今年の修能(大学修学能力試験、수능)の日は、英語のリスニングの25分間に合わせて、航空機の離着陸の時間がずらされ、砲撃や戦車の移動などの軍事訓練も一時止まります。
試験は11月19日(木)の予定で、韓国政府の省庁は10月に入ってから、受験生や試験場の周りに向けた呼びかけを報道資料で出してきました。
その呼びかけや禁止の語は漢字語で、日本語の漢字で書けますが、日本語の文に移すときに別の語を選ぶものもまじっています。
- 頼みや禁止の漢字語は、하다 を付けた動詞の形で19回出る
- 자제 は、騒音やカフェインを「控える」意味で使われる
- 통제 は、試験場の200m手前から車を入れない措置に使われる
- 당부 の3回は、どれも文の最後の述語に置かれる
- 권고 は、量の話では推奨、大学に向けた文では勧告にあたる
- 협조 は、日本語の文では「協力」に替えて訳す
- 협조 の 조 は、ㅂ のあとで濃音[쪼]になる
- 中国語では、車の出入りを止める措置を 管制 と書く
- 相手に直接言う作例では、자제 の頼みが 줄여 や 조용히 해 주세요 になる
- 本文の 여러분 3回は、すべて長官・処長の言葉の「 」の中にある
- 不正の処分と試験の準備を書く5つの語も、日本語の字で書ける
頼みや禁止の漢字語は、하다 を付けた動詞の形で19回出る
この記事の材料は、韓国政府の報道資料のポータル「대한민국 정책브리핑」に載った、修能にかかわる報道資料9本です。一覧の1ページ目から200ページ目まで(掲載日の表示で11月2日から、200ページ目の9月11日の分まで、3,999本)をたどり、題に 수능・대학수학능력・수험생 のどれかを含むものを選びました。
9本の内訳は、教育部名義5本(うち9月15日・16日・28日の3本は韓国教育課程評価院の資料)、食品医薬品安全処(食薬処)3本、農村振興庁と韓国人参協会の共同資料1本で、9月の模擬試験の採点結果や昨年度の成績分析のような統計の資料も入っています。9本はどれも省庁や機関が出した書き言葉の資料で、人の言葉は、長官・処長や協会の会長などの言葉を「 」で引いた部分にだけ出てきます。
本文の文字は各報道資料の添付文書を変換した表示から取り、題の枠と表、「붙임」「별첨」(添付)以降、担当部署の連絡先、表紙の日付だけの行(「2026. 9.」)、※や*で始まる注と「1)」のような番号付きの脚注と、行末に脚注番号(「10)」)が付く行は除きました。句点で終わらない行は小見出しや一覧の行として外し、残った118段落を、「다.」「요.」のあとに空白がある所で切って(引用符の中の 다.” では切らず)154文としました。
数えたのは2字の漢字語11語で、頼む・勧める語(요청・당부・권고・의뢰・협조)、気をつける・控える行いを言う語(주의・유의・자제)、禁じる・限る語(금지・제한・통제)です。止める・断つ行いそのものを言う 중단 と 차단 の各2回は入れず、語の切れ目を見て、주의력(注意力)、특유의(特有+の)、통제한다 の中の 제한 も数えていません。
11語は9本のうち、食薬処の3本と教育部の10月20日・29日の2本の計5本に出てきて、29回のうち19回は 하다 を付けた動詞、残る10回は 권고량 や 주의사항 のような名詞の形でした。
| 語 | 漢字と回数 | この記事の訳 |
|---|---|---|
| 주의 | 注意・4回(動詞1・名詞3) | 注意する、注意事項 |
| 의뢰 | 依頼・4回(動詞3・名詞1) | (捜査を)依頼する |
| 요청 | 要請・3回(すべて動詞) | 要請する、求める |
| 금지 | 禁止・2回(動詞1・名詞1) | 禁止する |
| 제한 | 制限・1回(動詞) | 制限する |
| 유의 | 留意・1回(動詞) | 留意する、気をつける |
| 권고 | 勧告・6回(動詞2・名詞4) | 勧告する(1回)、推奨する・推奨量(5回) |
| 자제 | 自制・3回(すべて動詞) | 控える |
| 통제 | 統制・1回(動詞) | 規制する |
| 당부 | 当付・3回(すべて動詞) | 呼びかける、念を押す |
| 협조 | 協助・1回(名詞) | 協力 |
表の上の6語は、日本語の同じ字の語をそのまま訳に置いても文が通ります。下の5語は、字どおりの「自制」「統制」「当付」「協助」や量の話の「勧告」では日本語の文として通りにくく、訳では別の語を選びました。
자제 は、騒音やカフェインを「控える」意味で使われる
자제 は漢字で「自制」と書きますが、報道資料では自分の気持ちを抑える話には出てきません。3回とも、音を出すことやカフェインをとることを「控える」の意味で使っています。
[…] 시험장 주변 행사장, 공사장 등의 생활소음도 최대한 자제할 것을 당부한다.
教育部 報道資料「안정적인 2027학년도 수능 시행을 위해 모든 부처가 힘을 모아 지원합니다」2026年10月20日/出典: 대한민국 정책브리핑
訳:[…]試験場の周辺のイベント会場や工事現場などの生活騒音も、できるかぎり控えるよう呼びかける。
同じ文の前半では、試験場のそばを通るバスや列車に、徐行することと、クラクション(경적)の使用を 자제 することを求めています。
늦은 오후나 저녁에는 카페인 섭취를 자제하는 것이 좋다.
食品医薬品安全処 報道資料「수능 앞둔 수험생 여러분, 카페인 함유 식품 섭취 시 주의하세요!」2026年10月20日/出典: 대한민국 정책브리핑
訳:午後遅くや夜は、カフェインの摂取を控えるのがよい。
日本語の「自制する」は「自制心」のように自分を抑える行いを言い、「カフェインの摂取を自制する」とはあまり言いません。韓国語の 자제하다 は、気持ちを抑える意味のほか、行いを控える意味でも案内や注意書きに使われます。
통제 は、試験場の200m手前から車を入れない措置に使われる
통제 は漢字で「統制」ですが、日本語の「統制」は「言論統制」「統制経済」のように、国が強く取り締まる響きの語です。修能の資料の 통제 は、試験当日の交通の規制を言う1回だけでした。
시험장 주변의 교통 혼잡 예방을 위해 수능 당일 시험장 200m 전방부터 차량 출입을 통제한다.
教育部 報道資料(同上)2026年10月20日/出典: 대한민국 정책브리핑
訳:試験場周辺の交通混雑を防ぐため、修能当日は試験場の200m手前から車両の出入りを規制する。
この文の 통제 を日本語の記事に移すなら「規制する」か「通行止めにする」が近く、「統制する」とすると別の話に聞こえます。同じ資料は続く文で、自家用車で来た受験生は200m手前で降りて歩くよう書いています。
당부 の3回は、どれも文の最後の述語に置かれる
당부 の漢字は「当付」で、日本語ではこの2字の組み合わせをほぼ使いません。相手に「ぜひこうしてほしい」と念を押して頼むときの語で、報道資料では役所が市民や受験生に呼びかける場面に出てきます。
[…] 집중력 향상을 기대해 제품을 반복적으로 섭취하지 않도록 당부했다.
食品医薬品安全処 報道資料(受験生向けの不当広告の摘発)2026年10月28日/出典: 대한민국 정책브리핑
訳:[…]集中力が上がることを期待して製品をくり返しとることのないよう呼びかけた。
3回は、教育部の10月20日の 자제할 것을 당부한다、食薬処の10月28日の 섭취하지 않도록 당부했다 と、処長の言葉を「 」で受けた 상담할 것”을 당부했다 です。どれも文の終わりにあり、頼む中身は前の節に入っています。
訳語は場面で選び、役所から市民へなら「呼びかける」、上の人から下の人へなら「念を押す」「言い聞かせる」が合います。
권고 は、量の話では推奨、大学に向けた文では勧告にあたる
권고 は漢字で「勧告」で、日本語と同じく、ある組織が別の組織に「こうしたほうがよい」と正式に勧めるときの語です。修能の資料で日本語の「勧告」とそのまま重なるのは、教育部の10月29日の1回でした。
[…] 대학별고사에도 올해부터 동일하게 적용될 수 있도록 대학에 적극 권고한다.
教育部 報道参考資料(スマートグラスを使った不正への対応計画)2026年10月29日/出典: 대한민국 정책브리핑
訳:[…]大学別の試験にも今年から同じように適用されるよう、大学に積極的に勧告する。
ここで「同じように」とされているのは、スマートグラスを使った不正への厳しい対応と、受験資格を止める期間の見直しです。教育部は7月に、2027年度の修能で持ち込めない品にスマートグラスを書き加えています。
残る5回は食薬処の2本にあり、4回は 권고량、1回は「〜以下で 권고하고 있다」の形で、どれもカフェインの1日の量の話です。
우선 최대 일일 섭취 권고량을 확인한다.
食品医薬品安全処 報道資料(同上)2026年10月20日/出典: 대한민국 정책브리핑
訳:まず、1日の最大摂取推奨量を確かめる。
日本語の「勧告量」は通じにくいので、この 권고량 は「推奨量」とするのが自然です。권고하고 있다 も、量の話なら「推奨している」「目安としている」のほうが日本語の文になじみます。
협조 は、日本語の文では「協力」に替えて訳す
협조 は漢字で「協助」と書きますが、日本語のふだんの文ではほとんど使わない字の組み合わせです。修能の資料には、教育部が役所や企業に出勤時刻をずらすよう頼む文に1回出てきます。
[…] 관공서‧기업체 등에 출근 시간을 오전 10시 이후로 조정하도록 협조 요청한다.
教育部 報道資料(同上)2026年10月20日/出典: 대한민국 정책브리핑
訳:[…]官公庁・企業などに、出勤時刻を午前10時以降に調整するよう協力を要請する。
협조 요청 は2つの漢字語を並べた形で、日本語でも「協力要請」と字を替えればそのまま使えます。日本語の「協力」は韓国語でも 협력 として使われ、教育部の同じ資料の 중앙협력관(中央協力官)にも出てきます。
当付と協助、自制と統制、量の話の 권고 を合わせた13回が、29回のうち字どおりの訳では日本語の文として通りにくい箇所です。
韓国語の漢字語と日本語の漢字の関係は、ハングルの日に合わせて国立国語院の言い換え語を扱った2026年のハングル週間の記事でも見ています。
협조 の 조 は、ㅂ のあとで濃音[쪼]になる
협조 は文字どおりに読むと[협조]ですが、パッチムの ㅂ のあとに来る ㅈ は濃音になり、実際の発音は[협쪼]です。
유의 と 주의 は、2字目の 의 を[이]と読むことも標準発音で認められていて、[유이][주이]とも聞こえます。語の頭の 의 は[의]のままなので、의뢰 の1字目は[의]と読みます。
| 綴り | 発音 | 起きていること |
|---|---|---|
| 협조 | [협쪼] | ㅂ のあとの ㅈ が濃音になる |
| 유의 | [유의]/[유이] | 語の2字目の 의 は[이]も可 |
| 주의사항 | [주의사항]/[주이사항] | 同じく2字目の 의 |
| 의뢰 | [의뢰] | 語の頭の 의 は[의] |
| 권고량 | [권고량] | 母音のあとの ㄹ はそのまま |
통제 と 당부 は、綴りのとおりの[통제][당부]です。
中国語では、車の出入りを止める措置を 管制 と書く
この節の中国語は修能の資料の外の、中国語の一般的な用法です。台北の地下鉄会社が出した仮装の注意書きの中国語は、台北・天母のハロウィンの記事で読みました。
韓国語の 통제(統制)にあたる交通の措置を、中国語では一般に 交通管制 と書き、字が「統」から「管」に替わります。
당부(当付)に近い中国語の一般的な語は 叮嘱 や 嘱咐 で、どちらも相手に念を押して言い含める動詞です。嘱咐 の2字目の「咐」は、当付 の「付」に口へんを付けた字です。
자제(自制)は中国語でも 自制 と書けますが、中国語の 自制 も日本語と同じく自分を抑える意味が中心になります。カフェインを控える呼びかけは、中国語では 减少 や 避免 のような「減らす」「避ける」の動詞でも書けます。
相手に直接言う作例では、자제 の頼みが 줄여 や 조용히 해 주세요 になる
報道資料の 자제 や 당부 の頼みを、修能を控えた家族・友だち・近所の人に直接言う形に置きかえた作例です。作例は報道資料の文ではありません。
| 話す相手 | 作例 | 訳 | 近い報道資料の語 |
|---|---|---|---|
| 弟 | 밤에는 커피 좀 줄여. | 夜はコーヒーを少し減らしなよ | 자제하다 |
| 子(母から) | 시험장 갈 때 길 조심하고. | 試験場へ行くとき、道に気をつけてね | 유의하다 |
| 友だち | 새벽까지 게임하지 마. 꼭이야. | 明け方までゲームしないで、約束だよ | 당부하다 |
| 近所の人 | 내일은 조금만 조용히 해 주세요. | 明日は少しだけ静かにしてください | 자제를 당부하다 |
1〜3行目は家族や友だちへの 반말 で、줄여・조심하고・하지 마 と動詞の形で頼みを言っています。4行目の 해 주세요 は、近所の人に面と向かって頼むときの丁寧な形です。
本文の 여러분 3回は、すべて長官・処長の言葉の「 」の中にある
154文の本文で、相手に直接呼びかける 여러분(みなさん)が出るのは3回で、3回とも長官や処長の言葉を「 」で引いた中でした。地の文の呼びかけは、당부했다 のように役所の名義で伝える形や、자제하는 것이 좋다 のように -는 것이 좋다 で勧める形で書かれています。
教育部の10月20日の資料では、教育部長官が受験生に向けて次のように述べたと書かれています。
[…] 수험생 여러분은 마지막까지 건강 관리에 유의하고 […]
최교진 教育部長官の言葉(教育部 報道資料の引用部分)2026年10月20日/出典: 대한민국 정책브리핑
訳:[…]受験生のみなさんは最後まで体調の管理に気をつけ[…]
食薬処の10月20日の資料は、題に「수험생 여러분」と呼びかけを入れ、「주의하세요!」と해요体で結んでいます。本文の地の文は 주의사항을 안내한다고 밝혔다 のように 한다体で、題と本文で文体が替わります。
省庁が国民に向けて出す公式文の言い回しは、秋夕の前の公式文の記事でも扱いました。
不正の処分と試験の準備を書く5つの語も、日本語の字で書ける
教育部の10月20日・29日の資料には、ここまで取り上げなかった漢字語も並んでいます。次の作例の太字の語を漢字で書き、意味に合う説明を( )の2つから選んでください。
作例は報道資料の文ではありません。
- 시험장에 스마트기기를 소지하면 안 됩니다.(A 身につけて手元に置いている/B 手元から離して預ける)
- 규칙을 어기면 그 시험은 무효가 됩니다.(A 日を改めてやり直す/B 結果を認めない扱いにする)
- 다음 해에는 응시 자격이 박탈됩니다.(A 取り上げる/B しばらく止めておく)
- 정지 기간을 3년으로 상향합니다.(A 景気や調子がよくなる/B 数値や基準を高くする)
- 시험장마다 문답지를 안전하게 보관합니다.(A 試験で配って回収する用紙/B 面接で記録をとる書類)
答えと解説
1の漢字は 所持 で、答えは A です。韓国語の 소지 は日本語の「所持」とほぼ同じように使え、10月29日の資料の処分の一覧には 반입·단순 소지(持ち込み・単なる所持)とあります。
2の漢字は 無効 で、答えは B です。字も意味も日本語と同じで、同じ資料の注にある高等教育法の条文にも 그 시험을 무효로 하고 と出てきます。
3の漢字は 剥奪(剝奪)で、答えは A です。B の「しばらく止めておく」は、同じ資料の 정지(停止)の意味です。
日本語の「資格を剥奪される」と同じ組み合わせで、10月29日の資料の処分の一覧に 응시 자격 박탈 とあります。
4の漢字は 上向 で、答えは B です。日本語の「上向く」は景気などがよくなる意味なので、期間や基準を高くする 상향하다 は「引き上げる」と訳します。
10月29日の資料は、受験資格を止める期間を1年から3年に 상향 する案を進めると書いています。
5の漢字は 問答紙 で、答えは A です。日本語にない組み合わせで、問題用紙と解答用紙をまとめて言う語です。
10月20日の資料は、警察庁・市道教育庁と 문답지 の保安管理の体制を整えると書いています。
今年の修能の受験予定者は551,864人で、前年より2,310人少なくなっています。

