書く広東語と話す広東語|唔・係・嘅・咗・喺が教科書に出てこない理由と香港での使い分け

広東語

香港の新聞を開くと、耳で聞く広東語とはまるで違う文章が並んでいます。

広東語には「書くための言葉」と「話すための言葉」の二層があり、公式の文章は前者、つまり標準中国語(書面語)で書かれるからです。

唔・係・嘅・咗・喺 といった見慣れない字が顔を出すのは、話し言葉をそのまま文字にしたときだけです。

この記事では、その二層構造を使う場面まで落として整理し、口語字の中核8字を用法と例文つきで扱います。

表記は繁体字、発音は粤拼(Jyutping)の声調番号つき、カタカナは近似です。声調そのものの仕組みは広東語の声調と粤拼の記事にまとめてあります。

  1. 香港では「書く広東語」と「話す広東語」が別物になっている
    1. 公式に書かれる文章は標準中国語(書面語)
    2. 話し言葉をそのまま文字にすると別の文章になる
    3. 同じ内容を書面語と口語で並べる
  2. 口語字の中核8字(唔・係・嘅・咗・喺・佢・乜・點)
    1. 唔 m4|否定はここから始まる
    2. 係 hai6|「である」を担う字
    3. 嘅 ge3|「の」にあたる連体の字
    4. 咗 zo2|完了を表す字
    5. 喺 hai2|「〜に・〜で」の場所の字
    6. 佢 keoi5|三人称。人称代名詞をまとめて覚える
    7. 乜 mat1|「何」を聞く字
    8. 點 dim2|「どう」を聞く字
  3. 口語字はどう作られているか
    1. 口へんが目印になる
    2. 字を削って作られた 冇 mou5
    3. 漢字を借りた字と、新しく作られた字
  4. 字だけでなく語彙が入れ替わる
    1. 書面語と広東語で違う日常動詞・指示詞
    2. 同じ字なのに意味がずれる語
  5. 語順まで変わる|書面語をそのまま口に出しても広東語にならない
    1. 二重目的語はモノが先、相手が後
    2. 比較は「形容詞+過+比べる相手」
    3. 「先に」「もっと」は動詞の後ろに回る
    4. 量詞だけで「その」を表せる
  6. 文末助詞こそ広東語の話し言葉の本体
    1. 数が桁違いに多い
    2. 重ねて使える
    3. 日本語の終助詞の感覚がほぼそのまま使える
    4. 「文末助詞が多い=東南アジア的」ではない
  7. どこで書面語を、どこで口語を使うか
    1. 書面語で書く場面
    2. 口語で書く場面
    3. 混ざる場面と、学習者はどちらから始めるか
  8. 口語字をどう打ち、どう調べるか
  9. よくある質問
  10. まとめ

香港では「書く広東語」と「話す広東語」が別物になっている

学習を始めた人が最初に混乱するのは、発音でも声調でもなく、この点であることが多いです。

「広東語を書く」という言葉には二通りの意味があり、どちらを指しているかで作業が根本から変わります。

公式に書かれる文章は標準中国語(書面語)

新聞・法令・学校の教科書・企業のメールは、香港でも標準中国語の文法で書かれます。

字体が繁体字であるだけで、文の組み立ては普通話に準じます。

ただし読み上げるときは広東語音になります。書面語の 不是 は、声に出すと bat1 si6(バッ(ト)シー)です。

実務文書もこの層に属します。香港やシンガポール宛の型は香港・シンガポール向け中国語ビジネスメールの記事を見てください。

話し言葉をそのまま文字にすると別の文章になる

一方、チャット・SNS・広告コピー・漫画のセリフ・タブロイド紙では、話し言葉をそのまま文字にします。

香港の街角やネットで見かける「辞書に載っていない字」の正体は、ほぼこの層のものです。

同じ内容を書面語と口語で並べる

同じ意味の文を二層で並べると、違いの大きさがそのまま見えます。

書面語(繁体字) 広東語口語(繁体字) 粤拼+カタカナ 日本語訳
他不是我的朋友 佢唔係我嘅朋友 keoi5 m4 hai6 ngo5 ge3 pang4 jau5(コイ ン ハイ ンゴ ゲ パンヤウ) 彼は私の友達ではない
我在家 我喺屋企 ngo5 hai2 uk1 kei2(ンゴ ハイ ウッ(ク)ケイ) 私は家にいる
我吃了 我食咗 ngo5 sik6 zo2(ンゴ シッ(ク)ゾー) 私は食べた
他看書 佢睇書 keoi5 tai2 syu1(コイ タイ シュー) 彼は本を読む

同じ一文で、代名詞も否定詞も動詞も入れ替わっています。

中国語を学んだ人が香港のチャットを読めないのは、字を知らないからではなく、この層の存在を知らないからです。

口語字の中核8字(唔・係・嘅・咗・喺・佢・乜・點)

口語字は数十字ありますが、この8字が読めれば香港のSNS文の骨格は半分ほどつかめます。

唔 m4|否定はここから始まる

書面語の 不 にあたり、動詞や形容詞をそのまま否定します。

広東語 粤拼+カタカナ 日本語訳
唔係 m4 hai6(ン ハイ) 〜ではない
唔好飲咁多 m4 hou2 jam2 gam3 do1(ン ホウ ヤム ガム ドー) そんなに飲まないで
唔該 m4 goi1(ンゴーイ) すみません/ありがとう

「持っていない」「起きなかった」を言うときは 唔 ではなく 冇 mou5(モウ)で、書面語の 沒有 にあたります。

「まだ〜していない」は 未 mei6(メイ)が担当し、これから起きる余地が残っている点が 冇 と違います。

唔該 の使い分けと返し方は広東語のありがとうの記事で詳しく扱っています。

係 hai6|「である」を担う字

書面語の 是 にあたります。日本語の「です」に一番近い位置にある字です。

広東語 粤拼+カタカナ 日本語訳
佢係香港人 keoi5 hai6 hoeng1 gong2 jan4(コイ ハイ ヒョン ゴン ヤン) 彼は香港の人だ
我唔係學生 ngo5 m4 hai6 hok6 saang1(ンゴ ン ハイ ホッ(ク)サーン) 私は学生ではない
你係咪老師 nei5 hai6 mai6 lou5 si1(ネイ ハイ マイ ロウ シー) あなたは先生ですか

係咪 は「係か唔係か」を縮めた形で、そのまま「〜ですか」の疑問になります。

次に出てくる 喺 hai2 とは字も声調も別物なので、続けて見ておくのが安全です。

嘅 ge3|「の」にあたる連体の字

書面語の 的 にあたり、所有と連体修飾の両方を受け持ちます。

広東語 粤拼+カタカナ 日本語訳
我嘅書 ngo5 ge3 syu1(ンゴ ゲ シュー) 私の本
我買嘅書 ngo5 maai5 ge3 syu1(ンゴ マーイ ゲ シュー) 私が買った本
好食嘅嘢 hou2 sik6 ge3 je5(ホウ シッ(ク)ゲ イェ) おいしいもの

修飾する側が名詞の前に来る点は、普通話とまったく同じです。

咗 zo2|完了を表す字

書面語の 了 にあたり、動詞の直後に置いて「してしまった」を作ります。

広東語 粤拼+カタカナ 日本語訳
佢走咗 keoi5 zau2 zo2(コイ ザウ ゾー) 彼は行ってしまった
我買咗兩本書 ngo5 maai5 zo2 loeng5 bun2 syu1(ンゴ マーイ ゾー ルーン ブン シュー) 私は本を2冊買った
你食咗未 nei5 sik6 zo2 mei6(ネイ シッ(ク)ゾー メイ) もう食べましたか

進行と経験の標識と3点セットにすると整理できます。

広東語 粤拼+カタカナ 意味
食緊 sik6 gan2(シッ(ク)ガン) 食べているところ(進行)
食咗 sik6 zo2(シッ(ク)ゾー) 食べた(完了)
食過 sik6 gwo3(シッ(ク)グォー) 食べたことがある(経験)

このうち 過 gwo3 は働き者で、動詞「通り過ぎる」、経験の標識、そして比較の標識まで兼ねます。

喺 hai2|「〜に・〜で」の場所の字

書面語の 在 にあたり、場所を導きます。

広東語 粤拼+カタカナ 日本語訳
佢喺屋企 keoi5 hai2 uk1 kei2(コイ ハイ ウッ(ク)ケイ) 彼は家にいる
喺邊度 hai2 bin1 dou6(ハイ ビン ドウ) どこで
我喺香港買嘅 ngo5 hai2 hoeng1 gong2 maai5 ge3(ンゴ ハイ ヒョン ゴン マーイ ゲ) 私が香港で買ったもの

場所を表す句は動詞の前に置くのが原則で、これも普通話と同じ並びです。

佢 keoi5|三人称。人称代名詞をまとめて覚える

書面語の 他・她・它 が、広東語では 佢 の一字に収れんします。性別も人か物かも書き分けません。

広東語 粤拼+カタカナ 日本語訳
ngo5(ンゴ)
nei5(ネイ) あなた
keoi5(コイ) 彼・彼女・それ
我哋 ngo5 dei6(ンゴ デイ) 私たち
你哋 nei5 dei6(ネイ デイ) あなたたち
佢哋 keoi5 dei6(コイ デイ) 彼ら

複数形は 哋 dei6 を足すだけなので、覚える手間は3語分で済みます。

乜 mat1|「何」を聞く字

書面語の 什麼 にあたります。単独より 乜嘢 の形で使うのが普通です。

広東語 粤拼+カタカナ 日本語訳
乜嘢 mat1 je5(マッ(ト)イェ)
你買咗乜嘢 nei5 maai5 zo2 mat1 je5(ネイ マーイ ゾー マッ(ト)イェ) 何を買ったの
佢講乜嘢 keoi5 gong2 mat1 je5(コイ ゴーン マッ(ト)イェ) 彼は何と言ったの

疑問詞は文の頭に移動せず、聞きたい要素があった位置にそのまま残ります。この点も普通話と同じです。

點 dim2|「どう」を聞く字

書面語の 怎麼 にあたり、方法と理由の両方を聞けます。

広東語 粤拼+カタカナ 日本語訳
點樣 dim2 joeng2(ディム ヨーン) どうやって
點解 dim2 gaai2(ディム ガーイ) なぜ
你點睇 nei5 dim2 tai2(ネイ ディム タイ) どう思いますか

點解 は日常会話での頻度がとくに高い字です。

実際の会話でよく出る言い回しは香港で使う広東語フレーズの記事にまとめてあります。

口語字はどう作られているか

口語字は無秩序に増えたわけではなく、作り方に型があります。型を知れば初見の字にも当たりがつきます。

口へんが目印になる

広東語の語を書くために音の近い漢字を借り、そこに口へんを足す、というのが最も多いパターンです。

広東語 粤拼+カタカナ 意味
di1(ディ) 少し・〜たち
gam3(ガム) こんなに・そんなに
go2(ゴー) あの・その
je5(イェ) もの・こと

すでに見た 嘅・喺・咗・唔 も同じ作りです。

口へんが付いていたら「これは話し言葉を書くための字だ」と判断してよい、という実用ルールとして持っておけます。

字を削って作られた 冇 mou5

有 jau5(ヤウ)の内側の2画を抜いたものが 冇 mou5(モウ)で、「ない」を表します。

字形そのものが意味を示す珍しい字です。有 と 冇 は対で覚えると読み違いが減ります。

漢字を借りた字と、新しく作られた字

口語字は大きく2系統に分かれます。

係・食・行 のように、もとからある漢字に広東語の語をあてただけのものが1系統です。

嘅・喺・咗・冇 のように、広東語を書くために字そのものを作ったものがもう1系統です。

学習上は区別する必要がなく、まとめて「口語字」として覚えて構いません。

字体と読みの関係を普通話側から押さえたい場合は、中国語の漢字と声調の記事が入口になります。

字だけでなく語彙が入れ替わる

口語字を覚えても、単語そのものが違えば読めません。ここが二層構造の二段目です。

書面語と広東語で違う日常動詞・指示詞

書面語(繁体字) 広東語(繁体字) 粤拼+カタカナ 日本語訳
sik6(シッ(ク)) 食べる
jam2(ヤム) 飲む
tai2(タイ) 見る・読む
gong2(ゴーン) 言う
bei2(ベイ) あげる
沒有 mou5(モウ) ない
什麼 乜嘢 mat1 je5(マッ(ト)イェ)
這個 呢個 ni1 go3(ニー ゴー) この・これ
那個 嗰個 go2 go3(ゴー ゴー) あの・あれ
現在 而家 ji4 gaa1(イー ガー)

専門用語や抽象語は書面語と重なるので、入れ替わりを覚える対象はこの日常語の層に絞れます。

同じ字なのに意味がずれる語

入れ替わりよりも厄介なのが、同じ字が別の意味で使われている場合です。

行 は書面語では「行く・行う」ですが、広東語の口語では haang4(ハーン)と読んで「歩く」を指します。

書面語をそのまま広東語音で読んでも意味が取れない場面があるのは、こういう字が混じるからです。

語順まで変わる|書面語をそのまま口に出しても広東語にならない

違いは字と語彙で終わりません。文の組み立てそのものが変わる箇所が4つあります。

二重目的語はモノが先、相手が後

書面語(繁体字) 広東語(繁体字) 粤拼+カタカナ 日本語訳
給我一本書 畀本書我 bei2 bun2 syu1 ngo5(ベイ ブン シュー ンゴ) その本を私にちょうだい
教我廣東話 教我廣東話 gaau3 ngo5 gwong2 dung1 waa2(ガーウ ンゴ グォン ドゥン ワー) 私に広東語を教えて

「あげる」系の動詞では、広東語はモノを先に、受け取る相手を後ろに置きます。

ただし2行目のとおり、この語順を取るのは「あげる」系に限られます。教える・見せるといった動詞は書面語と同じ並びのままです。

比較は「形容詞+過+比べる相手」

書面語(繁体字) 広東語(繁体字) 粤拼+カタカナ 日本語訳
他比我高 佢高過我 keoi5 gou1 gwo3 ngo5(コイ ゴウ グォー ンゴ) 彼は私より背が高い
這本書比那本貴 呢本書貴過嗰本 ni1 bun2 syu1 gwai3 gwo3 go2 bun2(ニー ブン シュー グァイ グォー ゴー ブン) この本はあの本より高い

形容詞を先に言い、比べる相手を 過 gwo3 の後ろに置きます。先に挙げた 過 の3つ目の顔がこれです。

この形は新しく生まれたものではありません。上古漢語がもともとこの型で、「梟大於鳩」のように形容詞のあとに比べる相手が来ていました。

普通話の 比 を使う型のほうが後から広まった革新形なので、広東語は古い並びを保っている側になります。

「先に」「もっと」は動詞の後ろに回る

書面語(繁体字) 広東語(繁体字) 粤拼+カタカナ 日本語訳
多吃點 食多啲 sik6 do1 di1(シッ(ク)ドー ディ) もっと食べて
你先走 你行先 nei5 haang4 sin1(ネイ ハーン シン) お先にどうぞ
我今天去香港 我今日去香港 ngo5 gam1 jat6 heoi3 hoeng1 gong2(ンゴ ガム ヤッ(ト)ホイ ヒョン ゴン) 私は今日香港に行く

後ろに回るのは 先 や 多啲 といった限られた語だけです。

3行目のとおり、時間や場所を表す副詞は広東語でも動詞の前に置きます。

「広東語は修飾語を後ろに置く言語だ」と一般化すると、名詞のまわりの語順で全面的に外れます。

量詞だけで「その」を表せる

書面語(繁体字) 広東語(繁体字) 粤拼+カタカナ 日本語訳
書很貴 本書好貴 bun2 syu1 hou2 gwai3(ブン シュー ホウ グァイ) その本は高い

数詞を付けない量詞+名詞で、「その〜」という特定の意味が出ます。

書面語では裸の名詞がその役を担い、量詞+名詞を主語には立てません。

量詞そのものの働きは中国語の文法の特徴の記事で押さえておくと、広東語側の応用が効きます。

文末助詞こそ広東語の話し言葉の本体

口語字と並んで教科書に出てこないのが、文末助詞です。

数が桁違いに多い

マシューズ&イップの広東語文法書は、文末助詞を36個挙げています(Matthews & Yip 1994: 340)。数え方によって30個から200個超まで見積もりに幅があります。

書面語で使う 嗎・呢・吧・啊 などは10個に届かないので、規模がまるで違います。

広東語 粤拼+カタカナ ニュアンス
laa1(ラー) 提案や依頼をやわらげる
laa3(ラー) 状況が変わったことを示す
lo1(ロー) 見ればわかるでしょう、という含み
gaa3(ガー) もともとそうなのだと確認する
me1(メー) 意外だという気持ちの疑問
aa3(アー) 自分の認識をそのまま差し出す
wo3(ウォー) 気づきや伝聞を添える
tim1(ティム) 「その上」と付け足す

重ねて使える

広東語の文末助詞は、2つ以上を並べてニュアンスを足せます。

広東語 粤拼+カタカナ 日本語訳
好啦 hou2 laa1(ホウ ラー) じゃあそうしよう
係㗎 hai6 gaa3(ハイ ガー) そうなんだよ
唔係咩 m4 hai6 me1(ン ハイ メー) 違うの
佢走咗喇喎 keoi5 zau2 zo2 laa3 wo3(コイ ザウ ゾー ラー ウォー) 彼はもう行っちゃったってさ

最後の例は 喇 で「状況が変わった」、喎 で「人から聞いた」を重ねています。

日本語の「行っちゃったんだってさ」が、助詞2つでほぼそのまま再現できていると考えると近いです。

日本語の終助詞の感覚がほぼそのまま使える

英語話者がこの領域で苦労するのは、ニュアンスを担う語尾が英語にほとんど無いからです。

日本語話者の側から見ると事情は逆で、「ね・よ・な・ぞ・っけ」の延長として入っていけます。

「文末助詞が多い=東南アジア的」ではない

広東語の助詞の豊富さを「東南アジアの言語らしさ」の証拠とする説明を見かけますが、論証として成り立ちません。

言語 代表的な助詞 おおよその数 機能の性格
広東語 啦・㗎・咩・喎 36個(Matthews & Yip 1994: 340) 話し手の気持ちや情報の出所を細かく標示
普通話 嗎・呢・吧・啊 10個に満たない 疑問・推量など基本的な区別に絞られる
ベトナム語 nhé・nhỉ・à 十数個 依頼や同意の求め方を調整する
タイ語 ครับ・ค่ะ 中核は数個 話し手の性別と丁寧さを標示する別種の機能
日本語 ね・よ・な・ぞ・っけ 同等に豊富 気持ちの標示。広東語に近い

日本語は東南アジアの言語圏に属しませんが、助詞の豊富さでは広東語と同等です。

タイ語の中核助詞は話し手の性別と丁寧さを示すもので、広東語の助詞とは機能そのものが違います。

つまり「助詞が多い」だけでは地域的な特徴の証拠になりません。日本語話者にとっての結論は「ここは有利な領域だ」というほうです。

それぞれの言語の文の組み立ては、ベトナム語の文法の記事タイ語の語順の記事に預けます。

どこで書面語を、どこで口語を使うか

ここまでの区別を、場面ごとの判断基準に落とします。

書面語で書く場面

新聞・公文書・学校の作文・履歴書・ビジネスメールは書面語で書きます。

ここに口語字を混ぜると、日本語の公式文書に話し言葉が混じったときと同じ違和感が出ます。

宛先の地域によって字体と書式が変わる点は、中国語ビジネスメールの地域別ガイドで整理しています。

なお同じ書面語でも、香港・マカオでは繁体字、広東省側では簡体字で印刷されます。繁体字の 書 は、大陸側では です。

口語で書く場面

チャット・SNS・広告コピー・字幕やセリフ・タブロイド紙は口語で書きます。

たとえば同じ商品の広告でも、値段や仕様の説明は書面語、キャッチコピーだけ口語という混ぜ方が普通に見られます。

混ざる場面と、学習者はどちらから始めるか

雑誌記事やネット記事は、両者が段落単位で混ざります。

話す・聞くことが目的なら口語から入るのが早く、香港の文書を読み書きするなら書面語から入るほうが近道です。

学習の順路と教材の選び方は広東語の勉強法の記事にまとめてあります。

口語字をどう打ち、どう調べるか

口語字は特殊な字ではないので、繁体字の入力方式であればそのまま変換候補に出てきます。

粤拼をローマ字で打って変換する入力方式なら、m4 と打って 唔、hai6 と打って 係 が出る形になります。

辞書は「粤拼で引ける」「繁体字で引ける」「音声が付いている」の3条件で選ぶと外しません。

翻訳サービスの実力差と使い分けは広東語の翻訳ツールの記事で扱っています。

よくある質問

広東語は漢字で書けないのですか

書けます。口語字を使えば、話した内容をそのまま文字にできます。

公式の文書には書面語を使うという慣行があるだけで、書けないわけではありません。

香港の人は普段どちらで書いているのですか

場面で切り替えています。仕事のメールや報告書は書面語、友人とのチャットは口語というのが典型的です。

口語字を使うと失礼になりませんか

失礼かどうかではなく、場面に合うかどうかの問題です。

敬意は語彙や言い回しの側で表すので、口語字を使いながら丁寧に書くこともできます。

広東語を学ぶと簡体字も読めますか

香港・マカオで使うのは繁体字なので、簡体字は別に覚えることになります。

字体の対応関係は中国語の漢字と声調の記事で確認できます。

まとめ

広東語には書面語と口語の二層があり、口語字が現れるのは下の層だけです。

違いは字にとどまらず、日常動詞の入れ替わりと、二重目的語・比較・後置副詞・量詞という4か所の語順にまで及びます。

そのうえで文末助詞は、日本語の終助詞の感覚がそのまま持ち込める最も入りやすい入口です。

普通話との違い全体を先に俯瞰したい場合は広東語と北京語の違いの記事から、学習の順路を決めたい場合は広東語の勉強法の記事から入ってください。

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