クロアチア語の交渉は、フレーズを単体で覚えるだけでは足りません。
大事なのは、ひと言ずつの「往復」がどうつながって着地するかという流れです。
この記事では、価格交渉・条件交渉・社内確認の3場面を、AとBの会話で順番に追います。
各往復を話者・クロアチア語・読み方・日本語訳の4列でならべ、その前後に「いま何が起きているか」「次にどう返すか」を解説します。
登場人物はこう設定します。
- A=買い手(あなた側、クロアチアのサプライヤーから仕入れる担当者)
- B=売り手(クロアチアのサプライヤーの営業担当)
会話文をなぞるうちに、交渉の「型」が体に入っていきます。
場面1:価格交渉のダイアログ
最初の場面は、提示された単価が予算より高かったケースです。
ここでのAのねらいはふたつあります。
- 頭ごなしに値切らず、まず相手の価格の根拠を引き出すこと
- 「値下げ」ではなく「条件次第」の話に持っていくこと
導入:金額に触れる前のひと言
いきなり「高い」と言わず、感謝と前向きな姿勢から入ります。
| 話者 | クロアチア語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Hvala na ponudi. Proizvod izgleda odlično, ali želio bih razgovarati o cijeni. | フヴァーラ ナ ポーヌディ。プローイズヴォド イズグレーダ オドリーチノ、アリ ジェリオ ビフ ラズゴヴァーラティ オ ツィイェニ | 見積りありがとうございます。製品は良さそうですが、価格について相談させてください。 |
| B | Naravno. Što ste imali na umu? | ナラーヴノ。シュト ステ イマリ ナ ウーム | もちろんです。どのあたりをお考えですか? |
Bの Što ste imali na umu?(何を念頭に置いていましたか)は「いくらを想定しているか」を尋ねる定番です。
ここで自分から金額を言うか、相手に言わせるかが最初の分かれ道になります。
本題:根拠を引き出す
金額を即答する前に、価格の内訳や相場感を確認します。
| 話者 | クロアチア語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Iskreno, malo je više nego što smo planirali. Možete li mi objasniti kako je cijena određena? | イスクレノ、マーロ イェ ヴィシェ ネゴ シュト スモ プラニーラリ。モジェテ リ ミ オブヤースニティ カコ イェ ツィイェナ オドレージェナ | 正直、予算より少し高いです。価格の決まり方を説明してもらえますか? |
| B | Naravno. Jedinična cijena odražava troškove materijala i malu količinu narudžbe. | ナラーヴノ。イェディニチュナ ツィイェナ オドラージャヴァ トローシュコヴェ マテリヤーラ イ マール コリチーヌ ナルージュベ | もちろんです。単価には材料費と少量発注が反映されています。 |
objasniti kako(どのように〜か説明する)は「順を追って説明してもらう」便利な表現です。
Bが「少量発注だから高い」と言ったので、Aには「量を増やす」というカードが見えました。
展開:条件付きで切り返す
相手の発言を逆手に取り、量と引き換えに値下げを提案します。
| 話者 | クロアチア語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Razumijem. Ako udvostručimo narudžbu, možete li ponuditi bolju jediničnu cijenu? | ラズーミイェム。アコ ウドヴォストルーチモ ナルージュブ、モジェテ リ ポヌーディティ ボーリュ イェディニチュヌ ツィイェヌ | なるほど。発注量を倍にしたら、単価を下げてもらえますか? |
| B | To bi moglo ići. S dvostrukom količinom mogao bih skinuti oko 8 posto. | ト ビ モーグロ イーチ。ス ドヴォストルコム コリチーノム モーガオ ビフ スキーヌティ オコ オーサム ポスト | それなら可能です。倍の量なら、8%ほど引けます。 |
skinuti(下げる・差し引く)は「値引きする」というくだけた言い方です。
8%という具体的な数字が出たので、ここからは「もう少し」を狙うか、合意するかの判断になります。
着地:上乗せを狙って確認する
一度の譲歩で満足せず、さらに小さな上乗せを引き出してから固めます。
| 話者 | クロアチア語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | To je dobar početak. Možete li to podići na 10 posto ako i platimo unaprijed? | ト イェ ドーバル ポチェータク。モジェテ リ ト ポディーチ ナ デーセト ポスト アコ イ プラーティモ ウナプリイェド | 良い出発点ですね。前払いもするなら10%にできますか? |
| B | Dogovoreno. Deset posto popusta za dvostruku količinu i plaćanje unaprijed. | ドゴヴォーレノ。デーセト ポスト ポープスタ ザ ドヴォストルク コリチーヌ イ プラーチャニェ ウナプリイェド | いいでしょう。倍の量と前払いで10%引きです。 |
| A | Odlično. Da potvrdim: 10 posto popusta, dvostruka količina, plaćeno unaprijed. | オドリーチノ。ダ ポトヴルディム:デーセト ポスト ポープスタ、ドヴォストルカ コリチーナ、プラーチェノ ウナプリイェド | では確認です。10%引き、倍量、前払い、ですね。 |
最後にAが内容を口頭で復唱しているのがポイントです。
Da potvrdim(確認させてください)で要点を読み上げると、後日の「言った言わない」を防げます。
場面2:条件交渉のダイアログ
次は、価格はほぼ決まったあとの「条件」をめぐる場面です。
納期・契約期間・サポート範囲など、金額以外の論点が交渉の中心になります。
Aのねらいは、譲れる点と譲れない点を切り分けて「交換」することです。
切り出し:論点を並べる
まず、まだ詰まっていない条件をテーブルに並べます。
| 話者 | クロアチア語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Cijena nam odgovara. Sada bih želio riješiti rok isporuke i uvjete ugovora. | ツィイェナ ナム オドゴヴァーラ。サーダ ビフ ジェリオ リイェーシティ ローク イスポルケ イ ウーヴィェテ ウーゴヴォラ | 価格は問題ありません。次は納期と契約条件を整理したいです。 |
| B | Zvuči dobro. Što vam je najvažnije? | ズヴーチ ドーブロ。シュト ヴァム イェ ナイヴァジュニイェ | いいですね。どれが一番重要ですか? |
riješiti(解決する・片づける)は複数の論点をまとめて整理するときに使えます。
Bの Što vam je najvažnije?(何が一番重要ですか)には、こちらの優先順位を正直に明かすかどうかの駆け引きがあります。
本題:優先順位を交換する
「これが大事」と伝えると同時に、相手の事情も聞きます。
| 話者 | クロアチア語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Rok isporuke je ključan. Trebamo prvu pošiljku unutar tri tjedna. | ローク イスポルケ イェ クリューチャン。トレーバモ プルヴ ポーシリュク ウーヌタル トリ チェドナ | 納期が決定的です。最初の納品を3週間以内にお願いしたいです。 |
| B | Tri tjedna su kratko. Naš standardni rok je četiri. | トリ チェドナ ス クラートコ。ナーシュ スタンダルドニ ローク イェ チェーティリ | 3週間は厳しいです。標準の納期は4週間でして。 |
rok isporuke(納品の期限)は「発注から納品までの期間」を指す交渉の頻出語です。
相手が「標準は4週間」と線を引いたので、Aは見返りを用意して短縮を頼む流れに入ります。
展開:見返りを添えて頼む
無理を通すのではなく、相手が動きやすくなる条件をセットにします。
| 話者 | クロアチア語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Razumijem. Ako potpišemo jednogodišnji ugovor, možete li dati prednost našoj prvoj pošiljci? | ラズーミイェム。アコ ポトピーシェモ イェドノゴディシュニ ウーゴヴォル、モジェテ リ ダーティ プレードノスト ナーショイ プルヴォイ ポーシリツィ | 分かります。1年契約を結ぶなら、初回出荷を優先してもらえますか? |
| B | Za jednogodišnju obvezu mogu gurnuti prvu pošiljku na tri tjedna. | ザ イェドノゴディシュニュ オーブヴェズ モグ グルヌティ プルヴ ポーシリュク ナ トリ チェドナ | 年間契約なら、初回だけ3週間に前倒しできます。 |
dati prednost(優先する)は納期や対応のお願いに重宝します。
Aは「契約期間」という相手が欲しいものを差し出し、欲しい「納期短縮」を得たわけです。
着地:残りの条件を確認する
主要な論点が決まったら、細かい条件も取りこぼさず確認します。
| 話者 | クロアチア語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Savršeno. Uključuje li jednogodišnji ugovor podršku i zamjene? | サヴルシェノ。ウクリューチュイェ リ イェドノゴディシュニ ウーゴヴォル ポドルシュク イ ザーミェネ | 助かります。1年契約にはサポートと交換対応も含まれますか? |
| B | Da, podrška je uključena. Zamjene za neispravne proizvode također. | ダ、ポドルシュカ イェ ウクリューチェナ。ザーミェネ ザ ネイスプラヴネ プローイズヴォデ タコージェル | はい、サポート込みです。不良品の交換も含みます。 |
| A | Onda mislim da smo usklađeni oko uvjeta. | オンダ ミスリム ダ スモ ウスクラージェニ オコ ウーヴィェタ | では条件で認識が合いましたね。 |
biti usklađen(足並みがそろう・認識が一致する)は、合意間近を示す言い回しです。
サポートや不良品交換のような「あとで揉めやすい点」をその場で言葉にしておくと安心です。
場面3:押し返しと社内確認のダイアログ
3つ目は、相手が強めに押してきて、その場で即決できない場面です。
ここでのAのねらいは、関係を壊さずに「持ち帰る」ことです。
交渉では、即答を避けて一度引く動きも立派なカードになります。
押し返しを受け止める
相手が値下げを強く求めてきても、すぐ折れません。
| 話者 | クロアチア語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| B | Iskreno, trebamo barem 15 posto popusta, inače neće proći kod nas. | イスクレノ、トレーバモ バーレム ペートナエスト ポスト ポープスタ、イナーチェ ネーチェ プローチ コド ナス | 正直、最低15%引きでないと、こちらで通りません。 |
| A | Čujem vas. Ipak, 15 posto je velik skok od naše trenutne razine. | チューイェム ヴァス。イーパク、ペートナエスト ポスト イェ ヴェーリク スコーク オド ナーシェ トレヌートネ ラーズィネ | おっしゃることは分かります。ただ15%は今の水準から大きな開きです。 |
Čujem vas.(あなたの言うことが聞こえます=言いたいことは分かる)は一度受け止める、やわらかい相づちです。
同意ではなく「受け止め」なので、ここから自分の立場を返しても角が立ちません。
理由を尋ねて時間を作る
相手の数字の背景を聞きつつ、即決を避ける布石を打ちます。
| 話者 | クロアチア語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Možete li mi pomoći razumjeti odakle dolazi tih 15 posto? | モジェテ リ ミ ポモーチ ラズーミェティ オダークレ ドラーズィ ティフ ペートナエスト ポスト | その15%の根拠を教えてもらえますか? |
| B | Konkurent nam je ponudio sličan proizvod jeftinije. | コンクレント ナム イェ ポヌーディオ スリーチャン プローイズヴォド イェフティニイェ | 競合がもっと安く同等品を出してきたんです。 |
odakle dolazi(どこから来ているか=根拠)を尋ねる言い方は、相手の数字を掘り下げるのに使えます。
「競合の存在」という相手の事情が分かれば、対抗するか持ち帰るかを判断できます。
持ち帰りカードを切る
その場で答えず、社内に持ち帰る形で時間を確保します。
| 話者 | クロアチア語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | To je korisno. Ne mogu sam odlučiti o 15 posto, moram provjeriti s voditeljem. | ト イェ コーリスノ。ネ モグ サム オドルーチティ オ ペートナエスト ポスト、モーラム プロヴィェーリティ ス ヴォディテリェム | 参考になります。15%は私だけでは決められないので、上司に確認させてください。 |
| B | Nema problema. Kada mi se možete javiti? | ネーマ プロブレーマ。カダ ミ セ モジェテ ヤーヴィティ | 大丈夫です。いつ頃お返事いただけますか? |
| A | Do četvrtka. Poslat ću našu protuponudu u pisanom obliku. | ド チェトヴルトカ。ポスラト チュ ナーシュ プロトゥポーヌドゥ ウ ピーサノム オーブリク | 木曜までに。こちらの対案を書面でお送りします。 |
provjeriti s voditeljem(上司に確認する)は、即決を避ける世界共通の交渉カードです。
protuponuda(対案・逆提案)は、ただ断るのではなく代わりの数字を返す姿勢を示します。
会話を組み立てる4つの型
3つの場面に共通する流れを抜き出すと、交渉の骨組みが見えてきます。
大きく次の4ステップでできています。
| ステップ | 役割 | 代表フレーズ(クロアチア語) | 読み方(カタカナ発音) |
|---|---|---|---|
| 受け止める | 相手の主張を一度受ける | Čujem vas. / Razumijem. | チューイェム ヴァス/ラズーミイェム |
| 掘り下げる | 根拠や優先順位を聞く | Možete li mi objasniti kako…? | モジェテ リ ミ オブヤースニティ カコ |
| 交換する | 条件付きで譲る・頼む | Ako mi…, možete li…? | アコ ミ、モジェテ リ |
| 固める | 合意を口頭と書面で確認 | Da potvrdim… / u pisanom obliku | ダ ポトヴルディム/ウ ピーサノム オーブリク |
この「受け止める→掘り下げる→交換する→固める」を覚えておくと、想定外の話題でも流れを立て直せます。
交渉学では、立場のぶつけ合いより、互いの利害を探って交換することが推奨されています。
また、決裂時の最善の代替案を BATNA と呼び、これを持っておくと「持ち帰る」「断る」の判断がぶれません。
想定シーン|会話が固まったときの立て直し
たとえば、相手が黙り込んで会話が止まる場面を考えてみましょう。
そんなときは、論点を一度整理し直すと再び動き出します。
| 話者 | クロアチア語 | 読み方(カタカナ発音) | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Vratimo se korak unatrag i pogledajmo što smo dosad dogovorili. | ヴラーティモ セ コーラク ウナートラグ イ ポグレーダイモ シュト スモ ドサド ドゴヴォーリリ | 一度引いて、これまで合意した点を見直しましょう。 |
| A | Možda možemo ovu točku ostaviti za kasnije i nastaviti dalje. | モージュダ モジェモ オヴ トーチク オスターヴィティ ザ カスニイェ イ ナスターヴィティ ダーリェ | この点はいったん保留にして、先へ進みませんか。 |
| A | Što bi bilo potrebno da ovo bude prihvatljivo za vas? | シュト ビ ビーロ ポトレーブノ ダ オヴォ ブーデ プリフヴァートリヴォ ザ ヴァス | どうすれば御社にとって成立しますか? |
ostaviti za kasnije(後回しにする)は「論点を一時保留にする」会議でも使う表現です。
Što bi bilo potrebno…?(何が必要でしょうか)は、相手にボールを返して具体的な条件を引き出す質問になります。
よくある質問
Q. 交渉のダイアログで最初の往復は何を意識しますか?
いきなり数字をぶつけず、感謝と前向きな姿勢で入り、相手に「いくらを想定しているか」を尋ねます。
Što ste imali na umu?(何をお考えでしたか)のように、先に相手の手の内を聞くと進めやすくなります。
Q. 相手が強く押してきたとき、すぐ折れない返し方は?
Čujem vas.(言いたいことは分かります)と一度受け止めてから、自分の立場を返します。
受け止めは同意ではないので、その後に反論を続けても角が立ちません。
Q. その場で決められないときはどう言えばいいですか?
Moram provjeriti s voditeljem.(上司に確認させてください)と社内確認を理由に持ち帰ります。
あわせて返答期限を約束すると、ただの先延ばしに見えません。
Q. 会話が止まってしまったらどうしますか?
Vratimo se korak unatrag…(一度引いて見直しましょう)と合意済みの点を整理し直します。
詰まった論点は ostaviti za kasnije(後回しにする)で一度保留にし、進められる話題から動かします。
まとめ
交渉は単発のフレーズより、往復の流れで身につくものです。
- 受け止める→掘り下げる→交換する→固める、の4ステップで会話を運ぶ。
- 譲歩は ako(〜なら)で条件付きにし、相手の欲しいものと交換する。
- 即決できないときは持ち帰り、合意は口頭と書面の両方で確認する。
あとは、交渉でよく出る単語をまとめて押さえておくと、会話の往復がさらにスムーズになります。
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