中国側にファイルを送るとき、Google DriveのリンクをそのままメールしてNG判定を食らった経験はないでしょうか。
中国本土ではGoogle Drive・Dropboxが不安定で、百度网盘・腾讯微云・阿里云盘が標準になっています。同じ「添付」でも地域で作法が違います。
本記事では附件の書き方15フレーズ、大容量転送の実務、暗号化の多段経路送信、WeChat/钉钉/飞书との併用を整理します。
添付メール3段構造
中国語の添付メールは「附件宣言」「ファイル説明」「確認依頼」の3段で構成されます。
この構造を守ると、相手は添付を開く前に中身を把握できます。国企・民企・BATいずれでも通じる基本形です。
附件宣言:本文冒頭で予告
冒頭1文で「附件中有XX资料」と明示します。(1)「请查收附件」(2)「qǐng chá shōu fù jiàn」(3)「添付をご確認ください」が最も汎用です。
繁體字圏では「請查收附件」と書きます。台湾・香港宛ではこちらを使います。
冒頭で何が付いているか宣言しないと、モバイルで本文だけを読まれた時に添付の存在が認識されません。
ファイル内容の説明:ファイル名と目的
附件が何のためのものか、本文2段目で1-2行で説明します。ファイル数が複数なら箇条書きにします。
たとえば「附件1: 报价单.pdf(含税价格)」「附件2: 技术规格书.xlsx(修订版)」のように並べます。
中国クライアントは「この資料は何のため」を明確にしないと、社内回覧で停滞することがあります。
確認依頼と期限
最後に「请于X月X日前回复」と期限を書きます。期限がない場合は「如有疑问随时联系」で止めます。
期限なしの依頼は中国B2Bでは後回しにされやすいのが実態です。「下周二之前」のような具体日付が有効です。
附件案内の15フレーズ
シーン別に15フレーズを整理します。(1)簡体字 (2)ピンイン (3)日本語直訳の3段表記でまとめます。
標準フレーズ5選
最も使用頻度が高い5フレーズです。迷ったらこの中から選びます。
(1)「请查收附件」(2)「qǐng chá shōu fù jiàn」(3)「添付をお受け取りください」が最も中立です。国企・民企・BATどこでも違和感がありません。
(1)「见附件」(2)「jiàn fù jiàn」(3)「添付参照」は短く、社内連絡で多用されます。外部宛では簡略すぎる場合があります。
(1)「详细内容请参见附件」(2)「xiáng xì nèi róng qǐng cān jiàn fù jiàn」(3)「詳細は添付をご参照ください」は本文を簡潔に保ちたい時に使います。
フォーマル度高めの5選
国企・政府機関・顧客宛で使うフォーマル版です。尊敬的と併用することが多いです。
(1)「附件为XX,请您审阅」(2)「fù jiàn wéi XX, qǐng nín shěn yuè」(3)「添付はXXです、ご審査ください」は重要資料の送付に適します。
(1)「附件中已附上相关材料,敬请查阅」(2)「fù jiàn zhōng yǐ fù shàng xiāng guān cái liào, jìng qǐng chá yuè」(3)「添付に関連資料を付しました、ご査閲を」は格式度が高いです。
(1)「烦请审阅附件中的XX」(2)「fán qǐng shěn yuè fù jiàn zhōng de XX」(3)「添付のXXをご審査ください」は丁寧な依頼です。
カジュアル度高めの5選
BAT・字节跳动など民企・スタートアップで使えるカジュアル版です。钉钉・飞书とのトーン一致を意識します。
(1)「附件给您」(2)「fù jiàn gěi nín」(3)「添付します」は短いですが失礼ではありません。
(1)「发您附件,看下」(2)「fā nín fù jiàn, kàn xià」(3)「添付送りました、見てください」は社内で多用されます。
(1)「材料放在附件里了」(2)「cái liào fàng zài fù jiàn lǐ le」(3)「資料は添付に入れておきました」は親しい相手向けです。
ファイル命名規則の中国慣行
中国ビジネスでは「YYYYMMDD_担当者名_内容」の順でファイル名を付けるのが標準です。日付を先頭に置く理由は、フォルダ内で時系列ソートしやすいからです。
たとえば「20260425_张伟_报价单_v2.pdf」のように書きます。日付・作成者・内容・版本の4要素で構成します。
中英併記ファイル名
跨境業務では中英併記を推奨します。「20260425_Quote_报价单_v2.pdf」のように両方入れると、日本側・中国側双方が検索できます。
ファイル名に全角スペースを入れると文字化けすることがあります。半角アンダースコアで統一するのが安全です。
ファイル名に「最終」「final」を多用すると混乱します。版本番号v1/v2/v3で管理する方が実用的です。
バージョン管理(v1, v2, 终稿)
中国ビジネスでは「终稿」「最终版」という表現が版本管理で使われます。ただし「终稿」後も修正が入ることは多く、実務では混乱の元になります。
推奨は「_v1」「_v2」「_v3_final」のように英数字で統一する方法です。中国人同僚にも伝わりやすく、英語圏相手にも通じます。
終版を「_final_final_v2」のように繰り返すのは中国でも嫌われます。明確な版本番号で切り分けます。
简繁ファイル名の使い分け
大陸向けは简体字、台湾・香港向けは繁體字でファイル名を付けるのが原則です。ただし受信側のシステムで文字化けするリスクがあります。
安全策として、ファイル名は英数字+アンダースコアで統一し、中身だけ简繁分けるのが跨境業務の実務解です。
大容量ファイルの送付方法
中国本土ではGoogle Drive・Dropboxが接続不安定です。代替として百度网盘・腾讯微云・阿里云盘を使います。
メール添付の限界は20-25MBが多く、これを超える場合は云盘リンク送付が実務の定番です。
百度网盘・腾讯微云・阿里云盘のURL共有
百度网盘(バイドゥ・ウェブディスク)は中国本土で最も普及している個人向けクラウドです。無料10GB、有料で数TBまで使えます。
腾讯微云(テンセント・マイクロクラウド)はWeChat・QQと連動します。个人間の共有に便利です。
阿里云盘(アリクラウドディスク)は新興ですが高速かつ広告が少なく、ビジネス用途に向きます。
WeTransfer中国版・奶牛快传
WeTransferは中国本土で不安定です。代替として奶牛快传(ネットイーズ系)や文叔叔などの大容量転送サービスが使われます。
一時的な大容量送付で、双方アカウント不要なのが利点です。ただし1週間後に消えるので重要資料には不向きです。
Google Drive・Dropboxは大陸で不安定
Google Drive・Dropboxは中国本土のGFW(金盾)で接続制限されています。VPN経由でも速度が出ず、大容量は現実的でありません。
大陸クライアントには必ず百度网盘または腾讯微云リンクを用意します。台湾・香港ではGoogle Driveが使えます。
URL送付時の有効期限明示
云盘リンクには有効期限を設定できます。7日・30日・永久など選べますが、セキュリティ上7日が推奨です。
(1)「链接有效期至X月X日」(2)「liàn jiē yǒu xiào qī zhì X yuè X rì」(3)「リンクは月日まで有効」と本文で明示します。
暗号化・提取码の送り方
百度网盘の「提取码」(取り出しコード)は4文字の英数字です。リンクと一緒に送らず、別経路で送るのがセキュリティの基本です。
機密度が高いファイルほど、リンクとコードを異なる経路で送る「二経路分離」を徹底します。
提取码分割送信(メール+SMS)
リンクはメールで送り、提取码は電話または短信(SMS)で伝えるのが一般的です。
WeChat Workを併用する場合、リンクをメール、提取码をWeChat Workメッセージで送る方法も使われます。
同じメールにリンクと提取码を並べて書くのは、情報漏洩時に無防備になるので避けます。
ZIP暗号化パスワードの別経路送信
ZIPに暗号化をかけてメール添付する方法もあります。この場合もパスワードは別経路で送ります。
WinRAR・7-Zipのパスワードは英数字記号混在の8文字以上が推奨です。中国メーカーの国产软件WPSも対応しています。
WeChat Work・钉钉でのパスワード共有
WeChat Work・钉钉・飞书でパスワードだけを送る実務が定着しています。社内IMは撤回機能があり、誤送信時にも対応しやすいためです。
ただしWeChat Workの個人版(消費者版WeChat)では情報残存が長く、機密情報のやり取りには企业微信を使います。
添付忘れ時のリカバリー
添付を付け忘れて送信してしまうのは誰でも経験します。リカバリーには定型フレーズがあります。
即時訂正メール
発覚直後に送る訂正メールです。遅くとも5分以内に送ると印象が保てます。
(1)「忘记添加附件,重新发送」(2)「wàng jì tiān jiā fù jiàn, chóng xīn fā sòng」(3)「添付を忘れたので再送します」が最もシンプルです。
(1)「抱歉,附件有所遗漏」(2)「bào qiàn, fù jiàn yǒu suǒ yí lòu」(3)「申し訳ない、添付に漏れがあった」は複数ファイルのうち一部を忘れた時に使います。
訂正件名の付け方
件名に「【更正】」または「【补发】」タグを付けて、前のメールを上書きすることを明示します。
(1)「【补发附件】关于XX的资料」(2)「bǔ fā fù jiàn, guān yú XX de zī liào」(3)「【添付再送】XXの資料について」のように前の件名を継承します。
附件已补上,请查收
再送後、1文で「附件已补上,请查收」と締めます。長い言い訳は逆効果です。
中国ビジネスでは「迅速なリカバリー」が信頼維持に繋がります。謝罪より速度を優先します。
ファイル形式の中国慣行
中国ビジネスで標準的に使われる形式はPDF・DOCX・XLSXです。ただし国産软件のWPS独自形式も実務では頻出します。
PDF・XLSX・DOCX の中国での標準
PDFは最終版の送付、XLSXは報価・数量データ、DOCXは契約書・提案書で使い分けます。
PDFの署名(电子签名)は法大大・e签宝・DocuSign中国版が対応しています。中国では电子签名の法的効力が認められており、実務で広く使われています。
WPS(金山办公)独自形式の扱い
WPSは中国産のOffice互換ソフトで、国企・中小企業で広く使われています。独自形式「.wps」「.et」「.dps」を送ってくることがあります。
返信前にDOCX・XLSX・PPTXに変換して再送すると親切です。もしくは「请发送XLSX格式」と形式指定します。
繁體字と简体字の文字化け対策
大陸で作成した简体字ファイルを台湾で開くと、フォント不足で文字化けすることがあります。PDFに変換してから送ると安全です。
Excel内の简体字は自動変換されませんが、DOCXはWord内蔵ツールで簡単に繁體変換できます。
形式変換依頼フレーズ
(1)「方便换成PDF格式吗?」(2)「fāng biàn huàn chéng PDF gé shì ma?」(3)「PDFに変換していただけますか?」と軽く聞きます。
(1)「请提供XLSX版本」(2)「qǐng tí gōng XLSX bǎn běn」(3)「XLSX版をください」は公式依頼の表現です。
外部共有・セキュリティの文面
中国では个人信息保护法(PIPL)が2021年に施行され、個人情報の取り扱いが厳格化されました。添付ファイルに個人情報が含まれる場合、明示的な取り扱い指示が必要です。
内部资料・对外机密・商业秘密の明示
機密度を示す表記を本文と添付ファイル両方に入れます。「内部资料」「对外机密」「商业秘密」の3段階が中国B2Bで定着しています。
(1)「此为内部资料,请勿外传」(2)「cǐ wéi nèi bù zī liào, qǐng wù wài chuán」(3)「これは内部資料、転送禁止」は最も使われる注意書きです。
请勿转发给第三方
(1)「请勿转发给第三方」(2)「qǐng wù zhuǎn fā gěi dì sān fāng」(3)「第三者に転送しないでください」は契約書・財務資料で頻出です。
英語圏では「CONFIDENTIAL」と書きますが、中国では文化的に中文で明示するのが信頼されます。
電子签名の確認依頼
PDF契約書を送る際、電子签名で署名してもらうのが実務です。法大大・e签宝・DocuSign中国版が対応しています。
(1)「请通过法大大完成电子签字」(2)「qǐng tōng guò fǎ dà dà wán chéng diàn zǐ qiān zì」(3)「法大大で電子署名をお願いします」と案内します。
地域別ファイル共有ツール
中華圏4地域で標準ツールが異なります。相手地域に合わせてリンクを用意します。
大陸:百度网盘・腾讯微云・阿里云盘
大陸本土ではGFWの制限で海外クラウドが使えません。百度网盘・腾讯微云・阿里云盘のいずれかを用意します。
无料プランの容量は百度10GB・腾讯10GB・阿里100GBで、阿里が無料層では最もお得です。
台湾:Google Drive・Dropbox標準
台湾はGoogle Drive・Dropboxが標準です。大陸向けと台湾向けで2つのリンクを用意する必要があります。
台湾の中小企業ではOneDriveも普及しています。Microsoft 365導入率が日系より高いのが特徴です。
香港・シンガポール:Google Drive・OneDrive
香港はGoogle Drive・OneDriveが主流です。金融街では社内のSharePoint経由の共有が一般的です。
シンガポールは企業によってGoogle Drive・Dropbox・OneDriveが混在します。多国籍企業では英米式の慣行に近いです。
跨境共有時の選択フロー
相手地域を確認→大陸なら百度/腾讯/阿里、台湾・香港・シンガポールならGoogle Drive、という2択のフローチャートで即決できます。
混在チームの場合は両方を併記するのが実務解です。「中国大陆用户请使用百度网盘链接,其他地区请使用Google Drive链接」と明示します。
WeChat Work・钉钉・飞书とのファイル共有
中国の社内コミュツールにはファイル共有機能が標準装備されています。メール添付を使わない業務も増えています。
WeChat Work(企业微信)のファイル共有
企业微信のファイル共有は最大1GBまで送れます。保存期間は7日で、過ぎると自動削除されます。
個人WeChatと違い、企业微信は記録残存が長く、承認フロー連動もあります。正式なやり取りに向きます。
钉钉(DingTalk)の钉盘
钉钉の钉盘は会社単位のクラウドストレージです。阿里系のため大容量に強く、国企・制造业で普及しています。
钉邮(钉钉メール)と連動しており、メール添付と社内共有の境界がシームレスです。
飞书(Feishu)の多维表格
飞书のファイル共有は多维表格(スプレッドシート類似)や飞书文档と連動します。リアルタイム共同編集が強みです。
字节跳动社内ツールとして誕生したため、IT系・スタートアップで普及しています。
日本人の添付NG3選
日本人が中国ビジネスメールでやりがちな添付NGを3つに絞ります。回避できれば信頼度が上がります。
附件するだけで説明なし
「见附件」とだけ書いて添付する日本人が多いですが、中国ビジネスでは本文で中身を説明するのが礼儀です。
最低限「附件为XX报价单」のように1文で中身を説明します。社内回覧時に何の資料か分かるようにするためです。
ファイル名の日本語のみ表記
「見積書_2026年4月.xlsx」のように日本語のみのファイル名は、中国側の古いシステムで文字化けすることがあります。
中国語または英数字併記のファイル名にすると、文字化けリスクが減ります。
Google Driveリンクを大陸相手に送る
Google Driveは大陸でアクセス不可です。大陸クライアントにGoogle Driveリンクを送るのは、そもそも相手が開けないので無意味です。
大陸向けは必ず百度网盘・腾讯微云・阿里云盘のいずれかを用意します。
暗号化パスワードの同メール送信
ZIPパスワードを暗号化ファイルと同じメールに書くのは、セキュリティ上の論外です。電話・SMS・WeChat Workなど別経路で伝えます。
詳しくはchinese-business-emailの基礎編も参照できます。
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