フランス語のM&A(合併・買収)は、単語を知っていても、実際の会話の流れがつかめないと使いこなせません。
ディール協議は、買い手・売り手・アドバイザーがどんな順序で何を話すかを知っておくと、自分の発言を組み立てやすくなります。
この記事で分かることは次の3つです。
- 初期打診からデューデリ、条件交渉までのフランス語ダイアログの流れ
- 買い手・売り手それぞれの典型的な言い回し
- 会話で使われた重要フレーズの日本語での読み解き方
説明はすべて日本語で、会話のフランス語にはカタカナ読みと日本語訳を添えています。
場面1|初期打診と秘密保持契約
買い手側のアドバイザーが、対象企業の財務責任者に買収の関心を伝える場面です。
いきなり価格に入らず、関心の表明と秘密保持から会話が始まります。
| 話者 | フランス語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| 買い手側 | Nous conseillons un client intéressé par le rachat de votre société. | ヌ コンセイヨン アン クリアン アンテレッセ パル ル ラシャ ドゥ ヴォトル ソスィエテ | 御社の買収に関心を持つ顧客の助言をしています。 |
| 売り手側 | C’est intéressant. Qui est l’acquéreur, si je peux me permettre ? | セ タンテレッサン。キ エ ラケルール、スィ ジュ プ ム ペルメトル | 興味深いですね。差し支えなければ買い手はどなたですか? |
| 買い手側 | Nous le révélerons une fois l’accord de confidentialité signé. | ヌ ル レヴェルロン ユヌ フワ ラコール ドゥ コンフィダンスィアリテ スィニェ | 秘密保持契約の締結後に開示いたします。 |
| 売り手側 | Entendu. Signons d’abord la clause de confidentialité. | アンタンデュ。スィニョン ダボール ラ クローズ ドゥ コンフィダンスィアリテ | 承知しました。まず秘密保持条項を締結しましょう。 |
「si je peux me permettre(差し支えなければ)」は、踏み込んだ質問をやわらげる定番表現です。
買い手の名前を明かす前に秘密保持契約を求めるのは、初期段階では自然な流れです。
場面2|企業価値をめぐるやり取り
秘密保持契約の締結後、初期的な財務情報を踏まえてバリュエーションを議論する場面です。
買い手は評価の根拠を尋ね、売り手は将来性を強調します。
| 話者 | フランス語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| 買い手側 | Comment êtes-vous arrivé au prix demandé ? | コマン エット ヴ ザリヴェ オ プリ ドゥマンデ | 希望価格はどう算出されましたか? |
| 売り手側 | Il correspond à dix fois l’EBITDA de l’an dernier. | イル コレスポン ア ディス フワ レビトダ ドゥ ラン デルニエ | 昨年度EBITDAの10倍に相当します。 |
| 買い手側 | Franchement, ce multiple nous paraît un peu élevé. | フランシュマン、ス ミュルティプル ヌ パレ アン プ エルヴェ | 正直、その倍率はやや高めに見えます。 |
| 売り手側 | Nos revenus récurrents augmentent vite, ce qui justifie la prime. | ノ ルヴニュ レキュラン オグマント ヴィット、ス キ ジュスティフィ ラ プリム | 継続収益が急成長しており、プレミアムの根拠になります。 |
| 買い手側 | C’est juste. Revoyons cela après l’audit. | セ ジュスト。ルヴワヨン スラ アプレ ロディット | 一理あります。デューデリ後に再検討しましょう。 |
「C’est juste.(一理あります)」は、相手の主張を一度受け止める便利な相づちです。
評価が割高だと感じても、即座に否定せずデューデリ後に持ち越すと協議が円滑に進みます。
場面3|デューデリジェンスの確認
買い手の財務担当が、データルームの資料を見ながら気になる点を確認する場面です。
懸念材料を率直に挙げつつ、売り手に説明を求めます。
| 話者 | フランス語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| 買い手側 | Nous avons remarqué une forte concentration de la clientèle. | ヌ ザヴォン ルマルケ ユヌ フォルト コンサントラスィオン ドゥ ラ クリアンテル | 顧客の集中度がかなり高いと気づきました。 |
| 売り手側 | Notre principal client représente environ trente pour cent du chiffre d’affaires. | ノートル プランスィパル クリアン ルプレザント アンヴィロン トラント プール サン デュ シフル ダフェール | 最大顧客が売上の約30%です。 |
| 買い手側 | C’est un point de vigilance pour nous. Le contrat est-il à long terme ? | セ タン ポワン ドゥ ヴィジランス プール ヌ。ル コントラ エ ティル ア ロン テルム | それは懸念材料です。契約は長期ですか? |
| 売り手側 | Oui, il court encore cinq ans avec option de renouvellement. | ウィ、イル クール アンコール サンク アン アヴェック オプスィオン ドゥ ルヌヴェルマン | はい、更新権付きであと5年続きます。 |
| 買い手側 | Bien. Nous demanderons tout de même des garanties sur ce contrat. | ビアン。ヌ ドゥマンドロン トゥ ドゥ メーム デ ガランティ スュル ス コントラ | 結構です。それでもその契約に表明保証を求めます。 |
「concentration de la clientèle(顧客集中度)」は、収益が特定顧客に偏るリスクを示す指標です。
懸念点を見つけたら、契約の継続性を確認し、表明保証で備えるのが定石です。
場面4|条件交渉と追加対価
デューデリを踏まえ、価格差を埋めるために支払い条件を交渉する場面です。
買い手はリスクを抑える仕組みを提案し、売り手は手取りを意識します。
| 話者 | フランス語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| 買い手側 | Nous ne pouvons pas atteindre votre prix tout en numéraire. | ヌ ヌ プヴォン パ アタンドル ヴォトル プリ トゥ タン ニュメレール | 全額現金で希望額にはお応えできません。 |
| 売り手側 | Qu’avez-vous en tête à la place ? | カヴェ ヴ アン テット ア ラ プラス | 代わりにどのような案ですか? |
| 買い手側 | Un complément de prix : une partie liée aux résultats futurs. | アン コンプレマン ドゥ プリ : ユヌ パルティ リエ オ レズュルタ フュチュール | 追加対価です。一部を将来業績に連動させます。 |
| 売り手側 | J’accepterais si les objectifs sont réalistes. | ジャクセプトレ スィ レ ゾブジェクティフ ソン レアリスト | 目標が現実的なら受け入れます。 |
| 買い手側 | Partageons : soixante-dix pour cent à la signature, trente en complément. | パルタジョン : スワサント ディス プール サン ア ラ スィニャテュール、トラント アン コンプレマン | 7割を契約時、3割を追加対価で分けましょう。 |
「Qu’avez-vous en tête ?(どのような案ですか)」は、相手の代案を引き出す一言です。
価格が折り合わないときは、追加対価で折衷するのがM&Aの典型的な解決策です。
場面5|統合計画(PMI)の打ち合わせ
合意が見えてきた段階で、買い手と売り手の経営陣が統合方針を話す場面です。
人材の引き留めと文化の融合が、会話の中心になります。
| 話者 | フランス語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| 買い手側 | Après la clôture, nous voulons garder votre équipe centrale. | アプレ ラ クロテュール、ヌ ヴロン ガルデ ヴォトル エキップ サントラル | クロージング後、中核チームを引き留めたいです。 |
| 売り手側 | Elle aura besoin de clarté sur les rôles et la hiérarchie. | エル オラ ブゾワン ドゥ クラルテ スュル レ ロール エ ラ イエラルシ | 役割と指揮系統を明確にする必要があります。 |
| 買い手側 | D’accord. Nous mettrons en place un comité d’intégration. | ダコール。ヌ メトロン アン プラス アン コミテ ダンテグラスィオン | 同意します。統合委員会を立ち上げます。 |
| 売り手側 | Gardons la marque la première année pour rassurer les clients. | ガルドン ラ マルク ラ プルミエール アネ プール ラスュレ レ クリアン | 顧客に安心してもらうため初年度はブランドを残しましょう。 |
| 買い手側 | C’est logique. Ici, la culture compte autant que les chiffres. | セ ロジック。イスィ、ラ キュルチュール コント オタン ク レ シフル | 理にかなっています。ここでは文化も数字と同じく重要です。 |
「C’est logique.(理にかなっています)」は、相手の提案に同意する自然な相づちです。
統合では、組織図の明確化とブランド維持が、現場の不安を和らげる打ち手になります。
会話で押さえたい重要表現
各場面で繰り返し出てきた表現を、まとめて確認しておきます。
相づちと前提条件の言い方を覚えると、会話の流れに乗りやすくなります。
| フランス語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| C’est juste. | セ ジュスト | 一理あります。 |
| Qu’avez-vous en tête ? | カヴェ ヴ アン テット | どのような案ですか? |
| Revoyons cela après l’audit. | ルヴワヨン スラ アプレ ロディット | デューデリ後に再検討しましょう。 |
| L’opération est soumise à l’accord des autorités. | ロペラスィオン エ スミーズ ア ラコール デ ゾトリテ | 本件は当局の承認を前提とします。 |
これらは買い手・売り手のどちらの立場でも使える、汎用性の高い表現です。
会話を自然に運ぶコツ
フランス語の交渉では、反論する前に相手の発言をいったん受け止める姿勢が好まれます。
「C’est juste.」や「C’est logique.」のような短い相づちを挟むと、対立より対話の雰囲気を保てます。
込み入った条件は一度に並べず、相手の反応を見ながら一つずつ提示すると合意に近づきます。
オンライン交渉での進め方
クロスボーダー案件では、こうした会話の多くがビデオ会議で行われます。
画面越しでは間が取りづらいので、発言の頭で「Je voudrais revenir sur le prix(価格の件に戻りたいです)」と論点を宣言すると流れが整理されます。
合意した数字や条件は、その場で口頭確認し、後から議事録で書面化すると食い違いを防げます。
よくある質問
買い手の名前を聞かれたら何と答える?
初期段階では「Nous le révélerons une fois l’accord de confidentialité signé.」と返すのが定番です。
秘密保持契約の締結を条件に開示する流れが一般的です。
価格が高いと感じたときの会話の進め方は?
「Ce multiple nous paraît un peu élevé.」と婉曲に伝え、「Revoyons cela après l’audit.」とデューデリ後に持ち越します。
追加対価はどう切り出す?
「Un complément de prix : une partie liée aux résultats futurs.」のように仕組みを一言で説明すると伝わります。
クロージング前に確認すべきことは?
当局承認などの前提条件です。「Confirmons toutes les conditions de clôture par écrit.」と書面確認を促します。
まとめ
フランス語のM&Aの会話は、場面ごとの流れを知っておくと、自分の発言を組み立てやすくなります。
- 初期打診は秘密保持契約から。買い手名は締結後に開示する。
- 価格交渉は即否定せず、相づちでいったん受け止めてデューデリ後に詰める。
- 統合と契約は、人材引き留めと前提条件の書面確認を欠かさない。
あとは、会話に出てきた単語をまとめて覚えておくと、本番でフレーズがすっと出てきます。
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