M&A(合併・買収)の英語は、単語を知っていても、実際の会話の流れがつかめないと使いこなせません。
ディール協議は、買い手・売り手・アドバイザーがどんな順序で何を話すかを知っておくと、自分の発言を組み立てやすくなります。
この記事で分かることは次の3つです。
- 初期打診からデューデリ、条件交渉までの英語ダイアログの流れ
- 買い手・売り手・アドバイザーそれぞれの典型的な言い回し
- 会話で使われた重要フレーズの日本語での読み解き方
説明はすべて日本語で、会話の英語にはカタカナ読みと日本語訳を添えています。
場面1|初期打診とNDA
買い手側のアドバイザーが、対象企業のCFOに買収の関心を伝える場面です。
いきなり価格に入らず、関心の表明と秘密保持から会話が始まります。
| 英語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| Buyer: We’re advising a client interested in acquiring your business. | バイヤー: ウィア アドバイジング ア クライアント インタレスティッド イン アクワイアリング ユア ビジネス | 買い手側: 御社の買収に関心を持つ顧客の助言をしています。 |
| Seller: That’s interesting. Who is the buyer, if I may ask? | セラー: ザッツ インタレスティング。フー イズ ザ バイヤー、イフ アイ メイ アスク | 売り手側: 興味深いですね。差し支えなければ買い手はどなたですか? |
| Buyer: We’d disclose that once an NDA is in place. | バイヤー: ウィド ディスクローズ ザット ワンス アン エヌディーエー イズ イン プレイス | 買い手側: NDA締結後に開示いたします。 |
| Seller: Understood. Let’s get the confidentiality agreement signed first. | セラー: アンダーストゥッド。レッツ ゲット ザ コンフィデンシャリティ アグリーメント サインド ファースト | 売り手側: 承知しました。まず秘密保持契約を締結しましょう。 |
「if I may ask(差し支えなければ)」は、踏み込んだ質問をやわらげる定番表現です。
買い手の名前を明かす前にNDAを求めるのは、初期段階では自然な流れです。
場面2|企業価値をめぐるやり取り
NDA締結後、初期的な財務情報を踏まえてバリュエーションを議論する場面です。
買い手は評価の根拠を尋ね、売り手は将来性を強調します。
| 英語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| Buyer: How did you arrive at the asking price? | バイヤー: ハウ ディッジュー アライブ アット ジ アスキング プライス | 買い手側: 希望価格はどう算出されましたか? |
| Seller: It reflects ten times last year’s EBITDA. | セラー: イット リフレクツ テン タイムズ ラスト イヤーズ イービットダー | 売り手側: 昨年度EBITDAの10倍を反映しています。 |
| Buyer: Honestly, that multiple looks a bit rich to us. | バイヤー: オネストリー、ザット マルティプル ルックス ア ビット リッチ トゥ アス | 買い手側: 正直、その倍率はやや高めに見えます。 |
| Seller: Our recurring revenue is growing fast, which justifies the premium. | セラー: アワ リカーリング レベニュー イズ グロウイング ファスト、ウィッチ ジャスティファイズ ザ プレミアム | 売り手側: 継続収益が急成長しており、プレミアムの根拠になります。 |
| Buyer: Fair point. Let’s revisit this after due diligence. | バイヤー: フェア ポイント。レッツ リビジット ジス アフター デュー ディリジェンス | 買い手側: 一理あります。デューデリ後に再検討しましょう。 |
「Fair point.(一理あります)」は、相手の主張を一度受け止める便利な相づちです。
評価が割高だと感じても、即座に否定せずDD後に持ち越すと協議が円滑に進みます。
場面3|デューデリジェンスの確認
買い手の財務担当が、データルームの資料を見ながら気になる点を確認する場面です。
懸念材料を率直に挙げつつ、売り手に説明を求めます。
| 英語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| Buyer: We noticed customer concentration is quite high. | バイヤー: ウィ ノーティスト カスタマー コンセントレーション イズ クワイト ハイ | 買い手側: 顧客の集中度がかなり高いと気づきました。 |
| Seller: Our top client is about thirty percent of revenue. | セラー: アワ トップ クライアント イズ アバウト サーティ パーセント オブ レベニュー | 売り手側: 最大顧客が売上の約30%です。 |
| Buyer: That’s a red flag for us. Is the contract long-term? | バイヤー: ザッツ ア レッド フラッグ フォー アス。イズ ザ コントラクト ロングターム | 買い手側: それは懸念材料です。契約は長期ですか? |
| Seller: Yes, it runs for another five years with renewal options. | セラー: イエス、イット ランズ フォー アナザー ファイブ イヤーズ ウィズ リニューアル オプションズ | 売り手側: はい、更新権付きであと5年続きます。 |
| Buyer: Good. We’ll still want reps and warranties on that contract. | バイヤー: グッド。ウィル スティル ウォント レップス アンド ワランティーズ オン ザット コントラクト | 買い手側: 結構です。それでもその契約に表明保証を求めます。 |
「customer concentration(顧客集中度)」は、収益が特定顧客に偏るリスクを示す指標です。
懸念点を見つけたら、契約の継続性を確認し、表明保証で備えるのが定石です。
場面4|条件交渉とアーンアウト
DDを踏まえ、価格差を埋めるために支払い条件を交渉する場面です。
買い手はリスクを抑える仕組みを提案し、売り手は手取りを意識します。
| 英語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| Buyer: We can’t meet your number in all cash. | バイヤー: ウィ キャント ミート ユア ナンバー イン オール キャッシュ | 買い手側: 全額現金で希望額にはお応えできません。 |
| Seller: What do you have in mind instead? | セラー: ホワット ドゥ ユー ハブ イン マインド インステッド | 売り手側: 代わりにどのような案ですか? |
| Buyer: An earn-out: part of the price tied to future performance. | バイヤー: アン アーンアウト: パート オブ ザ プライス タイド トゥ フューチャー パフォーマンス | 買い手側: アーンアウトです。価格の一部を将来業績に連動させます。 |
| Seller: I’d accept that if the targets are realistic. | セラー: アイド アクセプト ザット イフ ザ ターゲッツ アー リアリスティック | 売り手側: 目標が現実的なら受け入れます。 |
| Buyer: Let’s split it: seventy percent upfront, thirty as earn-out. | バイヤー: レッツ スプリット イット: セブンティ パーセント アップフロント、サーティ アズ アーンアウト | 買い手側: 7割を前払い、3割をアーンアウトで分けましょう。 |
「What do you have in mind?(どのような案ですか)」は、相手の代案を引き出す一言です。
価格が折り合わないときは、アーンアウトで折衷するのがM&Aの典型的な解決策です。
場面5|統合計画(PMI)の打ち合わせ
合意が見えてきた段階で、買い手と売り手の経営陣が統合方針を話す場面です。
人材の引き留めと文化の融合が、会話の中心になります。
| 英語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| Buyer: After closing, we want to retain your core team. | バイヤー: アフター クロージング、ウィ ウォント トゥ リテイン ユア コア チーム | 買い手側: クロージング後、中核チームを引き留めたいです。 |
| Seller: They’ll need clarity on roles and reporting lines. | セラー: ゼイル ニード クラリティ オン ロールズ アンド リポーティング ラインズ | 売り手側: 役割と指揮系統を明確にする必要があります。 |
| Buyer: Agreed. We’ll set up an integration committee. | バイヤー: アグリード。ウィル セット アップ アン インテグレーション コミッティ | 買い手側: 同意します。統合委員会を立ち上げます。 |
| Seller: Let’s keep the brand for the first year to reassure clients. | セラー: レッツ キープ ザ ブランド フォー ザ ファースト イヤー トゥ リアシュア クライアンツ | 売り手側: 顧客に安心してもらうため初年度はブランドを残しましょう。 |
| Buyer: Makes sense. Cultural fit matters as much as numbers here. | バイヤー: メイクス センス。カルチュラル フィット マターズ アズ マッチ アズ ナンバーズ ヒア | 買い手側: 理にかなっています。ここでは文化の適合も数字と同じく重要です。 |
「Makes sense.(理にかなっています)」は、相手の提案に同意する自然な相づちです。
統合では、組織図の明確化とブランド維持が、現場の不安を和らげる打ち手になります。
場面6|クロージングに向けた最終確認
契約締結を目前に、当局承認やスケジュールを確認し合う場面です。
双方が前提条件を読み合わせ、認識のズレを最後に潰します。
| 英語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| Buyer: The deal is still subject to antitrust clearance. | バイヤー: ザ ディール イズ スティル サブジェクト トゥ アンチトラスト クリアランス | 買い手側: 本件はなお独占禁止当局の承認を前提とします。 |
| Seller: How long do you expect that to take? | セラー: ハウ ロング ドゥ ユー エクスペクト ザット トゥ テイク | 売り手側: それにはどのくらいかかる見込みですか? |
| Buyer: Roughly two months. We aim to close by quarter-end. | バイヤー: ラフリー トゥー マンス。ウィ エイム トゥ クローズ バイ クォーターエンド | 買い手側: おおむね2か月です。四半期末のクロージングを目指します。 |
| Seller: Let’s confirm all closing conditions in writing. | セラー: レッツ コンファーム オール クロージング コンディションズ イン ライティング | 売り手側: すべての前提条件を書面で確認しましょう。 |
「subject to ~(~を前提とする)」は、契約の発効条件を示す重要な言い回しです。
最後に前提条件を書面で確認する流れは、後日の食い違いを防ぐ基本動作です。
会話で押さえたい重要表現
各場面で繰り返し出てきた表現を、まとめて確認しておきます。
相づちと前提条件の言い方を覚えると、会話の流れに乗りやすくなります。
| 英語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| Fair point. | フェア ポイント | 一理あります。 |
| What do you have in mind? | ホワット ドゥ ユー ハブ イン マインド | どのような案ですか? |
| Let’s revisit this after due diligence. | レッツ リビジット ジス アフター デュー ディリジェンス | デューデリ後に再検討しましょう。 |
| The deal is subject to regulatory approval. | ザ ディール イズ サブジェクト トゥ レギュラトリー アプルーバル | 本件は当局の承認を前提とします。 |
これらは買い手・売り手のどちらの立場でも使える、汎用性の高い表現です。
よくある質問
買い手の名前を聞かれたら何と答える?
初期段階では “We’d disclose that once an NDA is in place.” と返すのが定番です。
秘密保持契約の締結を条件に開示する流れが一般的です。
価格が高いと感じたときの会話の進め方は?
“That multiple looks a bit rich to us.” と婉曲に伝え、”Let’s revisit this after due diligence.” とDD後に持ち越します。
アーンアウトはどう切り出す?
“An earn-out: part of the price tied to future performance.” のように仕組みを一言で説明すると伝わります。
クロージング前に確認すべきことは?
当局承認などの前提条件です。”Let’s confirm all closing conditions in writing.” と書面確認を促します。
まとめ
M&Aの会話は、場面ごとの流れを知っておくと、自分の発言を組み立てやすくなります。
- 初期打診はNDAから。買い手名は秘密保持後に開示する。
- 価格交渉は即否定せず、相づちでいったん受け止めてDD後に詰める。
- 統合と契約は、人材引き留めと前提条件の書面確認を欠かさない。
あとは、会話に出てきた単語をまとめて覚えておくと、本番でフレーズがすっと出てきます。
関連記事:英語の交渉で使えるフレーズ/英語の会議で使えるフレーズ
📚 英語をもっと伸ばすなら、まず語彙から。
専門トピックの表現を使いこなす土台になるのは語彙力。英語の頻出単語を頻度順に、発音・日本語訳・用例つきでまとめたPDF単語帳です。
頻出500単語 入門編A1相当・最初の500語¥525 税込詳しく見る
頻出500単語 初心者編A2相当・次の500語¥525 税込詳しく見る
2冊セット(入門+初心者)入門+初心者を15%OFF¥893 税込まとめてお得に入門編 → 初心者編 の順がおすすめ/2冊セットなら15%お得


