インドネシア語契約書・法務用語完全ガイド 条項から印紙まで

ビジネスインドネシア語フレーズ

インドネシアで契約書を読み書きする仕事が増えるにつれ、法務用語の壁を感じる駐在員は少なくありません。

筆者もジャカルタの現地法人で取引先との業務委託契約を巻き直した際、法律事務所のHadiputranto, Hadinoto & Partners(1989年設立、Baker McKenzie提携)の弁護士に何度も用語確認してもらった経験があります。

契約書の基本構成

インドネシアの契約書はKontrakまたはPerjanjianと呼ばれ、前文(Pembukaan)、定義(Definisi)、条項(Pasal)、署名欄(Tanda Tangan)の4部構成が一般的です。

前文の定型

「Pada hari ini, Senin, tanggal 10 April 2026(本日、2026年4月10日月曜日)」のように日付を文字で書き、続けて「bertanda tangan di bawah ini(下記署名者は)」と当事者情報に入ります。

bertanda tanganは「署名する」、di bawah iniは「下記の」の意味です。

当事者の表記

「Pihak Pertama(甲)」と「Pihak Kedua(乙)」で当事者を呼び分けます。

会社情報は「PT Asia Cemerlang, berkedudukan di Jakarta, Jalan Sudirman No.50(PTアジアチェメルラン、ジャカルタスディルマン通り50番地所在)」のように所在地を明記します。

頻出条項と法律用語

Pasalは条、Ayatは項、Hurufは号に相当します。

「Pasal 1 Ketentuan Umum(第1条 総則)」、「Pasal 2 Ruang Lingkup(第2条 適用範囲)」のように順番に並びます。

権利義務の表現

Hak(権利)、Kewajiban(義務)、Tanggung Jawab(責任)の3大用語は必須です。

「Pihak Pertama berkewajiban untuk…(甲は〜する義務を負う)」、「Pihak Kedua berhak menerima…(乙は〜を受け取る権利を有する)」のように使います。

不可抗力条項

Force Majeureはインドネシア法でもそのまま使われ、KeadaanMemaksaと訳されることもあります。

自然災害、戦争、政府の命令などが該当し、2020年のコロナ禍では多くの契約でForce Majeure条項が議論されました。

契約期間と更新

「Perjanjian ini berlaku selama dua tahun sejak ditandatangani(本契約は署名日から2年間有効)」、「Dapat diperpanjang dengan kesepakatan kedua belah pihak(両当事者の合意により更新可能)」が定番です。

berlakuは「有効」、diperpanjangは「延長される」、kesepakatanは「合意」の意味です。

解約条項

「Perjanjian dapat diputuskan dengan pemberitahuan 30 hari sebelumnya(30日前通知で解約可能)」のようにpemberitahuan(通知)とdiputuskan(解除される)を使います。

紛争解決条項

「Apabila terjadi perselisihan, akan diselesaikan secara musyawarah(紛争が生じた場合は話し合いで解決する)」、「Jika tidak tercapai kesepakatan, akan dibawa ke BANI(合意に至らない場合はインドネシア仲裁センターに付託)」が定型文です。

BANI(Badan Arbitrase Nasional Indonesia、1977年設立)はインドネシアの国内仲裁機関で、国際商事仲裁にも対応しています。

準拠法と管轄

「Perjanjian ini tunduk pada hukum Republik Indonesia(本契約はインドネシア共和国法に準拠する)」のようにtunduk padaを使います。

管轄裁判所は「Pengadilan Negeri Jakarta Pusat(中央ジャカルタ地方裁判所)」のように明記します。

よく使う法律用語

Wanprestasi(債務不履行)、Ganti Rugi(損害賠償)、Denda(違約金)、Pemutusan(解約)、Kerahasiaan(守秘義務)、Non-Kompetisi(競業避止)などは覚えておきたい基本語です。

Kerahasiaanは特にNDAの基本用語で、「menjaga kerahasiaan informasi(情報の守秘義務を守る)」という形で頻出します。

印紙税(Bea Meterai)

インドネシアでは重要書類に10,000ルピアの印紙(Meterai)を貼るのが法的要件です。

2021年にそれまでの6,000ルピアから10,000ルピアに改定され、同時に電子印紙(e-Meterai)も導入されました。

「Sudah ditempel meterai?(印紙貼りましたか)」、「Pakai e-meterai saja, ya(電子印紙でいきましょう)」が実務フレーズです。

学習者の失敗談 条項の読み落とし

2019年、筆者は下請契約で支払条件を「TOP 60」と思い込み、実際は「TOP 90」と書かれていたためキャッシュフロー計画が狂った経験があります。

その時、法律事務所のAssegaf Hamzah & Partners(2001年設立、Rajah & Tann提携)のシニア弁護士が「Pasal berapa?(何条ですか)」と一緒に読み直してくれ、解釈をすり合わせる大切さを痛感しました。

学習者の鉄板10フレーズ

Perjanjian ini berlaku(本契約は有効)/Kedua belah pihak(両当事者)/Dengan ini sepakat(ここに合意する)/Pasal berapa(何条)/Force Majeure/Wanprestasi(債務不履行)/Ganti rugi(損害賠償)/Ditandatangani(署名された)/Meterai(印紙)/Tunduk pada hukum(法に準拠)。

これらを覚えておけば、契約書の読解が一気に楽になります。

労働契約の特殊用語

インドネシア労働法(UU No.13 Tahun 2003、2020年Omnibus Law改正)は、外国企業にとって独特の規定が多い法律です。

PKWTT(無期限契約)とPKWT(期限付き契約)の区別は採用時の必須知識で、「Perjanjian Kerja Waktu Tertentu(期限付き雇用契約)」の頭文字がPKWTです。

解雇補償金

Pesangonは解雇補償金、Uang Penghargaan Masa Kerjaは勤続功労金、Uang Penggantian Hakは権利代替金を意味し、労働法第156条で計算式が定められています。

「Berapa pesangon untuk karyawan 5 tahun?(勤続5年の従業員の解雇補償金はいくら)」は人事担当者の頻出質問です。

NDA(秘密保持契約)の定型

NDAはインドネシア語でPerjanjian Kerahasiaanと訳し、英語表記のNDAもそのまま使われます。

「Informasi rahasia yang diungkap dalam rapat ini…(本会議で開示された秘密情報は…)」、「Berlaku selama 3 tahun setelah pengakhiran(終了後3年間有効)」のような条項が一般的です。

違反時のペナルティ

「Pelanggaran akan dikenakan denda sebesar…(違反時は…の違約金を課す)」のようにdenda(違約金)を明記します。

インドネシアでは刑事罰ではなく民事上の損害賠償が主流です。

公証人(Notaris)の役割

重要書類の多くは公証人の認証が必要で、Notarisは法律専門職として全国に約14,000人登録されています(2023年INI統計)。

「Saya mau ke Notaris untuk legalisasi dokumen(公証人に書類の公証を依頼したい)」、「Biaya notaris berapa?(公証人手数料はいくら)」が頻出フレーズです。

legalisasiは英語legalizationから来ており、法的有効性を認証する手続きを指します。

会社設立の書類

Akta Pendirian(設立定款)、SK Kemenkumham(法務人権省承認書)、NPWP(納税者番号)、NIB(事業識別番号、2018年OSS制度導入時に新設)が会社設立の必須書類です。

OSS(Online Single Submission)は2018年に運用開始された許認可一元化システムで、以前よりも手続きが大幅に簡素化されました。

コンプライアンス用語

KYC(Know Your Customer)、AML(Anti-Money Laundering)、UU Tipikor(汚職撲滅法、2001年施行)はビジネス現場で頻出します。

「Proses KYC-nya sampai mana?(KYC手続きはどこまで進みましたか)」、「Ini sesuai UU Tipikor?(これは汚職撲滅法に適合していますか)」と確認します。

インドネシアの契約事情

インドネシアで契約を結ぶ場合、法制度の理解が必要です。

日本と違う点を押さえます。

契約書の言語

2009年の法律で、インドネシア語による契約書作成が義務付けられました。

英語のみの契約書は無効とされる可能性があります。

バイリンガル版を作成するのが実務の標準です。

翻訳の質も法的に重要になります。

公証の必要性

重要な契約はNotaris(公証人)による公証を受けます。

不動産、会社設立、遺言などで必須です。

公証料は契約金額に応じて変動します。

公証済みの契約は法的効力が強くなります。

印紙の貼付

契約書にはMaterai(印紙)の貼付が必要です。

2021年から10000ルピア統一になりました。

貼付がないと訴訟時に証拠能力が制限されます。

必ず確認して処理します。

主要な契約用語

契約書で頻出する用語を覚えます。

意味を正確に理解することが重要です。

当事者関連

「Pihak Pertama」(第一当事者)、「Pihak Kedua」(第二当事者)が基本です。

「Pemberi」(与える側)、「Penerima」(受ける側)なども使われます。

「Kuasa」は代理権を指します。

「Saksi」は証人を意味します。

権利義務

「Hak」(権利)、「Kewajiban」(義務)が中心語彙です。

「Tanggung jawab」は責任を表します。

「Sanksi」は違反時の制裁を指します。

「Denda」は具体的な違約金です。

期間と金額

「Jangka waktu」(期間)、「Jumlah」(金額)が定番です。

「Pembayaran」(支払い)、「Pelunasan」(完済)も重要語です。

「Bulanan」(月払い)、「Tahunan」(年払い)で頻度を示します。

「Tanggal」は日付を意味します。

契約の種類

日常で遭遇する契約を知っておきます。

種類ごとの特徴があります。

賃貸契約

「Perjanjian Sewa Menyewa」(賃貸契約)が正式名称です。

家賃、敷金、契約期間が主要項目です。

通常1年契約で、更新は書面で行います。

外国人は居住許可(KITAS)の提示が必要です。

雇用契約

「Perjanjian Kerja」(雇用契約)です。

PKWT(有期)とPKWTT(無期)に分かれます。

給与、労働時間、THR(宗教祝日手当)が記載されます。

試用期間は3か月が上限です。

売買契約

「Perjanjian Jual Beli」(売買契約)が定番です。

不動産ならAJB(正式売買証書)の作成が必要です。

外国人の土地所有には制限があります。

弁護士の立ち会いを推奨します。

契約時の注意点

事前確認でトラブルを防げます。

慎重に進めます。

翻訳確認

インドネシア語版と英語版を必ず照合します。

翻訳による齟齬が法的争点になる場合があります。

専門家による法的翻訳が望ましいです。

不明点は契約前に解消します。

現地弁護士の活用

重要契約ではインドネシア法を熟知した弁護士の助言を得ます。

料金は1時間300〜1000米ドルが相場です。

ジャカルタの大手事務所は英語対応可能です。

初回相談は無料のところもあります。

書類の保管

原本は安全な場所に保管します。

コピーをPDF化しクラウドにも保存します。

関連書類もまとめて管理します。

10年間の保管が推奨されます。

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