2026年の추석(秋夕)は9月25日、金曜日です。
韓国天文研究院(KASI)が公開している음양력 대조표で、この日が음력 8월 15일にあたることを確認できます。
連休は9月24日から27日までの4日間です。行政安全部が9月16日に公開した보도자료「추석 연휴 범정부 안전관리 총력 대응」の添付資料に、その日程と「4일간」という期間が記されています。
행정안전부の보도자료(2026年9月16日)/대한민국 정책브리핑(korea.kr)/出典: 一次ソース
秋夕が近づくと、韓国の官庁・自治体・博物館が、ほぼ同じ時期に告知文を出します。
書いた部署も中身もばらばらなのに、書き出しの一文だけは形がそろってしまいます。
この記事では、2026年8月末から9月16日までに公開された7本の公式文を並べ、そこに繰り返し現れる秋夕の定型句を取り出します。
素材はすべて、機関が自分で書いて自分のサイトに載せた文書です。マイクの前で誰かが話した記録ではないので、本文では発言として扱いません。
ただし文書の中には、担当者の言葉が引用符に入って埋め込まれています。その部分だけは発言として、地の文と区別して扱います。
読み終えると、秋夕の時期に韓国語で書かれた案内を見たとき、どこが決まり文句でどこが中身なのかを切り分けられるようになります。
- 素材にした7本の公式文
- 数え方を先に決めておく
- 「秋夕を迎えて」にあたる句が5通りに割れる
- 秋夕の呼び方が、文書ごとに一段ずつ持ち上がる
- 풍성한は秋夕と한가위にしか付いていない
- 同じ週に、되세요と보내세요が両方出ている
- 국립국어원は되세요をどう説明しているか
- 보도자료の15文は、全部「〜다」で終わる
- 告知文に移ると、いきなり-세요が出てくる
- 「〜するつもりだ」が3つの名詞に分かれる
- 注意喚起に、命令形が一度も使われていない
- 締めの一文は、3本とも同じ設計だった
- 初級教材の形と、この7本に出てきた形
- 原文・直訳・読み下しを並べる
- 声に出すと形が変わるところ
- 置換練習
- -하시기 바란다の代わりに置かれていたもの
- この7本から言えること、言えないこと
素材にした7本の公式文
集めたのは次の7本です。
| 発表主体 | 文書の種類 | 公開日 |
|---|---|---|
| 산림청 영주국유림관리소 | 보도자료(林道の一時開放) | 2026年9月16日 |
| 산림청 울진국유림관리소 | 보도자료(山火事への備え) | 2026年9月15日 |
| 방송미디어통신위원회 | 보도자료(福祉施設への寄付) | 2026年9月15日 |
| 농림축산식품부 | 정책뉴스(韓牛の割引案内) | 2026年9月16日 |
| 국립민속박물관 | 行事の案内(추석한마당) | 2026年9月14日 |
| 서울특별시 | 行事の案内(서로장터) | 2026年9月8日 |
| 서울특별시 | 地域のお知らせ(産直モールの割引) | 2026年8月28日 |
前半の3本は、各部署が自分で書いた보도자료を대한민국 정책브리핑(korea.kr)がそのまま転載したものです。
各ページの末尾に、이 자료는 텍스트에 한하여 공공누리 제1유형(출처표시)의 조건에 따라 이용할 수 있습니다、と明記されています。
4本目は同じサイトの정책뉴스で、条件が공공누리 제4유형(출처표시+상업적 이용금지+변경금지)と異なります。
서울특별시の2本も제4유형です。7本のうち3本がこちらにあたります。
제4유형の3本からは短い抜粋を出典つきで引用するにとどめ、文言は一字も変えていません。
数え方を先に決めておく
本文として数えるのは、見出し・副題・行事名のラベル行・価格の行を除いた、終止形で終わる文だけです。
文の切れ目は、ハングルの直後に来て、そのあとに空白か文末が続くピリオドだけに限りました。
この条件を付けないと、9.15.(화) や 2026. 9. 1. のような日付でも、引用符の内側の 당부한다.”고 でも文が割れてしまいます。
この規則で数えると、보도자료3本が15文・1,264字、告知文の側が11文になります。
以下に出てくる回数は、すべてこの範囲を数えたものです。7本以外の秋夕関連文書は含みません。
「秋夕を迎えて」にあたる句が5通りに割れる
7本のうち5本が、書き出しの同じ位置で「秋夕を迎えて」にあたる句を置いています。
보도자료では位置も決まっていて、機関名のすぐあとに入ります。
告知文のほうは、文頭に来たり主語のあとに来たりと動きます。
산림청 영주국유림관리소(소장 김석문)는 우리나라 최대 명절인 추석을 맞아 벌초 및 성묘객 편의를 위하여 9월 16일부터 10월 5일까지 국가임도를 한시적으로 개방한다고 밝혔다
산림청 영주국유림관리소の보도자료(2026年9月16日)/대한민국 정책브리핑(korea.kr)転載・공공누리 제1유형(출처표시)/出典: 一次ソース
訳:山林庁栄州国有林管理所(所長キム・ソクムン)は、わが国最大の名節である秋夕を迎え、草刈りおよび墓参客の便宜のため、9月16日から10月5日まで国有林道を一時的に開放すると明らかにした。
この一文の中で、内容にあたるのは日付と林道の話だけです。
残りは枠で、別の部署が別の件で書いても同じ形になります。
| 韓国語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 추석을 맞아 | チュソグル マジャ | 秋夕を迎え |
| 추석을 맞이하여 | チュソグル マジハヨ | 秋夕を迎えまして |
| 추석 연휴를 맞아 | チュソク ヨンヒュルル マジャ | 秋夕の連休を迎え |
| 한가위를 맞아 | ハンガウィルル マジャ | ハンガウィを迎え |
| 추석 명절을 앞두고 | チュソク ミョンジョルル アプトゥゴ | 秋夕の名節を前に |
| 추석맞이 | チュソンマジ | 秋夕迎えの(名詞) |
本文で数えると、맞아が3回、맞이하여が2回、앞두고が1回でした。
맞아は맞다(迎える)の連結形で、맞이하여は맞이하다という別の動詞のより硬い形です。
意味の差はほとんどありませんが、博物館の案内が2文とも맞이하여を選んでいるのに対し、山林庁と서울시は맞아を使っています。
앞두고だけは向きが逆で、まだ来ていない日を前に置く言い方です。
앞두고が出たのは방송미디어통신위원회(以下、방미통위)の보도자료1件だけでした。
この1件が9月15日付で、秋夕当日まで10日あったことは事実ですが、맞아との選び分けが何で決まるかは、この7本の範囲からは決められません。
最後の추석맞이は名詞形で、行事名の一部として見出しに現れます。
서울시の2本は、どちらも見出しがこの名詞形でした。
産直モールの回は本文に枠を置かず行事名に畳み込んでいますが、서로장터の回は見出しの추석맞이と本文の한가위를 맞아の両方に置いています。
秋夕の呼び方が、文書ごとに一段ずつ持ち上がる
同じ日を指しているのに、呼び方の長さがそろっていません。
| 韓国語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 추석 | チュソク | 秋夕 |
| 추석 명절 | チュソク ミョンジョル | 秋夕の名節 |
| 추석 연휴 | チュソク ヨンヒュ | 秋夕の連休 |
| 한가위 | ハンガウィ | ハンガウィ(秋夕の固有語) |
| 우리나라 최대 명절인 추석 | ウリナラ チェデ ミョンジョリン チュソク | わが国最大の名節である秋夕 |
| 우리 민족 고유의 전통명절인 추석 | ウリ ミンジョク コユエ チョントンミョンジョリン チュソク | わが民族固有の伝統名節である秋夕 |
下の2つは連体修飾で、名詞の前に説明を丸ごと積む形です。
-인は이다(〜である)の連体形で、「〜である추석」という組み立てになります。
이번 행사는 우리 민족 고유의 전통명절인 추석을 맞이하여 세시풍속 체험과 공연 등 다양한 프로그램을 통해 온 가족이 함께 즐길 수 있는 시간을 제공할 예정입니다
국립민속박물관の行事案内(2026年9月14日)/出典: 一次ソース
訳:今回の行事は、わが民族固有の伝統名節である秋夕を迎えまして、歳時風俗の体験と公演など多様なプログラムを通じ、家族そろって楽しめる時間を提供する予定です。
한가위は漢字語の추석に対する固有語で、7本の中では서울시と국립민속박물관だけが使っていました。
行政の文書ほど추석、来場者に向けた文ほど한가위に寄る、という並びになっています。
呼び名の選び方そのものは秋夕に限った話ではないので、季節の挨拶全般は韓国語の挨拶と年中行事のことばも合わせて見ておくと整理が早くなります。
풍성한は秋夕と한가위にしか付いていない
7本の中で풍성한(豊かな)が出てくるのは、見出しを含めて4か所です(本文だけなら3か所)。
そのすべてが、추석・추석 명절・한가위のいずれかに掛かっています。
行事や品物には一度も付いていません。
| 韓国語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 풍성한 추석 명절 되세요 | プンソンハン チュソク ミョンジョル テセヨ | 豊かな秋夕の名節になってください |
| 풍성한 추석 명절을 보낼 수 있도록 | プンソンハン チュソク ミョンジョルル ポネル ス イットロク | 豊かな秋夕の名節を過ごせるように |
| 풍성한 한가위를 맞아 | プンソンハン ハンガウィルル マジャ | 豊かなハンガウィを迎え |
| 풍성한 명절 보내세요 | プンソンハン ミョンジョル ポネセヨ | 豊かな名節をお過ごしください |
풍성하다は実りが多いという意味で、収穫期の祝日である秋夕と結び付きが強い語です。
日本語の「良いお年を」にあたる位置に、この形容詞が固定で入っていると考えると覚えやすくなります。
同じ週に、되세요と보내세요が両方出ている
上の表の1行目と4行目は、どちらも政府側が公開した文です。
名詞句はほぼ同じなのに、動詞だけが違います。
“풍성한 추석 명절 되세요” 이웃 나눔 실천
방송미디어통신위원회の보도자료の見出し(2026年9月15日)/대한민국 정책브리핑(korea.kr)転載・공공누리 제1유형(출처표시)/出典: 一次ソース
訳:「豊かな秋夕の名節になってください」隣人との分かち合いを実践
추석 장바구니 부담은 덜고, 맛있는 한우와 함께 풍성한 명절 보내세요!
농림축산식품부の정책뉴스の結び(2026年9月16日)/대한민국 정책브리핑(korea.kr)・공공누리 제4유형/出典: 一次ソース
訳:秋夕の買い物かごの負担は減らして、おいしい韓牛とともに豊かな名節をお過ごしください。
前者は되세요、後者は보내세요です。
おもしろいのは、되세요を見出しに掲げた방송미디어통신위원회が、本文に入ると보내다に切り替えていることです。
아동들이 풍성한 추석 명절을 보낼 수 있도록 온정의 손길을 나누며
방송미디어통신위원회の보도자료の本文(2026年9月15日)/대한민국 정책브리핑(korea.kr)転載・공공누리 제1유형(출처표시)/出典: 一次ソース
訳:子どもたちが豊かな秋夕の名節を過ごせるよう、温かい手を差し伸べながら
挨拶として掲げるときは되세요、状況を説明するときは보내다。同じ文書の中で、役割によって動詞が分かれています。
국립국어원は되세요をどう説明しているか
この되세요については、국립국어원の온라인가나다に質問と回答が公開されています。
2025年10月には、풍성한 한가위 되세요が誤りかどうかを尋ねた質問に対して、次の回答が付いています。
생략된 주어가 상대이므로 ‘보내세요’로 표현하는 것이 적절합니다. ‘되세요’를 서술어로 쓴다면 주어와 호응이 맞지 않는다는 점 참고해 보시기 바랍니다.
국립국어원 온라인가나다の回答(2025年10月10日)/出典: 一次ソース
訳:省略された主語が相手なので、보내세요と表現するのが適切です。되세요を述語として使うなら、主語と呼応が合わない点を参考にしてみてください。
理屈はこうです。되다は「〜になる」なので、풍성한 한가위 되세요と言うと「あなたが豊かな秋夕になってください」という組み立てになります。
なってほしいのは相手ではなく秋夕のほうなので、主語と述語がすれ違うという説明です。
ただし국립국어원は、これを誤りだと切り捨ててはいません。2026年6月の別の回答では、次のように書かれています。
‘되다’를 써서 상대방에게 편안한 밤(이) 되라고 하는 것은 ‘되다’의 사전적 의미를 고려해 보면 의미상 자연스럽지 못합니다만, 많은 사람들이 ‘편안한 밤 되세요.’라는 표현을 관습적으로 사용하기 때문에 틀린 표현이라고 단정하기는 어렵습니다.
국립국어원 온라인가나다の回答(2026年6月16日)/出典: 一次ソース
訳:되다を使って相手に「편안한 밤(이)되라」と言うのは、되다の辞書的な意味を考えると意味の上で自然ではありませんが、多くの人が「편안한 밤 되세요.」という表現を慣習的に使っているため、誤った表現だと断定するのは難しいです。
整理すると、규범の側は보내세요をすすめ、実際の使用では되세요が広く残っている、という二重の状態です。
7本の素材がちょうどその両方を含んでいたことになります。
学習者として安全なのは、書くときは보내세요を選び、되세요を見かけても誤用だと決めつけないという構えです。
| 言いたいこと | 選ぶ形 | この7本での出方 |
|---|---|---|
| 相手に向けて挨拶する | 풍성한 명절 보내세요 | 정책뉴스の結びに1回 |
| 見出しで掲げる | 풍성한 추석 명절 되세요 | 방미통위の見出しに1回。本文には0回 |
| 行事や状況を説明する | 명절을 보낼 수 있도록 | 방미통위の本文に1回 |
되세요が本文に一度も出ず見出しにしか現れないのは、この7本に限った話ですが、掲げる言葉と説明する言葉で扱いが分かれていることは読み取れます。
보도자료の15文は、全部「〜다」で終わる
보도자료3本の本文15文を、文末だけ抜き出して並べます。
| 韓国語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 개방한다고 밝혔다 | ケバンハンダゴ パルキョッタ | 開放すると明らかにした |
| 설치할 예정이다 | ソルチハル イェジョンイダ | 設置する予定だ |
| 각별히 유의해야 한다 | カクピョリ ユイヘヤ ハンダ | 格別に留意しなければならない |
| 실시할 계획이다 | シルシハル ケフェギダ | 実施する計画だ |
| 만전을 기할 방침이다 | マンジョヌル キハル パンチミダ | 万全を期する方針だ |
| 노고에 감사를 표했다 | ノゴエ カムサルル ピョヘッタ | 労苦に感謝を表した |
15文すべてが한다体で、합니다体も해요体も一度も出てきません。
-세요で終わる文はゼロでした。読み手への呼びかけを、보도자료は文末で行いません。
労をねぎらう노고という語は、口語の수고・고생と守備範囲が重なります。この3語の線引きは수고と고생の使い分けで扱っています。
告知文に移ると、いきなり-세요が出てくる
同じ秋夕を扱っていても、一般向けの告知文では文末が入れ替わります。
풍성한 한가위를 맞아 전국 팔도의 맛이 서울광장에 모입니다
서울특별시の行事案内(2026年9月8日掲載)/出典: 一次ソース
訳:豊かなハンガウィを迎え、全国八道の味がソウル広場に集まります。
告知文の側で数えた11文の内訳は、합니다体が5文、해요体が5文、名詞で言い切る形が1文でした。
| 韓国語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 서울광장에 모입니다 | ソウルグァンジャンエ モイムニダ | ソウル広場に集まります |
| 행사를 개최합니다 | ヘンサルル ケチェハムニダ | 行事を開催します |
| 명절 장보기를 준비하세요 | ミョンジョル チャンボギルル チュンビハセヨ | 名節の買い物を準備してください |
| 행사 정보를 확인하세요 | ヘンサ チョンボルル ファギンハセヨ | 行事情報を確認してください |
| 조기 종료될 수 있음 | チョギ チョンニョドェル ス イッスム | 早期終了となることがある |
上の5行は、서울특별시の서로장터と産直モールの告知、국립민속박물관の案内、농림축산식품부の정책뉴스から1行ずつ取ったものです。
-세요が現れるのは、読み手に何かをしてほしいときだけです。
そして最後の조기 종료될 수 있음は、-음で言い切る개조식という書き方で、掲示物の注記に使われます。
この-음は、休暇の申請や業務連絡のメモにも出てきます。職場で使う形は休みを伝える韓国語にまとめてあります。
「〜するつもりだ」が3つの名詞に分かれる
보도자료の予定は、動詞の語尾ではなく名詞が担っています。
15文の中に、예정이다・계획이다・방침이다が1回ずつ出てきました。
| 韓国語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 사전 안내문을 설치할 예정이다 | サジョン アンネムヌル ソルチハル イェジョンイダ | 事前の案内文を設置する予定だ |
| 홍보활동을 실시할 계획이다 | ホンボファルトンウル シルシハル ケフェギダ | 広報活動を実施する計画だ |
| 만전을 기할 방침이다 | マンジョヌル キハル パンチミダ | 万全を期する方針だ |
예정は日程、계획は段取り、방침は組織としての構えという順で、抽象度が上がります。
ただしこの3語の差は、各1回ずつという出方からは決められません。ここは辞書の語義で補っています。
博物館の案内では同じ枠が제공할 예정입니다という합니다体で現れました。名詞は共通で、語尾だけが場面に合わせて動きます。
注意喚起に、命令形が一度も使われていない
秋夕の보도자료には、山火事や林道の安全についての呼びかけが入ります。
ところが命令形は15文に1つもありません。
| 韓国語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 임산물 불법채취에 각별히 유의해야 한다 | イムサンムル プルボプチェチュィエ カクピョリ ユイヘヤ ハンダ | 林産物の違法採取に格別に留意しなければならない |
| 안전에 유의하여 통행해야 한다 | アンジョネ ユイハヨ トンヘンヘヤ ハンダ | 安全に留意して通行しなければならない |
| 불법행위 금지를 당부한다(所長の発言部分) | プルボペンウィ クムジルル タンブハンダ | 違法行為の禁止をお願いする |
-해야 한다は義務の言い切りで、相手に直接命じる形ではありません。
당부하다は「頼む」より「お願いを申し述べる」に近い語で、主語は依頼する側の機関です。
読み手にしてほしいことを、読み手への呼びかけではなく、世の中の決まりごととして書く。これが한다体の告知の骨格です。
締めの一文は、3本とも同じ設計だった
보도자료3本の最後の文は、いずれも担当者の言葉を引用符で囲み、そのあとに伝達動詞を置いていました。
울진국유림관리소장은 “추석 연휴에는 성묘와 벌초 등으로 산림방문객이 증가하는 만큼 작은 부주의도 산불로 이어질수 있다.”며
산림청 울진국유림관리소の보도자료(2026年9月15日)/대한민국 정책브리핑(korea.kr)転載・공공누리 제1유형(출처표시)/出典: 一次ソース
訳:蔚珍国有林管理所長は「秋夕の連休には墓参りや草刈りなどで山林の来訪者が増えるだけに、小さな不注意も山火事につながりうる」とし
引用ブロックに出した9か所のうち、発言にあたるのはここだけです。
文書そのものは書かれた文ですが、引用符の内側だけは口から出た言葉として扱われています。表に出した断片のほうには、所長の発言から取ったものが1つあります。
伝達動詞は고 말했다が2回、고 밝혔다が1回でした。
第1文の末尾は영주・울진とも고 밝혔다です。
ただし締めまで고 밝혔다でそろうのは울진の1本で、영주は頭が고 밝혔다、尻が고 말했다でした。
-며は「〜と言いつつ」で、発言を2つ並べるときに前半の末尾に付きます。手紙や文章で2つの内容をつなぐ書き方は韓国語の手紙の書き方でも扱っています。
初級教材の形と、この7本に出てきた形
下の表の左列は、初級の教材でよく見る言い方を当サイトが整えたものです。特定の教科書から引いたものではありません。
右列だけが、上で挙げた7本の公式文に実在した形です。
| 初級教材でよく見る形 | 7本の公式文に出てきた形 | 何が変わったか |
|---|---|---|
| 추석이에요 | 우리나라 최대 명절인 추석 | 名詞の前に説明を積む連体修飾になる |
| 추석이 됐어요 | 추석을 맞아/추석을 맞이하여 | 「なる」ではなく「迎える」で時期を示す |
| 추석 잘 보내세요 | 풍성한 추석 명절 되세요 | 形容詞が固定で付き、動詞が되다に替わる |
| 조심하세요 | 각별히 유의해야 한다 | 命令形が義務の言い切りに置き換わる |
| 할 거예요 | 할 예정이다/할 계획이다/할 방침이다 | 語尾ではなく名詞で予定の重さを分ける |
| 라고 했어요 | 고 밝혔다/고 말했다 | 伝達動詞が書き言葉のものに替わる |
左列が使えないという話ではありません。会話ではむしろ左列が普通です。
ただ、秋夕の時期に韓国語のニュースや掲示を読むときに目に入るのは、ほぼ右列のほうです。
読むために覚える形と、話すために覚える形を最初から分けておくと、混乱が減ります。
たとえば韓国の取引先から秋夕前のメールが届いた場面を考えてみます。件名に추석 연휴 안내とあれば連休の告知、본문に-해야 한다が並んでいれば守ってほしい事項、末尾が-세요になっていれば相手への依頼です。
文末の形だけを拾えば、全文を訳さなくても用件の種類が見当付きます。
原文・直訳・読み下しを並べる
枠の多い文は、直訳すると日本語として重くなります。
どこを削ると自然な日本語になるかを、3文で見ておきます。
| 原文 | 直訳 | 読み下し |
|---|---|---|
| 우리나라 최대 명절인 추석을 맞아 | わが国最大の名節である秋夕を迎え | 秋夕に合わせて |
| 벌초 및 성묘객 편의를 위하여 | 草刈りおよび墓参客の便宜のために | お墓参りの人が通りやすいように |
| 한시적으로 개방한다고 밝혔다 | 一時的に開放すると明らかにした | 期間を区切って開けると発表した |
直訳の列は、韓国語の部品がどこに対応しているかを示すためのものです。
読み下しの列では、우리나라 최대 명절인という修飾をまるごと落としました。
日本語で「わが国最大の名節である」と書くと強調に見えますが、韓国語では説明の定位置に入っているだけで、力は入っていません。
및は「および」にあたる書き言葉の接続で、口語ではほぼ使いません。訳すときは読点に落としてかまいません。
-고 밝혔다も「明らかにした」と訳すと重くなるので、日本語では「発表した」「としている」あたりが釣り合います。
枠を訳し込むか落とすかは、読み手が誰かで決まります。原文の構造を見せたいなら残し、内容だけ伝えたいなら落とすのが目安です。
声に出すと形が変わるところ
この記事に出てきた語のうち、表記と読みがずれるものを挙げます。
| 表記 | 実際の読み | 何が起きているか |
|---|---|---|
| 맞아 | [마자] | ㅈパッチムが次の母音に移る連音 |
| 맞이하여 | [마지하여] | パッチムのㅈが이と結び付いて[지]になる |
| 추석맞이 | [추성마지] | ㄱがㅁの前でㅇに変わる鼻音化と、連音が同時に起きる |
| 앞두고 | [압뚜고] | ㅍが[ㅂ]になり、続くㄷが濃音になる |
| 있도록 | [읻또록] | ㅆが[ㄷ]になり、続くㄷが濃音になる |
| 밝혔다 | [발켣따] | ㄺのㄱとㅎが結び付いてㅋになる激音化 |
| 한가위 | [한가위] | 変化なし。ここではパッチムと次の初声がぶつからない |
추석맞이が[추성마지]になる点は、耳で聞いたときに一番引っかかります。
ㄱ・ㄷ・ㅂのパッチムはㅁ・ㄴの前でそれぞれㅇ・ㄴ・ㅁに変わるので、추석+맞이の境目でㄱがㅇになります。
表記のまま「チュソク・マジ」と読むと通じにくいので、地名や行事名を口に出すときは意識しておくと安全です。
맞아と맞이하여は、どちらも書けばㅈが見えますが、読むときはパッチムの位置から次の音節へ移ります。
逆に한가위はパッチムが後ろの音と衝突しないため、表記どおりに読めます。
ただし同じ固有語でも맞다や밝히다のように変化が起きるので、固有語だから読みやすいという話ではありません。
置換練習
ここまでに出てきた枠を、別の語彙に当てはめ直します。
解答の語形は本文に出していません。形の作り方から組み立ててください。
- 내일 결과를 발표한다. → 予定を表す3つの名詞のうち、組織の構えを表すものを使って書き直してください。
- 박물관은 9월 26일부터 특별전을 연다. → 自治体の告知文と同じ합니다体に変えてください。
- 방미통위の보도자료に出てくる 온정의 손길을 나누며(温かい手を差し伸べながら)を、보도자료の地の文の文末形にして1文で言い切ってください。
- 산에서 불을 피우지 마세요. → 命令形をやめ、보도자료の義務の形にしてください。
- 국민 편의 → 発音どおりにハングルで書いてください。
- 신청은 9월 30일에 마감한다. → 掲示物の注記と同じ、名詞で言い切る形にしてください。
| 問 | 解答 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | 내일 결과를 발표할 방침이다. | -ㄹ/을のあとに名詞を置く。方針は3つの中で最も組織の姿勢寄り |
| 2 | 박물관은 9월 26일부터 특별전을 엽니다. | 열다はㄹ語幹なので、-ㅂ니다が付くときにㄹが落ちる |
| 3 | 온정의 손길을 나눈다. | 連結形の-며を切って한다体に。나누다は母音語幹なので-ㄴ다が付く |
| 4 | 산에서 불을 피우지 말아야 한다. | 禁止の-지 말다に-아야 한다を重ねる。相手に命じず、守るべき事柄として述べる形 |
| 5 | [궁민 펴니] | ㄱがㅁの前でㅇになる鼻音化と、ㄴパッチムが母音に移る連音が続けて起きる |
| 6 | 신청은 9월 30일에 마감함. | 하다の語幹に-ㅁを付ける。パッチムのない語幹には-ㅁ、ある語幹には-음が付く |
3番は、連結形で終わっている文を一文として立て直す練習です。보도자료の地の文はすべて한다体で終わります。
5番は、記事の本文で扱った추석맞이と同じ理屈です。パッチムの種類と次の子音の組み合わせだけで決まるので、語彙を知らなくても答えが出ます。
-하시기 바란다の代わりに置かれていたもの
行政の文書といえば-하시기 바란다(〜してくださるようお願いします)を思い浮かべますが、この7本には1回も現れませんでした。
地の文で呼びかけを担っていたのは-해야 한다の2回です。
당부한다と통행해야 하며は所長の発言の中にあるので、地の文とは分けて数えました。
数えるときにもう一つ落とし穴があります。영주국유림관리소の所長の発言に出てくる일반도로와 달라は、見た目が依頼の-달라と同じ形です。
ただしここは다르다(違う)の活用で、「一般道路とは違って」という意味です。文字の並びだけで拾うと、依頼が1件多く数えられてしまいます。
この7本から言えること、言えないこと
言えるのは、2026年9月の秋夕前に出た公式文が、書き出しと文末に強い型を持っていたということです。
枠の位置は機関をまたいでそろっていて、変わるのは内容の部分だけでした。
一方で、ここに出てきた回数は7本・計26文という狭い範囲のものです。
韓国語全体の傾向としてそのまま一般化できるものではないので、別の年や別の分野の文書でも同じ並びになるかは、そのつど確かめながら使ってください。
秋夕そのものは毎年日付が動きます。2026年は9月25日ですが、翌年以降は음력 8월 15일を新暦に読み替える必要があります。
この記事は、韓国の官庁・自治体・博物館が秋夕に合わせて公開した告知文を、韓国語の書き言葉を学ぶ材料として扱うものです。各機関の活動や施策の当否には立ち入りません。
引用の範囲と、공공누리の유형ごとの扱いについては編集方針に沿っています。

