中国側に初めてメールを送るとき、「冒昧联系您」で始めていいのか、紹介者名をどこに置くべきか迷うことはないでしょうか。
中国は「关系」(グワンシー)文化が強く、紹介者名の置き位置で相手の受け取り方が大きく変わります。冒頭に置くか末尾かで、敬意の度合いが違います。
本記事では自己紹介を5タイプに分類し、脉脉・BOSS直聘・展示会後フォローまで、中国固有の接触経路別にテンプレを整理します。
自己紹介4段構造
中国語ビジネスメールの自己紹介は「身元明示」「連絡理由」「実績・役割」「次のアクション」の4段で組み立てます。
この構造を踏むと、冒頭5-7行で相手に「何者か・なぜ連絡してきたか・何を期待しているか」が伝わります。
冒頭挨拶と身元明示
1行目は「您好」で始めるのが基本です。初対面は必ず「您」を使い、「你」は既知の相手に限定します。
続けて「我是XX公司XX部门的XX」で社名・部署・氏名を宣言します。中国は身元明示を省略すると不信感を生みます。
日本のように「お世話になっております」から始めると、中国では「我们还没合作过吧?」と混乱させてしまいます。
連絡理由(关系・媒介)
2段目で「なぜあなたに連絡したか」を明示します。紹介・ウェブサイト閲覧・展示会など、経路を具体的に書きます。
中国は紹介(关系)を明示すると信頼度が跳ね上がります。紹介なしの場合は「通过贵司官网」と情報源を示します。
自分の具体的実績・役割
3段目で自分の役割と実績を1-2行で示します。「负责XX项目」「主要经手XX业务」のように動詞から始めます。
「我的名字是」のような長い自己紹介は中国では冗長と見なされます。名乗りは1回で十分です。
次のアクション
4段目で「何を期待しているか」を書きます。面谈・电话・WeChat添加など、具体的な次の一歩を提示します。
「有机会希望能合作」のような曖昧な締めではなく、「方便加个微信吗?」のような具体的な行動依頼が中国B2Bでは好まれます。
新規接触の自己紹介テンプレ
紹介経由ではない、完全新規の接触パターンです。中国では新規接触の返信率が低いため、冒頭1-2行の勝負です。
冒昧联系您型
(1)「冒昧联系您,我是XX」(2)「mào mèi lián xì nín, wǒ shì XX」(3)「不躾ながらご連絡します、XXです」が最も定番です。
「冒昧」は「不躾」のニュアンスで、相手に心理的なクッションを置けます。初対面で失礼感を緩和する効果があります。
台湾・香港でも「冒昧聯絡您」で通じます。繁體字にするだけで地域対応できます。
我是XX公司XX部门的XX型
(1)「我是XX公司销售部的王」(2)「wǒ shì XX gōng sī xiāo shòu bù de wáng」(3)「私はXX社営業部の王です」はビジネスで最も基本的な形です。
大陸では肩書きを併記します。「销售经理」「市场总监」のように「部門+役職」で書くと、相手が決裁権を判断しやすくなります。
通过贵司官网了解到型
(1)「通过贵司官网了解到XX」(2)「tōng guò guì sī guān wǎng liǎo jiě dào XX」(3)「貴社HPでXXを知り」は情報源を明示する型です。
中国B2B営業では「どこで知ったか」を明示すると、スパム判定されにくくなります。脉脉・領英・新闻報道・展示会など、経路によって書き分けます。
紹介者経由の自己紹介テンプレ(关系重視)
中国では紹介経由の接触が圧倒的に有利です。紹介者名の置き位置で、メールの重みが変わります。
经XX总介绍型(冒頭配置)
(1)「经王总介绍,联系您洽谈合作」(2)「jīng wáng zǒng jiè shào, lián xì nín qià tán hé zuò」(3)「王社長のご紹介で、合作商談のためご連絡」が典型です。
紹介者名を冒頭に置くと、相手は「王总の顔を立てる」意識が働き、返信率が大幅に上がります。
冒頭配置は相手と紹介者の関係が「上下あり」(紹介者が年上・役職上)の場合に特に効きます。
XX先生推荐我联系您型
(1)「张先生推荐我联系您」(2)「zhāng xiān shēng tuī jiàn wǒ lián xì nín」(3)「張さんに推薦されご連絡」は対等な紹介者に使います。
「推荐」は対等関係、「介绍」は上下関係のニュアンスがあります。相手と紹介者の関係で使い分けます。
紹介者をCCに入れる礼儀
初回メールで紹介者をCCに入れるのが中国の標準慣行です。紹介者に「確かに繋いだ」記録を残す意味があります。
ただし2通目以降は紹介者をCCから外します。継続してCCすると紹介者に迷惑になります。
中国の关系を踏まえた紹介者名の置き位置
紹介者名は「冒頭3行以内」に置くのが原則です。末尾に回すと「後付け」のように見えて、紹介の効果が薄れます。
日本式に「最後に付け足す」感覚で紹介者を書くと、中国では「重要でなかった」と解釈されます。
LinkedIn・脉脉・BOSS直聘経由の自己紹介
中国本土ではLinkedInの普及率が低く、脉脉・BOSS直聘が実務で使われています。経路によって冒頭の書き方が違います。
LinkedInで見ました型(海外企業向け)
(1)「在LinkedIn上看到您的资料」(2)「zài LinkedIn shàng kàn dào nín de zī liào」(3)「LinkedInでプロフィールを拝見」は海外企業・多国籍企業で使えます。
大陸本土企業への連絡では、相手がLinkedInを使っていない可能性が高いため、このフレーズは避けます。
脉脉で関注しました型(中国本土向け)
(1)「在脉脉上关注到您」(2)「zài mài mài shàng guān zhù dào nín」(3)「脉脉であなたをフォローして」は中国本土標準です。
脉脉は中国版LinkedInで、IT業界・コンサル業界で特に普及しています。BAT・字节跳动・美团の担当者は脉脉を使っています。
BOSS直聘で連絡しました型(求職・採用文脈)
(1)「通过BOSS直聘联系您」(2)「tōng guò BOSS zhí pìn lián xì nín」(3)「BOSS直聘でご連絡」は求職・リクルーティング専用です。
BOSS直聘は求職・採用プラットフォームで、営業系の問い合わせには不向きです。用途を間違えると信頼を失います。
プロフィールリンク共有の礼儀
初回メールで自分のプロフィールリンク(脉脉・LinkedIn・個人サイト)を共有すると、相手が素性を確認しやすくなります。
ただしリンク3つ以上の羅列は警戒されます。1つに絞って貼るのが礼儀です。
展示会・カンファレンス後フォロー
中国展示会・カンファレンスでは名片(名刺)交換が大量に発生します。48時間以内のフォローメールが鉄則です。
上次XX展会上与您交换过名片型
(1)「上次CES展会上与您交换过名片」(2)「shàng cì CES zhǎn huì shàng yǔ nín jiāo huàn guò míng piàn」(3)「先日のCES展示会で名刺交換しました」が定番です。
展示会名を具体的に書くと、相手の記憶を呼び起こせます。「上次会议上」のような曖昧表現より効果的です。
前几天在XX会议上有幸见到您型
(1)「前几天在第三届中日经贸论坛上有幸见到您」(2)「qián jǐ tiān zài dì sān jiè zhōng rì jīng mào lùn tán shàng yǒu xìng jiàn dào nín」(3)「先日の第3回日中経貿フォーラムでお会いできて光栄」は格式度が高いです。
「有幸」(光栄にも)は丁寧なニュアンスを加えます。顧客・上司クラス向けに使います。
会話内容の具体引用
展示会で話した内容を1行で引用すると、相手の記憶が一気に戻ります。「您提到贵司正在推进XX」のように具体化します。
「很高兴认识您」だけでは記憶されにくいのが中国B2Bの現実です。具体引用で差別化します。
名片交換後48時間以内ルール
中国展示会後のフォローは48時間以内が鉄則です。遅れると競合他社に先を越されます。
WeChat添加の依頼も48時間以内に送ります。時間が経つほど添加率が下がります。
社内異動時の挨拶メール
中国企業では社内異動が頻繁で、異動挨拶メールを送る文化が定着しています。
我将调至XX部门担任XX型
(1)「我将调至市场部担任总监」(2)「wǒ jiāng diào zhì shì chǎng bù dān rèn zǒng jiān」(3)「マーケ部ディレクターに異動します」が定番です。
異動先と役職を明示します。中国では「调至」が公式な異動表現です。
交接人の紹介
異動メールでは必ず後任(交接人)を紹介します。「李XX将接手我的工作」のように名前と連絡先を明示します。
交接人の紹介なしの異動メールは、中国クライアントに不安を与えます。継続性を示すのが礼儀です。
今后请多关照の結び
(1)「今后请多关照」(2)「jīn hòu qǐng duō guān zhào」(3)「今後もよろしくお願いします」は異動メールの定番結びです。
日本語の「よろしくお願いします」に近いニュアンスですが、中国では関係継続を明示する意味があります。
敬語レベルの選択
自己紹介で使う敬語レベルは、相手との関係性・初対面か既知か・相手の役職で決まります。
初対面は常に您+尊敬的
初対面は必ず「您」を使います。特に相手が年上・役職上・国企・政府機関の場合は「尊敬的」を付けます。
(1)「尊敬的张总」(2)「zūn jìng de zhāng zǒng」(3)「尊敬する張社長」は重みがあり、顧客・政府官員向けに使います。
紹介者経由は相手と紹介者の関係性を見る
紹介者が相手より格上なら「您」を使い、対等なら紹介者のトーンを鏡写しにします。紹介者が「你」で接していたら、初回は「您」で様子見します。
社内異動は你と您の使い分け
社内メールでは「你」が標準です。ただし役員・上司への異動挨拶は「您」で格式を保ちます。
若手同士の異動挨拶は「你」で自然です。無理に「您」を使うと距離感が生まれます。
自己紹介で使える具体性ワード集
自己紹介で「具体的」に見せるキーワード集です。動詞選択で説得力が変わります。
工作年限・从业经历
(1)「在XX行业工作8年」(2)「zài XX háng yè gōng zuò 8 nián」(3)「XX業界で8年」は実績の基本表現です。
「从事」「经手」「负责」「主导」は、役割の深さを示す動詞です。責任範囲に応じて使い分けます。
主要负责・负责过的项目
(1)「主要负责跨境电商业务」(2)「zhǔ yào fù zé kuà jìng diàn shāng yè wù」(3)「主に跨境ECを担当」はB2B営業の定番です。
「负责过」は過去の実績、「正在负责」は現在進行形です。時制を正しく使うと誤解を防げます。
经手产品・服务范围
(1)「经手过SaaS产品销售」(2)「jīng shǒu guò SaaS chǎn pǐn xiāo shòu」(3)「SaaS製品営業を経験」は具体的な製品領域を示します。
中国B2Bでは具体製品・サービス名を出すと信頼度が上がります。抽象的な職種名より効果的です。
我司・贵司・敝司の使い分け
「我司」は自社、「贵司」は相手会社、「敝司」はへりくだった自社表現です。フォーマル度が高い場面では「敝司」を使います。
台湾では「敝公司」「貴公司」とより丁寧に書きます。大陸より格式度が高めです。
地域別(大陸・台湾・香港)の自己紹介差
同じ中国語でも、地域で自己紹介のトーンが違います。相手本社所在地で使い分けます。
大陸:简体・你・职位中心
大陸は职位を明示し、肩書き敬称を付けるのが標準です。「王经理」「李总」「张主任」のように肩書きで呼びます。
普通话基調で、方言表現は使いません。BAT・字节跳动では英語混用も許容されます。
台湾:繁體・您・職稱敬称
台湾は繁體字で、「您」を高頻度で使います。敬称も「〇先生」「〇小姐」「〇經理」のようにフォーマルです。
大陸より婉曲表現が多く、直接的な自己紹介は「押しが強い」と見なされることがあります。
香港:繁體・英語混在・Mr./Ms.併用
香港では繁體字と英語が混在します。「David Lee / 李大偉」のように中英両名署名が一般的です。
敬称はMr./Mrs./Ms.+姓が多く、「〇先生」も使えます。金融街ではフォーマル度が極めて高いです。
日本人がやりがちな自己紹介NG
日本人が中国ビジネスで陥りがちな自己紹介のNGパターンを整理します。
自己紹介が長すぎる
日本式の詳細な自己紹介は中国では冗長と見なされます。「どこから入社しどの部署で何年働き」を全部書くのはNGです。
中国では「社名+部署+氏名+現職務」の1-2行で十分です。詳細は面谈で深掘りするのが流儀です。
我的名字是等の直訳
(1)「我的名字是田中」は中国語で不自然です。「我叫田中」または「我是田中」で十分です。
日本語「私の名前は」の直訳は中国語では冗長になります。短く名乗るのが礼儀です。
会社紹介と自己紹介の混同
自己紹介のメールに会社説明を3段落も書く日本人が多いですが、中国では「添付に会社概要」が定番です。
本文は自分の役割にフォーカスし、会社紹介はリンクまたは添付で済ませます。
关系を出さずに単独アプローチ
中国B2Bで最も返信率が低いのは、紹介なしの単独アプローチです。どんなに製品が良くても返信されにくい文化です。
脉脉・領英で共通コネクションを調べ、1人でも共通の知り合いがいれば「通过XX得知」と言及します。
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自己紹介テンプレ集(シーン別5タイプ)
上記の理論を踏まえた実践テンプレを、シーン別に5タイプ用意します。そのままコピペして相手名と会社名を差し替えれば使えます。
タイプ1:完全新規(紹介なし・情報源明示)
「尊敬的张总,您好。冒昧联系您,我是日系SaaS公司东京科技的佐藤,主要负责中国市场拓展,通过贵司官网了解到贵司正在推进CRM系统升级,我司的解决方案在字节跳动等企业有应用案例,方便约个30分钟的电话沟通吗?」の流れが新規営業の定番です。
情報源を「贵司官网」と明示するのがポイントです。「通过网络」のような曖昧な表現は返信率が下がります。
CTAは「方便约个30分钟的电话沟通吗?」のように時間と形式を具体化します。open endedな提案は中国B2Bでは響きません。
タイプ2:紹介経由(关系重視)
「王总,您好,经李总介绍,冒昧联系您,我是东京科技的佐藤,主要负责跨境电商业务,李总提到贵司正在考虑日本市场进入,我司在物流和本地化方面有6年经验,希望能有机会与您详细沟通」が紹介経由の定番です。
紹介者名を冒頭1行目に置き、紹介者の発言を引用するとさらに信頼度が上がります。
紹介者をCCに入れると、紹介者も「確かに繋いだ」確認ができて安心します。
タイプ3:展示会フォロー
「李经理,您好。前几天在进博会上与您交换过名片,我是东京科技的佐藤,当时您提到贵司正在寻找日本供应商,我司的SaaS产品已在500家中国企业落地,方便加个企业微信持续沟通吗?」が展示会後の定番です。
展示会名を具体化し、会話内容を引用すると記憶が呼び起こされます。
WeChat Work添加を依頼するのが中国B2Bの次の一手です。メールだけで完結させず、継続コミュニケーション経路を作ります。
タイプ4:脉脉・LinkedIn経由
「张经理,您好。在脉脉上关注到您的资料,对贵司的AI产品很感兴趣,我是东京科技的佐藤,正在推动日中AI领域的合作,附件为我司的公司介绍,方便线上交流一次吗?」が脉脉経由の定番です。
相手のプロフィール内容を具体的に引用すると、スパム判定されにくくなります。
大陸本土向けは脉脉、海外企業向けはLinkedInと使い分けます。経路を間違えると「中国ビジネスに不慣れ」と見抜かれます。
タイプ5:社内異動挨拶
「各位,您好,我是销售部的佐藤,自下个月起,我将调至上海办公室担任大中华区销售总监,原有业务由李XX接手(邮箱lixx@example.com),在新岗位上,希望能继续得到各位的支持与关照」が社内異動の定番です。
異動先と新役職、後任者の連絡先を明記します。交接情報がない異動挨拶は中国では不完全と見なされます。
最後に「继续得到支持与关照」で関係継続の意志を示します。日本の「今後ともよろしくお願いします」に近いニュアンスです。
自己紹介で避けるべきNG例5選
中国側に「この日本人はビジネスに不慣れだ」と判断される自己紹介NGを、5パターンに絞って整理します。
NG1:会社説明が3段落超える
「当社は1985年に設立され、東京本社を中心に…」のような会社沿革から始めるのはNGです。中国では会社紹介は1行または添付で済ませます。
自分の役割にフォーカスし、会社詳細はPDFで添付するのが実務解です。
NG2:「我的名字是」「我想自我介绍一下」の冗長表現
「我的名字是佐藤」は日本語の直訳で中国語として不自然です。「我叫佐藤」または「我是佐藤」で十分です。
「我想自我介绍一下」と宣言してから自己紹介するのも冗長です。いきなり「我是XX」で始めます。
NG3:謙虚すぎる実績開示
「虽然经验不多,但是我…」のような謙虚表現は中国では「頼りない」と見なされます。日本の謙遜文化は通じません。
中国B2Bでは「有8年经验」「负责过500万规模项目」のように定量的に実績を示します。
NG4:CTAがない曖昧な締め
「如有兴趣,欢迎随时联系」のような曖昧な締めは、中国では「本気度が低い」と映ります。
「方便约个30分钟电话吗?」「下周二上午您方便吗?」のように具体的な次の一歩を提示します。
NG5:紹介者を末尾に付け足す
「XX様のご紹介で連絡しました」を本文最後に付け足すのは、日本式ですが中国では効果が半減します。
紹介者名は冒頭3行以内に必ず配置します。後出しは中国の关系文化では「重要でなかった」扱いになります。


