セリーナ・ウィリアムズが2026年の全米オープンでコートに戻りました。
2022年の引退以来となるアーサー・アッシュ・スタジアムで、混合ダブルスのパートナーに選んだのは21歳年下のカルロス・アルカラスでした。
そのアルカラス自身も右手首の負傷で4か月以上ぶりの実戦で、同じ週に同じ場所へ戻ってきた二人ということになります。
この記事では、その週に出た発言から「戻ってきた」を語る英語だけを抜き出し、語ごとに並べ直します。
扱うのは back / miss / never / couldn’t have の4領域で、教科書が「久しぶり」に割り当てている表現とどこがずれるかも対比表で確かめます。
コートに戻った人たちが、実際に選んだ語
素材にしたのは、次の3つの記事に載った発言部分です。
| 媒体 | 掲載日 | この記事で扱う話者 |
|---|---|---|
| Al Jazeera | 2026年8月26日 | セリーナ・ウィリアムズ/ベリンダ・ベンチッチ/ロジャー・フェデラー |
| Just Women’s Sports | 2026年8月26日 | セリーナ・ウィリアムズ |
| Tennis365 | 2026年8月24日 | カルロス・アルカラス |
引用符の中だけを取り出すと、14のまとまり、236語しかありません。
この分量では「頻出表現」を語れないので、この記事は1語ずつの働きを見る方向で組み立てます。
それでも語の偏りははっきりしています。
| 語 | 引用符内の出現 | 別々の発話として数えたとき |
|---|---|---|
| back | 4回 | 3回(うち1回は同じ一言を2媒体が別々に掲載) |
| miss | 4回 | 1つの発話の中に4回 |
| never | 3回 | 2回(never expected と never thought) |
| amazing / great / incredible / cool | 6回 | 5回 |
| grateful / honour | 2回 | 2回 |
復帰を語る英語は、この5行にほぼ収まっているということです。
back は一語で足り、意味は前置詞と場所が決める
3人の発話に共通して出てくる語が back です。
ただし back だけでは「どこへ」が決まらないので、直後に前置詞と場所の名詞がついてきます。
It’s great to be back in New York, […] I have incredible memories, obviously, of this court, of the fans here, of the city.
ロジャー・フェデラー(元テニス選手)2026年8月26日掲載・アーサー・アッシュ・スタジアムでのエキシビションに際しての発言/出典: Al Jazeera
訳:ニューヨークに戻ってこられて最高です。このコートのこと、ここのファンのこと、この街のことについて、素晴らしい思い出があります。
back in と続いたので、戻った先は都市になります。
It’s always such an amazing place to be here, […] I never expected to be back on this court.
セリーナ・ウィリアムズ(テニス選手)2026年8月25日・全米オープン混合ダブルスの試合後/出典: Al Jazeera
訳:ここはいつだって本当に素晴らしい場所です。このコートに戻ってくるとは思ってもいませんでした。
こちらは back on で、戻った先が平面としてのコートになります。
So yeah, as I said, after more than four months, coming back at a Grand Slam wasn’t an easy decision, but I just tried to put everything to be ready for this tournament.
カルロス・アルカラス(テニス選手)2026年8月24日掲載・全米オープン前の練習後インタビュー/出典: Tennis365
訳:はい、さっきも言ったとおり、4か月以上たってグランドスラムで復帰するのは簡単な判断ではありませんでしたが、この大会に備えて全部を注ぎ込もうとしました。
ここでは back at で、戻った先が大会という催しになっています。
| 英語 | 読み方 | 戻った先の捉え方 |
|---|---|---|
| back in New York | バック・イン・ニューヨーク | 都市を面ではなく容器として捉える |
| back on this court | バック・オン・ディス・コート | 立つ平面として捉える |
| back at a Grand Slam | バック・アット・ア・グランドスラム | 点として指せる催し・地点として捉える |
日本語では「ニューヨークに」「コートに」「グランドスラムに」と、どれも同じ助詞で済みます。
英語は3つとも別の前置詞になるので、覚えるときは back 単体ではなく前置詞と場所の3語をひとかたまりにするほうが実用的です。
コート周りの語をまとめて押さえたい場合は、テニスの英語表現の記事に道具や場所の名前を整理してあります。
教科書の「久しぶり」は、この場に一度も出てこない
日本語の「久しぶり」を英語にする練習では、Long time no see や It’s been a while がほぼ必ず出てきます。
ところが今回の14のまとまりを見ると、この2つはどちらも1回も現れません。
again も出てきません。
代わりに使われているのは、be back と場所の名詞、そして「予期していなかった」という言い方です。
| 教科書に出やすい形 | この場に実際に出た形 | どこが違うか |
|---|---|---|
| Long time no see. | It’s great to be back in New York. | 目的語が「相手」から「場所」に変わる。誰かとの再会ではなく、場所への復帰を言っている |
| It’s been a while. | I never expected to be back on this court. | 空いた期間ではなく、戻れると思っていなかったという心情で「久しぶり」を出す |
| I’m happy to be here again. | I miss this place, I miss the crowd, I miss the ball kids. | again を足さず、恋しかった対象を並べることで不在期間を示す |
| I missed tennis very much. | I miss everything. | 過去形ではなく現在形。今この瞬間も続いている感情として言う |
| This is a good place to start. | I think I couldn’t have started at a better place than here. | 肯定の最上級ではなく、否定と比較級を組み合わせて同じ意味に届かせる |
教科書の形が間違っているわけではありません。
ただ、教科書の Long time no see は「人に会う」場面の語であって、「場所に戻る」場面の語ではない、という住み分けが見えてきます。
雑談の切り出し方そのものを増やしたい場合は、天気から始めるスモールトークの記事のほうが用途に合います。
miss は4回続けて、見えるものへ降りていく
アルカラスの発話には、miss が4回続けて出てきます。
After a couple of months recovering from my injury, I miss everything. I miss this place, I miss the crowd, I miss the ball kids,
カルロス・アルカラス(テニス選手)2026年8月24日掲載・全米オープン前の練習後インタビュー/出典: Tennis365
訳:数か月かけて怪我から回復してきて、全部が恋しいです。この場所が恋しいし、観客が恋しいし、ボールキッズが恋しい。
並び方に順序があります。
| 原文 | 直訳 | 目的語が指すもの |
|---|---|---|
| I miss everything. | すべてが恋しい | 範囲を限定しない総称 |
| I miss this place. | この場所が恋しい | 会場という空間 |
| I miss the crowd. | 観客が恋しい | その空間を埋める人の集団 |
| I miss the ball kids. | ボールキッズが恋しい | 集団の中の特定の役割の人たち |
everything から this place、the crowd、the ball kids へと、目的語がだんだん小さく具体的になっています。
抽象から具体へ降りる順に並べると、聞き手は最後の語で情景を思い浮かべることになります。
この構造は、日本語のスピーチでも応用が効きます。
たとえば留学から帰ってきた人が話す場面なら、「全部が懐かしいです。あの教室も、あの通学路も、売店のおばさんも」という順で並べるのと同じ働きです。
時制にも特徴があります。
不在期間の話をしているのに、4回とも miss は現在形です。
missed と過去形にすると「恋しかったが、今はもう解消した」という含みが出るため、まだ試合に戻る前の時点では現在形のほうが実感に合います。
もうひとつ、動詞1つに目的語を4つぶら下げるのではなく、I miss を毎回言い直している点も見ておく価値があります。
I miss this place, the crowd and the ball kids. と書けば文としては短くなりますが、話し言葉では主語と動詞ごと繰り返すほうが、1つずつ思い出しながら話している感じが出ます。
「まさか」は never を動詞の前に置いて作る
ウィリアムズの発話には never が2種類出てきます。
It’s always amazing to be here. I never expected to be back on this court, […] It was just a really cool moment. I never thought this would happen.
セリーナ・ウィリアムズ(テニス選手)2026年8月25日・全米オープン混合ダブルスの試合後/出典: Just Women’s Sports
訳:ここにいられるのはいつだって素晴らしいことです。このコートに戻るとは思ってもいませんでした。
訳(後半):本当にただただ嬉しい時間でした。こんなことが起きるとは思っていませんでした。
日本語の「まさか」に当たる語は、この2文のどこにもありません。
代わりに、否定語の never を動詞の直前に置くことで驚きが出ています。
| 英語 | 読み方 | 後ろに続く形 |
|---|---|---|
| I never expected to be back | アイ・ネヴァー・イクスペクティド・トゥ・ビー・バック | expect + to不定詞。自分自身の身に起きることを言う |
| I never thought this would happen | アイ・ネヴァー・ソート・ディス・ウド・ハプン | think + that節(that は省略)。出来事全体を1つの節で言う |
expect は「自分が〜する/される」と結びつきやすいので to不定詞を取り、think は出来事の成立そのものを話題にするので節を取ります。
そのため主語を自分から動かしたいときは think 側、自分の行為に絞りたいときは expect 側、と選べます。
なお、この would は「起きるとは思っていなかった」という過去の時点から未来を見る形で、意志を表す would ではありません。
will と would の分かれ目そのものは別の記事で扱っているので、ここでは深入りしません。
couldn’t have started at a better place という一文
I think I couldn’t have started at a better place than here, so I feel very grateful. I’m just happy.
カルロス・アルカラス(テニス選手)2026年8月24日掲載・全米オープン前の練習後インタビュー/出典: Tennis365
訳:ここより良い場所で再開することはできなかったと思うので、とてもありがたく感じています。ただただ嬉しいです。
この形は今回の素材に1回しか出てきません。
頻出だから覚えるべき、という話ではなく、1文の作りが分解に向いているので取り上げます。
couldn’t have started at a better place を、後ろから順にほどきます。
| 部品 | 働き | 外すとどうなるか |
|---|---|---|
| a better place | 比較級。ここより上の選択肢を1つ想定する | a good place にすると、単に良い場所という評価になる |
| couldn’t have | その上の選択肢が存在しえなかった、と否定する | can’t にすると、今後の可能性の話に変わる |
| than here | 比較の基準を明示する | 省いても意味は通るが、比較対象が曖昧になる |
| I think | 断定から半歩下げる挿入 | 外すと言い切りになり、賛辞の押しが強くなる |
否定と比較級を組み合わせると、肯定の最上級とほぼ同じ意味に届きます。
This is the best place to start. と言えば同じ内容ですが、最上級を正面から使うぶん、断言の色が濃くなります。
否定+比較級の型は、褒めるとき以外にも転用できます。
| 英語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| I couldn’t agree more. | アイ・クドント・アグリー・モア | これ以上ないほど同感です。 |
| It couldn’t have gone better. | イット・クドント・ハヴ・ゴーン・ベター | これ以上ないほどうまくいきました。 |
| You couldn’t have picked a worse day. | ユー・クドント・ハヴ・ピックト・ア・ワース・デイ | これ以上ない悪い日を選んでしまいましたね。 |
3つ目のように比較級を worse にすると、同じ型のまま評価の向きが反転します。
型が担っているのは「これ以上は無い」という限界の指定であって、良し悪しそのものではありません。
ほめ語は4つに寄っている
今回の素材で、その場を肯定的に評価している語は amazing / great / incredible / cool の4つに集まっています。
[…] to play Carlos and Serena is a great honour,
ベリンダ・ベンチッチ(テニス選手)2026年8月25日・全米オープン混合ダブルス準々決勝後/出典: Al Jazeera
訳:カルロスとセリーナと対戦できるのは、大変な名誉です。
| 英語 | 読み方 | この場での使われ方 |
|---|---|---|
| amazing | アメイジング | 場所そのものへの評価。an amazing place / amazing to be here |
| great | グレイト | 状態と名詞の両方に付く。great to be back / a great honour |
| incredible | インクレディブル | 記憶や量に付く。incredible memories |
| cool | クール | 出来事の一場面に付く。a really cool moment |
great は to不定詞にも名詞にも付くので、迷ったときの既定値として使える語です。
amazing は評価の対象が場所や体験に寄り、incredible は数や記憶など「量が信じがたい」ものに寄ります。
cool は軽い語で、公式の場でも短い一場面の感想としてなら収まります。
くだけた場での cool の広がり方は、Z世代スラングの記事にまとめてあります。
同じ一言が、媒体によって少し違う形で載る
ウィリアムズの試合後の発言は、2つの媒体に掲載されています。
並べると、同じ内容が少し違う文字列になっていることが分かります。
| 媒体 | 掲載された形 | 差 |
|---|---|---|
| Al Jazeera | It’s always such an amazing place to be here. | place という名詞が入り、such an が付く |
| Just Women’s Sports | It’s always amazing to be here. | 名詞を挟まず、形容詞に直接 to不定詞が続く |
話し言葉を文字に起こす作業には幅があるので、こうした差はしばしば生じます。
どちらが正しいかを判定するより、学習者にとっては「同じことを2通りの構文で言える」という材料として使うほうが得です。
such an amazing place to be here は、名詞を主役にして評価する形です。
amazing to be here は、そこにいるという行為を主役にして評価する形です。
前者は場所そのものを褒め、後者はその場に居合わせている状況を褒める、と切り分けると使い分けやすくなります。
音として何が起きているか
この記事で扱った表現は、どれも語の切れ目が音で消えやすい組み合わせです。
| 英語 | 実際に近い読み方 | 起きていること |
|---|---|---|
| back on this court | バッコン・ニス・コート | back の k と on が繋がり、this の th が前の n に飲まれる |
| I miss this place | アイ・ミス・ィス・プレイス | miss の s と this の th が重なり、th がほぼ聞こえなくなる |
| couldn’t have started | クドゥナヴ・スターティド | couldn’t の t が飲まれ、have が弱く /əv/ になる |
| I never expected to | アイ・ネヴァ・イクスペクティ・トゥ | expected の語末 d と to の t が接し、t 1つ分に潰れる |
| the ball kids | ザ・ボー・キッズ | ball の l が母音化し、後ろの k と直結する |
couldn’t have は音が /kʊdənəv/ に近づくため、英語圏の書き込みでは couldn’t of と綴られることがあります。
規範的な綴りは couldn’t have ですが、聞き取りの際は of に聞こえても have だと見当をつけておくと迷いません。
back on this court のように「子音+母音」で始まる語が続くところは、ほぼ必ず繋がります。
聞き取り練習では、単語を1つずつ区切って聞こうとせず、前置詞と冠詞をまとめて1つの塊として拾うほうが速く追えます。
入れ替えて確かめる
ここまでに出た型を使って、次の日本語または英文を書き換えてみてください。
- It’s been a while since I was in New York. を、場所への復帰を言う型に書き換える
- I didn’t think I would be here again. を never を使った形にする
- I missed the crowd a lot. を、不在がまだ続いている時点の時制にする
- This is the best place to start. を、否定と比較級の組み合わせにする
- I’m very thankful. を、感情を「感じる」動詞で言う形にする
- Being here is amazing, as always. を It’s から始まる形にする
- 「4か月以上たってグランドスラムで復帰するのは、簡単な判断ではありませんでした」を英語にする
- It is a great honor for me to play against them. を、to不定詞を文頭の主語に置く形にする
解答と解説
| 解答例 | 読み方 | 何が変わったか |
|---|---|---|
| It’s great to be back in New York. | イッツ・グレイト・トゥ・ビー・バック・イン・ニューヨーク | 期間の話が場所への復帰の話に変わり、都市なので前置詞は in |
| I never expected to be back here. | アイ・ネヴァー・イクスペクティド・トゥ・ビー・バック・ヒア | didn’t think が never expected になり、驚きの度合いが上がる |
| I miss the crowd. | アイ・ミス・ザ・クラウド | 過去形をやめることで、恋しさが今も続いていることを示す |
| I couldn’t have started at a better place. | アイ・クドント・ハヴ・スターティド・アット・ア・ベター・プレイス | 最上級の断定が、否定+比較級による限界の指定に変わる |
| I feel very grateful. | アイ・フィール・ヴェリー・グレイトフル | be動詞ではなく feel を使い、感謝を状態ではなく感覚として置く |
| It’s always amazing to be here. | イッツ・オールウェイズ・アメイジング・トゥ・ビー・ヒア | 動名詞主語から it を仮主語に立てる形になり、話し言葉らしくなる |
| After more than four months, coming back at a Grand Slam wasn’t an easy decision. | アフター・モア・ザン・フォー・マンス、カミング・バック・アット・ア・グランドスラム・ワズント・アン・イージー・ディシジョン | 大会は点として指せるので前置詞は at |
| To play them is a great honour. | トゥ・プレイ・ゼム・イズ・ア・グレイト・オナー | 仮主語の it をやめ、to不定詞を主語の位置に置くと対戦する行為そのものが前に出る |
8番の honour と honor は英式と米式の綴りの違いで、意味は同じです。
引用元がどちらの綴りを使っているかは媒体によって変わるので、書き写すときは原文に合わせておくと安全です。
職場や学校の「復帰」に移すとき
ここまでの型は、スポーツの場に限った言い方ではありません。
たとえば育児休業から職場に戻った初日、英語で一言あいさつする場面を想定してみます。
It’s great to be back in the office. と言えば、場所への復帰として自然に収まります。
チームに向けて言うなら back with the team となり、前置詞が with に変わります。
留学から帰ってきた学生が、以前の研究室に顔を出す場面ならどうでしょうか。
I never expected to be back here so soon. は、予定より早く戻ったことへの驚きを込めた言い方になります。
I miss this lab. と現在形で言えば、まだ気持ちが戻り切っていないニュアンスまで運べます。
会議や取材の場で復帰について聞かれる立場なら、質問の受け取り方そのものにも型があります。
そちらは記者会見の定型表現の記事で局面ごとに整理しています。
覚えるときの並べ方
今回の素材から持ち帰る形は3つで足ります。
| 型 | 差し替える場所 | 使いどころ |
|---|---|---|
| It’s great to be back ___. | 前置詞+場所 | 戻った事実を短く伝える |
| I never expected to ___. | 動詞の原形 | 戻れたことへの驚きを添える |
| I miss ___. | 恋しかった対象 | 不在期間の長さを、具体物で見せる |
3つとも空欄が1か所だけなので、場面に合わせて入れ替えれば済みます。
あとは前置詞を in / on / at / with のどれにするかを、戻った先の捉え方で決めるだけです。
この記事は、2026年の全米オープンをめぐって公開されたインタビューと試合後コメントを、語学の教材として言語表現の面から扱ったものです。競技上の評価や選手の去就については論じません。
詳しくは編集方針をご覧ください。

