イタリア語の交渉は、フレーズを単体で覚えるだけでは足りません。
大事なのは、ひと言ずつの「往復」がどうつながって着地するかという流れです。
この記事では、価格交渉・条件交渉・社内確認の3場面を、AとBの会話で順番に追います。
各往復を話者・イタリア語・読み方・日本語訳の4列でならべ、その前後に「いま何が起きているか」「次にどう返すか」を解説します。
登場人物はこう設定します。
- A=買い手(あなた側、イタリアのサプライヤーから仕入れる日本企業の担当者)
- B=売り手(イタリアのサプライヤーの営業担当)
会話文をなぞるうちに、交渉の「型」が体に入っていきます。
場面1|価格交渉のダイアログ
最初の場面は、提示された単価が予算より高かったケースです。
ここでのAのねらいはふたつあります。
- 頭ごなしに値切らず、まず相手の価格の根拠を引き出すこと
- 「値下げ」ではなく「条件次第」の話に持っていくこと
導入:金額に触れる前のひと言
いきなり「高い」と言わず、感謝と前向きな姿勢から入ります。
| 話者 | イタリア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Grazie per il preventivo. Il prodotto ci piace molto, ma vorrei parlare del prezzo. | グラーツィエ・ペル・イル・プレヴェンティーヴォ。イル・プロドット・チ・ピアーチェ・モルト、マ・ヴォッレイ・パルラーレ・デル・プレッツォ | 見積りありがとうございます。製品はとても良さそうですが、価格について相談させてください。 |
| B | Certo. Cosa aveva in mente? | チェルト。コーザ・アヴェーヴァ・イン・メンテ | もちろんです。どのあたりをお考えでしたか? |
Bの「Cosa aveva in mente?」は「いくらを想定しているか」を尋ねる定番です。
ここで自分から金額を言うか、相手に言わせるかが最初の分かれ道になります。
本題:根拠を引き出す
金額を即答する前に、価格の内訳や相場感を確認します。
| 話者 | イタリア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | A dire il vero, è un po’ più alto del nostro budget. Può spiegarmi come si compone il prezzo? | ア・ディーレ・イル・ヴェーロ、エ・ウン・ポ・ピュ・アルト・デル・ノストロ・バジェット。プオ・スピエガールミ・コーメ・シ・コンポーネ・イル・プレッツォ | 正直、予算より少し高いです。価格の内訳を説明してもらえますか? |
| B | Certo. Il prezzo unitario riflette il costo dei materiali e il volume ridotto dell’ordine. | チェルト。イル・プレッツォ・ウニタリオ・リフレッテ・イル・コスト・デイ・マテリアーリ・エ・イル・ヴォルーメ・リドット・デッロルディネ | もちろんです。単価には材料費と少量発注が反映されています。 |
「come si compone il prezzo(価格がどう構成されるか)」は、内訳を丁寧に尋ねる便利な表現です。
Bが「少量発注だから高い」と言ったので、Aには「量を増やす」というカードが見えました。
展開:条件付きで切り返す
相手の発言を逆手に取り、量と引き換えに値下げを提案します。
| 話者 | イタリア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Capisco. Se raddoppiassimo l’ordine, potreste offrire un prezzo unitario migliore? | カピスコ。セ・ラッドッピアッシモ・ロルディネ、ポトレステ・オッフリーレ・ウン・プレッツォ・ウニタリオ・ミリオーレ | なるほど。発注量を倍にしたら、単価を下げてもらえますか? |
| B | Potrebbe funzionare. Con il doppio del volume, potrei togliere circa l’8%. | ポトレッベ・フンツィオナーレ。コン・イル・ドッピオ・デル・ヴォルーメ、ポトレイ・トリエーレ・チルカ・ロット・ペル・チェント | それなら可能です。倍の量なら、8%ほど引けます。 |
「togliere l’8%(8%を引く)」は、値引きを表すくだけた言い方です。
8%という具体的な数字が出たので、ここからは「もう少し」を狙うか、合意するかの判断になります。
着地:上乗せを狙って確認する
一度の譲歩で満足せず、さらに小さな上乗せを引き出してから固めます。
| 話者 | イタリア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | È un buon inizio. Potrebbe arrivare al 10% se paghiamo anche in anticipo? | エ・ウン・ブオン・イニーツィオ。ポトレッベ・アッリヴァーレ・アル・ディエチ・ペル・チェント・セ・パギアーモ・アンケ・イン・アンティチーポ | 良い出発点ですね。前払いもするなら10%にできますか? |
| B | Affare fatto. Dieci per cento di sconto per il doppio volume e il pagamento anticipato. | アッファーレ・ファット。ディエチ・ペル・チェント・ディ・スコント・ペル・イル・ドッピオ・ヴォルーメ・エ・イル・パガメント・アンティチパート | いいでしょう。倍の量と前払いで10%引きです。 |
| A | Perfetto. Allora confermo: 10% di sconto, doppio volume, pagamento anticipato. | ペルフェット。アッローラ・コンフェルモ:ディエチ・ペル・チェント・ディ・スコント、ドッピオ・ヴォルーメ、パガメント・アンティチパート | では確認です。10%引き、倍量、前払い、ですね。 |
最後にAが内容を口頭で復唱しているのがポイントです。
「Allora confermo(では確認します)」で要点を読み上げると、後日の「言った言わない」を防げます。
場面2|条件交渉のダイアログ
次は、価格はほぼ決まったあとの「条件」をめぐる場面です。
納期・契約期間・サポート範囲など、金額以外の論点が交渉の中心になります。
Aのねらいは、譲れる点と譲れない点を切り分けて「交換」することです。
切り出し:論点を並べる
まず、まだ詰まっていない条件をテーブルに並べます。
| 話者 | イタリア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Sul prezzo siamo d’accordo. Ora vorrei sistemare i tempi di consegna e i termini del contratto. | スル・プレッツォ・シアーモ・ダッコルド。オーラ・ヴォッレイ・システマーレ・イ・テンピ・ディ・コンセーニャ・エ・イ・テルミニ・デル・コントラット | 価格は問題ありません。次は納期と契約条件を整理したいです。 |
| B | Mi sembra giusto. Quale conta di più per voi? | ミ・センブラ・ジュスト。クアーレ・コンタ・ディ・ピュ・ペル・ヴォイ | いいですね。どれが一番重要ですか? |
「sistemare(整理して片づける)」は、複数の論点をまとめるときに使えるニュアンスの語です。
Bの「Quale conta di più?」には、こちらの優先順位を正直に明かすかどうかの駆け引きがあります。
本題:優先順位を交換する
「これが大事」と伝えると同時に、相手の事情も聞きます。
| 話者 | イタリア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | I tempi di consegna sono fondamentali. Ci serve il primo lotto entro tre settimane. | イ・テンピ・ディ・コンセーニャ・ソノ・フォンダメンターリ。チ・セルヴェ・イル・プリーモ・ロット・エントロ・トレ・セッティマーネ | 納期が決定的です。最初の納品を3週間以内にお願いしたいです。 |
| B | Tre settimane sono strette. I nostri tempi standard sono di quattro. | トレ・セッティマーネ・ソノ・ストレッテ。イ・ノストリ・テンピ・スタンダルド・ソノ・ディ・クアットロ | 3週間は厳しいです。標準の納期は4週間でして。 |
「tempi di consegna(納期・リードタイム)」は、交渉の頻出語です。
相手が「標準は4週間」と線を引いたので、Aは見返りを用意して短縮を頼む流れに入ります。
展開:見返りを添えて頼む
無理を通すのではなく、相手が動きやすくなる条件をセットにします。
| 話者 | イタリア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Capisco. Se firmiamo un contratto annuale, potreste dare la priorità alla nostra prima spedizione? | カピスコ。セ・フィルミアーモ・ウン・コントラット・アンヌアーレ、ポトレステ・ダーレ・ラ・プリオリタ・アッラ・ノストラ・プリーマ・スペディツィオーネ | 分かります。1年契約を結ぶなら、初回出荷を優先してもらえますか? |
| B | Per un impegno annuale, posso anticipare a tre settimane il primo lotto. | ペル・ウン・インペーニョ・アンヌアーレ、ポッソ・アンティチパーレ・ア・トレ・セッティマーネ・イル・プリーモ・ロット | 年間契約なら、初回だけ3週間に前倒しできます。 |
「dare la priorità a(〜を優先する)」は、納期や対応のお願いに重宝します。
Aは「契約期間」という相手が欲しいものを差し出し、欲しい「納期短縮」を得たわけです。
着地:残りの条件を確認する
主要な論点が決まったら、細かい条件も取りこぼさず確認します。
| 話者 | イタリア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Perfetto. Il contratto annuale include anche assistenza e sostituzioni? | ペルフェット。イル・コントラット・アンヌアーレ・インクルーデ・アンケ・アッシステンツァ・エ・ソスティトゥツィオーニ | 助かります。1年契約にはサポートと交換対応も含まれますか? |
| B | Sì, l’assistenza è inclusa. Anche la sostituzione dei pezzi difettosi. | シ、ラッシステンツァ・エ・インクルーザ。アンケ・ラ・ソスティトゥツィオーネ・デイ・ペッツィ・ディフェットージ | はい、サポート込みです。不良品の交換も含みます。 |
| A | Allora direi che siamo allineati sui termini. | アッローラ・ディレイ・ケ・シアーモ・アッリネアーティ・スイ・テルミニ | では条件で認識が合いましたね。 |
「siamo allineati su(〜について認識が一致した)」は、合意間近を示す言い回しです。
サポートや不良品交換のような「あとで揉めやすい点」をその場で言葉にしておくと安心です。
場面3|押し返しと社内確認のダイアログ
3つ目は、相手が強めに押してきて、その場で即決できない場面です。
ここでのAのねらいは、関係を壊さずに「持ち帰る」ことです。
交渉では、即答を避けて一度引く動きも立派なカードになります。
押し返しを受け止める
相手が値下げを強く求めてきても、すぐ折れません。
| 話者 | イタリア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| B | Sinceramente, ci serve almeno il 15% di sconto, altrimenti dalla nostra parte non passa. | シンチェラメンテ、チ・セルヴェ・アルメーノ・イル・クインディチ・ペル・チェント・ディ・スコント、アルトリメンティ・ダッラ・ノストラ・パルテ・ノン・パッサ | 正直、最低15%引きでないと、こちらで通りません。 |
| A | La capisco. Però il 15% è un salto notevole rispetto a dove siamo ora. | ラ・カピスコ。ペロ・イル・クインディチ・ペル・チェント・エ・ウン・サルト・ノテーヴォレ・リスペット・ア・ドーヴェ・シアーモ・オーラ | おっしゃることは分かります。ただ15%は今の水準から大きな開きです。 |
「La capisco(おっしゃることは分かります)」は、一度受け止めるやわらかい相づちです。
同意ではなく「受け止め」なので、ここから自分の立場を返しても角が立ちません。
理由を尋ねて時間を作る
相手の数字の背景を聞きつつ、即決を避ける布石を打ちます。
| 話者 | イタリア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Può aiutarmi a capire da dove viene quel 15%? | プオ・アイウタールミ・ア・カピーレ・ダ・ドーヴェ・ヴィエーネ・クエル・クインディチ・ペル・チェント | その15%の根拠を教えてもらえますか? |
| B | Un concorrente ci ha offerto un prodotto simile a meno. | ウン・コンコッレンテ・チ・ア・オッフェルト・ウン・プロドット・シーミレ・ア・メーノ | 競合がもっと安く同等品を出してきたんです。 |
「da dove viene(どこから来ているか=根拠)」は、相手の数字の背景を尋ねる言い方です。
「競合の存在」という相手の事情が分かれば、対抗するか持ち帰るかを判断できます。
持ち帰りカードを切る
その場で答えず、社内に持ち帰る形で時間を確保します。
| 話者 | イタリア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Mi è utile saperlo. Sul 15% non posso decidere da solo, devo sentire il mio responsabile. | ミ・エ・ウーティレ・サペールロ。スル・クインディチ・ペル・チェント・ノン・ポッソ・デチデーレ・ダ・ソーロ、デーヴォ・センティーレ・イル・ミオ・レスポンサービレ | 参考になります。15%は私だけでは決められないので、上司に確認させてください。 |
| B | Nessun problema. Quando può farmi sapere? | ネッスン・プロブレーマ。クアンド・プオ・ファルミ・サペーレ | 大丈夫です。いつ頃お返事いただけますか? |
| A | Entro giovedì. Le invio la nostra controproposta per iscritto. | エントロ・ジョヴェディ。レ・インヴィオ・ラ・ノストラ・コントロプロポスタ・ペル・イスクリット | 木曜までに。こちらの対案を書面でお送りします。 |
「devo sentire il mio responsabile(上司に確認する必要がある)」は、即決を避ける世界共通の交渉カードです。
「controproposta(対案・逆提案)」は、ただ断るのではなく代わりの数字を返す姿勢を示します。
会話を組み立てる4つの型
3つの場面に共通する流れを抜き出すと、交渉の骨組みが見えてきます。
大きく次の4ステップでできています。
| ステップ | 役割 | 代表フレーズ |
|---|---|---|
| 受け止める | 相手の主張を一度受ける | La capisco. / Capisco. |
| 掘り下げる | 根拠や優先順位を聞く | Può spiegarmi come si compone…? |
| 交換する | 条件付きで譲る・頼む | Se noi…, potreste…? |
| 固める | 合意を口頭と書面で確認 | Allora confermo… / per iscritto |
この「受け止める→掘り下げる→交換する→固める」を覚えておくと、想定外の話題でも流れを立て直せます。
交渉学の古典『Getting to Yes』(Roger Fisher・William Ury)でも、立場のぶつけ合いより、互いの利害を探って交換することが推奨されています。
また、決裂時の最善の代替案をBATNA(Best Alternative To a Negotiated Agreement)と呼び、これを持っておくと「持ち帰る」「断る」の判断がぶれません。
オンライン会議で会話を立て直すコツ
たとえば、相手が黙り込んで会話が止まる場面を考えてみましょう。
オンライン会議では沈黙が長く感じられますが、論点を整理し直すと再び動き出します。
| 話者 | イタリア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Facciamo un passo indietro e rivediamo i punti su cui siamo già d’accordo. | ファッチャーモ・ウン・パッソ・インディエトロ・エ・リヴェディアーモ・イ・プンティ・ス・クイ・シアーモ・ジャ・ダッコルド | 一度引いて、これまで合意した点を見直しましょう。 |
| A | Forse possiamo accantonare questo punto e andare avanti per ora. | フォルセ・ポッシアーモ・アッカントナーレ・クエスト・プント・エ・アンダーレ・アヴァンティ・ペル・オーラ | この点はいったん保留にして、先へ進みませんか。 |
| A | Cosa servirebbe perché funzioni per voi? | コーザ・セルヴィレッベ・ペルケ・フンツィオーニ・ペル・ヴォイ | どうすれば御社にとって成立しますか? |
「accantonare questo punto(論点を一時保留にする)」は、会議でも使う表現です。
「Cosa servirebbe…?(どうすれば成立しますか)」は、相手にボールを返して具体的な条件を引き出す質問になります。
よくある質問
交渉のダイアログで最初の往復は何を意識しますか?
いきなり数字をぶつけず、感謝と前向きな姿勢で入り、相手に「いくらを想定しているか」を尋ねます。
「Cosa aveva in mente?(どのあたりをお考えでしたか)」のように、先に相手の手の内を聞くと進めやすくなります。
相手が強く押してきたとき、すぐ折れない返し方は?
「La capisco.(おっしゃることは分かります)」と一度受け止めてから、自分の立場を返します。
受け止めは同意ではないので、その後に反論を続けても角が立ちません。
その場で決められないときはどう言えばいいですか?
「Devo sentire il mio responsabile.(上司に確認させてください)」と社内確認を理由に持ち帰ります。
あわせて返答期限を約束すると、ただの先延ばしに見えません。
会話が止まってしまったらどうしますか?
「Facciamo un passo indietro…(一度引いて見直しましょう)」と合意済みの点を整理し直します。
詰まった論点は「accantonare(保留にする)」で一度脇に置き、進められる話題から動かします。
まとめ
交渉は単発のフレーズより、往復の流れで身につくものです。
- 受け止める→掘り下げる→交換する→固める、の4ステップで会話を運ぶ。
- 譲歩は「Se」で条件付きにし、相手の欲しいものと交換する。
- 即決できないときは持ち帰り、合意は口頭と書面の両方で確認する。
あとは、交渉でよく出る単語をまとめて押さえておくと、会話の往復がさらにスムーズになります。
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