スペイン語の交渉は、フレーズを単体で覚えるだけでは足りません。
大事なのは、ひと言ずつの「往復」がどうつながって着地するかという流れです。
この記事では、価格交渉・条件交渉・社内確認の3場面を、AとBの会話で順番に追います。
各往復を話者・スペイン語・読み方・日本語訳の4列でならべ、その前後に「いま何が起きているか」「次にどう返すか」を解説します。
登場人物はこう設定します。
- A=買い手(あなた側、海外サプライヤーから仕入れる日本企業の担当者)
- B=売り手(スペイン語圏サプライヤーの営業担当)
会話文をなぞるうちに、交渉の「型」が体に入っていきます。
場面1:価格交渉のダイアログ
最初の場面は、提示された単価が予算より高かったケースです。
ここでのAのねらいはふたつあります。
- 頭ごなしに値切らず、まず相手の価格の根拠を引き出すこと
- 「値下げ」ではなく「条件次第」の話に持っていくこと
導入:金額に触れる前のひと言
いきなり「高い」と言わず、感謝と前向きな姿勢から入ります。
| 話者 | スペイン語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Gracias por el presupuesto. El producto se ve muy bien, pero me gustaría hablar del precio. | グラシアス・ポル・エル・プレスプエスト。エル・プロドゥクト・セ・ベ・ムイ・ビエン、ペロ・メ・グスタリア・アブラル・デル・プレシオ | 見積りありがとうございます。製品は良さそうですが、価格について相談させてください。 |
| B | Claro. ¿Qué tenía en mente? | クラロ。ケ・テニア・エン・メンテ | もちろんです。どのあたりをお考えですか? |
Bの「¿Qué tenía en mente?」は「いくらを想定しているか」を尋ねる定番です。
ここで自分から金額を言うか、相手に言わせるかが最初の分かれ道になります。
本題:根拠を引き出す
金額を即答する前に、価格の内訳や相場感を確認します。
| 話者 | スペイン語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | La verdad, está un poco por encima de nuestro presupuesto. ¿Me explica cómo se fija el precio? | ラ・ベルダ、エスタ・ウン・ポコ・ポル・エンシマ・デ・ヌエストロ・プレスプエスト。メ・エクスプリカ・コモ・セ・フィハ・エル・プレシオ | 正直、予算より少し高いです。価格の決まり方を説明してもらえますか? |
| B | Por supuesto. El precio unitario refleja el coste del material y el pedido reducido. | ポル・スプエスト。エル・プレシオ・ウニタリオ・レフレハ・エル・コステ・デル・マテリアル・イ・エル・ペディード・レドゥシード | もちろんです。単価には材料費と少量発注が反映されています。 |
「¿Me explica cómo…?」は「順を追って説明してもらう」便利な表現です。
Bが「少量発注だから高い」と言ったので、Aには「量を増やす」というカードが見えました。
展開:条件付きで切り返す
相手の発言を逆手に取り、量と引き換えに値下げを提案します。
| 話者 | スペイン語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Entiendo. Si duplicamos el pedido, ¿podría ofrecer un mejor precio unitario? | エンティエンド。シ・ドゥプリカモス・エル・ペディード、ポドリア・オフレセル・ウン・メホル・プレシオ・ウニタリオ | なるほど。発注量を倍にしたら、単価を下げてもらえますか? |
| B | Eso podría funcionar. Con el doble de volumen, podría rebajar un 8%. | エソ・ポドリア・フンシオナル。コン・エル・ドブレ・デ・ボルメン、ポドリア・レバハル・ウン・オチョ・ポル・シエント | それなら可能です。倍の量なら、8%ほど引けます。 |
「rebajar un 8%」は「8%値引きする」という自然な言い方です。
8%という具体的な数字が出たので、ここからは「もう少し」を狙うか、合意するかの判断になります。
着地:上乗せを狙って確認する
一度の譲歩で満足せず、さらに小さな上乗せを引き出してから固めます。
| 話者 | スペイン語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Es un buen punto de partida. ¿Lo dejaría en un 10% si además pagamos por adelantado? | エス・ウン・ブエン・プント・デ・パルティーダ。ロ・デハリア・エン・ウン・ディエス・ポル・シエント・シ・アデマス・パガモス・ポル・アデランタード | 良い出発点ですね。前払いもするなら10%にできますか? |
| B | Trato hecho. Un 10% de descuento por el doble de volumen y el pago por adelantado. | トラト・エチョ。ウン・ディエス・ポル・シエント・デ・デスクエント・ポル・エル・ドブレ・デ・ボルメン・イ・エル・パゴ・ポル・アデランタード | いいでしょう。倍の量と前払いで10%引きです。 |
| A | Perfecto. Déjeme confirmar: 10% de descuento, doble volumen y pago anticipado. | ペルフェクト。デハメ・コンフィルマル:ディエス・ポル・シエント・デ・デスクエント、ドブレ・ボルメン・イ・パゴ・アンティシパード | では確認です。10%引き、倍量、前払い、ですね。 |
最後にAが内容を口頭で復唱しているのがポイントです。
「Déjeme confirmar…」で要点を読み上げると、後日の「言った言わない」を防げます。
場面2:条件交渉のダイアログ
次は、価格はほぼ決まったあとの「条件」をめぐる場面です。
納期・契約期間・サポート範囲など、金額以外の論点が交渉の中心になります。
Aのねらいは、譲れる点と譲れない点を切り分けて「交換」することです。
切り出し:論点を並べる
まず、まだ詰まっていない条件をテーブルに並べます。
| 話者 | スペイン語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | El precio nos sirve. Ahora me gustaría concretar la entrega y las condiciones del contrato. | エル・プレシオ・ノス・シルベ。アオラ・メ・グスタリア・コンクレタル・ラ・エントレガ・イ・ラス・コンディシオネス・デル・コントラト | 価格は問題ありません。次は納期と契約条件を整理したいです。 |
| B | Me parece bien. ¿Cuál es lo que más le importa? | メ・パレセ・ビエン。クアル・エス・ロ・ケ・マス・レ・インポルタ | いいですね。どれが一番重要ですか? |
「concretar」は「具体的に詰める」というニュアンスで、複数の論点をまとめるときに使えます。
Bの「¿Cuál es lo que más le importa?」には、こちらの優先順位を正直に明かすかどうかの駆け引きがあります。
本題:優先順位を交換する
「これが大事」と伝えると同時に、相手の事情も聞きます。
| 話者 | スペイン語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | El plazo de entrega es decisivo. Necesitamos el primer lote en tres semanas. | エル・プラソ・デ・エントレガ・エス・デシシーボ。ネセシタモス・エル・プリメル・ロテ・エン・トレス・セマナス | 納期が決定的です。最初の納品を3週間以内にお願いしたいです。 |
| B | Tres semanas es justo. Nuestro plazo habitual es de cuatro. | トレス・セマナス・エス・フスト。ヌエストロ・プラソ・アビトゥアル・エス・デ・クアトロ | 3週間は厳しいです。標準の納期は4週間でして。 |
「plazo de entrega」は「発注から納品までの期間」を指す交渉の頻出語です。
相手が「標準は4週間」と線を引いたので、Aは見返りを用意して短縮を頼む流れに入ります。
展開:見返りを添えて頼む
無理を通すのではなく、相手が動きやすくなる条件をセットにします。
| 話者 | スペイン語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Lo entiendo. Si firmamos un contrato de un año, ¿podría priorizar nuestro primer envío? | ロ・エンティエンド。シ・フィルマモス・ウン・コントラト・デ・ウン・アニョ、ポドリア・プリオリサル・ヌエストロ・プリメル・エンビオ | 分かります。1年契約を結ぶなら、初回出荷を優先してもらえますか? |
| B | Por un compromiso anual, puedo adelantar a tres semanas el primer lote. | ポル・ウン・コンプロミソ・アヌアル、プエド・アデランタル・ア・トレス・セマナス・エル・プリメル・ロテ | 年間契約なら、初回だけ3週間に前倒しできます。 |
「priorizar」は「〜を優先してもらう」で、納期や対応のお願いに重宝します。
Aは「契約期間」という相手が欲しいものを差し出し、欲しい「納期短縮」を得たわけです。
着地:残りの条件を確認する
主要な論点が決まったら、細かい条件も取りこぼさず確認します。
| 話者 | スペイン語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Estupendo. ¿El contrato de un año incluye soporte y reposiciones? | エストゥペンド。エル・コントラト・デ・ウン・アニョ・インクルジェ・ソポルテ・イ・レポシシオネス | 助かります。1年契約にはサポートと交換対応も含まれますか? |
| B | Sí, el soporte está incluido. También la reposición de piezas defectuosas. | シ、エル・ソポルテ・エスタ・インクルイード。タンビエン・ラ・レポシシオン・デ・ピエサス・デフェクトゥオサス | はい、サポート込みです。不良品の交換も含みます。 |
| A | Entonces creo que estamos de acuerdo en las condiciones. | エントンセス・クレオ・ケ・エスタモス・デ・アクエルド・エン・ラス・コンディシオネス | では条件で認識が合いましたね。 |
「estamos de acuerdo en…」は「〜について認識が一致した」という、合意間近を示す言い回しです。
サポートや不良品交換のような「あとで揉めやすい点」をその場で言葉にしておくと安心です。
場面3:押し返しと社内確認のダイアログ
3つ目は、相手が強めに押してきて、その場で即決できない場面です。
ここでのAのねらいは、関係を壊さずに「持ち帰る」ことです。
交渉では、即答を避けて一度引く動きも立派なカードになります。
押し返しを受け止める
相手が値下げを強く求めてきても、すぐ折れません。
| 話者 | スペイン語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| B | Sinceramente, necesitamos al menos un 15% de descuento, o no saldrá por nuestra parte. | シンセラメンテ、ネセシタモス・アル・メノス・ウン・キンセ・ポル・シエント・デ・デスクエント、オ・ノ・サルドラ・ポル・ヌエストラ・パルテ | 正直、最低15%引きでないと、こちらで通りません。 |
| A | Le entiendo. Aun así, un 15% es un salto grande respecto a donde estamos. | レ・エンティエンド。アウン・アシ、ウン・キンセ・ポル・シエント・エス・ウン・サルト・グランデ・レスペクト・ア・ドンデ・エスタモス | おっしゃることは分かります。ただ15%は今の水準から大きな開きです。 |
「Le entiendo.」は「言いたいことは分かる」と一度受け止める、やわらかい相づちです。
同意ではなく「受け止め」なので、ここから自分の立場を返しても角が立ちません。
理由を尋ねて時間を作る
相手の数字の背景を聞きつつ、即決を避ける布石を打ちます。
| 話者 | スペイン語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | ¿Me ayuda a entender de dónde sale ese 15%? | メ・アユダ・ア・エンテンデル・デ・ドンデ・サレ・エセ・キンセ・ポル・シエント | その15%の根拠を教えてもらえますか? |
| B | Un competidor nos ofreció un producto similar por menos. | ウン・コンペティドル・ノス・オフレシオ・ウン・プロドゥクト・シミラル・ポル・メノス | 競合がもっと安く同等品を出してきたんです。 |
「de dónde sale…」は「〜がどこから来ているか=根拠」を尋ねる言い方です。
「競合の存在」という相手の事情が分かれば、対抗するか持ち帰るかを判断できます。
持ち帰りカードを切る
その場で答えず、社内に持ち帰る形で時間を確保します。
| 話者 | スペイン語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| A | Me sirve saberlo. No puedo decidir un 15% yo solo, déjeme consultarlo con mi responsable. | メ・シルベ・サベルロ。ノ・プエド・デシディル・ウン・キンセ・ポル・シエント・ジョ・ソロ、デハメ・コンスルタルロ・コン・ミ・レスポンサブレ | 参考になります。15%は私だけでは決められないので、上司に確認させてください。 |
| B | Sin problema. ¿Cuándo podría responderme? | シン・プロブレマ。クアンド・ポドリア・レスポンデルメ | 大丈夫です。いつ頃お返事いただけますか? |
| A | Para el jueves. Le enviaré nuestra contraoferta por escrito. | パラ・エル・フエベス。レ・エンビアレ・ヌエストラ・コントラオフェルタ・ポル・エスクリト | 木曜までに。こちらの対案を書面でお送りします。 |
「déjeme consultarlo con mi responsable」は、即決を避ける世界共通の交渉カードです。
「contraoferta」は「対案・逆提案」で、ただ断るのではなく代わりの数字を返す姿勢を示します。
会話を組み立てる4つの型
3つの場面に共通する流れを抜き出すと、交渉の骨組みが見えてきます。
大きく次の4ステップでできています。
| ステップ | 役割 | 代表フレーズ |
|---|---|---|
| 受け止める | 相手の主張を一度受ける | Le entiendo. / Lo entiendo. |
| 掘り下げる | 根拠や優先順位を聞く | ¿Me explica cómo…? |
| 交換する | 条件付きで譲る・頼む | Si nosotros…, ¿podría usted…? |
| 固める | 合意を口頭と書面で確認 | Déjeme confirmar… / por escrito |
この「受け止める→掘り下げる→交換する→固める」を覚えておくと、想定外の話題でも流れを立て直せます。
交渉学の古典『Getting to Yes』(Roger Fisher・William Ury)でも、立場のぶつけ合いより、互いの利害を探って交換することが推奨されています。
また、決裂時の最善の代替案を BATNA(最善の代替案)と呼び、これを持っておくと「持ち帰る」「断る」の判断がぶれません。
想定シーン|会話が固まったときの立て直し
たとえば、相手が黙り込んで会話が止まる場面を考えてみましょう。
そんなときは、論点を一度整理し直すと再び動き出します。
| スペイン語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| Demos un paso atrás y veamos lo que ya hemos acordado. | デモス・ウン・パソ・アトラス・イ・ベアモス・ロ・ケ・ジャ・エモス・アコルダード | 一度引いて、これまで合意した点を見直しましょう。 |
| Quizá podamos dejar este punto aparte y seguir por ahora. | キサ・ポダモス・デハル・エステ・プント・アパルテ・イ・セギル・ポル・アオラ | この点はいったん保留にして、先へ進みませんか。 |
| ¿Qué haría falta para que esto les funcione? | ケ・アリア・ファルタ・パラ・ケ・エスト・レス・フンシオネ | どうすれば御社にとって成立しますか? |
「dejar este punto aparte」は「論点を一時保留にする」会議でも使う表現です。
「¿Qué haría falta…?」は、相手にボールを返して具体的な条件を引き出す質問になります。
よくある質問
交渉のダイアログで最初の往復は何を意識しますか?
いきなり数字をぶつけず、感謝と前向きな姿勢で入り、相手に「いくらを想定しているか」を尋ねます。
「¿Qué tenía en mente?」のように、先に相手の手の内を聞くと進めやすくなります。
相手が強く押してきたとき、すぐ折れない返し方は?
「Le entiendo.」と一度受け止めてから、自分の立場を返します。
受け止めは同意ではないので、その後に反論を続けても角が立ちません。
その場で決められないときはどう言えばいいですか?
「Déjeme consultarlo con mi responsable.」と社内確認を理由に持ち帰ります。
あわせて返答期限を約束すると、ただの先延ばしに見えません。
会話が止まってしまったらどうしますか?
「Demos un paso atrás y veamos lo que ya hemos acordado.」と合意済みの点を整理し直します。
詰まった論点は「dejar este punto aparte」で一度保留にし、進められる話題から動かします。
まとめ
交渉は単発のフレーズより、往復の流れで身につくものです。
- 受け止める→掘り下げる→交換する→固める、の4ステップで会話を運ぶ。
- 譲歩は「Si」で条件付きにし、相手の欲しいものと交換する。
- 即決できないときは持ち帰り、合意は口頭と書面の両方で確認する。
あとは、交渉でよく出る単語をまとめて押さえておくと、会話の往復がさらにスムーズになります。
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