について」の意味です。
自己PR
「Nama saya Budi Santoso, lulusan Universitas Indonesia tahun 2020(ブディ・サントソです、2020年にインドネシア大学卒業しました)」と簡潔に始めます。
lulusanは「卒業生」、tahun lalu/2020で卒業年を示します。
強みのアピール
「Kelebihan saya adalah kemampuan komunikasi dan analitis(学習者の強みはコミュニケーション能力と分析力です)」のようにkelebihan(強み)で表現します。
具体例を添えて「Misalnya, di perusahaan sebelumnya saya memimpin tim 5 orang(例えば前職では5人チームを率いていました)」と続けます。
面接官が聞く定番質問
「Kenapa ingin pindah dari perusahaan lama?(なぜ前職を辞めたいのですか)」、「Apa rencana 5 tahun ke depan?(5年後の計画は)」、「Berapa gaji yang Anda harapkan?(希望給与はいくらですか)」は三大定番です。
退職理由の答え方
「Saya mencari tantangan baru(新しい挑戦を求めています)」、「Saya ingin mengembangkan karier di bidang ini(この分野でキャリアを発展させたい)」が無難な答えです。
前職への批判は避け、前向きな理由を述べるのがマナーです。
給与交渉
「Saya mengharapkan gaji sekitar 15 juta rupiah per bulan(月15百万ルピアを希望しています)」、「Masih bisa dinegosiasikan sesuai benefit(福利厚生次第で交渉可能)」のように幅を持たせます。
mengharapkanは「期待する」、benefitは英語そのまま使われます。
採用通知と内定
「Kami senang mengabarkan bahwa Anda diterima(採用のお知らせです)」、「Silakan datang untuk tanda tangan kontrak(契約署名のためお越しください)」と通知されます。
diterimaは「採用される」、mengabarkanは「知らせる」の意味です。
入社手続き
「Tolong siapkan fotokopi KTP, NPWP, ijazah, transkrip nilai(ID、納税番号、卒業証書、成績証明のコピーを用意してください)」と案内されます。
KTP(Kartu Tanda Penduduk、住民ID)、ijazah(卒業証書)、transkripは成績表です。
退職の切り出し方
「Saya ingin mengundurkan diri dari posisi ini(このポジションから退職したいです)」、「Saya akan memberikan satu bulan notice(1か月前の通知をします)」と伝えます。
mengundurkan diriは「退職する」、noticeは英語そのままです。
退職理由の説明
「Saya mendapat tawaran dari perusahaan lain(他社からオファーをいただきました)」、「Saya ingin fokus pada pendidikan lanjut(進学に専念したいです)」が一般的な理由です。
学習者の失敗談 CV誤字で不採用
2018年、筆者が所属する会社に応募してきた候補者のCVに「Pengalaman Kerja」が「Pengalaman Karja」と誤字があり、文章全体にもタイプミスが散見されました。
スキルは申し分なかったのですが、ディテール軽視と判断され最終的に不採用となりました。
CVは応募者の丁寧さを映す鏡で、Microsoft WordのPengecekan Ejaan(スペルチェック)は必須の確認ツールです。
学習者の鉄板10フレーズ
Saya melamar(応募します)/Lulusan(卒業生)/Pengalaman kerja(職歴)/Kelebihan saya(学習者の強み)/Mencari tantangan(挑戦を求めて)/Gaji yang diharapkan(希望給与)/Masih bisa dinegosiasikan(交渉可能)/Kapan mulai kerja(いつから勤務)/Mengundurkan diri(退職)/Terima kasih(ありがとう)。
主要求人サイトと採用媒体
インドネシアの求人はJobStreet、LinkedIn、Glints(2013年シンガポール発、インドネシア進出2019年)、Kalibrr(2012年フィリピン発)の4大サイトが主戦場です。
新卒ならTopKarir(2015年設立)、ブルーカラー系ならKitaLulus(2017年設立)が人気です。
ヘッドハンティング会社
JAC Recruitment Indonesia(1975年日本発、インドネシア1997年設立)、Michael Page、Robert Walters、Hays Recruitmentなどがエグゼクティブ層向けに活動しています。
日系企業ならJAC、Pasona Indonesia(1988年設立)、Quick Indonesiaの3社が日本語対応で強いです。
給与水準と相場感
ジャカルタの新卒初任給は月500万〜800万ルピア(約5〜8万円、2024年時点)が相場で、外資系は1000万ルピアを超えることも珍しくありません。
管理職クラスは3000万〜8000万ルピア、役員クラスは1億ルピア以上が一般的です。
UMP(最低賃金)
UMP(Upah Minimum Provinsi、州最低賃金)は毎年11月に翌年の水準が発表され、ジャカルタは2024年時点で約510万ルピアです。
「Gaji di atas UMP, ya?(最低賃金より上ですよね)」は求職者が必ず確認する質問です。
面接マナーと服装
初回面接はスーツか襟付きシャツが無難で、「Pakaian rapi sopan(きちんとした礼儀正しい服装)」と求人票に書かれていることもあります。
rapiは「きちんとした」、sopanは「礼儀正しい」の意味です。
時間厳守の重要性
ジャカルタは渋滞が悪名高いので、面接の1時間前には現地入りするのが鉄則です。
「Mohon maaf, saya sudah di lobby(すみません、ロビーに着きました)」と早めに連絡すると好印象です。
求人サイトの使い分け
インドネシアの求人市場は主要プラットフォームで構成されます。
目的別に選ぶと効率的です。
JobStreet
インドネシア最大の求人サイトで、数万件の案件が掲載されます。
業種やレベルで検索でき、履歴書の登録も容易です。
外資系の案件も豊富に揃っています。
アプリ版も快適に使えます。
ホワイトカラー職種ではLinkedInが主流です。
リクルーターからの直接アプローチも頻繁です。
プロフィール充実度が応募成功率を左右します。
写真と実績は特に重要な要素です。
Glints
若年層向けで、スタートアップ求人が豊富です。
テック業界の募集が多く、リモート案件も目立ちます。
キャリアコーチング機能も備えています。
新卒や若手の転職に向いています。
CVの書き方
インドネシア式のCVは英語とインドネシア語のバイリンガルが標準です。
構成は欧米式に近いです。
基本構成
氏名、連絡先、職歴、学歴、スキル、資格の順に配置します。
A4で1〜2ページに収めるのが標準です。
写真を貼るのが一般的で、プロフェッショナルな印象のものを選びます。
写真は右上または左上に配置します。
職歴の書き方
新しい順に並べるのが鉄則です。
各職で期間、会社名、役職、主要業務、実績を記載します。
数字で成果を示すと説得力が上がります。
Action verbで文を始めると躍動感が出ます。
スキルと資格
言語能力はネイティブ、流暢、中級などで示します。
TOEIC、TOEFL、UKBIのスコアを明記します。
ITスキルやソフトウェア使用経験も箇条書きにします。
応募職種に合わせて強調点を変えます。
面接の実際
面接は複数回の段階で進むことが多いです。
準備で差がつきます。
一次面接
HR担当者によるスクリーニングです。
基本情報の確認と志望動機を問われます。
30分程度で、電話かビデオ通話が一般的です。
英語で進むことも多いです。
二次面接
配属予定部署の上司との面談です。
技術面や業務経験を深掘りされます。
具体的な事例を準備しておきます。
60〜90分の対面またはビデオ面接になります。
最終面接
役員や社長との面談が多いです。
企業文化との適合性を重視されます。
会社への貢献ビジョンを語ります。
条件交渉もこの段階で行われます。
採用プロセスの注意点
インドネシア独自の慣習を押さえます。
事前準備がスムーズな入社につながります。
雇用契約
PKWT(有期)とPKWTT(無期)に分かれます。
試用期間は最大3か月が法律上限です。
契約書は必ずインドネシア語版で作成されます。
英語版との併記が一般的です。
給与と福利厚生
月給は業界と経験で大きく変動します。
THR(宗教祝日手当)は13月目給与相当で法定です。
医療保険、BPJS(社会保険)加入も標準です。
交通費や食事手当も多くの企業が支給します。
労働許可
外国人は労働許可証(KITAS)の取得が必須です。
会社がスポンサーとなって申請します。
手続きは2〜3か月かかります。
ビザ諸費用は会社負担が一般的です。
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