オマーンの国賓を迎えた晩餐会のスピーチでは、1つの文が4つのセミコロンで、17世紀から21世紀までの5つの世紀を区切っています。
その文では、役目を示す as は最初の項目にだけ書かれ、最後の21世紀の項目は主語と動詞を持つ文に切り替わります。
晩餐会は10月20日の夜にウィンザー城の St. George’s Hall で開かれ、国王は冒頭でスピーチをして、最後にスルタンへの乾杯を求めました。オマーンのスルタン、ハイサム・ビン・ターリク(Haitham bin Tarik)は、同じ日から国賓として英国を訪れています。
- コロンの前で友情の始まりを言い、後ろで世紀ごとの間柄を挙げる
- 晩餐会4本の列挙の区切りのセミコロンは、オマーンの2文に集まる
- as は最初の項目にだけ書かれ、後ろの3項目にもかかる
- 5つ目の項目は and today で始まり、動詞 are bonded を持つ
- 同じ演説の別の列挙では、to が4つの項目すべてに付く
- 最後まで句でそろえた作例では、21世紀も grew にかかる
- brothers-in-arms は、複数の s を brother に付ける
- d と t の音が、外交・防衛・貿易・信頼の4語で2つずつそろう
- seventeenth century では強勢が前へ移りやすい
- ドイツの国賓に向けた独語の段落も、コロンのあとに als で役目を並べた
- オマーンの乾杯の句は、To と名詞句だけで段落を作る
- 練習の5文は、比較・代名詞 one・代動詞・間接疑問・熟語を含む
コロンの前で友情の始まりを言い、後ろで世紀ごとの間柄を挙げる
呼びかけの行から数えて4つ目の段落は、So で始まる53語の1文だけでできています。
[…] our friendship grew from the sea: as maritime partners in the seventeenth century; treaty partners in the eighteenth; strategic partners in the nineteenth; brothers-in-arms in the twentieth; […]
チャールズ国王(The King)2026年10月20日・オマーン国賓晩餐会のスピーチ(ウィンザー城、王室公式サイトに10月21日掲載)/出典: The Royal Family
訳:[…]私たちの友情は海から育ちました。17世紀には海の協力者として、18世紀には条約の相手として、19世紀には戦略上の協力者として、20世紀には戦友として[…]
コロンの前で「友情は海から育った」と先に言い、コロンの後ろでその育ち方を世紀ごとに並べています。
コロンの後ろは4つのセミコロンで区切られ、項目は5つあります。
核の一文を区切りごとに分けたのが、次の表です。
| 英語 | 直訳 | 文の中の働き |
|---|---|---|
| So, from Britain’s very first meetings with these renowned Omani merchants, | そうして、英国がこれら名高いオマーンの商人と初めて出会ったときから | 起点を先に置く前置詞句 |
| our friendship grew from the sea: | 私たちの友情は海から育った | 主語と動詞。コロンで後ろへ続ける |
| as maritime partners in the seventeenth century; | 17世紀には海の協力者として | 項目1。as と century を書く |
| treaty partners in the eighteenth; | 18世紀には条約の相手として | 項目2。as と century がない |
| strategic partners in the nineteenth; | 19世紀には戦略上の協力者として | 項目3。同じく省いた形 |
| brothers-in-arms in the twentieth; | 20世紀には戦友として | 項目4。同じく省いた形 |
| and today, in the twenty-first century, | そして今日、21世紀に | 項目5の頭。century が戻る |
| we are bonded by diplomacy, defence, trade and trust. | 私たちは外交、防衛、貿易、信頼によって結ばれている | 項目5の本体。主語と動詞を持つ |
意訳すると「英国が名高いオマーンの商人と出会って以来、両国の友情は海から育ってきました。17世紀は海の協力者、18世紀は条約の相手、19世紀は戦略上の協力者、20世紀は戦友として歩み、21世紀の今、私たちは外交と防衛、貿易と信頼で結ばれています」となります。
日本語では1文が長くなりすぎるので、意訳ではコロンの位置で文を切りました。
晩餐会4本の列挙の区切りのセミコロンは、オマーンの2文に集まる
素材は、英国王室の公式サイト royal.uk の Speeches の一覧に載ったスピーチです。
数える範囲は、次の規則で先に決めました。
- 一覧の既定の表示期間(2025年10月25日〜2026年10月25日)の43本のうち、題に Banquet・State Dinner・State Visit を含む4本を数える
- 本文は掲載日の行の次から共有ボタンの手前までとし、各ページの先頭にある本文の一文の再掲は数えない
- 英語以外の言語の段落と、その英訳として段落全体を[]で囲んだ段落は除き、段落の中の[]に入った英訳も除く
- 語数は英字で始まる語を数え、数字で始まる語(1800・20th など)は数えない
オマーンの1本は題に Banquet を含みませんが、王室の同じ日の記事に、国王が晩餐会の冒頭でスピーチをしたと書かれています。除いた段落は、ドイツの回の独語4段落とその英訳4段落、ナイジェリアの回の英語以外のあいさつ2段落(Ramadan Mubarak! を含む)と結びの1段落です。
独語の段落は、後の節で1文だけ引いています。
| スピーチ(掲載日) | 段落・語 | コロン・セミコロン |
|---|---|---|
| ドイツ大統領の国賓晩餐会(2025年12月3日) | 15段落・1,079語 | コロン6・セミコロン0 |
| ナイジェリア大統領の国賓晩餐会(2026年3月18日) | 16段落・1,334語 | コロン2・セミコロン0 |
| ホワイトハウスの晩餐会(2026年4月29日) | 29段落・1,704語 | コロン1・セミコロン2 |
| オマーンの国賓晩餐会(2026年10月21日) | 23段落・1,063語 | コロン4・セミコロン8 |
4本を合わせると83段落・5,180語で、コロンは13か所、セミコロンは10か所です。
セミコロン10か所のうち、列挙の項目を区切っているのはオマーンの2文の7か所です。残る3か所は、前の名詞を a landscape で言い直す箇所(オマーン)、前の句に補足を足す箇所と、長い主語を those challenges で受け直す箇所(ホワイトハウス)でした。
コロン13か所の後ろに来たものは、次のとおりです。
| コロンの後ろ | か所 | 例 |
|---|---|---|
| 名詞句・形容詞 | 4 | the horse-drawn Royal Carriage!(ドイツ) |
| 主語と動詞のある文 | 3 | our successors will rely on trusted friends.(オマーン) |
| that 節 | 2 | that progress is only meaningful when it genuinely serves humanity.(ドイツ) |
| 次の段落の乾杯の句 | 2 | To His Majesty the Sultan, …(オマーン) |
| as で始まる項目の列挙 | 1 | 核の一文(オマーン) |
| []に入った英訳の引用 | 1 | 英訳した引用(オマーン) |
as は最初の項目にだけ書かれ、後ろの3項目にもかかる
項目1の as maritime partners の as は「〜として」で、友情がどんな間柄として育ったかを示します。
項目2〜4の treaty partners・strategic partners・brothers-in-arms には as がありませんが、どれも項目1と同じ「〜として」で読みます。
3つの項目は名詞と in the 〜th だけでできていて、動詞も前置詞 as も持ちません。前の項目と同じ形が続くので、読み手は省かれた as を自分で補えます。
この省き方は、前の項目と組み立てがそろっているときに使えます。項目の形が途中で変わると、補うべき語が分からなくなるからです。
5つ目の項目は and today で始まり、動詞 are bonded を持つ
[…] and today, in the twenty-first century, we are bonded by diplomacy, defence, trade and trust.
チャールズ国王(The King)2026年10月20日・オマーン国賓晩餐会のスピーチ(ウィンザー城、王室公式サイトに10月21日掲載)/出典: The Royal Family
訳:[…]そして今日、21世紀に、私たちは外交、防衛、貿易、信頼によって結ばれています。
項目1〜4が「〜として」の句だったのに対し、項目5は are bonded という動詞を持つ文です。
過去の4つの世紀は grew にかかる句で済ませ、今の世紀だけを現在形の文で言い切る組み立てです。
are bonded by は受け身で、by のあとに結びつけているものを4つ並べています。
規範的な文法の目安では、並べる項目は同じ形にそろえるのが標準とされます。核の一文は最後の項目だけを文にして、今の話で列挙を閉じています。
同じ演説の別の列挙では、to が4つの項目すべてに付く
オマーンのスピーチには、セミコロンで項目を区切った列挙がもう1つあります。
They will need allies prepared to work together across difference; to defend peace and international law; to marry innovation with stewardship; and to think […]
チャールズ国王(The King)2026年10月20日・オマーン国賓晩餐会のスピーチ(ウィンザー城、王室公式サイトに10月21日掲載)/出典: The Royal Family
訳:彼らには、違いを越えて協力し、平和と国際法を守り、革新と責任ある管理を結びつけ、そして[…]考える用意のある盟友が必要になるでしょう。
こちらの4項目は、prepared に続く to 不定詞で、to を項目ごとに書いています。
核の一文が as を1回で済ませたのに対し、この文は to を4回くり返しています。セミコロンで区切った列挙に限ると、同じスピーチの中に、省く列挙と省かない列挙が1つずつある形です。
to を省いても英文としては成り立ちますが、項目ごとに to があると、どこから新しい項目が始まるかが耳で聞いても分かります。
最後まで句でそろえた作例では、21世紀も grew にかかる
核の一文の最後の項目を、前の4項目と同じ句の形にした作例を作ると、文に切り替えた効果が見えます。次の作例は、素材の文をもとに作った文です。
| 列挙の閉じ方 | 英文 | 何の話で終わるか |
|---|---|---|
| 5項目とも句(作例) | … brothers-in-arms in the twentieth; and in the twenty-first, partners in diplomacy, defence, trade and trust. | 21世紀も grew にかかり、「友情は〜として育った」の過去の話のまま終わる |
| 最後の項目を文にする(スピーチ) | … brothers-in-arms in the twentieth; and today, in the twenty-first century, we are bonded by … | today と現在形の are bonded で、今の両国の話に切り替えて終わる |
| 最後を別の文に分ける(作例) | … brothers-in-arms in the twentieth. Today, we are bonded by … | 列挙は20世紀で閉じ、21世紀は列挙の外の新しい文になる |
スピーチの形は、文を切らずに同じ列挙の5つ目として今の話を置いています。過去の4項目と今の1項目が、1つの文の中でつながったまま区別されます。
同じ組み立ては、身近な題材でも作れます。
| 英語(作例) | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| Our club grew from a small room: as a reading group in 1990; a language school in 2005; and today, we teach in six cities. | アウア・クラブ・グルー・フロム・ア・スモール・ルーム | 私たちの会は小さな部屋から育ちました。1990年には読書会として、2005年には語学学校として。そして今は6つの都市で教えています。 |
| She worked at the museum as a guide in the first year, a curator in the third, and its director in the tenth. | シー・ワークト・アット・ザ・ミュージアム | 彼女はその博物館で、1年目は案内係として、3年目は学芸員として、10年目には館長として働きました。 |
| We met as classmates in the first grade and as colleagues in the second year of our first job. | ウィ・メット・アズ・クラスメイツ | 私たちは小学1年で同級生として、最初の職場の2年目に同僚として出会いました。 |
3つ目の作例は、項目ごとに as を書いた形です。as を省くと、colleagues が met の目的語とも、the first grade と並ぶ語とも読め、どこに係るかがあいまいになります。
brothers-in-arms は、複数の s を brother に付ける
項目4の brothers-in-arms は「戦友」で、ハイフンでつないだ3語が1つの名詞として働きます。
複数の s は、中心になる名詞 brother の後ろに付きます。passer-by が passers-by になるのと同じ作りです。
ほかの3項目の partners と数がそろっていて、両国をまとめて「戦友どうし」と呼ぶ複数形になっています。
d と t の音が、外交・防衛・貿易・信頼の4語で2つずつそろう
項目5の by のあとの4語は、diplomacy・defence が d で、trade・trust が t で始まります。
頭の音をそろえて語を並べる頭韻(とういん)は、スピーチを耳で聞いたときに語のまとまりを作る手法です。
晩餐会の4本で、and でつないだ2語のうち頭の文字が同じもの(4字以上の語)を拾うと、16対ありました。
| スピーチ | 対の数 | 例 |
|---|---|---|
| ドイツ | 2 | invention and innovation・renewed and redoubled |
| ナイジェリア | 1 | President and people |
| ホワイトハウス | 8 | history and heritage(2回)・culture and commerce・industry and invention ほか |
| オマーン | 5 | trade and trust・students and sons・scientists and soldiers・promise and peril ほか |
拾う途中で、the State and started と Keep Calm and Carry on の2つは、2語が並んだ対ではないので外しました。
オマーンの回には students and sons, scientists and soldiers のように s で始まる対が続く箇所もあり、頭の音をそろえた対を続ける点で、核の一文の d・t の並びと同じです。
seventeenth century では強勢が前へ移りやすい
seventeenth は単独で言うと後ろの -teenth に強勢が来ますが、強勢のある名詞 century が続くと、前の sev- に強勢が移りやすくなります。
英語には強勢が続くのを避けるリズムの傾向があり、in the eighteenth のように名詞を省いた形では -teenth に強勢が戻ります。
eighteenth は eight+teenth ですが、綴りも発音も t は1つで、[エイティーンス]と読みます。
ドイツの国賓に向けた独語の段落も、コロンのあとに als で役目を並べた
数える範囲から外したドイツの回の独語の段落にも、コロンのあとに役目を並べた文があります。
Mein Ur-Ur-Urgroßvater hat diesem Land so viel gegeben: als Pädagoge und Sozialreformer, und als treibende Kraft […]
チャールズ国王(The King)・ドイツ国賓晩餐会のスピーチ(王室公式サイトに2025年12月3日掲載)/出典: The Royal Family
訳:私の5代前の祖父は、この国に多くを与えました。教育者として、社会改革者として、そして[…]原動力として。
独語の als は英語の as と同じ「〜として」で、この文では2つの項目の両方に als を書いています。
同じページの英訳は as an educationalist and social reformer, not least as the moving force で、英語も2つ目の項目の前で as を書き直しています。
2つ目の項目「原動力」は、1つ目の「教育者・社会改革者」と種類の違う役目で、als・as を書き直して区切りを示していると読めます。ドイツ語のあいさつ文の組み立ては、ドイツ統一の日の市長あいさつの記事でも1文を区切って読んでいます。
日本語に訳すときは、「教育者として、社会改革者として」のように「として」を項目ごとに書くと区切りが分かりやすくなります。
オマーンの乾杯の句は、To と名詞句だけで段落を作る
晩餐会のスピーチは、4本とも終わり近くで乾杯を求めています。
| スピーチ | 乾杯を求める文 | 乾杯の句 |
|---|---|---|
| ドイツ | allow me to propose a toast: | a toast to you, Herr Bundespräsident …(同じ段落) |
| ナイジェリア | let me propose a toast, | To the President and people of Nigeria –(次の段落) |
| ホワイトハウス | let us raise our glasses and voices as we toast … | To the United States, and the United Kingdom.(次の段落) |
| オマーン | I ask you to rise and drink a toast: | To His Majesty the Sultan, …(次の段落) |
To His Majesty the Sultan, and to the enduring friendship between the Sultanate of Oman and the United Kingdom.
チャールズ国王(The King)2026年10月20日・オマーン国賓晩餐会のスピーチ(ウィンザー城、王室公式サイトに10月21日掲載)/出典: The Royal Family
訳:スルタン陛下に、そしてオマーン・スルタン国と英国の変わらぬ友情に。
乾杯の句の To は「〜に(杯を捧げる)」の意味で、動詞を書かずに To+名詞句だけで段落を作ります。オマーンの回は To と to の2回で、人と友情の2つに杯を向けています。
受賞スピーチの決まった言い回しは、エミー賞の受賞スピーチの記事で扱っています。英国の話し言葉の語彙はイギリス英語のスラングの記事にまとめています。
練習の5文は、比較・代名詞 one・代動詞・間接疑問・熟語を含む
4本のスピーチから、本文で取り上げなかった5つの文を選びました。それぞれの問いに答えてから、解答を開いてください。
問1 オマーンの回、次の世代に触れた文
Your Majesty, there can be few happier symbols of success than a living relationship being passed from one generation to the next.
few happier … than の組み合わせが言っている中身を、日本語の1文にしてください。
解答と解説
「次の世代へ受け継がれていく生きた関係ほどうれしい成功の印は、ほとんどありません」です。
few と比較級 happier と than が組み合わさり、「〜よりうれしいものはほとんどない」つまり「〜が最もうれしい」という意味になります。
問2 ドイツの回、馬車に触れた文
It might only be six horsepower, but sometimes a simpler vehicle is all one needs….
all one needs の one は何を指し、文の後半はどういう意味になりますか。
解答と解説
one は「人は誰でも」を表す一般の代名詞です。後半は「ときには、もっと簡素な乗り物さえあれば足りる」という意味になります。
all one needs は「人が必要とするすべて」で、a simpler vehicle is all one needs は「必要なのは簡素な乗り物だけだ」と読みます。
問3 ナイジェリアの回、両国のつながりを言う文
As the connections between our nations deepen every day, so too do the economic ties.
so too do の do は、前のどの動詞の代わりをしていますか。後半を訳してください。
解答と解説
do は前半の deepen の代わりで、後半は「経済の結びつきもまた深まっています」です。
so too のあとでは do と主語 the economic ties の順が入れ替わり、「〜もまたそうだ」を表します。
問4 オマーンの回、後を継ぐ世代に触れた文
Your Majesty, neither of us can know precisely what challenges our successors will face.
what のあとの語順に注目して、文全体を訳してください。
解答と解説
「陛下、私たちのどちらも、後を継ぐ者たちがどんな課題に向き合うかを正確に知ることはできません」です。
what challenges のあとは our successors will face と平叙文の語順で、will が主語の前に出ません。neither of us は「2人のどちらも〜ない」です。
問5 ドイツの回、英国のユーモアに触れた文
But let me assure you, Herr Bundespräsident, British humour is no laughing matter.
no laughing matter の熟語としての意味と、この文の中でのもう1つの読み方を答えてください。
解答と解説
熟語としては「笑いごとではない、真剣な問題だ」という意味です。
同時に、文字どおりに「英国のユーモアは笑えるものではない」とも読め、自分の国のユーモアを冗談めかして下げる言い方として両方の読みが重なります。
オマーンのスルタンを迎えたこの晩餐会では、オマーンのカフワ(Kahwa)にならい、3種類のお茶が客に出されました。

