「オーケストラがショスタコーヴィチを演奏します」をロシア語にしようとすると、入門書の知識ではまず играть に手が伸びます。
ところが、作曲者の生誕120年を迎えた2026年9月に、ペテルブルクの2つの団体が出した公演の告知を読むと、играть はほとんど出てきません。
代わりに並んでいるのは、曲そのものを主語にする прозвучать、演奏者を後ろへ回す в исполнении、指揮者を添える под управлением です。
ペテルブルク・フィルハーモニーもマリインスキー劇場も、公演の告知を自前のサイトで書いています。
以下の引用も大部分はその告知文から取っていて、誰かが口にした言葉ではありません。
発言として扱うのは、告知の中に «…» でさしはさまれた、楽団や劇場の指揮者・演奏家・幹部などの談話だけです。
公演の出来や登場する人たちへの評価は、この先どこにも書いていません。見ているのは動詞と格の選び方だけです(編集方針)。
読み進めると、次の4つの言い方の使い分けが見えてきます。
| ロシア語 | 読み方 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| прозвучать | プラズヴゥチャーチ | (曲が)響く・演奏される |
| исполнить / в исполнении | イスポールニチ/ヴ・イスパルニェーニイ | 演奏する・上演する/〜の演奏で |
| под управлением | パド・ウプラヴリェーニエム | 〜の指揮で |
| дебютировать в партии | ヂェビュチーラヴァチ・フ・パールチイ | 〜の役で初めて舞台に立つ |
- ペテルブルク・フィルとマリインスキー劇場の9月
- играть は2回、прозвучать は21回
- прозвучит の主語は曲で、演奏する人は後ろに回る
- 談話には прозвучать が出てこない
- 指揮者は под управлением + 生格
- 人を主語にするときの исполнить と、語順の逆転
- 同じ25日の『マクベス夫人』を、劇場は2通りに書いた
- デビューの告知は、11本とも同じ骨組み
- 入門書の例文と、9月の告知を並べる
- 1文を部品に分けて、直訳と意訳を比べる
- 曲名・役名・人名を入れて告知文を仕上げる6問
- フランス語とドイツ語では、曲はどう主語になるか
- 綴りに出ない ё と、アクセントの位置
- 10月の告知でもう一度出会う形
ペテルブルク・フィルとマリインスキー劇場の9月
ペテルブルク・フィルハーモニーは、1975年に亡くなったショスタコーヴィチの名を50年にわたって冠している演奏団体です。
傘下のオーケストラ Заслуженный коллектив России は、日本では「サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団」の名で知られています。
9月25日の誕生日に、ここが交響曲第15番で新しいシーズンを開けたことが、今回の話題の中心です。
集めたのは、この団体のニュース一覧(1〜2ページ目)のうち日付が2026年9月の記事と、マリインスキー劇場の9月のニュース1〜25番のすべてです。
選り好みはしていませんが、レニングラード封鎖の犠牲者を追悼する行事の記事と、交響曲第7番をめぐる講演の記事の2本は、主題の規則で外しました。
残ったのはフィルハーモニー6本(3,460語)、マリインスキー25本(5,428語)、合わせて31本・8,888語です。
ショスタコーヴィチの名が出てくるのは、31本のうち10本でした。
談話は «…» でくくられ、後ろに「— рассказал ◯◯」「– поделился ◯◯」のような帰属表示が付く形で載っていて、10人・12か所・714語あります(うち1か所は書面で寄せられた祝辞です)。
そのうち約6割の425語は、シーズン開幕を伝えたフィルハーモニーの1本の記事に集まっています。
インドの劇場の支配人の談話は訳文なので、発言からは外しました。
マリインスキーの告知に引かれた作曲家アサフィエフ(1949年没)の言葉も、2026年の発言ではないので数えていません。
語数はキリル文字・ラテン文字・数字の連なりを1語として数えています。
играть は2回、прозвучать は21回
「演奏する・上演する」に関わる語を語幹で拾い、語形をすべて目で見て仕分けると、次のようになりました。
| 語 | 回数 | 内訳 |
|---|---|---|
| играть(演奏の意味) | 2 | игр- の8回のうち6回はおもちゃ・作品名・遊び・「役割を果たす」 |
| прозвучать | 21 | прозвучат 9/прозвучит 6/прозвучали 6 |
| исполнить・исполнять(動詞) | 22 | ほかに「〜年を迎える」の意味の исполнится・исполняется が2回 |
| исполнение(名詞) | 21 | うち в исполнении が10回 |
| под управлением | 23 | 動詞 дирижировать は1回だけ |
| дебютировать | 11 | ほかに見出しの Дебют/Дебюты が11回 |
| дать の受動(будет дана 型) | 7 | 上演の意味が4回、「スタートが切られる」が3回 |
| петь/танцевать | 0/1 | танцевать の1回は過去の人物紹介 |
「歌う」「踊る」という入門書の基本動詞が、歌劇場の告知でほぼゼロという結果です。
歌手もダンサーも、告知の中では「役を исполнить する人」か「役で дебютировать する人」として書かれています。
прозвучать の21回は、フィルハーモニー11回・マリインスキー10回で、どちらか一方に偏っていません。
いちばん多い記事でも5回で、1本の記事が数字を作っているわけでもありません。
прозвучит の主語は曲で、演奏する人は後ろに回る
прозвучать は звучать(響く)に完了の接頭辞 про- が付いた動詞で、「一度鳴り響く」という出来事を表します。
主語になるのは音を出すもの、つまり曲やプログラムです。
[…] прозвучит Девятая симфония Бетховена в исполнении солистов оперы, Хора и Симфонического оркестра Мариинского театра […]
マリインスキー劇場 2026年9月24日付のニュース(9月24日18時30分の演奏会の告知)/出典: mariinsky.ru
訳:ベートーヴェンの交響曲第9番が、オペラのソリスト、合唱団、マリインスキー劇場交響楽団の演奏で響きます。
主語は Девятая симфония(第9番の交響曲)で、動詞 прозвучит は3人称単数の未来形です。
演奏する人たちは в исполнении の後ろに生格で並び、солистов(солисты の生格)、Хора(Хор の生格)、оркестра(оркестр の生格)と形を変えています。
日本語の「〜による演奏で」にあたる部分が、名詞 исполнение(演奏)の前置格+生格という組み立てになっているわけです。
動詞が先、曲名が後ろ
21回の прозвучать のうち19回は、動詞が主語より前に立っています。
「日時・場所 + прозвучит + 曲名」という順で、読者が最初に知りたい「いつ・どこで」を先に出し、長くなりがちな曲名と演奏者を文の後ろにまとめる形です。
主語が先に立った2回はどちらも同じ記事で、1回は「新シーズンの主要なプログラム」というまとめた主語、もう1回はヴァイオリン協奏曲と交響曲第6番の2曲を и で並べた主語でした。
ロシア語は格で役割が決まるので、主語が動詞の後ろにあっても文は崩れません。
語順の自由さそのものは「学校」という一語が8つの形になる回でも扱いましたが、ここではそれが告知の定型として固まっています。
談話には прозвучать が出てこない
談話の714語には、прозвучать が1回も出てきません。
ただ、прозвучать は全体でも21回なので、談話の分量に比例して割り振ると期待される回数は約1.7回で、0回という数だけでは書き言葉との差とは言えません。
告知の地の文でも、動詞の исполнить・исполнять は20回使われていて、прозвучать とほぼ同じくらい出てきます。
談話の中で演奏のことを口にしている4人は、演奏を表すのにどれも исполн- か игр- で始まる語を使っています。
Мы и без юбилеев 25 сентября обязательно исполняем крупное сочинение Дмитрия Дмитриевича Шостаковича […]
ニコライ・アレクセーエフ氏(ペテルブルク・フィルハーモニー首席指揮者)2026年9月25日のシーズン開幕公演について・同団体の9月28日付ニュース/出典: philharmonia.spb.ru
訳:私たちは記念の年でなくても、9月25日には必ずドミトリー・ドミトリエヴィチ・ショスタコーヴィチの大きな作品を演奏します。
主語は мы(私たち)で、исполняем は不完了体の現在形です。
「毎年そうしている」という習慣を言うので、1回きりの出来事を表す完了体ではなく不完了体が選ばれています。
Когда я в 1983 году играл эту симфонию под управлением Евгения Александровича […]
レフ・クルイチコフ氏(同団体のオーケストラのコンサートマスター)同じ開幕公演についての談話・同団体の9月28日付ニュース/出典: philharmonia.spb.ru
訳:1983年に私がエフゲニー・アレクサンドロヴィチの指揮でこの交響曲を弾いたとき
31本の中で「曲を играть する」と言っている2回のうち1回が、この楽団員の思い出話です。
楽器を手にしている本人が、自分の演奏を振り返るときには、入門書と同じ играть が出てきます。
もう1回はマリインスキーの告知の中の играют で、主語を立てない3人称複数(「マリインスキーでは彼の作品が演奏されている」)の形でした。
指揮者は под управлением + 生格
指揮者の名前は、多くが под управлением の後ろに生格で置かれています(23回)。
ただしマリインスキーの告知には、「Дирижер – 名前」と主格で書く形も6回あります。
управление は「管理・操縦」の意味の名詞で、под + 造格の управлением は直訳すると「〜の管理の下で」です。
その後ろに来る人名が生格になるのは、誰が指揮するかを表す生格だからです。
先ほどの談話の Евгения Александровича も、名前 Евгений と父称 Александрович がそろって生格になっています。
入門書が教える動詞 дирижировать(指揮する、造格を取る)は、31本で過去形の дирижировал が1回出るだけでした。
動詞で「指揮する」と言うと指揮者が主語になりますが、под управлением なら文の主語は曲や楽団のまま、指揮者を添え物として付け足せます。
曲が主語の прозвучит と相性がよいのは、このためです。
人を主語にするときの исполнить と、語順の逆転
人を主語にして「演奏する・演じる」と言う場面では、исполнить が使われます。
バレエとオペラの告知には、目的語が先に立つ決まった型があります。
Главные партии исполнят блистательные Рената Шакирова и Кимин Ким.
マリインスキー劇場 2026年9月3日付のニュース(シーズン最初のバレエ『ロミオとジュリエット』の告知)/出典: mariinsky.ru
訳:主役は、見事なレナータ・シャキロワとキミン・キムが踊ります。
文頭の Главные партии(主要な役)は、形の上では主格複数とも対格複数とも読めます。
主語を決めているのは動詞 исполнят の複数語尾で、後ろの2人の名前がそれに一致する主語です。
「役 + 動詞 + 出演者」の順に並ぶ文は、31本の中に6回ありました。
5回はこの Главные партии で始まる形(1本の告知で別々の3作品の配役を紹介するものを含みます)、残りの1回は朗読者の役 партия чтеца を文頭に立てた形です。
日本語では「主役を踊るのは◯◯です」と後ろを強調しますが、ロシア語はそれを語順だけで作っています。
ちなみにオペラやバレエが「上演されている」は идти(行く)で言い、идет/идут が6回とも上演の意味で使われていました。
そのうち5回は、в постановке(〜の演出で)や в хореографии(〜の振付で)のように、演出や版を後ろに添えています。
同じ25日の『マクベス夫人』を、劇場は2通りに書いた
誕生日当日の9月25日には、マリインスキー劇場の歴史的舞台でオペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』の上演が予告されていました。
この1回の上演を、劇場は別々の告知で違う動詞を使って予告しています。
[…] на исторической сцене прозвучит полная трагизма и едкой сатиры знаменитая опера Шостаковича «Леди Макбет Мценского уезда»
マリインスキー劇場 2026年9月21日付のニュース「生誕120年に寄せて」/出典: mariinsky.ru
訳:歴史的舞台で、悲劇性と辛辣な風刺に満ちたショスタコーヴィチの名高いオペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』が響きます。
[…] на исторической сцене будет дана его трагически-выразительная опера «Леди Макбет Мценского уезда» […]
マリインスキー劇場 2026年9月24日付のニュース(9月24〜26日の催しの告知)/出典: mariinsky.ru
訳:歴史的舞台で、悲劇的な表現に満ちた彼のオペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』が上演されます。
1つ目はオペラに прозвучать を使い、音楽としての側面を前に出しています。
2つ目の будет дана は、дать(与える)の受動分詞短語尾 дана に未来の будет を付けた受動の形です。
「公演を与える」という発想で、опера が女性名詞なので短語尾も女性形の дана です。
31本の中でこの受動が上演の意味で使われたのは4回で、残りの3回は старт(スタート)を主語にした「スタートが切られる」という別の決まり文句でした。
デビューの告知は、11本とも同じ骨組み
マリインスキー劇場は、歌手やダンサーがある役を初めて演じる日に、Дебют(デビュー)を見出しにした短い告知を出しています。
9月は11本あり、本文はどれも1文でした。
[…] Дарья Рябоконь дебютирует в партии Ольги в опере Петра Чайковского «Евгений Онегин»
マリインスキー劇場 2026年9月21日付のニュース「Дебют в опере」/出典: mariinsky.ru
訳:ダリヤ・リャボコーニが、チャイコフスキーのオペラ『エフゲニー・オネーギン』のオリガ役でデビューします。
動詞 дебютировать の後ろに в + 前置格の партии(役)が来て、役名 Ольга はその後ろで生格の Ольги になっています。
「〜の役で」を партия + 生格で言うので、役名は必ず形を変えます。
11本のうち8本がこの в партии(заглавной партии=題名役を含む)の型で、残りはバレエの作品名だけを置く в балете が2本、昼の公演を指定する в дневном представлении が1本でした。
入門書の「彼女はオペラで歌う(Она поёт в опере)」に対して、告知は「どの役で初めて舞台に立つか」だけを伝えていることになります。
入門書の例文と、9月の告知を並べる
入門書でよく見る形と、今回の31本に出ていた形を並べます。
右の列は素材の言い方をそのまま抜き出したもので、左の列は比べるために筆者が作った例文です。
| 入門書でよく見る形 | 9月の告知・談話の形 | 違い |
|---|---|---|
| Оркестр играет симфонию. | прозвучит Девятая симфония … в исполнении … оркестра | 主語が楽団から曲へ移り、楽団は生格で後ろへ |
| Гергиев дирижирует оркестром. | под управлением Валерия Гергиева | 動詞をやめて前置詞句にし、指揮者は生格 |
| Она поёт в опере. | дебютирует в партии Ольги | 「歌う」を言わず、役(партия)で言う |
| В театре будет опера. | будет дана … опера | быть で済ませず、дать の受動で「上演される」 |
| Шакирова и Ким танцуют главные партии. | Главные партии исполнят … Шакирова и Ким | танцевать ではなく исполнить、目的語が文頭 |
左の例文が間違っているわけではなく、会話で「昨日オーケストラがこれを弾いた」と言うなら играть で十分に通じます。
差が出るのは、団体が観客に向けて公演を知らせる文面です。
その文体では、演奏する人より「何が聞けるか」を先に立てる書き方が標準になっていて、それが прозвучать と в исполнении の多さに表れています。
ただし告知の地の文でも исполнить は прозвучать と同じくらい使われていて、「書き言葉だから прозвучать」と割り切れるわけではありません。
曲を主語にするか人を主語にするかは、その文で曲目と出演者のどちらを先に知らせたいかで選ばれている、と見るほうが素材に合います。
1文を部品に分けて、直訳と意訳を比べる
最初に引用したマリインスキーの1文を、部品ごとに読み方と直訳を付けて並べます。
| ロシア語 | 読み方 | 直訳 |
|---|---|---|
| прозвучит | プラズヴゥチート | 鳴り響くだろう |
| Девятая симфония Бетховена | ヂェヴャータヤ・シムフォーニヤ・ビトホーヴィナ | ベートーヴェンの第9の交響曲が |
| в исполнении | ヴ・イスパルニェーニイ | 演奏の中で |
| солистов оперы, | サリースタフ・オーピェルィ | オペラのソリストたちの |
| Хора и Симфонического оркестра | ホーラ・イ・シムファニーチスカヴァ・アルキェーストラ | 合唱団と交響楽団の |
| Мариинского театра | マリインスカヴァ・チアートラ | マリインスキー劇場の |
| 直訳 | 意訳 |
|---|---|
| 鳴り響くだろう、ベートーヴェンの第9の交響曲が、マリインスキー劇場のオペラのソリストたちと合唱団と交響楽団の演奏の中で | マリインスキー劇場のソリスト、合唱団、交響楽団がベートーヴェンの第九を演奏します |
в исполнении の後ろには、演奏する側を指す生格の名詞が3つ(солистов・Хора・оркестра)並んでいます。
оперы と Мариинского театра は、その名詞にさらに掛かる生格で、「何のソリストか」「どこの楽団か」を足しています。
意訳では日本語の自然さを優先して演奏者を主語に戻しましたが、原文は最後まで曲が主語です。
日本語の告知が「◯◯楽団が演奏します」と書くところを、ロシア語は「◯◯が響きます」と書く、という差がこの1文に詰まっています。
曲名・役名・人名を入れて告知文を仕上げる6問
本文で使っていない告知の文や、そこに近い文を材料にしています。
答えは下の「解答と解説」を開くと表示されます。
| 問題 | ヒント | 形を変える語 |
|---|---|---|
| 1. Вчера в Малом зале ___ новое сочинение молодого композитора. | прозвучать の過去形 | сочинение は中性名詞 |
| 2. Два концерта пройдут под управлением ___ . | 指揮者は Димитрис Ботинис | 名前と姓の両方 |
| 3. Тенор дебютирует в партии ___ в опере «Евгений Онегин». | 役名は Ленский | партия の後ろの形 |
| 4. На новой сцене будет ___ одно из самых трудных, загадочных и талантливых сочинений XX века. | дать の受動分詞短語尾 | 主語は одно(сочинений の中の1つ) |
| 5. Леа Томассон впервые ___ роль Избранницы в балете «Весна священная». | исполнить の未来形 | 主語は1人 |
| 6. 18 мая прозвучит Концерт № 23 для фортепиано с оркестром в исполнении ___ . | ソリストは Екатерина Мечетина | 名前と姓の両方 |
解答と解説
1. прозвучало。主語 сочинение(作品)が中性単数なので、過去形の語尾は -о になります。
2. Димитриса Ботиниса。ギリシャ系の名前ですが、子音で終わる男性の名前と姓なので、ロシア語の男性名詞と同じく生格の -а が付きます。
3. Ленского。Ленский は形容詞と同じ語尾を持つ姓なので、生格も形容詞と同じ -ого になり、г を в と読んで「レンスカヴァ」と発音します。
4. дано。主語 одно は中性単数(сочинение を受ける)なので、短語尾も中性の -о が付いて будет дано になります。
5. исполнит。主語は Леа Томассон 1人なので、完了体 исполнить の3人称単数で未来を表します。
6. Екатерины Мечетиной。名前の Екатерина は -ы、-ина で終わる女性の姓は形容詞型の変化で -иной になります。
フランス語とドイツ語では、曲はどう主語になるか
曲を主語にして演奏者を背景に下げる書き方は、ロシア語だけのものではありません。
フランス語の公演案内では、上演を donner(与える)の受動で「l’opéra sera donné(オペラが上演される)」と書く言い方が定着しています。
ロシア語の будет дана とは、動詞の選び方も受動の組み立て方もほぼ同じです。
フランス語の公的な場で主語を消す受動がどれだけ使われるかは、フランス国民議会の議場の言葉を読んだ回で79例を並べています。
ドイツ語の演奏会案内でも、erklingen(鳴り響く)を使って曲名を主語に立てる言い方がよく見られ、прозвучать とちょうど重なります。
ドイツ語の受動がどんな場面で「誰が」を消すかは、オクトーバーフェストの公式案内の回で、予約の文を例に扱いました。
英語なら will be performed by の受動で、曲を主語にして演奏者を by の後ろに置く書き方になります。
綴りに出ない ё と、アクセントの位置
名詞の дирижер(指揮者)は、31本の中で語形を合わせて28回出てきます。
そのうち ё で書かれていたのはフィルハーモニーの記事の дирижёр 1回だけで、残りの27回と、形容詞 дирижерский 系の5回はすべて е で書かれていました。
ロシア語の印刷物では ё を е で代用するのが一般的ですが、発音はどちらでも「ヂリジョール」で、アクセントは最後の ё にあります。
マリインスキーの告知は、人名の Терёшкина や Сычёв には ё を書いているのに、дирижер には一度も書いていません。
ё の書き方が素材によって揺れることは、ロシア語学習の教材マップで文字を学ぶ段階から意識しておくと戸惑いません。
ほかの語のアクセントは、прозвучи́т(最後の и)、испо́лнить(о)、исполне́ние(е)、управле́нием(е)、дебюти́рует(и)です。
испо́лнить と исполне́ние は、動詞と名詞でアクセントの位置が移る組み合わせです。
アクセントのない о は「ア」に近く弱まるので、исполнение は「イスパルニェーニエ」と聞こえます。
под управлением は前置詞と名詞がつながって1語のように読まれ、「パドゥプラヴリェーニエム」と間を置かずに発音されます。
10月の告知でもう一度出会う形
ロシアの劇場やホールの告知を読むときは、まず прозвучит/прозвучат を探すと、その後ろに曲名が来ます。
в исполнении の後ろは演奏する団体やソリスト、под управлением の後ろは指揮者で、どちらも生格なので辞書形に戻してから調べます。
「Главные партии исполнят」で始まる文なら、後ろに並ぶのが出演者です。
舞台挨拶の定型を扱ったドラマの初回試写の回とあわせて読むと、ロシア語の文化行事の言葉が一通りそろいます。
マリインスキー劇場は10月14日にも、ゲルギエフと劇場の交響楽団による生誕120年の特別プログラムを予告しています。


