ロシアのある俳優インタビューは、«Мне всегда интересно что-то новое» という一文を見出しに掲げています。
直訳すると「私には、いつでも何か新しいものが面白い」です。
ところが、記事の中の答えを頭から終わりまで読んでも、この мне も、主語になる я も出てきません。
答えは10問ぶん、2,244字あります。
そのあいだ я はゼロ回です。
素材は、映画情報サイト Киноафиша が2026年9月8日に公開したインタビューです。
9月14日20時にТНТで放送が始まるコメディドラマ «Профессиональный сосед» のプレミアに合わせたもので、答えているのはこの作品にエピソード出演した俳優のアンドレイ・プィンザル氏です。
この記事は、公開されたインタビューの回答部分をロシア語の構文を読む材料として扱うもので、作品の評価や出演者の経歴には立ち入りません。扱い方の基準は編集方針に書いています。
読み終えると、次の3つが手元に残ります。
- я が消えても文が壊れないのは、動詞の語尾が人称を持っているからだということ
- мне + 副詞述語・удалось・хочется のように、そもそも主語の席を作らない言い方があること
- この2つは別々の現象で、片方だけを知っていると読み違えること
- 見出しにある мне が、答えの中には出てこない
- 回答2,244字のあいだ、主格の代名詞がひとつもない
- 語尾が人称を引き受ける現在形と、引き受けない過去形
- мне + 副詞述語は、感じている側を与格に回す
- нравиться は「気に入られる」と考えると一致が合う
- удалось・посчастливилось・хочется に共通する空席
- нет の文には、そもそも主格がない
- 「私」は消えても「うちは」は残る
- 教科書の例文と、この回答の言い方を並べる
- 原文と、直訳と、日本語らしい訳
- 声に出すと、どこがつながってどこが落ちるか
- 置換練習|与格と無人称に入れ替える6問
- 主語を落とす言語と、落とせない言語
- この読み方を、次のロシア語に持っていくとき
見出しにある мне が、答えの中には出てこない
まず、見出しに掲げられた一文です。
Мне всегда интересно что-то новое
Андрей Пынзару氏(俳優)/2026年9月8日公開のインタビュー/媒体: Киноафиша(kinoafisha.info)/出典: 一次ソース
訳:私には、いつでも何か新しいものが面白い。
見出しは媒体が付けるもので、答えの文面そのままとは限りません。
同じ趣旨の箇所は、答えの側では次の形で出てきます。
Хочется работать с разными режиссерами, потому что всегда интересно пробовать что-то новое.
Андрей Пынзару氏(俳優)/2026年9月8日公開のインタビュー/媒体: Киноафиша(kinoafisha.info)/出典: 一次ソース
訳:いろいろな監督と仕事がしたい、いつでも何か新しいことを試すのが面白いから。
見出しには мне があり、答えの側にはありません。
骨格の «всегда интересно» は共通で、差はその手前の「誰にとって」の有無だけです。
この記事が追うのは、その「誰にとって」の席がどう扱われているかです。
回答2,244字のあいだ、主格の代名詞がひとつもない
回答部分だけを取り出して、1人称の代名詞を数えました。
| ロシア語 | 読み方 | 回答部分での出現 |
|---|---|---|
| я(主格・単数) | ヤー | 0回 |
| мы(主格・複数) | ムィ | 0回 |
| мне(与格・単数) | ムニェ | 1回 |
| меня(生格・単数) | ミニャー | 1回(у меня の中) |
| нам(与格・複数) | ナーム | 1回 |
| нас(生格・複数) | ナース | 2回(у нас の中) |
| мой・моя・мои(所有) | モーイ/マヤー/マイー | 0回 |
主格は я も мы も0回でした。
一方、斜格の мне・меня・нам・нас は合わせて5回出ています。
空いているのは主格の席だけで、1人称そのものが消えたわけではありません。
ここで断っておくと、これは1本のインタビューの回答部分、2,244字だけを見た数字です。
ロシア語話者は я を使わない、という話ではありません。
同じ9月に扱ったドラマのプレミア上映のあいさつでは、я も мы も繰り返し出てきます(ストルガツキー『神様はつらい』のドラマ化と舞台あいさつのロシア語)。
話す場面と役割が変われば、この比率は簡単に逆を向きます。
語尾が人称を引き受ける現在形と、引き受けない過去形
я が無くても読めるのは、動詞の側が人称を背負っているからです。
回答部分には、1人称単数の主語を前提にした動詞が14ありました。
うち4つは現在形または未来形です。
| ロシア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| люблю | リュブリュー | (私は)好きだ |
| помню | ポームニュ | (私は)覚えている |
| не вспомню | ニ フスポームニュ | (私は)思い出せないだろう |
| думаю | ドゥーマユ | (私は)思う |
この4つは語尾の -ю が主語を я 以外に許しません。
残る10は過去形で、主なものは次のとおりです。
| ロシア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| получил | パルチール | 受け取った |
| начал | ナーチャル | 始めた |
| посмотрел | パスマトリェール | 見た |
| работал | ラボータル | 仕事をした |
| мечтал | ミチタール | 夢見ていた |
| наблюдал | ナブリュダール | 眺めていた |
たとえば、今見ているものを聞かれた答えは、過去形1語で始まります。
Сейчас начал смотреть наш сериал «Трудно быть богом».
Андрей Пынзару氏(俳優)/2026年9月8日公開のインタビュー/媒体: Киноафиша(kinoafisha.info)/出典: 一次ソース
訳:今は、うちのドラマ『神様はつらい』を見始めた。
ロシア語の過去形は性と数を示しますが、人称は示しません。
получил が語るのは「男性・単数が受け取った」ことだけで、それが я なのか он なのかは形から決まりません。
それでも読み違えないのは、質問に答えているという場面が主語を決めているからです。
主語を落とす練習を過去形から始めると、人称の復元と性の選択という別々の判断が同時に要ります。
現在形の -ю から入ったほうが、落ちているものが見えやすいはずです。
この14という数は、回答部分だけを対象にしたものです。
記者が書いた前書きには、3人称の動詞が別に並んでいます。
質問の側は «У вас есть любимый режиссер?» のように вас で相手を指すので、そちらには2人称が出ます。
主格が空いているのは、あくまで答えの側だけです。
мне + 副詞述語は、感じている側を与格に回す
интересно・грустно・трудно のような語は、形容詞の中性短語尾と同じ形をしています。
これが述語に立つと、主語の席そのものが無くなります。
Если становится грустно или тяжело, достаточно включить какую-нибудь комедию или сериал — и настроение меняется.
Андрей Пынзару氏(俳優)/2026年9月8日公開のインタビュー/媒体: Киноафиша(kinoafisha.info)/出典: 一次ソース
訳:悲しくなったりつらくなったりしたら、何かコメディかドラマを付けるだけで十分で、気分が変わる。
грустно も тяжело も、誰かに帰属させないまま、状態としてそこに置かれています。
感じている人を出したいときだけ、与格を前に足します。
| ロシア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| мне грустно | ムニェ グルースナ | 私は悲しい |
| ему интересно | イェムー インチリェースナ | 彼は面白がっている |
| нам трудно | ナーム トルードナ | 私たちには難しい |
| здесь тихо | ズジェーシ チーハ | ここは静かだ |
この型の副詞述語は、回答部分に9か所ありました。
内訳は неправильно・интересно・интереснее・грустно・тяжело・достаточно・можно・трудно・невозможно です。
ドラマの題名 «Трудно быть богом» の трудно は話者自身の言い方ではないので、この9には数えていません。
そして9か所のうち、与格を伴うものはゼロでした。
与格そのものの作り方や語尾の一覧は、格変化を主題にした別記事にまとめてあります(「学校」という一語が8つの形になる)。
нравиться は「気に入られる」と考えると一致が合う
Очень нравились «Полицейский с Рублевки» и «Кухня».
Андрей Пынзару氏(俳優)/2026年9月8日公開のインタビュー/媒体: Киноафиша(kinoafisha.info)/出典: 一次ソース
訳:«Полицейский с Рублевки» と «Кухня» がとても気に入っていた。
нравились が複数形なのは、2つの作品のほうが主語だからです。
主格に立つのは、気に入られた側のほうです。
Из российских мне понравились «Капельник», «Нулевой пациент», «Трасса» — получил огромное удовольствие от просмотра.
Андрей Пынзару氏(俳優)/2026年9月8日公開のインタビュー/媒体: Киноафиша(kinoafisha.info)/出典: 一次ソース
訳:ロシアのものでは «Капельник»・«Нулевой пациент»・«Трасса» が気に入った、見ていて大きな楽しみを得た。
回答部分で мне が現れるのは、この1か所だけです。
一方、先に挙げた «Очень нравились» には мне が無く、同じ動詞でも与格が落ちています。
一致は、常に「気に入られた側」に合わせます。
| ロシア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| нравился фильм | ヌラーヴィルシャ フィーリム | その映画が気に入っていた(男性単数) |
| нравилась комедия | ヌラーヴィラシ カミェーヂヤ | そのコメディが気に入っていた(女性単数) |
| нравились сериалы | ヌラーヴィリシ シリアールィ | そのドラマが気に入っていた(複数) |
日本語の「〜が好きだ」に引きずられて нравился を нравил のようにすると、主語を取り違えたことになります。
удалось・посчастливилось・хочется に共通する空席
Посчастливилось сниматься с Михаилом Пореченковым, которого еще помню по сериалу «Агент национальной безопасности».
Андрей Пынзару氏(俳優)/2026年9月8日公開のインタビュー/媒体: Киноафиша(kinoafisha.info)/出典: 一次ソース
訳:ミハイル・ポレチェンコフと共演できたのは幸運で、彼のことはドラマ «Агент национальной безопасности» で今でも覚えている。
Также удалось поработать с Анной Михалковой — божественная актриса, прекрасная школа.
Андрей Пынзару氏(俳優)/2026年9月8日公開のインタビュー/媒体: Киноафиша(kinoafisha.info)/出典: 一次ソース
訳:アンナ・ミハルコワとも一緒に仕事ができた、神がかった女優で、みごとな修業の場だった。
どちらの文にも主語がありません。
удалось も посчастливилось も中性単数の過去形で、これは主語が立たないときの既定の形です。
回答部分でこの2語が出るのは合わせて2回でした。
記事の前書きにも посчастливилось が1回ありますが、そちらは記者が書いた地の文なので数から外しています。
Если говорить об актерах, которых уже нет, хотелось бы оказаться на одной площадке с Андреем Паниным, Андреем Мироновым, Александром Абдуловым, Юрием Никулиным.
Андрей Пынзару氏(俳優)/2026年9月8日公開のインタビュー/媒体: Киноафиша(kinoafisha.info)/出典: 一次ソース
訳:もういない俳優について言うなら、アンドレイ・パーニン、アンドレイ・ミローノフ、アレクサンドル・アブドゥーロフ、ユーリー・ニクーリンと同じ撮影現場に立てたらと思う。
хотелось бы も同じ中性形で、願望を述べながら主語を立てません。
現在形の хочется は、最初の答えの «Хочется работать» に出ていました。
| ロシア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| хочется | ホーチッツァ | (なんとなく)〜したい |
| хотелось бы | ハチェーラシ ブィ | 〜できればと思う |
| удалось | ウダロース | 〜することができた |
| посчастливилось | パシシスリーヴィラシ | 〜する幸運に恵まれた |
4語とも、日本語にすると主語が「私は」で補われます。
ロシア語の側には、その「私は」を置く場所が最初からありません。
нет の文には、そもそも主格がない
Как такового любимого режиссера у меня нет.
Андрей Пынзару氏(俳優)/2026年9月8日公開のインタビュー/媒体: Киноафиша(kinoafisha.info)/出典: 一次ソース
訳:これといった好きな監督は、私にはいない。
нет の文では、存在しないもののほうが生格になります。
режиссера は生格で、主格の席は空いたままです。
回答部分で нет は3回出ました。
| ロシア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| у меня нет | ウ ミニャー ニェート | 私には〜がない |
| которых уже нет | カトールィフ ウジェー ニェート | もういない(人たち) |
肯定文なら есть が来て、名詞は主格に戻ります。
否定になった瞬間に格が動くので、нет を見たら後ろの語尾を疑う癖をつけておくと読みが速くなります。
「私」は消えても「うちは」は残る
Трудно выбрать что-то одно, потому что у нас много хороших проектов в самых разных жанрах: комедии, драмы, триллеры.
Андрей Пынзару氏(俳優)/2026年9月8日公開のインタビュー/媒体: Киноафиша(kinoafisha.info)/出典: 一次ソース
訳:ひとつを選ぶのは難しい、うちにはコメディ、ドラマ、スリラーと、いろいろなジャンルによい作品がたくさんあるから。
у нас は「うちには」で、ここではロシアの映像業界全体を指しています。
主格の мы はゼロ回ですが、у нас は2回、нам は1回出ました。
自分ひとりを主語に立てない一方で、業界をまとめた「うち」は繰り返し現れます。
人称を出すか引っ込めるかを決めているのは、文法よりも場面のほうです。
相手をどう呼ぶかにも同じ選択があり、ты と вы の境目は親しさだけでは決まりません(ты と вы の境目は親しさではない)。
教科書の例文と、この回答の言い方を並べる
入門書は、主語を立てた形で例文を組みます。
同じ内容がこの回答でどう言われていたかを並べます。
| 教科書でよく見る形 | この回答での言い方 | 何が動いたか |
|---|---|---|
| Я хочу работать с разными режиссёрами. | Хочется работать с разными режиссерами | 主語が消え、動詞が -ся 付きの無人称形になる |
| Я очень любил эти сериалы. | Очень нравились «Полицейский с Рублевки» и «Кухня» | 好きな側ではなく作品が主語。与格も置かれない |
| Я начал смотреть новый сериал. | Сейчас начал смотреть наш сериал | 過去形だけが残り、人称は場面が決める |
| Мне повезло сниматься с ним. | Посчастливилось сниматься с Михаилом Пореченковым | 与格すら置かず、動詞1語で始める |
| Я хотел бы оказаться там. | хотелось бы оказаться на одной площадке | 願望の主語が消え、動詞が中性形になる |
| У меня нет любимого режиссёра. | Как такового любимого режиссера у меня нет | нет が文末へ回り、否定が最後に着地する |
| Я не могу выбрать что-то одно. | Трудно выбрать что-то одно | 可能の否定が、無人称の評価に置き換わる |
左の列はどれも文法として正しく、通じないわけではありません。
ただ、7つを続けて言うと、я が7回並びます。
右の列では、同じ7つのうち я が必要なものがひとつもありません。
教科書が主語を立てるのは、語形を見せる目的があるからです。
その例文を会話にそのまま持ち込むと、人称代名詞の密度だけが高い話し方になります。
原文と、直訳と、日本語らしい訳
主語の無い文を日本語にすると、訳の側では「私は」が自動的に補われます。
どこで補ったのかを見えるようにするため、直訳と自然な訳を分けて並べます。
| ロシア語(回答の一部) | 直訳 | 日本語として自然な訳 |
|---|---|---|
| Хочется работать | 働くことが望まれる | 仕事がしたい |
| всегда интересно пробовать | 試すことは常に面白い | 試すのがいつでも面白い |
| Очень нравились | とても気に入られていた | とても気に入っていた |
| Посчастливилось сниматься | 撮影に入ることが幸運とされた | 共演できたのは幸運だった |
| Также удалось поработать | 働くこともまた成し遂げられた | 一緒に仕事もできた |
| хотелось бы оказаться | 居合わせることが望まれただろう | 同じ現場に立てたら |
| Трудно выбрать | 選ぶことは難しい | ひとつには絞れない |
| становится грустно | 悲しさの状態になる | 悲しくなる |
直訳の列を見ると、主語の位置に来ているのが行為そのものだと分かります。
「望まれる」「成し遂げられた」といった受け身めいた言い方は、日本語としては重すぎます。
そこで右の列では「私は」を補い、能動の形に戻しています。
訳文に「私は」が出てくるからといって、原文に я があったわけではありません。
日本語側の読みやすさのために足した語なので、原文へ戻すときはまた外すことになります。
声に出すと、どこがつながってどこが落ちるか
この回に出てきた無人称の語は、つづりどおりには読みません。
まず -тся と -ться です。
| ロシア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| нравится | ヌラーヴィッツァ | 気に入る |
| становится | スタノーヴィッツァ | 〜になる |
| сниматься | スニマーッツァ | 撮影に出る |
| оказаться | アカザーッツァ | 居合わせる |
тс の並びは「ツ」の詰まった音1つになり、「ティエス」とは割れません。
次に、副詞述語の語末です。
強勢が前に来るので、最後の -о は「ア」に近い音まで弱まります。
| ロシア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| интересно | インチリェースナ | 面白い |
| трудно | トルードナ | 難しい |
| грустно | グルースナ | 悲しい |
| неправильно | ニプラーヴィリナ | 正しくない |
いちばん崩れるのは посчастливилось です。
сч が「シ」1つ分の長い音にまとまり、さらに стл の т が落ちます。
結果として「パシシスリーヴィラシ」に近く響き、つづりの文字数ほど長くは聞こえません。
у меня も2語がひと続きになります。
меня の е は強勢を外れて「イ」に寄るので、「ウミニャー」と3拍で鳴ります。
мне は м が硬く、н が軟らかい組み合わせです。
「ム」を独立した拍にせず、次の「ニェ」へ寄りかからせると近い音になります。
置換練習|与格と無人称に入れ替える6問
素材のうち、ここまでで扱っていない文を使います。
指定された型に置き換えてから、右の列を見てください。
| 問 | 解答 | どこが動いたか |
|---|---|---|
| «Больше всего люблю комедии.» の люблю を、与格を立てた нравиться の現在形に替える(комедии は複数) | Мне нравятся комедии. | 好きな人が与格 мне に回り、動詞は主語 комедии に合わせて複数形になる |
| «Пересмотрел их огромное количество.» を、女性の話し手が言う形にする | Пересмотрела их огромное количество. | 過去形は人称ではなく性を示すので、語尾に -а が付く |
| «пока такого фильма нет» の нет を есть に替える | такой фильм есть | 否定が外れて、生格 такого фильма が主格 такой фильм に戻る |
| «В первый съемочный день просто не мог отвести взгляд.» を、主語を立てない無人称の過去にして「目を離すのは難しかった」と言う | Трудно было отвести взгляд. | 可能の否定が副詞述語になり、過去は中性の было で受ける |
| 「彼と一緒に仕事ができればと思うのですが」を、хотелось бы に与格を添えて言う | Мне хотелось бы поработать с ним. | 願う人を与格で明示し、動詞は中性形のまま動かさない |
| 「時間がない」を、у меня の型で言う | У меня нет времени. | нет の後ろが生格になり、время は времени に変わる |
3問目と6問目は、否定が格を動かす例です。
нет が出てきたら後ろの名詞の語尾を確かめる、という順番で読むと取りこぼしが減ります。
4問目の было は、主語が無いときに置かれる中性形です。
現在形なら何も置かないので、過去にしたときだけ1語増えることになります。
5問目のように与格を足すと、誰の願いかがはっきりします。
素材の側では足していないので、足すか足さないかで丁寧さが変わるわけではありません。
主語を落とす言語と、落とせない言語
動詞の語尾が人称を示す言語では、主語代名詞を落とせます。
スペイン語やイタリア語も同じ仲間で、「うれしい」を代名詞なしで言うのが普通です。
英語・ドイツ語・フランス語は語尾だけでは足りないので、主語を置いたままにします。
ロシア語が目立つのは、落とせることに加えて、主語の席を最初から作らない構文をいくつも持っている点です。
スペイン語の me gusta は мне нравится とよく似た仕組みで、気に入られた側が主語に立ちます。
違うのは、ロシア語では副詞1語が述語になる型が日常の答えの中に何度も出てくることです。
話し言葉のロシア語は、教科書の例文からさらに離れます。
くだけた語彙の側から眺めたい場合は、ロシア語の悪口辞典もあわせてどうぞ。
この読み方を、次のロシア語に持っていくとき
たとえば、ロシア語で好きな作品を聞かれた場面を考えてみます。
«Я смотрю много сериалов» と答えても、意味は通ります。
ただ、続けて3つ4つ答えると、文頭に я が並びます。
そこに «Трудно сказать» や «Хочется посмотреть ещё» を混ぜると、同じ内容でも息継ぎの位置が変わります。
読むときの順番としては、まず動詞の語尾を見ます。
-ю や -у で終わっていれば主語は я なので、書かれていなくても補って読めます。
語尾が -о や -лось なら、主語を探しても見つかりません。
その場合は、与格が前に出ていないかだけ確かめれば足ります。
この2段階で、今回の回答10本はすべて読めます。
数字はこの1本ぶんのものなので、別のインタビューでは違う出方をします。
気になったら、手元のロシア語の記事で я を数えてみるところから始めれば大丈夫です。

